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宮本佳野作品の中で2番目に好きな作品『ラバーズ、ソウルズ』。
旧版や同人誌を買い漁って読んだ大好きなシリーズです。
その完全版が出てもう随分と経ちますが、何度読み返してもやっぱり泣けちゃう。名作です。
■ラバーズ、ソウルズ
表題作。
包容力があってガッツイてないカメラマン志望の学生・松岡(先輩)×自分にも他人にも無頓着な大学生・四宮の話。
ゲイと公言してはばからない松岡(攻)と、そんな彼にはじめは辛辣なことを言ってたノンケの四宮(受)がだんだん絆を深めていく過程が丁寧に描かれていてすごく好きです。
最初はお金でつながっているギブアンドテイクな付き合いの二人。
それでも松岡はいつも四宮の意見を尊重し、紳士的で、熱烈に口説いたり愛をささやいたりはしなかったけど、すごく大事にしていた。
だから、四宮も松岡といることに安らぎを覚えるようになるし、彼自身を好きになったんだと。
そういうノンケなのに男に惹かれてしまう心の変化がすんなりと受け入れられるようなエピソードがじっくりと描かれているのが魅力です。
清く正しい順序を経ているわけじゃないけど、ものすごく深い愛を感じるような二人の関係性がとても好きです。だから、まさか松岡が死ぬとは思わなかった。
置いていかれた四宮のどうしようもない喪失感。
寂しいし、悲しいし、それより先立つ「どうして…?」という思い。ひしひしと伝わってくる切なさがたまりません。
そして、過去にない、死んだ人から送られてくる写真での告白シーン。
今までぜんぜん言わなかったくせに、このタイミングで送られてくるラブレターは、四宮がふざけて撮った松岡の写真に付箋で「好きだよ」と貼った簡素なものだったけど、そこからは松岡の優しさや照れや愛情がたくさん溢れ出ていて…
もうこの世にはいない松岡が、いつもの調子でレンズの向こうから四宮を見ているのが逆につらさを煽ります。
なんだこれは。悲しい…悲しすぎるぞ…!…と涙がじわり。。。
こんな悲しい告白はないよな…と思います。
そして、簡単には受け入れられない事実を、簡単に乗り越えられないで苦しんでいる四宮がどうにも愛おしく思う作品です。
松岡の死を簡単に他人に相談しない姿も好きでした。
ひとりで背負って引きずっている四宮が痛々しいけど、それだけ松岡のことが好きだったんだと伝わってくる。
ベタなキャラのベタな展開とちがって、生身の男同士の恋愛を覗き見してるようなドキドキ感とせつなさがある作品です。
■VANITY
松岡の死後、自暴自棄になる四宮とヒカルの話。
『RULES』で詳しく描かれるアトリと出会って立ち直るまでのつなぎ的なエピソード。
ヤケになって無茶なセックスしたりと情緒不安定な四宮をヒカルが心配して一度だけ相手をする際に、松岡についてちょっと話す。
でも、死んだことは伏せて「遠くに行った」という表現をしていて、なんか異様にせつなくなった。
そういう、松岡が大好きな四宮が好きだから、四宮が他の人を好きになっていくことを暗示させる描写に、ちょっとツライな…と思ったり。
気持ちとしては四宮にはずっと松岡を好きでいてほしいと思ってしまいます。
でも、死んだ松岡はもう絶対帰ってこないんだから仕方ないんだよな…と改めて感じる、短いけど胸をギュッと締め付けられる短編。
■Sleeping beauty
生前の、まだ若い松岡が四宮と親しくなる前に、学内で眠っているの写真を撮る話。
松岡が四宮に惹かれた理由がわかるようなエピソード。
■名ばかりの月
ノンケとゲイの高校生同士の話。
クールビューティーと評される親友がゲイだとカムアウトしたところからはじまる。
突然のカムアウトに驚きながらも好奇心を隠せないノンケ・甲斐と、海外に行く彼氏と別れることになり消沈しているゲイの野崎。
好奇心と慰めによってノリで身体を重ねちゃったりもするが、甲斐は思いやりはあるけど後に引きずるタイプでもなく、セフレとか苦手という野崎の意思をくみ、そのまま仲良く学生生活を送る。
でも、野崎が本気で落ち込んでるのを心配したり、相談乗ったりしてるうちに、好きになっちゃって…という。
友達として仲良くするけど、たまにエッチもしちゃって、でもベタベタすることはなく、それでも互いに好意や思いやりがある、という言葉で理解するのはムズカシイ関係を自然に描いた作品。
こういう空気感をかける作家さんは本当に少ない。
すごく好き。
■あの空の名前
『名ばかりの月』の続編。大学生になった二人の話。
ノンケだった男を自分に付き合わさせてることの負い目や、いつか女のとこに行くのではという不安で悩む野崎と、まだ前の彼氏に未練があって自分のことをそんなに好きじゃないかもと悩む甲斐がちょっとぶつかりながら絆を深める話。
元ノンケのくせに二人の関係がバレることを厭わない、単純で優しい甲斐がとてもよい。
エッチしてないときのそれぞれのカップルの日常会話や雰囲気がたくさん描かれていて、妙にベタベタしていないふつうの生活感があるのがすごく魅力的な1冊。
キャラたちの自然体を描くのが並外れて上手い作家さんだとつくづく思う作品です
《個人的 好感度》
★★★★★ :ストーリー
★★★・・ :エロス
★★★★★ :キャラ
★★★★★ :設定/シチュ
★★★★★ :構成
秋を思わせる深いオレンジが印象的な表紙。
いつも忘れてしまうのですが、『ラバーズ、ソウルズ』(2002・松文館)は作者最初のコミックスなのですね。ちなみに初出は同人誌(2000)です。こちらの本は上記コミックスに「VANITY(表題作のその後-2001・同人誌-)」と「*Sleeping beauty*(表題作のふたりが出逢ったころのある日・今作描き下ろし)」を加え完全版として出されたものです。
詳細ネタバレはせずに本を開くことをおすすめします。帯や裏表紙にもある表題作のあらすじを見れば、どんなストーリーが待っているのかはわかってしまいますが。「ラバーズ、ソウルズ」→「VANITY」を読まれたならば、ぜひとも『RULES』シリーズを読んでほしい。涙を越えていくまでの道のりは長いけれど、このお話はそちらへと続きます。また『RULES』を読まれた方は、過去にはこんなことがあったんだな...と知ることができる今作『ラバーズ、ソウルズ 完全版』をぜひお読みください。ヒカルもこの頃から重要な役どころです。
後半に収録されている「名ばかりの月」は、いつ読んでもいいなぁと感じる作品です。高3で親しくなったクラスメイトから、ゲイであることをカミングアウトされる、しかも年上の彼氏がいるとー。関係は変わらず仲良しのふたりが、ある日勢いで一線を越えてしまい…。「あの空の名前」は名ばかり~の続き。後半ではふたりは大学生になっています。
タイトルどおり、恋人たちの心のつながりが描かれていると思います。
愛を教えてもらったのだと気づく男の話。
ちょっぴり切ないのがいい、若くてかわいい恋の話。
広がった味の深みが静かに続いていくような作品たちです。
たしかに特別な一冊。
------(※追記)------
少し前に検索したとき、紙書籍の在庫がまだちらほらあったはずなのですが、先ほどいくつかのショップを探しても見つかりませんでした。約240ページの分厚い本、カバーには光沢があります。
------(※追記2)------
『ラバーズ、ソウルズ』(2002・松文館)は作者最初のコミックス…と上に書きましたが、間違いです。デビューコミックスは『ARE YOU enemy?』でした。今作あとがきに「このお話は私の最初のコミックスでもあり…」とあり、とっさにそう思ってしまったのですが、おそらく同人誌のことですね。失礼いたしました。
「RULES 1、2、3」から読んで、その中でそのトオルには過去、松岡という喪った人がいたことがチラリと描かれており、そこの部分がこの「ラバーズ、ソウルズ」に描かれているというので手に取りました。
トオルと松岡、そしてヒカルも登場します。(そしてヒカルってやっぱりいい男だなと再認識。)
周囲にも自分にも関心がない空っぽな美大生のトオル。綺麗な顔立ちを買われて松岡の写真のモデルのバイトをする事になります。
モデル代に上乗せして身体の関係も始まった二人。
その後もお金を介しながら、関係を続ける二人なんだけど、トオルは松岡の雰囲気や物腰に居心地の良さを感じ始めるようになり・・・
撮影のために旅立った松岡でしたが、彼の帰国を待つトオルの元へ届いた訃報。
そして届いた写真と付箋に貼られたメッセージ。
それを見たときにようやく自分の気持ちに気づいたトオル。
こちらの作品はハンカチを用意してから読む事をオススメします。
泣きます。
ハンカチじゃ間に合わないくらい泣けます。タオル必須です。
松岡が死んだ後、髪の毛を真っ黒に染め直したトオルのこれは、喪に服した意味なのかなとか深読みすぎるかしら。
RULESの中で一番性格が把握しずらかったトオルだったけど、これを読んで理解が深まりました。あんなに刹那的だった理由も。
RULESで無神経な一言をアトリに言ったり人の心の動きに疎いのは、ずっと周囲にも興味がないまま生きてきた背景が絡んでいるのかなとようやくこの作品を読んで理解できました。
というわけで、もう一度RULESを読み直そうと思います。
後半収録作【名ばかりの月】は「RULES」の過去などに関係した人かと勘ぐりましたけど全くの別人物のようです。
何てヒドイ話だっていうのは、作中に出てくるセリフなんですが
本当にヒドイ話だった(号泣)
美大院生。カメラマンの松岡と
美大生。恋という感情を知らない四宮お話なんです。
四宮は、綺麗な身体を糧にお金を稼ぐことを覚える。
かといってお金に執着してるわけでもなく
セックスに執着してるわけでもなく
ものすごく空っぽな感じの若者で
松岡ともお金で繋がっている関係が続くわけです。
空っぽだった四宮の中に、少しずつ少しずつ何が溜まりはじめる。
気付いたときには、それが恋になってるわけですよー。
これは悲恋なのかもしれないけど
次の恋へと繋がっていく
人は、そうやって生きていくんだなぁと・・・
その先に何があるのか、明確なものは何も描かれてないけど
続いているんだろうなぁという余韻が素晴らしく胸に響いた。
だけどとっても面白かったです。
主人公の四宮、松岡の微妙な距離感がたまりません。お互い惹かれあっているのに好きな気持ちはあらわさず、モデルとカメラマン、金で売り買いという関係。
それが、あの宅急便! 付箋!
そんなタイミングで気持ちが伝わるなんて切ないです。
読んでいて思わず胸が苦しくなってしまうほどでした。
でもその山場を過ぎたあともまだまだストーリーは続くんですね。四宮、松岡の関係に幕が下り、何人か登場し話の中心も変わりますが、それも自然に描かれていて、続きがとても気になります!
また何と言っても作品全体に漂う、冷たいようなサッパリしてるような独特の雰囲気にとても引き込まれました。
カメラマン松岡の自宅の感じもすごくステキ! あそこに私も住みたいです!
それにしても、松岡についてのあの知らせは間違いだったなんてことにはならないんでしょうか……。悲恋です……。