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純粋な王太子×恋に臆病な薔薇の精。官能童話第4弾!
不倫クズ王に騙された薔薇王フィセが、その息子に癒され、なんだかんだあって真実の愛の薔薇を咲かせるお話。余韻の続く終わり方がとても好きだった。
フィセは健気な善い子。未熟さが無垢ともいえる、BL小説の定番人気な受け。
オーレリアンは子供のころから描かれていて、フィセに一途な王子様。父を反面教師にしながらも、なんとなくあの親の子だなあといった顔が見え隠れする。帝王学と環境のせいかもだけど。
序盤はとにかくスペンサーの気持ち悪さがすごい。不倫がバレ、国外に出ようとしたフィセを捕らえて幽閉したうえで、まだ自信満々に迫る傲慢さ。このスペンサーは最後の最後まで悪役を貫いていて、嫌悪感がこちらの許容量を超えていた。
心を閉ざしてからのフィセは、オーレリアンに対する言動が女性的に感じる。心理描写は考えの甘いウジウジ系で、謙虚なようで自己防衛に優れる様子にがっかりする。妖精だから仕方ないとも思えず、悲観的で読んでいて疲れる。
そしてオーレリアンが長い眠りにつくきっかけが……。刺した直後のフィセの描写はそれだけ?と戸惑う。決定的な何かが足りていないような。タイトルに関わるエピソードなので、すとんと納得させてくれる何かが欲しかった。
二人が引きこもってからは泣けるエピソードの連続。フィセの献身とオーレリアンの真っ直ぐさ。悲しいながらも楽しみに読めたのは、スペンサーの遺言の影響力をどう調理するか期待していたから。なのに結末はあれ?という状態で混乱してしまった。
ストーリーはとても良かったし、細かいところを気にしなければ楽しめたと思う。個人的には伏線かと思っていた件が何の意味もなかったのか、と拍子抜けするところがいくつかあり、読み応えを感じづらかった。
全体の流れやキャラクターの描き方はとても好き。主人公フィセは苦手。終盤、立て続けに分からされるオーレリアンの愛はめちゃくちゃ良かった!フィセのオチも、これからの物語が確実に幸せなものになると思えて好き。
読後感の良い作品だった。
『人魚姫の弟』から続く犬飼さんの官能童話シリーズ、そのうちの一冊となる。
もしも見目麗しい王子さまキャラを探している人がいるならばこのシリーズを推したい。
鍵を握るヒロインがBL仕様として男性キャラに成り代わる訳だが、物語ごとに恋に落ちる王子さま達の麗しさや憂い、執着心に悶えるだろうと思う。
さて、2020年刊のこちらは童話モチーフでありながらも、犬飼さんが書き起こした薔薇の妖精王・フィセと生まれて間もない頃からフィセに惹かれていた王子・オーレリアンの純愛に魅了されたのだった。
慈愛に満ちたフィセは、オーレリアンの父王によって騙されていたショックから、香り高く富をもたらす白薔薇を咲かせることができなくなってしまう。
トワイダルは一気に寂れた国となってしまった。
そこから始まるフィセの長い苦悩の日々として、彼の心を映すように咲き誇る黒薔薇、白薔薇が物語を彩る。
それにしてもオーレリアンの幼少期、「ばらおうしゃま」ってフィセを慕う姿の可愛いこと。
やがて己の美しさを全く鼻にかけずに聡明で思いやりある王子に育ったのは、ひとえに恋するフィセに認めてもらいたい一心からだろうが、父王との不和もあって自惚れるどころではなかった背景も伺える。
これは自分の勝手な想像だが、トワイダル王国は何らかの執念に取り憑かれる一面を持つ血筋なのかも知れない。
オーレリアンの祖父にあたる先代の王は(恐らく政に関係なく)死後も後妻の再婚を許さない遺言を残したらしいし、父王オズワルドのフィセへの執着心は読んでの通り。
オーレリアン王子もまたフィセに恋焦がれる余りに…となるところを己の精進へ傾ける事ができたのは何より幸いだった。
ところで今回のこの物語、元の童話の鍵となる糸紡ぎの紡錐が出てこないのが意外だった。
ヨーロッパ伝来の童話は一説では性的な揶揄が多く含まれているらしいとの事で、紡錐や眠りにつく経緯にもその手の意味合いが有るらしいのだが。
"官能童話シリーズ"と呼ばれる由縁のその辺りを削った事を踏まえると、犬飼さん独自の脚色が強い仕上がりとなっている。
最初に挙げた通り、薔薇の妖精王・フィセの回りで咲き誇る薔薇は彼の言葉よりも雄弁だった。
長年の心の痛手を抱えていたフィセが最終的にオーレリアン王子の求愛をどう受け止めたかは、薔薇の返事が物語っている。
官能童話シリーズ5作目
妖精で薔薇王のフィセは上級騎士からの求愛を真実の愛だと思って受け入れてしまう。
しかし実は彼は、薔薇王と人間が真実の愛を育くめば不老長寿の奇跡の薔薇を手に入れられると知ってフィセを騙していた国王だった。そのこと知ったフィセは深く傷つき、兇器のような棘のある黒薔薇を咲かせてしまう。
そしてフィセに執着する国王に北の塔に幽閉されてしまう。
人間なら心の傷もある程度の時間や経験で癒やされますが、妖精のフィセはずっと抱えたままです。そしてその傷はいつまでも血を流し続けるのです。
それがすごく悲しくて切ない。
黒薔薇も咲かせたいわけではないのに、フィセの心に呼応して咲くので、傷ついたまはまのフィセにはどうすることもできない。
しかし希望はあります。国王の一人息子、オーレリアンは幽閉されたフィセを深く愛し、毎日会いに来ます。
頑なに心を閉ざすフィセが、真実の愛に目覚める時がくるのでしょうか。
と、ここにきて、はた、と「親子どんぶり」??
ということですね。それが生理的にムリ!!な方はご覚悟を。
童話シリーズはそれぞれのテーマに沿ったキャラや内容ですが、それだけに治まらないのが流石でございます。
作り込まれた世界観とフィセの健気さ、オーレリアンの一途さに身悶えしました。
そしてラスト! そうきたか! 初回限定ペーパーで続きが読めますが、二人のイチャイチャをもっと読みたいっっ。ので、ぜひ続刊をお願いします。
夢のような美しい薔薇の咲き乱れる王国で恋人との逢瀬を楽しみに暮らす妖精フィセ。
しかしその恋人だと思っていた騎士に扮した王に裏切られ卑劣なたくらみを知ったとき、絶望し香しい薔薇を咲かせることが出来なくなり囚われの身となります。
薔薇を咲かせられなくなったことで自分を責め悲しみに沈んでいくフィセがかわいそうでかわいそうで…
非道で自己中な王の憎たらしいこと!
そんなにっくき王の一人息子の王子オーレリアンは天使のように愛らしく純真でした。
幼い王子と出会ったフィセが少しずつ癒されささやかな幸せのひと時を過ごしていたころ、幼いながらもフィセへの執着が見えて先が楽しみになりました。
タイトルを見たとき眠りにつくのは受けで攻めが口づけて目覚めさせてくれるのかと思ったていましたが、さすが犬飼作品!一筋縄でいかないものだと感心しました。
眠れる王を目覚めさせるのは口づけよりももっと素敵な愛溢れる行動で大変萌えました。
物語に引き込まれてしまって一気読みしました。
薔薇王フィセと太陽の王子オーレリアンの関係が哀しくも美しくて、先生のアイデアと物語のどこにも余分な文章が無い筆力に脱帽しました。
ノリに乗ってる作家さまはこうも違うのかと思いました。
フィセが前王に謀られた絶望から黒い薔薇を咲かせて城の塔に幽閉されてから、幼いオーレリアンがフィセを慕って再び白薔薇が咲いて、これでフィセは救われるのかと思いましたがそんな訳はありませんでした。
父王から塔の鍵を奪った17歳のオーレリアンとフィセの逃避行と、離宮に着いてから眠った振りをするフィセを抱くオーレリアンの描写に滾りました。
ようやく愛を信じられて一歩を踏み出す事が出来そうな矢先に、フィセがオーレリアンの無邪気な言葉に咄嗟に薔薇を心臓に突き刺した時には、何で?ってなりました。
でもフィセが全身全霊でもって3年かけて、オーレリアンを死の淵から甦らせる下りには涙しました。黄金の悠久の薔薇の秘密の何と残酷なことかと…
永遠の若さと美貌や命なんてフィセが居なければオーレリアンにとっては意味は無いのです。賢王になってからも誰とも番わずに、フィセの復活を離宮で待ち続けるしか無かったオーレリアンがとても切なかったです。
ほのぼのとした甘さは皆無な作品でしたが、身を切る愛情と言うものを嫌というほど訴えて来た作品でした。
巷に沢山BLが溢れて気軽に読めるようになり、読者にはありがたい世の中になりました。ただその中に良書は少なくなって来ており、犬飼先生を初め良作を生み出してくれる作家様の作品をこれからも買い続けたいと切に思った作品でした。