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「君の冗談の続きは?」「…シナリオ次第だ」
えすとえむ先生初読みです。この後、8冊読みます(まとめ読み好き)。
先生の初単行本なんですね。
絵が好きです。
線が太く版画みたいだったり。
黒と白のコントラストが効いていたり。
余白を活かした構図がかっこよかったり。
(basso先生ぽくて好きなタイプ)
説明が少なく絵で語られる作風も好きです。
□Cafe et Cigarette.
このお話がいちばん好きでした。
リュシャンとキスしてタバコ味と言われ、ルナはコーヒー味がした。
それからルネが一瞬禁煙したり、コーヒーを飲むようになったり。
リュシャンとキスしてから、ルネがまた絵を描けるようになるのが恋だなぁと。
「ジャコメッティ」知っている名前が出てうれしかった。詳しくはないけど。
書店で出会った時、本を落としたり手帳を忘れたりリュシャンはわざとだったのかしらね、とも思えちゃいます。
□ひぐらし、油照りの路地
こちらも好きでした。
ニューヨークやパリや異国のお話の後の京都の風情もいいですね。
何せ絵がいい。
宗ちゃん(とその孫)が男前(萌え〜)
慶次に押し倒された宗ちゃんが、やめろとか何すんねんではなく
「…暑い 重い」だったのが好き。
BL未満の両片思いの切ないお話でした。
完全に好みですが(5☆満点)
すごい ☆☆☆☆
面白い ☆☆☆☆
内容が好き ☆☆☆☆
絵が好き ☆☆☆☆☆
キャラが好き ☆☆
萌える ☆☆☆
どの物語も良質な映画やドラマを観ているような気分になれ、描き込みもモノローグも最低限に抑えたシンプルな画面がとても心地良く感じられました。こういうタッチやストーリーのBL作家さん、本当に減ってきていますよね。個人的にはもっと増えて欲しいし、えすとえむ先生にはこれからも長く活躍して欲しいなぁと思います。
表題作も十分素敵でしたが、私のお気に入りは『cafe et cigaratte.』、『nero』、『ひぐらし、油照りの路地』です。スランプ気味の若い画家が画廊オーナーと少し苦みもあるような駆け引きに陥るのが可愛かったり、京都を舞台に年配の男性が懐古に浸る様子が少し切なかったり。飼い主だった男性の死を悼み、2匹で生き抜こうとする擬人化された黒猫達の物語はとても短いけれど、一番印象に残ったかもしれません。良い作品を読んだな、という余韻は間違いなく得られる作品です。
これがデビュー作とは…すごいですね。
えすとえむ先生の作品は、先生しか描けないと思わせるところがすごい。
この一連の短編集もそうですが、えすとえむ先生の作品はストレートに表現するより行間を読むよう求められたり、一定の教養が求められるところがあるので、その全てを理解できているかというと正直自信がありません。自分がもっと追いつけたら、神評価にすべき作品だと思う。
かつ「エイジ・コールド・ブルー」を併せて読んだ方が理解が深まる。赤と青の並びが美しいです。
※電子書籍ひかり
カバー下漫画あり、裏表紙無し
全部で7つの短編が収録されています。
目次を見たら、主に2006年の描きおろしが中心となっていて、今から11年前の作品かぁ!と。全く年代や古さを感じさせないのには驚きました。
というか、これ初コミックだったのですね。知らなかった。
【カーテンコール】【ショーが跳ねたら逢いましょう】
世界的に有名なバレリーナの息子として生まれたテオのお話。
正直BLとしての部分(ダンス界から一時離れてハリウッドに進出し、ハリウッド俳優と出会う)はまったく萌えないのですが、テオが踊るというカルメンの一人舞台。ここに物凄く惹かれるものがあります。
ドン・ホセとカルメンを一人で踊るなんて!どういう舞台なんだろう?もし誰か踊ってくれるなら私も観に行きたいなぁと。
それとその衣装もお見事なんです。上半身はダンサーらしい筋肉のついた美しい裸体で下は数多のフリルを散りばめた素晴らしいスカート。髪はシニヨンでまとめてバラを挿す。ドン・ホセとカルメンの融合。
【cafe et cigarette.】
スランプに陥っている絵描きルネとギャラリーオーナー・リュシアンが出会って…という話。
このリュシアンの若い頃のお話【I saw blue】が「エイジ・コールド・ブルー」という単行本の中にあって、若い頃のリュシアンはテレピンの匂いが苦手で吐いてしまっている程なんです。
そしてある男との出会いと別れが描かれてまして、テレピンの匂いを「吐き気がする」といって別離していた過去のリュシアン。
それがこの作品では、最後に絵描きのルネに染み付いているテレピンの匂いを「その匂い好きだよ」と伝えている。二冊目の「エイジ・コールド・ブルー」を読まないと、このテレピンの匂いを好きだと言えるようになったリュシアン、という裏事情が判らないのが難ですが、それを念頭に置いて読むと感慨深いものがあるという仕組みになってます。
【Rockin in my head】
バンドをやっている青年のお話。正直この短編だけだと、色々な事情やら人物が登場して把握するだけで精一杯って感じだったのですが、二冊目の単行本「エイジ・コールド・ブルー」ではこの短編の続きやら過去やらがメインでみっちり描かれているので、気になった方はそっちも読む事をおすすめします。音楽に絡んだ愛憎劇です。
【nero】
黒猫を擬人化したお話でなんとなくメルヘンな世界。
【ひぐらし、油照りの路地】
これだけ舞台が日本・京都の夏です。42年ぶりに幼馴染に会いに祇園祭で賑わう町に戻ってきた男の話。すでに幼馴染はこの世におらず彼に良く似た孫が笛を吹いていた。
恋に発展させる事なく終わってしまった淡い関係だけど、孫が吹いている笛がかつて男が幼馴染に譲ったものである…もう幼馴染はこの世にはおらず、その笛だけが遺されていたというところが何とも胸にきます。余韻が残るお話です。 これは神。
七月に入るとすぐに京都市街では、「こんちきちん」のお囃子が聞こえてきて、ああ、夏が来たなと思います。えすとえむさんのデビューコミック『ショーが跳ねたら逢いましょう』の最終話は、そんな京都・祇園祭をモチーフにした短編です。
この短編集には厳密にいうと七編収録されていますが、五つの物語から構成されています。前半の三作(+一話)は海外を舞台にしたお話で、残りの一作(+一話)は猫ちゃんを擬人化したお話、そしてラストを飾るのが、京都を舞台にしたお話です。
芸事をする人々に惹かれるみたいで、この作品に出てくる人物は(猫ちゃん以外)全て表現者か、ものづくりに携わる人々でした。わたしが印象的だと思った作品は、表題作よりもパリを舞台にした「café et cigarette.」と、最後の「ひぐらし、油照りの路地」。どちらも、恋の萌芽がテーマですが、これから恋が始まりそうな予感を匂わせるお話と、恋すること打ち消してもなお、両者の心の中では微かに続いている(いた)、かのようなお話です。
こんなふうに短い作品で、言葉少なに人の心の動きを表現できるのは凄いなーと思います。漫画で海外を舞台にした作品はあまり好きではないのですが、読んでいても違和感はなく、短編映画を観ているようでした。なぜか作家さんのデビューコミックにばかり心持って行かれるパターンが多いのですが、えすとえむさんもその一人だったりします。