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表題作美少年

ジャズ好きの大学生 「私」
日舞宗家の御曹司 風間菊雄(若松菊香)

その他の収録作品

  • ピンナップ
  • 美少年のススメ
  • あとがき

あらすじ

ごく普通の学生である「私」が気品あふれる美少年・菊雄と出会い、倒錯の関係にのめりこんでいく。
叫び声や哀願の涙。十字架にも似た、肌に食い込んだ荒縄。
心を穿ち、激しく身を切る禁断愛の行きつく先は・・・。

緊縛の文豪・団鬼六の私小説「美少年」に小野塚カホリが華麗な筆致で挑んだ究極のエロス。

作品情報

作品名
美少年
著者
小野塚カホリ 
作画
小野塚カホリ 
原作
団鬼六 
媒体
漫画(コミック)
出版社
マガジン・マガジン
レーベル
JUNEコミックス
シリーズ
美少年
発売日
ISBN
9784896440799
3.6

(23)

(12)

萌々

(3)

(1)

中立

(3)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
7
得点
78
評価数
23
平均
3.6 / 5
神率
52.2%

レビュー投稿数7

類稀なる

短編小説である原作を非常に忠実に描いて
なおかつ情念を浮き彫りにしている点に先ず
舌を巻きます。
激しい情念の世界が描かれながらも漂うのは
生臭い体液の香りではなく、時には強く時には
弱く香る菊花の薫り。
耽美は、きちんとここにあります。

6

葡萄瓜

追記。
原作となった団鬼六先生の小説も妖艶さを
含んではおりますがBL小説として発表された
ものではありません。
あくまでSM小説のヴァリエーションとして
発表されたもの、と評者は理解しています。

団鬼六の世界を再現

緊縛の美学の神様ともいえる団鬼六氏の私小説ともいえる本を、比較的忠実にマンガ化した、すぐれた作品に仕上がっています。
昭和の香りの漂う世界を、小野塚さんの現代風の、かつノスタルジックを感じさせる絵で表現されている部分は、とても作品に溶け込み易い雰囲気をだしていて成功していると思います。

ジャズバンドに熱中している「私」が出会った美少年、菊雄。
彼の女性よりも女性らしい、その魅力のとりこになっていく。
友人の脅しもあり、自分の身の保身を考え菊雄を遠ざける私。
その後のすさまじいばかりの展開は、この話の真骨頂場面であろう。

とにかく見てみないとわからない世界。
菊雄の恥じらいながらも男を誘う姿。
「私」へのすさまじい執着とその情念の世界は言葉によって、そしてこの絵によって補完されることにより、より訴えてくる、見事な融合だと思います。
辱められても、好きな人にだけは見せたくないと強がるその恥じらいは、今の女性が失った古来の女そのものの姿だと思います。
好いた相手を「あなた」と呼ぶ、その時点ですでに彼はオンナなのです。

まさに耽美の世界です!

5

純文学と官能小説はある意味表裏一体、ただこれはBLではない!

かの有名な団鬼六先生の原作を、小野塚カホリ先生が漫画家した作品。
思春期の残酷性と性への動揺と混乱を、荒唐無稽でありながら空恐ろしい現実味をもって描かれています。

こんなこと、自分の人生には起こらなかった。
でも、でも―――
起こり得たかもしれない―――
もしどこかで別の選択肢を選んでいたら――――

主人公「私」の菊雄への愛は確かにあるとき存在した、ただ「私」は若さ故彼を相手の本質を見ずに偶像化してしまっただけ。そして若さ故醒めるのも早かっただけ。
身体にべっとりとまとわりつくような高湿度の菊雄の想念、執念と愛は、不快と隣り合わせ、むしろ不快を含んだ日本の美だなぁと思う。

2

様式美の世界


原作は、稀代のSM官能小説家である団鬼六先生が描かれた私小説。
BLではないが、昭和20年代後半の美しくて物悲しい官能的な世界感に浸ることが出来ます。
小野塚カホリ先生の作画着眼点がよく、古式ゆかしい世界観をしっかりと漫画で表現されています。
そして受けの菊雄が日本舞踊の御曹司なので、彼の性的嗜好に説得力がある。
本編の後に描かれていますが、菊雄が舞った演目について調べてみるとより作品の奥深さが解かります。

私小説なのでこの作品が作者本人の実体験である、というところもポイントが高いです。
重くて不快感を伴なう結論のはずなのに、読んだ後は何故かすっきりした気持ちになりました。
人間はいつかは朽ち果てて枯れていく、醜い生き物なのですね。




1

散らされる美の艶やかさ

 こういうドロドロの愛憎劇、嫌いじゃないですね。主人公を惑わせる美少年・菊雄がずっと男性の体ではあるけれども、心はかなり女性寄りというキャラなので、厳密にBLと言えるのかどうかは微妙なライン。でも菊雄は、たとえまったく痛みなく簡単に行える性転換手術がこの時代にあったとしても、恐らく女性になることは選ばなかったのではないか、と私は思います。男性なのにそこらの数多の女性より美しいという自分の容姿に、多少なりとも優越感を抱いていたようにも見えたし、同性として女性達とは一線画した立ち位置で主人公を愛せることに悦びを見出していたようにも見えました。限りなく女に近いようで、彼の中の本当の芯は男性だったんじゃないかな、と。

 主人公の「私」の前ではそれこそドラマや映画の女のように取り乱した姿も見せた菊雄だけれど、理不尽な仕置きと称して「私」以外の男女に嬲られるシーンでは、最後まで毅然とした態度を崩しませんでした。女の意地も、男のプライドも両方同時に感じた、凄艶なシーンでした。女のように乱れる男の美しさ、というのは女でも男でもない、やはり彼のような性の人間にしか出せない稀有な魅力だと思うんですね。悪趣味な山田達のようにオカマと一言で蔑むのは簡単だけど、それを一歩離れたところから見ていた「私」はきっと、山田達がついぞ気付くことのできなかったこの世のものとは思えぬ美を味わっていた。どんなに山田達が直接甚振っていようと、彼らには一生分かり得なかったでしょうね。そういう意味では、菊雄は「私」に貞節を捧げていたとも言える。最後、過去を忘れてやろうとする「私」に、菊雄はきっと天で優しく微笑したんじゃないかなと思います。

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