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君とふたりで、生きてゆく
中村明日美子さんのイラストはアニメイトなどで平積みにされていたので何度か見たことがあったが、前衛的なのか神経に触るような絵だった。
この本は他人にしつこく進められて嫌々読み始めた。それが、一度読み始めてしまえば、最大の障害となっていた、イラストも意味があり私もこのような線が引けるようになりたいと思うまでになった。奇しくも、これが私と明日美子作品との初めての出会いである。今では完全に明日美子先生の虜である。
Jが綺麗すぎる。いわゆるおかまと呼ばれる人々は実際の女より、女らしく、可愛い。本作におけるJも男性ながら、言動、姿かたちともに女らしい。自分の姿を振り返り、せっかく女に生まれたのにもっと女を愉しまねばと思った。
Jの総てという題名から、○○の一生的な感じで結局Jが死んで終わりなのかと思いながら最初は読んだが、すべてが許されるような優しい結末だった。明日美子先生の作品はどれだけ暴力に溢れた世界を舞台にしていても、ハッピーエンドにしてくれる。いつも安心して読むことが出来るのも大きな魅力だと思う。読み終えてから、生きる希望が湧いてきた。
紙の本でかなり昔に読んでおりました。
が、「ダブルミンツ」映画化キャンペーンで割引になっていたため、電子版を「ばら色の頬のころ」まで購入し、久しぶりに読みました。
この作品での中村明日美子画伯の絵柄は「ちょっとアンバランスの様でもあるけれど、そこが魅力的」だと思っております。今回読み直して「あ、昔は凄くクールな描線だと思っていたけれど、実はとてもリリックだったのね。なんか若さを感じる」とも思いました。
そこで、ここからがこの文章で一番言いたいこと。
紙の本の方がいいよ。
画伯の絵の美しさは電子でも充分感じることは出来るけど。
けど、
紙の質感を手に感じながらゆっくりと、Jとポールとモーガンの世界に浸った方が、価値のある時間を過ごせると思います。
……ちょっと悔しい。
ラストには1巻の頭へと繋がっていく、
映画の終幕の様な完結巻。
君が好きだ、
それだけじゃだめなのか、
クールで優等生キャラであるポールの、
感情的な姿はJへの本気を
いっぱいいっぱいに表わしていて、
クライマックスのJを引き上げるシーンは、
むせるほどに涙がこみ上げた。
この巻は、
壊れていくJとそれを救おうとするポールを中心に、
リタ、ジーン、Jの母親とその妹夫妻、
カレンズバーグのおばさま…と
お互いの「家族」が物語の核になっていく。
自分とリタの間に子どもがいると知った時、
Jは意識を手放すほどに動揺してしまうけれど、
ラストの柔らかな空気を見ていると、
ジーンがいることはJが失った「家族」の温かさを
再び感じられるきっかけのひとつになったのではないかな。
そして2人の友人。
モーガンとエドモンド。
モーガンのポールと再会し背比べをするシーンは、
微笑ましくも切ない、懐かしい痛みのような
息苦しさに襲われました。
1巻でモーガンはポールを殴り仲たがいしたけれど、
モーガンは、ポールが大切で、Jも大切に思っている。
そしてモーガンなりの表現方法でそれをちゃんと伝えていて。
冷酷で常識にこだわっていたように見えたポールも、
大人になったからこそ、モーガンとこんな風に
接することが出来るようになったのだろうね。
ポール鈍感過ぎるけどね(苦笑)。
そしてエドモンド。
彼がいなければ、2人は再会できなかっただろうし、
ポールは共に生きていくほどの決意を固めることは
出来なかっただろう。
調子いいキャラではあるけれど、
ポールを決心させた「ゲイ」と言う言葉の話。
Jが飛び、救いあげた時も彼は一緒にいた。
ラストの1980年にはまるで家族の様にそこにいて、
とても良い関係だったのだろうなと思わせてくれるのだ。
女性として生きていくことを、
家族と友人に理解されて穏やかな表情を見せる、
ラストシーンのJが幸福感に溢れていて
とても救われた気持ちなる。
半生が壮絶だったからこそ、「よかった」と
心から感じることが出来た。
衝突が繰り返されつつも、Jの心が解されていく同巻。
全巻を通してヘビーなトラウマが根本にあるので、
簡単にはお勧めしにくいけれど、
このラストを見届ける為だったのだな、と
思えるような忘れられない作品でした。
まるで映画を見た後の様な、ほうっとため息が出る感覚。
気になって、読む覚悟が出来たら最後まで読み届けてほしい。
前回まで女装歌手編でしたが、今回は行方不明になっていたJは浮浪罪で刑務所にいるという始まりです。
そしてその刑務所にはJとポールの同級生だったアンドルー・モーガンも囚人として入って居ます。
ポールは司法書生として、刑務所でポール、アンドルーと再会します。
アンドルーはJのお世話をしてあげるイイヤツです。
アンドルーは実はポールの事が好きですけどね。
ここ萌えましたw背比べするシーンとか。報われない恋だけど。
そしてこの巻でようやくポールとJの恋が成就します。
ステレオタイプなポールが「自分がゲイかもしれない」ということに嫌悪しながらも、もうそれを認めよう、シンプルに考えよう、と努めて行く姿が良かったです。
ポールは多くを考えずに、何を一番に優先すべきか考えたんですね。
その結果、彼がたどり着いた答えは「ただ、Jと一緒にいること」。
Jはポールを自分の人生に巻き込んで不幸にしたくないと思い、自殺しようとしますが、
しかしポールに助けられ命拾いします。
そしてJはポールの本気の愛情の前に、一緒に生きる事を選びます。
近親相姦→ギムナジウム→クラブ歌手→囚人→お父さんならぬお母さんになる。
と、Jの全てをまとめると本当に波瀾万丈だけど。
疾風怒濤のごとく駆け抜けた日々の後には穏やかな生活がありました。
Jが女らしく生きることを受け入れてくれる人たちがまわりにいるから、もう彼は苦しむことはないと思いました。
彼(彼女)が、自分らしく生きることのできる世界が待っていて、本当に良かった。
あとがきによると「強くてかわいいオカマを描きたい」という動機があって、この作品が生まれたそうです。
確かにパンチが効いてました!
パンチの効いたオカマちゃんに会いたくなったらぜひお手に取ってみてください。
神評価ばかりのなかすいません。
こんな奴もいましたよ。って感じで書いてみようと思います。
現在のJには魅力を感じるが、過去のJには魅力を感じない。
あとがきの『強くて かわいいオカマが描きたい』を読んだ時に、
私は、『強くてを先に観たかった』と思いました。
人は、魅力的な、人間の過去に興味はあるが、そうでなければ
特に知りたくはない。なので、私は、この後の皆を一冊くらい読んで
現在の魅力的なJ達を感じた後に、過去を見たかった。
それだけ良い意味で癖があるキャラだと思う。
「この人はこういう事がありここへ至ったのか」という感じに。
四巻はないけど、四巻が一巻だったら、かなり嵌った
のではないかと思う。お話のラストは、とても感動的だと思いますけどね。