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沙野先生×小山田先生ということで、書影が出た時からどんなお話なんだろと妄想していました。老舗レーベルの器に感謝!です。
導入部はなかなか受け攻めの関係性を把握しづらくて、ちょこちょこ中断しながら読み進めていたのですが、展開部に差し掛かり、主人公の志磨がチャラい医大生を装っていることがわかってから少しずつストーリーに引き込まれていきました。
志磨が悪夢にうなされる理由はなんだろう?同じ医学部ではちょっとした有名人の後輩・十李がまるでスパダリのように振る舞いつつ志磨に執着するのはなぜ…?すごく気になる二人の過去の接点を最後まで引っ張ってくれるので、もしかしたらキャラ心理に入りづらく感じることがあるかもしれません。
本作は一度最後まで読み終えてからまた最初に戻って読み返すと、十李側の言動がよくわかるようになっています。彼の真意を知りながら読むと、とっっても切ない。出会った頃から十李は志磨に恋をしていただけでなく、まるごと受けとめて優しく包んで縋りたいと直観したんじゃなかろうか……あの、思春期特有の怖さというか、無謀かつ無敵さで。(←妄想)
今回はスペクタクルな濡れ場をババーンと投入!というより、生々しくも美しいしっとりとしたエチシーンが分散して配置されていて、個人的には凄〜く好きなエロでした♡
中でも静かに興奮してしまったのは、追い詰められて自暴自棄になった志磨が、アルコールを大量摂取して十李に介抱されながらバスルームで致すシーン。受けが正気と狂気のギリギリラインでセックスに溺れるシチュがなんとも性癖なんですが、、かつ恥じらいを失わないタイプはド性癖でして笑
支配的な父親から息子としての存在を否定された志磨。男の人が初めて同性から愛情をもらうのって、大体父親なんですよね。同性の親から愛してもらえないのって、異性の親に疎まれるより悲しい。どちらかには自分のことを庇って欲しいし、どちらの愛情も子供は欲しい…。そういう小説JUNE的系譜のジャンル背景は今やすっかり過去の遺物となってしまいました。
著者があとがきによりますと、いったん頭の中をリセットするために今作を書かれたそうですが、やっぱり沙野先生の攻めは沙野風味でして笑
疵付いた志磨を両親から庇ってくれた十李。彼自身、過去に深く疵を負っても家族がいてくれたから立ち直り、初恋の人を手に入れました(多少ゴーインだが)。
やはり個人的には、苦しい立場にいたり、心に傷を負っていたり、密かにもがいている受けのことを攻めが見境のない愛情(多少病んでてもよし)で包み込んであげる系の執着愛が大好きなので、二人がきちんと過去の自分に決着をつけてラブラブになってくれてホッとしたし、最終的には素敵な家族になってくれたらめちゃくちゃ嬉しい。
そして二階堂。実は彼と志磨の、ちょっとDom/Subっぽい関係に妄想が止まりませんでした。二階堂にも彼なりに幸せになって欲しいけど、彼に見合うのはどんなタイプなのかな?
評価は神ですが、こういうお話は今の流れではなかなか読めない分、変にライトな印象付けをしない方がよかったかなと思います。サラッとまとめ上げられている技量を感じますが、わたしには非常にもったいなく感じられました。
小山田先生の儚げなイラストが美しくて、何度も見返しています。
構内に小さな社がある大学医学部が舞台。
挿絵は小山田先生で、魅惑的。
サークルの飲み会の帰り、志磨は店を出て自宅に帰る
自宅扉に寄りかかる、泥酔した十李が居た。志磨は仕方なく自宅に引きずり入れて介抱する。
翌朝起きると、十李は先に起きて卵粥を作り、志磨に具す
・・昨夜の泥酔は何だったの?といった奇妙な冒頭。
十李は、志磨に近づくのが目的だった。
展開は、サスペンス調。
十李は強引に志磨と同居を始めて、
門宮家の跡取り問題、両親の虐待、元家庭教師の二階堂、自殺未遂、悪夢
・・・と、志磨が触れたくない過去のトラウマ解消に関わる。
十李のトラウマは、電車と志磨の悪夢に関連があった
・・長い時間をかけた初恋成就物語。
門宮志麿:医学部四年生 三浪 門宮総合病院院長の一人息子 ホクロが色っぽい
榮枝十李:医学部四年生 現役合格 校内一の美貌の秀才 中学生では引き籠り 高2で医大を志願 志磨を「運命の人」と言う
貫井大:医学部四年生 三浪 テニスサークル 志磨の友人
医大生の先輩(一見チャラ男)・後輩(超絶イケメン)、一目惚れから始まるプレーンな味付けのラブストーリーです。めっちゃプレーン。
作者様いわく、いろいろリセットしたくて…ということで、確かに”浄化”作用、デトックス的な作品でした。いつもより沙野オプションが薄味な気がするので、誰でも(もしかしたらファン以外の方が)、シンプルにその糖度を楽しめるかもしれません。
正直なところ、攻受の関係が少し唐突にはじまった印象を受けてもやっとしたのですが…さすがの沙野先生、ちゃんとこの”もやっと”は回収されます。はじめは少し不鮮明な輪郭の人物像がクリアになり、それぞれの過去が徐々に明らかになるにつれ、このLOVEの必然性がみえてきます。
攻も受も爽やかなイケメン医大生ということで、読んでて照れくさいくらい青春ど真ん中ですが、そこはやっぱり沙野先生!爽やかに変態に走る攻の描写がキレッキレです。特に、浴室に描かれる放物線事件、実家での密やかなゴム底の汁事件には極上のエロスがありました…。溺愛というかフェチ!受への愛がその排泄物にまで及んでいる攻の精神性にゾクゾクしました。やっぱり、官能描写は沙野先生の表現が一番腰にくるような気がします。小山田先生の絵が、さらにその官能みを盛り上げていて素晴らしいです。(しかもそういうカット多め♪)
ちなみに、何かと志磨に絡む元・家庭教師の二階堂には、いろんな期待をかけていたのですが(志磨への凌辱とか…)、意外と普通の脇役だったのが少し拍子抜けでした。が、再建手術の天才の志磨の父!!たった数ページの登場にも拘わらず、この人は逸材!(たぶん受‥)と勝手に盛り上がってしまいました…。
あと、やたら使いたくなったのが”教育という名の虐待”という表現。キレッキレですね。両親からの抑圧で涙も流せなかった受の情緒の再生と攻の初恋の昇華、2人の人生のリスタートへの祝福と幸せに満ちたラストにうっとり溜息がもれました。
先生曰くインフレ気味だったから削ぎ落としたとのこと
触手が出ないし痛い事も新たに起きない
表紙から伝わってくるイメージのままの受けちゃんと攻め君の二人再生をめぐる直球のロマンティックな恋物語でした
出会いから強烈な引力を感じながら恋仲になるには踏み切れない心の傷を抱えている二人
年下の攻め君はほんのり拗らせ執着風味に対して
年上美人受けちゃんは無自覚不憫属性
好みの組み合わせでした
毒親親ガチャ等と言葉はあるけど
家庭の頸城から飛び出す力を与えて支えた相手が互いにとって最も大事な人だったなら頑張れるだろうと思います
今回は直接的に苦しい時期のお話ではなく(勿論心の傷に苦しみますが)苦しみから解き放たれるお話でした
ナイフの切先の様なお話を描かれる印象の沙野先生ですが今回はナイフに真綿を巻いてくださった感じの優しいお話でした
どんな作品もその作品に相応しい空気感を持たせる先生の力量を改めて感じ入りました
作者買いです。沙野風結子先生の作品が出るたびに楽しみにしてるんですが、前作の「少年しのび花嫁御寮」とは全然違う普通の人々のお話でした。
十李(とおり)が志磨を好きな事は伝わって来るんですが、十李と志磨の過去と二人の繋がりが終盤までハッキリしないんです。
だから志磨が十李を好きになった時に、二人に決定的な亀裂が生じないか心配しながら読みました。
でも志磨は過去は忘れられないけど、未来を見て行動出来る強い人なんです。そして志磨は過去の事を凄く後悔してて、二度と同じ過ちを犯さないように頑張る真面目な人でした。
志磨の両親とか元家庭教師の二階堂とか、ろくでもない大人達が登場するのですが、志磨は十李が一緒に居てくれる事によって少しずつ乗り越えて行くんです。十李が志磨のことが大好き過ぎる気持ちが、嫌ってほど伝わって来る作品でした。
特異な設定とか無いのに読ませて来る文章力が、流石だと思いました。