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表紙のふんわり具合やあらすじに書かれたほのぼのラブ♡から平和で穏やかな甘い話なのか?と思いましたが、そうでもなかったです(笑)
でも痛くはないので、比較的読みやすい作品ですかね。
受けの朝霞のお仕事はブライダルコーディネーター。
木原先生の作品はお仕事の描きも細かいので、自分の触れたことない世界が知れていつも興味深いです。
その分、仕事一筋になれない私は努力もして仕事ができる男の言葉(今回ですと新人に向けたようなもの)が地味に突き刺さりダメージもおっているんですけど(苦笑)
ノンケ同士の恋なので手探り状態が多く、どうにもスッキリしません。
笹川のような愚痴でも何でもしっかり耳を傾け話を聞いてくれる相手が私も欲しいなー…なんて思ったりもしましたが。
付き合うことになってもすぐさまハピエンルートに突入しないのが、先生の作品の好きなところです。
ですが、後半の素っ気なくなった笹川の選んだ行動はどうにも受け入れ難く、正直嫌いになりかけました。
好きで好きで仕方ないくせに、どうしてそうしたんだ…と頭抱えましたが、不器用なヘタレ好きにはたまらない(?)のかも…。
男性のブライダルプランナーの仕事話が新鮮で面白かったです。自己中心的な後輩へのガツンと正論を吐くシーンが良くて、身につまされ自分まで怒られているようでした。最後の最後まで結末を読ませない展開は流石なのですが、物足りなさや納得いかない点もあり、評価は萌にさせていただきました。
物足りなかった点
・笹川視点の描写が少なく、朝霞の肩をもってしまいがちだけれど、そうでなくてもキャラが弱い。何度もお酒に呑まれちゃう描写やゴミ屋敷暴露はリアルで良かったのですが。木原さんのお話には特徴のないおじさんも特徴のなさが逆に強い魅力になっているのだけど、笹川はその中でも薄いなぁと思ってしまいました。特に2回の引越しについての心情がないのでモヤモヤ。
・池上様
仕事と飲み屋での会話どちらも面白く読みました。朝霞との距離の変化も。彼と仲良くなって笹川が嫉妬する…とかの展開も少し欲しかったなとも思いました。同性婚するクライアントとプランナーの会話「マジな話さ、俺らのこと気持ち悪くないの?」も良い。
そして決して「池上」としない。心の内でも必ず敬称付けする朝霞の仕事の鏡っぷりに少し笑えました。
納得いかなかった点
・笹川が付き合った女性について
てっきり朝霞との生活の為に偽装結婚をするのかと思いきや、本当に付き合ったのにはビックリでした。しかもシャワー浴びてるし。本当に朝霞が好きなのか?と思ってしまう。10日位待て。
・それを許す朝霞
完全にその場の流れとしか思えない。まだ許すな。
普通のノンケの男同士が恋に落ちたらきっとこんな風に悩むのだろうな、という等身大の恋のお話。
戸惑い、近づいて、すれ違って、結ばれる二人から、恋の切なさや喜びがシンプルに伝わってきました。二人の心の動きが丁寧に描かれていて、こんな恋ありそう、と頷きながら読みました。
ブライダルコーディネーターの朝霞は、一年前に初めて担当したお客様・笹川吉郎と偶然歯医者で再会する。その後も偶然が重なり、やがて二人は頻繁に食事や遊びに誘い合うようになる。ある日、ひどく酔った笹川を朝霞が家まで送るが、そこは夫婦の空間とは思えないほど荒れ果てていて。笹川の結婚は相手が実家を出るための偽装結婚で、「一度も一緒に暮らしたことはない」と笹川は妻への叶わない片恋を涙で話すのだった。そんな笹川を放っておけず外出に誘い続けるうち、朝霞は笹川を支えるというのは建前で自分こそが穏やかで聞き上手なこの男に話を聞いてもらいたかったのだと気づく。妻との関係を清算すると決め、笹川は少しずつ立ち直っていく。ある日、笹川のマンションで酔いつぶれた朝霞は、寝入りばなに笹川からキスされ抱きしめられる。恋のような感情に戸惑う朝霞。しばらくぶりに会う笹川はやつれ、朝霞への思いを告げて逃げ出してしまう。痛々しい男が愛おしくてたまらない…。はっきりと笹川への恋を自覚した朝霞は、自分も笹川が気になっていると告げるのだった。
ここまでが表題作「恋について」のあらすじですが、これは二人の恋のほんの入り口。
「恋について2」では、淡い雰囲気から一転、カップルの切実な問題が二人に立ちはだかります。
深い関係を求められた朝霞が、受け入れる行為が恐くて(痛みとか怪我とか)笹川を突き飛ばしてしまったことから、二人はすれ違ってしまいます。どうなってしまうのだろうとやきもきしましたが、最後は互いに好きな気持ちを確かめ合い、体を重ねます。最後まではしない触れ合いが笹川の優しさを表していて、温かい気持ちになります。(コミック版には、その後の二人のショートストーリーが掲載されていて、そちらもとても良いです。)
仲直りした後の二人の会話の甘いこと!普段は穏やかな笹川が、ほかの男と寝たという朝霞の嘘に、「最初の時に、嫌がられても全部奪ってしまえばよかった」と悔しがるセリフにグッときました。そして誤解が解けると、「誠心誠意尽くすので…ずっと笑っててくださいね」と言う。笹川に求められ甘やかされる朝霞は幸せ者ですね。
初めは気弱で泣き虫でさえなかった笹川が、最後には包容力ある魅力的な人物に見えてくるのは、やはり恋の力なのでしょうね。
この作品が書かれたのは10年以上前。その頃よりは社会の理解は進んできたように見えますが、当事者にならないと気づかない大変さはきっとまだ沢山あるのでしょう。
朝霞のお客様のゲイカップルが教会での挙式を断られたときに、朝霞が牧師を説得する言葉に胸を打たれます。
「(彼らは)性別に関係なく相手が愛しいと思っただけなんです。」恋とはなにか。この短い言葉が朝霞の出した答えであり、私もそうだと思いました。
木原先生というと痛い辛い痛いのような恋愛が多いですが、こちらは切なくほのぼの?としたすれ違いラズストーリーです。
受けである朝霞のブライダルコーディネーターという仕事を基盤に、初担当した特別思い入れのあるお客であった笹川との恋愛が描かれていきます。
ブライダルコーディネーターという設定は、男同士の恋愛を描いていくうえでとても面白味のある要素となっていると感じました。
この作品はとにかくすれ違う恋愛であり、誰しもが陥りやすい罠がそこかしこに散らばっていました。俯瞰して読むとなぜ気付かないのかとやきもきするような展開の目白押し。
特に笹川は優しいけれど、優しいだけの取り柄のないような男として描かれてます。読者によっては、全て自己完結してあらぬ方向へフラフラと迷走してしまう彼に、苛々して我慢ならない方もいるかもしれません。
一方、朝霞は仕事ぶりから誠実で明るく行動力のある好青年という風ですが、プライドがやや高く意地っ張りで、口にしなくとも分かるだろうといった傲慢さが透けて見えます。
二人とも相手を慮るばかりに思考が暴走し、最も大切な事をおざなりにしたまま進んでいってしまう。分別がつき、そこそこ良い大人になって経験もある、そんなノンケ同士が初めて陥る『男同士』の恋愛。という、なんとも定番の図式ですが、それがイイ‼︎男同士なんだから悩んで当たり前、不安で当たり前、それがそこそこ分別ついた大人なら、こうなってもおかしくないよね。という二人がここにいます。
相手を思いやっているようで、自己満足で終わってはいけない。伝える事。本当に大切な事は、やっぱりシンプルなのだと教えてくれます。
とても焦れったい場面が多いですが、そういったものが好みであれば、ぜひぜひオススメしたい一冊です。
ノンケ2人の少女漫画のようなもどかしい恋話。木原先生のお得意の特殊職業の設定で、相変わらず新鮮でおもしろかったです。
最初は笹川さんはぜったい受けだろうと思ってた…(笑)。年上のくせに臆病で軟弱な性格してるし、体格も繊細系かなぁ声は遊◯さんのようなのがいいなぁとか勝手にいろいろ妄想したりしてた(笑)。
正直、個人的には話自体はけっこう普通でした。誤解したり、疎遠したり、誤解を解けたり、ラブラブになったり…木原先生のや細かな心理描写や職場でのやりとりなどがなければ完全に勝ち目がないかもしれないですね。ストーリーは普通であっても、決してつまらないではありません。男同士の恋愛ならではの葛藤が丁寧に描かれていて、とても木原先生らしく、読み応えのある一冊だと思います。
というかあっさり終われられ、逆に「ん?これでいいの?こんなに幸せになって本当にいいの?」みたいに恐縮してしまうくらいです(笑)。木原先生の既刊作品をえぐい系のものばっかり漁ってきたわたしにとっては大変貴重な癒しになりました(笑)。
そして今作では最後に出たゲイカップルの存在がすごく良いと思います。彼らのために懸命に牧師に訴える朝霞さんの姿に少し泣いてしまいました…。「同性だからいろいろ大変なのに、彼らは勇気を出して神の前で愛を誓いたい、周りから祝福をもらいたい」と。
今までBL作品で同性の結婚式が書/描かれているシーンを拝読したことが何度かありますか、海外だったり、ユートピアの世界だったり、こんなにリアルにゲイカップルの結婚式の大変さ、ましてブライダルコーディネーターの角度から描く作品はこれ以外読んだことがない。 だからやっぱり木原先生の特殊職業ものは最高だ!と改めて思いました。
脇役のゲイカップルの話もすごく気になっていますが、いつか彼ら主役の話が読める日が来たらいいですね(笑)。