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間違いなく水原とほる先生の最高傑作だと思います。
挿絵もほのぐらくて雰囲気充分です。
運命に翻弄される主人公、初乃
お父さんの借金でやくざの親分に売られてしまいます。
ほぼ軟禁状態ですが
庭を手入れしていた将太に淡い恋心をいたきますが
打ち砕かれます。
そのあと手に手をとりあて駆け落ちシーンは
はらはらどきどきの疾走感です
後半は将太がかすむほど、やくざの息子悦司の存在感が圧倒しました。
ずっと、レビューしたかったのですが
どうやって書いていいかわからなくて。
ですが、こちらの作品はいつまでも色あせないと思います。
凄く好きな作品です。何といっても山本タカトさん挿絵が素敵すぎます。作品の内容にもあってちょっと悲しい感じのような、日本美のある絵で、初乃の悲しい生い立ちが絵を見ただけで表現されています。ここまでお話と挿絵がマッチした作品はないと思います。水原さんの作品に登場するどん底主人公のなかでも一番だと思う初乃が最後に掴んだ小さな幸せがドンドンと大きくなっていく気がするそんなラストにも希望があって良かったです。そうじゃないと登場人物すべてが可哀想過ぎて報われません。
感想としては萌x2ですが、この作品の存在それ自体が「神」といえる。だから迷ったけど、神。
キーワードは、借金のカタに買われた美少年、ショタ、ヤクザ、調教、近親(義理)、初恋、ロミジュリ、記憶喪失。
主人公の少年初乃の境遇は不幸そのもの。13才で親の借金のためにヤクザ組長の養子になる。養子といっても結局は慰み者の初乃。ショタ残酷物語です。
第1章ではそんな爛れた生活を送る初乃が、自宅豪邸の庭を手入れする庭師の弟子将大に出会い、惹かれる様を描きます。たわいもない映画デートを見つけられ、世話役が小指を詰め、将大の目の前で縛られ陵辱される初乃の姿。
庭の散歩すら禁じられた初乃が部屋で読書していると、窓を叩く音が。あんな姿を見ても『俺さ、おまえのことが好きだ。』と髪に口づける将大。
ここから将大と初乃の愛の歴史が始まるのです。
第2章は、義父の死後やっと解放されると思っていたのに、今度は義父の実子悦司が初乃を嬲る!『親父が死んだ今、おまえの血と肉も俺のものだ』
実は義父は不能だったため実際には処女だった初乃は、初めて生身の男悦司に抱かれる。そんな中、あの将大が屋敷に組の構成員として下働きにやってくる…初乃のそばにいるために。
この章は悦司の息詰まるような執着心と、将大へのはちきれそうな恋心、そこから生まれてくる本当の自立心と勇気が描かれます。そして映画のような急展開…
第3章。ひとときの幸せ。悲劇、そしてまた不幸。それでも一度は恋の中で生きた初乃は、過去の初乃とはもう違うのです。
最終章。この愛憎の大河ドラマ、あるいは貫き通す初恋の物語の終章。これはきっとハッピーエンドのはず。そしてもう一人の主人公、悦司の一生をもう一度考えたくなります。
表紙・挿絵は「平成耽美主義」の鬼才、「現代の浮世絵師」ともいわれる山本タカト氏。唯一無二の絵力でこの一冊が装丁も中身も丸ごと、正に「芸術」的な書物となったと思います。
初読み作家さんです。
BLではあまり見かけない、何とも言えない耽美な絵柄と表紙に惹かれて購入すること早ウン年……。
表紙の手触りも少し変わっていて、眺めては温めてと繰り返していると、あっという間に10年近く経ってました。
いや、2段組といい厚みといい挿絵といい、何だかちょっと読むのを躊躇うような濃厚さが漂ってたので、これは気合い入れて臨まなきゃ!と思ってたもので。
そんなわけで、漸く読んだ感想としましては、とても良かった。
10年温めた割には月並みな感想になってしまいますが、だって本当に良かったとしか言えないんですもの。
借金のかたに極道の家の男妾として養子になった初乃と、その家の実子との確執。
出入りの植木職人との出会い。
自分を囲った養父との死別に、そこから繰り広げられる昼ドラも真っ青なドロドロの愛憎劇……。
全体的に退廃的な空気に満ちていて、静かにストーリーは進むんですが、内容はもうハードそのもの。
温度感のない文体が淡々と初乃の悲惨すぎる境遇をこれでもか、これでもかとばかりに書き抉り、10年以上にも及ぶ初乃と攻である将大との純愛を壮大なスケールで魅せてくれました。
三角関係とはちょっと違いますが、義兄の執着なども凄まじく、この人のキャラがもの凄く立っていて将大の存在が霞む状態。
初乃の性格がじめじめしていた上に、文章の醸し出す雰囲気がどんよりしていたので、序盤は結構読むのがしんどかったのですが、初乃が将大と生きていく覚悟を決め、籠から逃げ出したあたりからはページを捲る手が止まらない!
先が気になって気になって、見つからないで捕まらないでと手に汗を握りながらの展開がもう凄くドラマチックでした。
そうやって手に入れた、本当にささやかな幸せも長くは続かず、再び籠の鳥になってしまった初乃がたまらなかったのですが、そこからがもう神展開。
義兄の手紙に初乃と一緒になって嗚咽し、最後の最後に漸く見えてきた明るい未来に心の底からほっとします。
幸せたっぷりなハッピーエンドではなかったけれど、それでも長い冬をじっと耐え、春を知らせる蝋梅のような生き方をした初乃を、最後の方では愛しく思えて仕方がなくなってきてます。
そして挿絵のクオリティも半端ない。
好き嫌いは分かれる絵柄ですが、この作品はこの絵だからこそ良かったと思うくらい嵌ってます。
その辺を考えると、あの表紙の豪華さの意味も分かるような気がします。
とても読み応えがありました。
最後までどうなるか分からないし、雰囲気的にバッドエンドもありそうだとドキドキします。
話が進むほど中断することが困難だったのでうっかり朝を迎えてしまいました。
暗くて重くて受けが不幸な話ってあまり好きではないのですが、物語が面白いとのめり込んでしまいますね。
メインカプに安心感があったので、救いのなさなどはあまり感じませんでした。
執着攻めや幸薄受けなど、設定にムフフとなって終わる話ではないと思います。
ヤクザの組長親子、悦造と悦司は2人の背景がしっかり書かれているので初乃のどこに囚われているのか説得力がありました。
なので「執着攻め」ではなく「一人の人間に囚われてる人」という風に多面的に見えるんですよね。
可哀そうでもあるんだなと思った瞬間に、見方がガラッと変わりました。
執着攻めは大好きだし萌えますが、悦造や悦司の執着は萌え以外の所でとても魅かれる物があります。
それにしても、本命がいるのにヤクザに執着されてるって障害がしんどすぎますよね。
でも登場人物が誰か一人でも欠けていたら、これほどまで強烈なカップルにはならなかったのではと思います。
攻めの将大は、ヤクザ世界に紛れ込んだ異物ではなくて淀んだ世界を照らす太陽みたいでした。
陰と陽のメリハリがあり、陰9:陽1なので陽が眩しいんです。
だからこそ初乃の選択が確かなものに感じます。
ちょっとだけうーんと思った点は、挿絵やセリフがたまに現代とマッチしてないような気がしました。
ガタイが良くて茶髪にピアスのお洒落な将大が、どうしても古風に見えてしまって。
なのでその後の変貌ぶりもうまく想像ができませんでした。
あと初乃の「勘忍して」ってセリフ、10代の子からはなかなか出てこない言葉だと思う(笑)悦造の仕込みかもしれません。
でもまあそんなことは些細なことです。
ヤクザの淫靡さというかドロッとした感じが素晴らしすぎますね。
世界観が完成されているので、この雰囲気が苦手でなければ本当にお勧めの作品です。…絶版してるみたいだけど(;_;)