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人形型モノクローム
表紙に惹かれて購入した初読みの作家様。
とても良かったです!
ちょっと不思議な世界観ではあるのですが、心温まる良質なラブストーリーでした。
キカ糸さんの紡ぎ出す優しい世界に心がすーっと溶かされいく気がしました。
セクサロイドの〔木綿〕がすごく切ない存在なんです。
木綿を買った奴(竹男)は「セックスドール買う奴なんざロクな奴じゃねー」の例に漏れないクソな野郎なんですが、愛されることも愛のあるエッチも知らない木綿には竹男との生活は「恋人との幸せな生活」以外の何物でもなくて、一途に竹男のことだけを想って過ごしています。
ですがその生活も早々に竹男の母親に見つかってしまったことで破綻し、木綿はあっさり捨てられます。
ここから少し不思議な展開が始まります。
竹男と一緒だった時の木綿はピンク色の髪なのですが、ゴミ捨て場で雨に打たれてずぶ濡れになった木綿の髪は半分が黒くて、でも次のページで「こんな所で死んでたまるか」と立ち上がった時には再びピンクで、まずここでちょっと「ん?」と気になります。
時が流れて2ヶ月後。
表情を失くした黒い髪の木綿が路上で複数の男達にまわされているところを同じセックスドールの〔キルト〕が発見し、救い出します。
キルトには恋人として愛し合っている〔真昼〕がいて、そこで木綿は本当の恋人セックスはどんなものなのかを知ってしまうのですが、それで竹男はクソ人間だったんだな…とはならないのが切ないんです。
木綿にとっての竹男はどこまでも恋しい大事な人なんです。最初にそうインプットされてしまっているから。
木綿のような人型ロボットには主人に捨てられた時の為にインプットを消去できる機能が備わっているのですが、なぜか木綿はそれを実行する為のパスワードが思い出せないでいます。
竹男のことが忘れられないまま、木綿は真昼の弟の〔夕日〕と一緒に高校生としての人生をスタートさせます。
この夕日がなんていうかとてもいいヤツなんですよね。
木綿は自分で決められない子なんです。ご主人様の要望を聞くだけの存在だから。
夕日はそういうのを見抜くんですよね。で、木綿自身に決めさせるんです。
それは「カフェで自分の食べたい物を自分で決める」というほんの些細なことなのですが、小さな声で頑張って注文した木綿を抱きしめたくなりました。
木綿がパスワードを思い出せない理由は、実は木綿の髪色がピンクだったり黒だったりする理由と繋がっています。
少しずつ明らかになっていく木綿のこと。
悲しい人型ロボットの実態。
・・・なのに、この作品に流れる空気感はどこまでもずっと優しくて。
これが私はすごいなって思いました。キカ糸さんすごいなって。
私はこのお話、ファンタジー調だけどなんだかリアルだなって思うんですよね。
木綿のようなお人形さん人間に向けられた「頑張れー!」ってエールにも思えました。
夕日に助けられながら頑張って「自分」を取り戻した木綿の存在が、夕日の生き方を変えるラストがまたいい。
こういうカップルが私はやっぱり好きだなぁ。
「誰だって、生きることに臆病」
このキャッチコピーが少しでも心に引っかかったなら是非読んでみてほしいなと思います。
【電子】シーモア版:修正白抜き、カバー下なし、裏表紙○
◆人形型モノクローム(表題作)
勝手にセックスドールを題材にした短編集をイメージしていたのですが、表題作はまるまる1人のセックスドールの話になっていました。キカ糸先生のメルヘンさと繊細さが合わさった画風に世界観がよくマッチしていて、最初から最後まで引き込まれます。この作品の特筆すべき点は、出荷された木綿が最初に冴えないオタク男性の元へ届き、彼だけを愛することを刷り込まれたこと、そして、実はドール達は元から機械なのではなく、また人間へ戻ることもできるということ。
一度は竹男に捨てられて新たに健全な出会いを経ても、竹男を忘れられない木綿。刷り込みのせいだけではなく、誰かに必要とされたいと熱望していた彼の心が、人生で初めてそれを経験させてくれた竹男に捕らわれたというのもあるのでしょう。私は序盤、竹男と木綿がメインのストーリーでもいいんじゃないかと思ったくらいでした。竹男が壊れていったところでああこれはもうダメそうだなと悟りましたが、アンドロイドになったからではなく、元々木綿は人の見た目や周りからの評価に左右されない心を持っているんじゃないかと。最後に竹男を言葉で救うシーンが入っていたのも良かったです。
竹男に木綿を愛する勇気がなかったのは残念ですが、夕日との出会いが希望を与えてくれます。チャラチャラした少年のようで、中身はまだ本気になれる相手に出会ったことがないだけの真面目な男の子。危なっかしく、辛い経験をしたらしい木綿のことを放っておけず、気付けばすごく気にしてくれていて。傷付いてボロボロになった木綿にも、ドールとして飄々と自己防衛してみせる木綿にも会い、その痛ましい人生と自分の木綿への気持ちを知る。放っておけないが救いたいに、救いたいが好きに。そんな夕日のおかげで、木綿が辛い記憶が蘇ってでももう一度生きたいと思ってくれたことが本当に尊いと感じました。人との出会いで、ここまで辿り着くこともできるのだと。BLを超えて、人間としての生を考えさせられた作品でした。
面白かった!1話は本当に酷すぎてどうなることかと思いましたが、状況が二転三転し、切なさと不思議さに圧倒されていたら最後にほろっと泣かせてくる素晴らしさ。世界観にハマると抜け出せない中毒性がありそうな作家さんだと思います。
セックスドールの木綿は竹男というオタクに買われ、竹男しか愛してはいけないとインプットされます。この竹男が絵に描いたようなクズで、痛みを感じ血を流す木綿に酷い事だけをして捨てます。1話はその様子がしっかり描かれるので、竹男への怒りが止まりません!
2話からはすっかり変わってしまった木綿の新生活が始まります。やっとイケメンパラダイスになってほっとする…笑。木綿は竹男への気持ちを引き摺りながらも、いろんな感情に目覚めていきます。加えて各所で覚えていた違和感にすとんと納得できる種明かしが。
山場では唐突に猫とブタが活躍したり人格が実体化したりと不思議過ぎる世界になりますが、本筋のストーリーが面白いのでそれも含めてハマってしまいます。
本編ラストシーンで「え!?」となった状態で短編をはさみ、描き下ろしでその続きが。何なのこの焦らしプレイ笑。綺麗なめでたしめでたしの図でじわっと泣けてすごく良かったです。読み応え十分の不思議な世界観を持つ作品でした。
人そっくりに作られた人形。
人形に心まで与えてしまったら、虐待に等しいことを強制することになってしまう。
アンドロイドの進化は、ある程度で止めておかないと、色々不具合が起きそう。
これはそんな近未来の可哀そうな人形の話。
尽くし続けて、飽きられて、アッサリゴミ箱に捨てられた木綿。
優しい人に拾われて、素敵な出会いを得ることができた。
ラストがハピエンで、良かった。
日本には昔から、物に心が宿ると信じて粗末にしない伝承があるけれど、
ママに叱られたからって、簡単に捨てちゃいけないよね。
読み始めたときは、こんな読後感になると思っていなかった!
ダッチワイフ大好きな、社会不適合者のヲタク・タケオさんに捨てられた(捨てたくなかったけど家にママが乗り込んできて捨てざるを得なかった)セックスドールのモメンちゃんが、無気力系DKのユウヒくんと出逢って、変わっていくストーリー
そんなに難しくはないけど、「そうだったのかあ」な仕掛けもちょっとあります
でもそれ以上に、モメンちゃんやユウヒくんの心情が丁寧に描かれていて、ものすごくかわいくて、せつなくて、でもやさしい世界線なので、ネコちゃんが発掘のバイトしてても全然気になりません(字面だけだと、は?って感じですが、本当に、ゆるっと受け入れられるふしぎ…たぶん作者が天才)
もっとモメンちゃんとユウヒくん、そしてタケオさんのその後がみたいです
好き嫌いが分かれるかもしれないけれど、めちゃくちゃおすすめしたい作品
(全308ページ!)