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表題作銀の鎮魂歌

帝王ルシアン
吟遊詩人キラ

その他の収録作品

  • CDドラマ『銀の鎮魂歌』脚本

あらすじ

愛が憎しみに、光が闇に。
青年王ルシアンの寵愛を一身に受けていた小姓キラが、王の妹と関係をしたという誤解から、まっさかさまに転落しゆく運命を描いた哀感のメルヘン。

作品情報

作品名
銀の鎮魂歌
著者
吉原理恵子 
イラスト
小島文美 
媒体
小説
出版社
日本文芸社
レーベル
Karen文庫
発売日
ISBN
9784537141030
4.4

(34)

(26)

萌々

(0)

(6)

中立

(0)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
10
得点
148
評価数
34
平均
4.4 / 5
神率
76.5%

レビュー投稿数10

見つけたら手に取って欲しい…

 あらすじの通り、愛が憎しみに、光が闇に。真実と偽りの扉を開き間違えた…ストーリーでした。でも真実の扉は開かれ闇が光になります。まさにキラの鎮魂歌。世界背景もとても美しく表現されているので、ひとつひとつの光景が目に浮かぶように作品の世界観に引き込まれます。BL特有の性描写に関してはないと言って等しいです。あるにはあるのですがエロエロしさがありません。無いからこそストーリーの良さが際立っているようにも思えます。
 カバーも挿絵も耽美でとっても素敵です。カバーからも見て取れるように竪琴を抱えるキラの指先が血に塗れているところもキラの切なさが表れていて素晴らしいです。
 たくさんの人に読んで欲しい!そんな願望があるのですが…電子化はされてないし中古しかありません。かくいう私も、どうしても読みたくて中古にてお買い上げしました(笑) もし見つけたらぜひ手にとって欲しい一冊です。

本のラストにCD化された時の脚本が載っており、この脚本も十分に楽しめることができました。(CDも欲しくなってしまいました)

1

せつない

昭和59年に初出した作品だそうですが、この当時、こういう雰囲気は主流だったよなあ…、と感慨深く読みました。内容は書いてくださっているの感想を。
とにかく受けが健気。報われることのない不憫さに思わず落涙してしまうのですが、それが「不幸」というだけではなく読者の胸に訴えてくるものがあるのは、キラのひたむきで真っすぐなルシアンへの愛情と、彼の持つ芯の強さに心惹かれるからでしょうか。

出生から恵まれない立場にいたキラですが、自分の生い立ちを不幸だとは思わず、今、手にある幸せを大切にしていて決して自分を卑下することはない。いわれのない罪を着せられ身一つで国外に追放された後も、身を持ち崩すことなく自分の足で立つ彼の強さに思わず涙。

対してルシアンも非常に人間らしい男だと思いました。若くして、豊穣で巨大な一国の帝王となった彼には恐れるものは何もなく、感情の赴くままにただひたすらキラを求めてしまう。そしてキラが自分を裏切ったと勘違いし非道の限りを尽くす姿も、彼の「若さ=幼さ」と、それをとめる人がいなかったためで、何でもできると思いあがってしまったのも仕方がなかったことなのかなと思いました。
そしてキラに対する非道の数々も、それだけキラを愛していたのだということに気づけない彼が哀れでした。

脇を固めるキャラたちも非常に良かった。
ルシアンの妹のイリスの罪。
家臣たちの葛藤や、国やルシアン、キラに対する想い。
マイラの幼くも激しいルシアンへの愛。
どの立場にも非常に共感でき、だからこそキラの不幸が可哀想でならなかった。

最後までキラが報われることなく終わってしまったなと思ったのですが、最後のルシアンとイリスの会話でその思いは昇華しました。2年前のあの日、キラだけでなくルシアンもまた魂の半分が死んでしまっていたのだなあ、と。

後半にCDの脚本が入っていて、それもとても良かった。脚本てこうなってるのかあ、と賢さがひとつ上がったのと、本編と合わせて読むとより一層話への理解度が深まりました。
あまりCDて聞かないのですが、これは聞いてみたいと思いました。

文句なく神評価です。

8

読ませる何かがあった。

吉原理恵子先生の作品を読んだのはこれが初。(アニメ 間の楔は好きで見ている)

まず、性描写が情景で描かれていて喘ぎ声とかはありませんでした。そこが、素晴らしいと思いました。

最初から心が痛くなり、キラの悲しみや、その時、どう思ってその表情をしていたのか、全てが心に染みてきます。

真実を隠したために、酷い仕打ちを受けるキラを見て……どうして、キラがこんな目に合うのかと思った。イリスが何も言わなかったせいで、こうなった……キラはイリスを憎んではいなく、月日が立ったあと許してもいる。が、読んでる側としてイリスに怒りを覚える。

キラの歌声が聞こえた時、涙が零れそうでした。BL作品で泣いた事は何度かあるが、本当にここまで胸を締め付けられるような作品は初めてです。

また、耐えるキラもキラですが……相手は乳兄弟でも帝王ですからね。ルシアンが恐ろしい。

自分の死期を知っているからこんなにも穏やかで冷静でいられるのかと思うと、悲しくて切なくて、とうとう泣きながら読んでしまった。

キラは死んでしまったけど、決して後味の悪い話ではなかったです。キラの偉大さに感服。来世ではキラに幸せになってもらいたい。

ドラマCDの脚本も入ってますが、キラの心情とかがわかってとても良かった。

10

涙が止まりません

ドラマCDが好きで原作未読だったんですが、最近になって読んでみようと購入しました。結論から言うと・・・もっと早く読んでいればよかった!
CDではわからなかったところや、セリフの一つ一つが石田彰さん(キラ)と森川智之さん(ルシアン)で補完されるので、さらに気持ちが入り込んで、ページをめくるたびに涙が止まりませんでした。

キラとルシアンの最後の抱擁は哀しいけど「キラ、よかったね」とつくづく思いました。
結末は賛否両論でしょうが、私は好きです。

ドラマCDは今はなかなか手に入らないかもしれませんが、機会があればぜひ聴いてみてください。さらに原作を楽しめます。

6

ひとつの魂

面白かった!といえば語弊があるのだけれど
読み応え、世界観、気持ちの揺さぶり。
ある意味完成された作品。最後のオチが衝撃的なこともあり
CDを聴いて落ち込み、ようやく浮上しかけた心がどん底に落ちました。
ありがとうございます゚(゚´Д`゚)゚次のBLを読む気力が無くなった。
あうぅぅう。

ドラマCDを聴いた直後の原作であります。
時系列的には、CDと若干違うのかなと思ってみたりなのですが
あらかたのストーリーを知っているだけに、気持ちが痛かった。
CDではわりと聞き流してしまっていた部分であったり
理解できなかった展開の細かい部分が文章として読むことでしっくりきました。
というか、「あーそうだったのか、そういうことか」と思う部分が多々ありました。
言うと姫イリスの件、臣下の策略の件、王の気持ちの部分。
なによりも、キラの想い。
涙も出ないってこういうことだろうなと、後半へ向かう道すがら思いました。
キラが味わった絶望。王への気持ち。未練。
そして、真実をしった王の気持ち、、、、なんだか遣る瀬無い。

重く、深い愛の果て。
なんだかんだで、これもまたひとつのしあわせエンドと
無理やり思えなくもないかなと思うのは、やっぱりラスト、
ルシアンが幸せそうに見えたから。。。なのかもしれません。

5

おおおっ…


独特の空気感、今の数あるBL作品でも拝めないかも知れません。
だってハッピーエンドじゃないんだもの!
いや、ある意味ハッピーエンドかもしれないけど。

攻めと受けが一緒にいるシーンが本当に少ない。
憎み合ったり、貶したり、さすらったり、ちょっと待って!ルビー文庫の薄いページ数なんだから単独プレーし過ぎちゃダメでしょ!って位、「私たち幸せです」っていうはっきりしたシーンが少ないです。ていうか無い?無いの?
だからこそダム決壊ばりの涙がドバドバ出ました。
「ううっ…」て泣きながら読んじゃいましたよ。
とある嘘で引き裂かれ、憎み合い、だけど魂がお互いを欲している、求め合うという二人。
ラストは愕然としましたが、キラからしらた「うっし!」って結末で(私がキラだったらね)ちょっと溜飲が下がりました。ごめん、綺麗な話なのに。
読んで下さい。桜も散っちゃったし、今が一番読んで感動出来る時期かもよ!(なんでかは読んで確かめて下さい)

これ、CDが石田さんなんですね。
聴きたいなぁ…。再販してくれないだろうか。

5

BLで泣いたのは初めてです!

号泣必死!というレビューを見てから購入しました。
設定は中世で、青年王と吟遊詩人・・それだけなら本当に少女マンガに
出てきそうですよね。
いえいえ、やはり吉原ワールドです。
「愛は狂気」テーマが揺るぎないです。
そして、何といっても文章が詩的でとにかく美しい!
これが、吉原先生が25年も前にJuneで書かれたと思うと、
それだけでも感動します。
一気に読みましたが、本を閉じるまで自分が泣いていることに
気づきませんでした。
切ない・・けれど心地よい余韻が包んでくれる
素晴らしい作品だと思います。
CDドラマの脚本も付いてます。
1つの作品で二度楽しめます。

2

憎しみの愛の昇華の形

ハンカチを用意してください、できればタオル地がいいです。
自分は電車で読んでしまって危うい目に会いました(汗、、)
最初から最後まで胸を締め付けれる苦しさに、どこまで耐えられるのか、心を試されているような愛の姿がここにありました。

17歳にして王になったルシアンに「誕生日の贈り物として操をもらう」として強引に奪われたものの恋人となったキラ。
しかし、乳兄弟として育った王の妹イリスをかばった為に、ルシアンの激しい怒りを買い追放となります。
そのキラが2年後に首都に戻ったのには訳がありました。
彼は死ぬために戻ってきたのです。
もう長くはないと知ったキラはナイアスの花吹雪を見て静かに死にたいと願っていたのに、キラの帰郷を知ったルシアンはそれ許さないのです。
キラに裏切られたと信じ込んでいるルシアンの憎しみは凄まじい屈辱をキラに与えます。
しかし、キラはルシアンを恐れはするものの、すでに死を悟った者としてその憎しみを受け流そうとするのですが、それさえもルシアンには許せない態度にとれるのです。
それほどまでにキラを愛していたという執着愛が激しいです。
妹イリスの真実をつづった手紙を見たルシアンは自分の仕打ちに激しい後悔をします。
そこで彼のとった行動は表立った許しを請う姿ではなく、あくまでも王らしく、許してやる的な態度しかとることができないのです。
ルシアンの婚礼の日、キラは嫉妬を覚えながら、まだルシアンを愛していることを心に残しながら逝ってしまうのでした。
ルシアンの心に永遠にその気持ちを焼き付けたまま。

かなわぬ恋という一言では片付けられない深いお互いが執着した愛でした。
思うようにならない焦れったさに苦悩する主人公達が読者をも苦しめます。
こんなに苦しい愛も、また愛のひとつであると認めざるをえないでしょう。
ひとつの文学として、シェークスピアの悲劇の如くのこの作品を味わってほしいと思います。

7

超えられない障害

攻・ルシアン(22) 帝王
受・キラ(18) 吟遊詩人

乳兄弟であったルシアンとキラ。
ルシアンは17歳の誕生祝いの席で、キラに祝いの品を求めます。
キラは「王が望むものを差し上げます」と応えたことから、ルシアンは「キラの操をもらう」と。
以来、ルシアンはキラだけを愛し続けます。

ルシアンの妹・イリスが家臣との密会のためキラに言伝を頼んだ場面に行き当たったルシアンは、キラが妹と通じていたと誤解します。
愛と憎しみは表裏一体。
キラへの愛が深く激しいものにだっただけに、同じ熾烈さでキラを攻め追い詰めます。
「誤解だ」ということも出来ず、またルシアンの逆上に恐れをなして真実を口に出来ないイリス。
ルシアンのキラへの執着っぷりを危ぶんでいた重臣達は、この機会にルシアンに「まっとうな帝王の責務」を果たしてもらうべく、キラ一人を犠牲にしてしまいます。

キラが放逐されて2年後。
都に戻ってきたキラは、心臓を患っていました。
死ぬために戻ってきたキラと、誤解したままのルシアンの再会…。


ファンタジーですが、リアルです。
何がって…王様は「男の恋人と幸せに暮らしました」で終わってはいけないという、リアルさ。

安定した国の王様は、子孫を残さなければなりません。
それが唯一にて絶対のお仕事です。
ルシアンの場合は妹がおりますが、弟はいない。
従兄弟もいなさそう。
ルシアンが子供を残さなければ、王制は、血は継承されないのです。

決して越えられない障害のある恋愛。
それをふまえた上でどう幸せを見つけ出すかですが、ルシアンは幸せを見つけた…ようにも見えますが、キラはどうなんだろう。
幸せだったのかなぁ?

ルシアンとキラがラブラブで幸せな場面は少ないですが、思いの深さは明らかな2人。
読んでいて胸がズキズキ・キュンキュン。

6

号泣必至!

私はこの本を読む前にドラマCDを聞いたことがありました。(借りてですけど)
そして・・・翌日に目がはれそうになるくらい号泣したんです。そこでずっと探していたんですが・・・もともとの発売が古くて見つからない・・・。そこへKAREN文庫さんで再び出るということで即購入した作品です。

お話はまだ若い王ルシアンとその小姓であるキラの恋愛模様。愛しくて愛しすぎて・・・そしてどうしようもないくらいに憎んでしまうという愛憎劇でもあります。
王であるルシアンは女性には目もくれず、乳兄弟であるキラのことをひたすら寵愛します。もちろん、側近たちはそれをよく思いません。キラのことを人としては認めているのですが、”王”という立場上、世継ぎの望めないキラを許すことは出来ないのです。
そして、ある事件が起こります。

ルシアンの妹イリスは近衛次官のアジマに恋をしていました。しかし、時の悪戯でイリスの恋の相手がキラであるとルシアンは勘違いをしてしまいます・・・。それはルシアンの逆鱗にふれてしまうのです。
ルシアンは誰よりもキラを寵愛してきました。それはキラも同じだと・・・そう思っていたからです。しかし、それは裏切られた。そう思ったルシアンはキラを日毎、拷問します。キラはイリスの名誉のために、国のために偽りのイリスへの愛を叫んだ。そして近臣たちもこのままキラへの執着がなくなることを願いあえて何も言わず、真実を知らないルシアンはキラを王宮から身一つで追放してしまう。

そして2年後、キラの姿が王都にあった・・・。キラは春に咲く想い出の花を見たくて帰ってきたのだった。都でも評判の流れ詩人となっていたキラは、その噂を聞きお忍びで訪れていたルシアンと再開してしまう。
愛しすぎてそして裏切られた憎しみからルシアンはキラに酷くつらくあたるのだった。近臣たちは誰もそれを止めることはない・・・。そして、誰もがキラに全てを追わせた罪を改めて自覚するのだった。
そして、ある日、王妹イリスから薬師ジェナスへの手紙をルシアンは読んでしまう。そこには、2年前のあの事件の真相を悔いるイリスの心情とキラの体を気遣う言葉が書かれていた・・・。その手紙でルシアンは2年前のあの事件が自らの誤解であることを知ってしまうのであった・・・。

ルシアンはとても気性の激しい人物です。愛するときも憎むときも全力・・・というのでしょうか?自分の気持ちを抑えられないタイプなのです。一方のキラは、寵愛されているときも驕ることなくただルシアンに献身的に仕えている健気な人物です。ルシアンに憎まれさげすまれても、ルシアンのために自分の気持ちを殺して罪を被る・・・芯の強い人でもあります。
是非、読んで欲しいなと思います。とってもオススメです。

12

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