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表題作犬ほど素敵な商売はない

轡田清巳,モデル事務所社長,41歳
三浦倖生(ユキ),元ホスト,「Pet Lovers」のボルゾイ,23歳

その他の収録作品

  • Later, ond day in winter

あらすじ

名作BL、待望の文庫化! 倒錯的純愛を描く「ピンク」の榎田尤利!

美貌だが虚ろな人生を送ってきた倖生(ゆきお)は、
知り合いから「割のいい仕事」に誘われる。
それは「犬」として顧客に派遣されるサービスだった。
性的なものだろうと思い込んでいたが、
顧客の轡田(くつわだ)は、倖生に本物の犬として振る舞うことを要求する。
初めのうちは屈辱的な命令に従えなかったものの、
忍耐強く躾けられ、いつしか轡田の犬でいることに
奇妙な充足感を得るようになる倖生――。
歪んだ純愛の行きつく先は……。刺激的BL。

作品情報

作品名
犬ほど素敵な商売はない
著者
榎田尤利 
イラスト
丹地陽子 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
レーベル
角川文庫【非BL】
シリーズ
犬ほど素敵な商売はない
発売日
電子発売日
ISBN
9784041119686
4.6

(65)

(51)

萌々

(9)

(0)

中立

(3)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
11
得点
294
評価数
65
平均
4.6 / 5
神率
78.5%

レビュー投稿数11

心が「犬」になっていく描写が最高

とても小説っぽい文章で読みやすかった。背景を細部まで綺麗に描写して、視点主の視界に流れるように移っていく。特に前半は倖生のセリフがなくなるシーンが多く、読み心地の良さをより強く感じられた。描写が丁寧なとこも好き。

一貫して倖生視点で、心が「犬」になっていく様子が描かれる。基本が淡々とした語り口なので、人として大切なものを失くす出来事が、鮮やかに印象付けられる。急激に堕ちた倖生にはぞくぞくした。
客観的には狂気の沙汰でも、愛を知らずに育った倖生視点のモノローグで納得し、うっすら恐怖を覚えながらも引き込まれていく感じ。

一方轡田は、後半まで謎の男な雰囲気。人の姿をした犬のためにコルク床を用意したときの心境はどんなものだったんだろう。これはぜひ前日譚を読んでみたいと思った。

衝撃を受けたのは、捨てられそうになった倖生の殴り込み。人としての恥も外聞もない、犬としての衝動。
はっきり言ってイタすぎだし惨めで恥ずかしい。でもこのドン引きラインを突き抜けて超えてくれると圧倒されて、ここまで書いてくれるんだ、という感動に変わる。言語化が難しい個人的感覚だけど、この壁を越えられる人の作品は吸引力がすごいと思う。

山場は誘拐される倖生という定番の。ここからの展開はストレートだったかな。セオリー通り轡田が助け、元彼絡みのモヤモヤを解消し、いざハピエンへ。
幸せについて自問自答する倖生の心理描写の盛り上がりが良くて、ちょっと素直すぎるくらいに正直で、読み応えがあった。

後日談は読者サービスに全振りな内容で、本編とは違った空気感。モデルの件、読者受けに走らない本編の展開が好きだったんだけどな……と寂しさを感じつつ。
飼い主に忠実な犬として過ごす倖生の描写が最高な作品だった。

0

何度読んでも心奪われます

どうしても深く愛しすぎてしまう人と、愛された経験がなく、愛を知らない人の出逢いは運命だと思うのです。

大洋図書版は既読です。何年振りの再読でしょうか。
角川版が出ていると知り久しぶりに読みましたが、微妙に表現やセリフが変更されている部分もありつつ、ストーリーそのものは相変わらず心奪われるものでした。
発売からしばらく経つけれど、今でも記憶に残る大好きなシリーズです。

榎田先生は昔から文章がとても上手い…というか、どんな設定でもスッと物語の世界に自然と入り込める、流れるような文章が非常に魅力的な作家さんだなと思います。
旧版は旧版で当時の良さがあり、新版となる今作は今の榎田先生と過去の榎田先生の良いとこ取りのような、非常になめらかな読み口になっているかなと。
旧版の志水ゆき先生の挿画も素晴らしかったのですが、新版の丹地陽子先生による鮮やかなピンク色のカバーイラストもすごく素敵。丹地先生版の倖生は、人から愛される甘やかな喜びを知る途中の倖生のようにも見えますね。

客の犬になる。
犬耳と尻尾をつけてかわいらしく甘えてみせる…なんて半端なものではなく、人の言葉を話さず、常に四つ脚で歩き、水も皿から飲む。まさに文字通り犬になるのです。
一見倒錯的な設定にも思えますが、読み進める内にこの犬設定がとても心地良いものになっていくのだから本当に不思議。
愛を知らずに育ち、人を上手く愛することも出来ず、がらんとした空虚な人生を送っていた倖生。
轡田の犬・ユキとなることで、次第に自分の中にある何かわからない部分が少しずつ満たされていく。
心理描写が巧みなので、倖生の初めて知る感情の動きが見えると思わずわくわくしてしまうんです。
犬として暮らす日々の中で無条件に与えられる惜しみない愛情と、褒められる喜びや嬉しさがパッと広がって、なんだかとても尊くて幸せな愛おしい日々になっていくのが分かるんですよね。
倖生が犬らしくなればなるほど幸福度が増すマジックにかかってしまいます。こんなBL、なかなかないですよ。
そしてこの犬設定が、物語に深みを出す味付けとしてしっかり効いてくるのだから上手いです。

2人だけの小さな世界は共依存的でもあり、外側から見ればおかしな関係かもしれませんが、私にとっては非常に魅力的で多幸感に満ち溢れたものでした。
続きが読みたくなる面白さと、萌えと多幸感に包まれて読み終えられる作品なんて最高じゃないですか?
久しぶりに轡田と倖生に会いましたが、すっかり彼らの虜です。シリーズ他作品も読み返したくなりました。

0

これほど素敵なギャップに虜になった作品はない

顧客の犬になる…と聞いて拒否反応発動で、SMも好きじゃないし自分の好き属性には当てはまらんだろうとスルーしてました。
榎田先生の作品は少しずつ読ませてもらっていて、高評価もあり気にはなっていた作品でしたが、もう少しBL小説の経験値を上げてからと購入はステイ。ついに読む決心がつき、恐々としながら読み始めましたが……これは完全に参った。

こんなに色んな感情にもみくちゃにされた作品は初めてかも知れません。そしてエンディングの多幸感たるや。避けていた自分の判断力のなさに喝を入れたいです!


それでもやっぱり最初は、ストーリーの始まりに薄気味悪さを覚えました。"飼い主"である轡田の要求は異質で、倖生を完璧な犬化させることへの何の意味があるのか分からないし、金持ちの道楽にしては訳ありな徹底ぶり。
ストーリーが進むにつれ、轡田へ抱く疑念より倖生の従僕ぶり…犬になりきり轡田の側にいることの喜びが増していく変化に驚きました。

こうなってくるとこのストーリーの底知れぬ怖さに目が離せなくなりました。
依存や洗脳…そんな言葉が頭をよぎり、サスペンスかダークホラーかといった今後のストーリー展開も想像しながら読み進めますが、倖生の愛に飢えた生い立ちとの絡みもあって何故だか目に涙が滲みました。

この作品に対する怖さが完全に消失した瞬間です。これは救済の物語なんだろうかと、それくらい2人は確実に異質な関係性で繋がっているのに、絶妙な絆で結ばれていることにホッとした思いを感じずにいられませんでした。
途中、倖生と距離をあける轡田に怒りを覚えながらも(私が)、その目に分かる状況が真実ではないことへの期待を抱き読み進められたのは、彼らの関係が普通のスタートラインじゃなかったからです。だって彼らは異質な絆で繋がる関係ですから、普通の"すれ違い"が当てはまるわけないよなと(笑)


飼い主と犬の関係が崩落し、待ち構えているその先は2人にとっての幸か不幸か…これがこの作品の大きな注目点かと思います。
犬でいることの喜びを知った倖生ですが、反面犬でいることのもどかしさや悲しさも同時に知ることになる、この複雑な心理変化の描きがすごいのひと言。依存や洗脳とは違う、確実に存在している剥き出しの愛情に胸が苦しくなりました。

轡田にも倖生にも、それまで生きてきた背景があって、そのことが少なからず"犬と飼い主"の関係をもたらしたことに間違いありませんが、心の中では"轡田と倖生"という2人の人間の感情が存在していたこともまた間違いありません。その感情が勝ってしまったから、当初の関係は崩壊してしまったわけですが、その関係が無くならない限りは2人の関係は前に進むことはないんですよね。


さて、この奇妙なスタートがどんな着地点を迎えるのか気になるところですが、最初に言及したように多幸感満載です。このストーリーの落とし方はここまでとは想像してなかったので、めちゃくちゃ最高でした。
結果論ですが、もっと早くに読んでいたらと悔しい思いです。

今日はとてもいい日になりました♪

4

は〜、面白かった!

交渉人シリーズが大変面白かったので、評価の高いこちらの作品を読んでみました。旧版は未読です。

ほとんど前知識なしに読みましたが、大変面白くて一気に読了しました!これから読む方にも、ぜひあまりネタバレは無しで読まれるのをおすすめしたいです。

以下少々ネタバレあります。


始まりからしばらくは色っぽさ皆無で、空虚さを抱える受けの倖生と、何を考えてるのかわからないドライな攻めの轡田が、これからどう展開していくのかとワクワクしました。

荒んだ雰囲気だった倖生が、轡田にペットのように溺愛(性的な意味でなく)されて、従順な犬となっていく様子には大変萌えました。
一方孤独を抱えていた轡田も倖生に溺れていくようで、二人の倒錯した共依存的関係にちょっとゾクゾクしました。

最後は孤独な二つの魂が、ぴったり一つにはまった感じがして、救われた気持ちになりました。

ラストの後日談は、榎田先生らしいちょっとクスリとする内容で、明るい未来も予感されて、幸せを感じました。
 
内容的に少し気になる箇所はあったのですが、それでも素晴らしく面白い神作だと思いました!

他の方のレビューを読むと、文庫版の加筆修正は評判がいいのですが、こちらはイラスト無しなので、旧版の志水ゆき先生のイラストも見てみたいと思いました。

4

すれ違う2人が切ない

攻めのスパダリに受けの元ホストのチンピラくんが犬としてしつけられていく話です。

悲惨な幼少期から愛情に飢えていた受けはすぐに堕ちて従順ワンコになってしまうのですが、攻めのスパダリがなかなか本心を見せないのですが、デレた後はキュンキュンしました。

攻めは受けを愛するがゆえにこんな関係は良くないと何度か離れようとするのですが、従順なワンコ受けはご主人様の元から離れようとしなくてすれ違う2人が切ないです。

話も読みやすくて情景描写もていねいで面白かったです。

1

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