電子限定おまけ付き
あらすじは
主人公は交通事故で記憶障害となり、新しい記憶を積み重ねる事が出来ません。一日を過ごし寝て起きると事故後の事は全て忘れてしまう脳内は永遠の21歳です。
話は8年後29歳。5年前に結婚しますが、事故後の事なので毎朝初対面です。彼にとって変わらない事は学生の時からの親友とはまだ続いていること。その親友に恋してる気持ちは隠していること。父親のクリーニング店を手伝っていることだけです。
そうした連続することのない毎日の営みと生活している人達との調和や誤解、すれ違いが、1話毎時系列が移動したり視点が変わったりする進行とマッチしています。各話に題が付いてますがこれも凄く良いです。
『知らぬが仏』と言う言葉を思い出す少しザワつくハッピーエンド。でもこの最終回に散らばる細かな部分があるからこそ作品の深みが増します。
作家買い。
奥田さん作品はほぼ読んでいると思いますが、めちゃめちゃドツボに突き刺さる1冊でした。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公はミチ。
中学の時からの友人・恭一のことが好きで、好きで。ずっと忘れられなかった。21歳の今まで、清らかな友人関係を結んできたけれど、酔った勢いで、一度でいい、と言って迫り関係を持った。29歳の恭一は手馴れていて、優しく大切に抱いてくれた。
けれどミチは終電に乗って帰る場所がある。
妻・灯が待つ家にー。
読み始めたとき、ミチが既婚者ということに衝撃を受け、えー、不倫もの?(←個人的地雷)とちょっぴり萎えつつ読み進めました。そして、ところどころ違和感がある、というのか。恭一とミチは友人なのに、年齢差がある…?んー、なんで?みたいなちぐはぐ感。
ミチは既婚者なので不倫ものではあります。ありますが、そこだけがメインになったストーリーではありません。どこまで書いていいのか、これほど悩む作品、レビューもないなあ、と思いつつちょびっとだけ。以下、壮大なネタバレになりますので、お嫌な方はここでストップされてください。
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ミチはとある理由から、記憶が長続きしません。
21歳までの記憶はあるが、それ以降のことは一晩寝ると記憶がリセットされてしまう。
そんな彼を支えてくれているのが、ミチの父親と、そして妻の灯。
記憶をなくす彼に、明るく、何でもないことのように、日々接してくれているのだった。
ミチが愛しているのは恭一。
けれどミチには大切な妻がいる。
いわゆる不倫ものですが、悪い人がいないんですよね。
いや、しいて言えばミチは悪い。不倫、良くない。
でもですね、彼が灯と結婚しようと思ったその気持ちに嘘偽りはないんですよ。そして灯が良い人なんだなあ、これが。
毎朝、毎日。
「この人誰?」という目で自分を見る夫。約束をしても覚えていない。先のことも見通せない。それでも灯はミチを大切に想っている。
そんな灯を、ミチも大切に想う。大事にしたいと思う。
けれど、心の奥底で愛しているのは恭一で―。
朝起きて、灯の夫の道夫になる。
そして夜、恭一に会いに行く。終電に乗って家に帰るまでの時間。その時間は、恭一を愛しているミチになる。
この三人の関係の行く末が気になって気になって、上下巻の2冊を一気に読んでしまいました。あ、今作品は上下巻同日発売になりました。ぜひとも2冊まとめて買われることをお勧めします。
奥田枠先生は独特な設定や暗さ・苦しさのある作品を描かれていると思います。
綺麗な絵柄からドロドロした気持ちの表現があり、残酷さの中に美しさと切なさがあります。
今作は受けが結婚するので地雷だと感じる人もいるかもしれません。
21歳までの記憶しかないなく、寝たら記憶がリセットしてしまう脳の障害があるせいで、受けのミチは攻めの恭一に片想いをしたまま。
両想いなのに、身体の関係もあるのに、互いの幸せや周りの人への配慮でなかったことにしてしまうふたりの想いを読んでいてとても辛かったです。
スマホのアラームがとても切ないです。
終電で午前2時までに妻のいる部屋に帰って、翌朝に妻の横で目覚めるために鳴るんですよ。それまでふたりは愛し合っているのに。
誰も悪くないし、みんな優しい気持ちで思い合っているんですよね。でも結局、歪みがある関係と想いだから誰も幸せになれない。
妻との別れとふたりの決断。
ずっと21歳の時のまま止まった時間をひとりじゃなくて、ふたりで過ごしていくのが中学時代からふたりにとっての幸せなんだろうなと思いました。
上下巻なので、登場人物の気持ちの変化や状況がいつも以上に丁寧に描かれている作品でした。
ノンストップで読んでしまいます。
作品のタイトルも各話のタイトルもとてもよくできていました。作品を読み解くのに助けになります。
ぜひ、上下巻一緒に買って読んでみてください。
あと、わたしは奥田先生の描く赤面しながら涙や涎を垂らす受けが大好きです!
まだ上巻しか読んでません。
なのにこんなに切ないなんて…、最初に電子の試し読み読んじゃって道夫が結婚してたのに驚愕してしまったんです。だから怖くて読むのが今になりました。
道夫がどんな気持ちで灯さんと結婚したのかは分かったけど、恭一の気持ちを考えると悲しくて痛くてまさに「拐った」という表現がピッタリだと思いました。
確かに道夫を好きで灯さんはプロポーズしたんだろうけど、どうしても浅はかにしか思えなくて…。
29歳になった道夫がこのタイミングで変化を起こして来た理由が何なのか、とても気になりつつ下巻に進みたいと思います。
上下巻同時発売で良かったです。泣
とてもとてもよかったです!12月は大好きな作家さまの作品がたくさん出たので色んなの読みましたが、もう!ほんとたまらん!買ってよかった!!って思ってます。
とても切ない設定です。
受けが記憶障害を持っていて、大好きな親友と身体の関係はあるけど、いつまでも片思いしていると思っています。
眠ってしまうとそれまでの記憶がすべてリセットされてしまうから…
それをすべて知っていて受け入れている攻め。
そして、受けは結婚もしていて…
どんなラストになるんだろうとハラハラしながら読みましたが、私はこのラストでとても嬉しかったです。
この先に明るい未来だけがあるわけでは無いと思いますが、どうか静かに2人を包む未来が待っていてほしい。
ぜひ平凡な毎日をゆっくりと過ごす未来であってほしいと願います。