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表題作僕たちは昨日まで死んでいた

佐埜
25歳,りくの店の改装に携わった左官職人
月島りく
28歳,おにぎり販売店オーナー

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

絶望に囚われ、死に執着する人間が放つ不吉な甘い香り――交通事故で兄を亡くして以来、「死の匂い」を嗅ぎ取れるようになった月島(つき しま)。「死」を漂わせる人間とは極力関わりたくない…。そう思っていた矢先、経営する飲食店の改装工事で、若い職人の佐埜(さ の)と邂逅!! 精悍で鍛えられた肉体は生命力そのものなのに、なぜかあの匂いを纏っている!? 警戒する月島だけれど、工事後も客として店に現れて!?

作品情報

作品名
僕たちは昨日まで死んでいた
著者
中原一也 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784199010941
3.9

(39)

(15)

萌々

(11)

(10)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
12
得点
150
評価数
39
平均
3.9 / 5
神率
38.5%

レビュー投稿数12

受け母に対する感情の行き場が…

タイトル見て、幽霊とか出てくる話かな?と思ってましたが全然違いました。

心が死ぬような、死にたくなるような経験のせいで、心を殺している二人が出会って…というお話で、読後にちるちるを見て「夜明け」となっているのをみて激しく同意した次第です。
夜明けの手本みたいな作品だな!!と。

読後感は夜明けなのでいいんですが、その道中がかなりヘビーでしたね…。
胸糞悪くなる脇キャラが二人、しかもそいつらが攻めと受けの心を殺した人たちときたもんで登場もそこそこあるし、出てきた時の毒成分のつよさといったら…!

佐埜の敵は、モラハラ毒全開のクソ野郎だけど、完全悪過ぎてかえって割り切りながら読めるのに対して、りく(受け)の母ときたら……
もうりくが不憫で不憫で不憫で仕方なかったし、同じ母親として、目を覚ませ!!!と300回くらいビンタしたい衝動に駆られるというか。
めちゃくちゃイライラさせられました。

子を亡くして心が病んでしまうのは罪ではないけれど、りくの犠牲のうえで心の平安を保っているというのが胸糞悪すぎて…それを許してる父も同罪。

なので、後半立ち直るのがちょっと嘘くさく感じてしまいました……。ご都合主義っぽくて…

おいしそうな変わり種おにぎりの数々や、攻めのハーフアップの挿絵の眼福さなど楽しめる要素は色々あったのですが、受け母の狂乱かつ悲劇のヒロインパワーが私には強すぎて萌評価です。

0

後半はあまり楽しめなかった

内装業の職人(佐埜)とおにぎりメインの食事処の店主(月島)

他人の「死の匂い」を感じとることのできる月島。その匂いを発する人間とは深く関らないようにと生きてきたが、「死の匂い」のする佐埜と親交を深めるように。


家族を喪った辛い過去のある月島。今も辛い状況から抜け出せずにいる。
佐埜も、他人には触れさせたくない辛いものを抱えている様子。

お互いに距離感をはかりつつ近付いていく感じ、よかった。
月島が佐埜に自分の辛さをさらけ出すシーンは好き。佐埜の受け止めも安心感があって、優しさがしみる。


ただ、後半は佐埜が性的に手を出してくるのがやや唐突に感じた(二人ともゲイじゃないのに)のと、胸糞要素が胸糞悪すぎたので、期待していたほどは楽しめなかった。

解決展開も、あまり納得がいかなかった。
月島の母親は、事故の前から長男しか眼中になかった(長男が話題に出してはじめて次男にも目を向ける)のに、
長男の死を認識したところであんな風に次男に謝罪したり楽しく共に過ごすようになったりするものだろうか?
心の病が改善したところで本来の人間性まで都合よく好転しているようで気味が悪かった。

佐埜の妹の件にしても、最初に警察が「事故」として処理してるのはどういう理屈なのか。
月島たちが想像するように栗原の介入があったとして、命じられた末…だとしたら自殺に見える状況になると思うのだが。
そもそも大の大人がベランダから転落するような事故、というのが想像しにくくてこまる。
あと、栗原の執着心や歪んだ人間性を考えると一度警察に捕まったくらいじゃ全く安心できない。いずれ二人を殺しに来そうで怖い。


メイン二人のキャラクターはかなり好きなので、後半の胸糞要素がもう少しマイルドだったり、解決展開の整合性がとれてたりするとよかったなと思う。

0

”擬態”からの救済と再生の物語

キャラ文庫さんのフェアに合わせて(特典のクリアカードが欲しくて…)、中原一也先生作品の中で未読だったこちらを購入、読んでみました。

”家族の死”をテーマにした、苦しく切ない内容。
でもその奥深さと面白さにページをめくる手が止められず、一気読み。さすが中原先生だなあ、と感嘆せずにはいられない、深みのある内容です。

攻め受け共に不幸で暗い背景を持っており、今でもその影に苦しめられている設定。
薄暗さと切なさと悲しみの感じられる作品でした。
笠井あゆみ先生の美麗絵に、苦しくなる心が慰められる( ; ; )

主人公は、事故で兄を亡くして以来、人が纏う「死の匂い」を嗅ぎ取れるようになったという特殊能力を持つ青年・りく(受)。

死を匂わせる人間とは極力関わり合いたくないと思っていたところ、営むおにぎり屋の改装工事を担当していた年下の職人・佐埜(さの・攻)から”あの匂い”が漂ってくることに気付きます。

できるだけ関わらないようにしようと密かに思うりくですが、ある日佐埜が客として来店し、帰ろうとむずがる子供相手に思わぬ特技を披露したことから、二人の交流が始まっていきー

と続く、特殊能力+サスペンス要素の入った物語です。

兄を失った悲しみに耐えられず、精神をおかしくしてしまった母親のために兄に擬態するりくの姿が切なくて、読んでいて胸が苦しかった…

そして、そんなりくを嗜虐的に追い詰めようとする攻めの義兄が憎たらしかった!
こちらは最後の最後にきちんと”ざまぁ”展開になってくれて、スッキリ。

佐埜は妹の死、りくは兄の死、とそれぞれ振り払うことのできない心の傷を抱えた両者。
そんな二人が惹かれ合い、死者や残された家族のためではなく、「自分のための人生」を生きようともがき、次第に再生していく過程がじんと心に響きました。

佐埜の思いがけない特技である”折り紙”の作品が、本作のテーマでもある「再生」をぴったり表現していて素晴らしかった…
笠井画伯の、さなぎから蝶へと変化するイラストのおかげで、よりそのシーンが鮮烈で印象的なものになっていたなあ、と。

BがLする萌え、としては少なめかもしれないけれど、個人的にはとても好きな夜明け系の物語。
ラストで胸に広がる感動をじっと噛み締めました。二人がちゃんと救済されて良かった。。( ; ; )

1

「死んでいた」とは


折り紙職人な左官職人 × おにぎりカフェオーナー

おにぎりメインの食堂を経営している月島りく(受け)は死の匂いをさせている生気あふれる男・佐埜(攻め)と出会います。
関わりたくないと思っているのに、なぜか目が離せない佐埜との付き合いが続くうち、親しくなっていくのですが、お互いが自分のことを知られたくないと境界を作って緊張感のある関係が出来上がります。
そんな時、りくの事情を話す機会があり一層親しくなるのですが、佐埜は自分ことを話してくれません。
それぞれの心を死なせる原因は無くなるのでしょうか。

りくは子供の頃、兄そらをら亡くしています。それもりくを庇ったため事故死です。
兄を溺愛していた母はそらの死を受け入れられず病んでしまうのです。
元々兄しか相手にしていなかった状態だったのにさらにおかしくなってしまった母。
しまいには成長したりくを見て兄と間違える始末。母の中で死んだのはりくで兄は生きていることになってしまうのです。
激しく傷つくりくですが、母が安定することもあって兄の振りをすることになって10年以上。心がすり減っていく毎日です。
そんな中で兄に褒められた料理作りが唯一の生きがいで美味しく食べてくれるお客さんの姿が喜びです。
そして、兄が亡くなってから、なぜか「死の匂い」を感じ取れるようになってしまいます。



佐埜の方も妹が亡くなっていて、それを自分のせいだと思っています。自分が幸せになってはいかないと思い込んでいます。


りくの生い立ちが本当に気の毒でした。
読んでいて、両親に腹が立ちます。
特に母親。元から兄の方を溺愛していて弟の方は無視に近い扱いをしていた上に、成長した弟を兄にして勝手に弟を殺してしまうなんて。
病むのは仕方ないかもしれないけど、残った子供のために前を向いて歩いて欲しかった。
そして父親は、確かに病んだ妻に仕事に家事育児と大変だっだだろうけど、それを子供を犠牲にすることで解決する方法を取るなんて親失格です。
楽になる誘惑に駆られ最初は弟を兄にすることに同意したとしても、すぐに我に返って欲しかった。10年以上も子供を犠牲にして心が痛まないのかと思うと本当に大人としてどうなのか。
予期せぬ悪意ではあったけど、ちゃんと向き合えるようになって本当によかった。
でも、彼らにはもっともっと反省してほしい。特に母親。読み終わってからもずっとモヤモヤしています。

そしてもっと許せないのは、佐埜の義兄で弁護士の栗原。完全に犯罪者でこれが捕まらないなんて世も末だ。
あの後どうなったのか気になるところですが、弁護士資格剥奪されてるといいな。


タイトル通り本当に「死んでいた」んですね。
死を乗り越えて2人が光に向かって歩けるようになってよかった。
これまで不幸の連続だったから、幸せになってほしいです。


1

死を匂わせていますが、怖くないです。

死の匂いを嗅ぎ分ける能力のある月島と、彼の飲食店の改装工事に来た佐埜のお話。月島は佐埜の事が気になるけど、死の匂いがずっと佐埜から出ている事でなかなか心を通わせる事に躊躇しています。死の匂いを嗅ぎ分けられるきっかけとなった兄の死と、その後の家族の状態などもあって、人との関わりを深くは持とうとしなかった月島と、やはり、事情があって、人と関わらないようにしていた佐埜。
お互いに身内の死の影を漂わせてずっと話が進んで行きます。心を閉ざして、死の影がチラチラしていて、少しほの暗い感じなのですが、
月島が作るお店のおにぎりの美味しそうな所や、佐埜が得意としている折り紙が、この本を明るい部分として補正してくれます。
月島が抱えていた事情。佐埜が抱えていた事情。それらが段々と明らかになっていきます。そして、お互いをより理解する事で、お互いを恋愛対象として、深く関わって行くことを決心します。2人の抱えていた事情と言うのが、なかなか重苦しい感じでしたが、その悩みを克服する所が、このお話の爽快さでもあります。
そうすると、このタイトルは決して不穏なタイトルではなく、夜明けなんだなと理解できました。
心を殺して生きていた人の心の再生がテーマなんだと思います。読後感はとても清々しい気持ちなります。

1

ツラさと感動とで、目に涙が溜まる

中原一也先生の作品は複数、拝読させて頂き、今作も作家買いさせて頂きました。

個人的、各項目5段階で
シリアス 3
救済 3
不憫 3
涙 2
エロ 1
な感じだと思います。

死の匂いを漂わせた職人×死の匂いが嗅ぎ取れる料理人のカプです。受けの月島りくさんは、いつからか、人の「死の匂い」を嗅ぎ取れるようになってしまった。それは微かな甘い匂い。死の匂いを漂わせる人が命を絶ったり、心や感情を殺したまま生きていたりと、極力関わらない様にしていた。そんな時、お店の改装工事をしてくれた職人の佐埜さん。
まるで太陽を思わせる生命力溢れた鍛えたれた肉体を持つ、攻めの佐埜さんだが、何故か死の匂いを漂わせていた。関わってはいけない。そう思っていた月島さんだったが、佐埜さんがお店に客として来店して以降、徐々に交友関係を築いていくのだけど…。

今作のメインとなる死の匂い。何故、いつから、月島さんが死の匂いを嗅ぎ取ってしまうのか。死の匂いがどう言った存在なのか、月島さんの過去なども併せて色々と詳しく書かれていますので、読み応えや物語りに引き込まれること間違い無しです。
ですが、「死の匂い」なので言葉の通り、そう言ったシーンが度々ありますので、苦手な方は用心してください。個人的に、自ら死を選ぶシーンは辛くて痛々しくて、読んでいて目に涙が溜まりました。

他にも、心を痛めてしまった母親が月島さん自身を全く見てくれなくて、それどころか月島さんが、自身の兄である月島そらさんを演じ続けている姿はとても不憫で心苦しいです。そして死の匂いを漂わせてる佐埜さんの過去も現在も辛くて、脇役キャラの義弟の存在感が凄まじいです。めちゃくちゃ嫌な奴ですね。


肉体的にも精神的にも、少し重く暗い物語りではありますが、月島さんと佐埜さんが徐々に距離を縮め、自分の為にも相手の為にも少しずつ変わろうと進もうとする姿に胸がジーンとして、救済し合う2人の関係に目頭が熱くなりました。
個人的に、年下の佐埜さんが年上の月島さんに、時折タメ口で接する、一瞬で距離が縮まったり佐埜さんの素顔がチラッと見える瞬間が好きです。

少し辛くて重い展開もありますが、救済し合う2人が幸せになる行く末を見届けてください。是非とも読んでほしいです。

2

目指す夢を復活 生き直す話

笠井先生の挿絵が美麗。りくは寂しげな美貌。
意味不な題名に誘われてしまった

月島りく:おにぎり販売の「そらのテーブル」を経営
人間の諦めと絶望の臭いが分かる。
りくを異能ごと受け入れてくれたのは、佐埜だけ。

佐埜??:
恋人になるまでの筋書きのせいか、佐埜の名は出てこなかった。
「そらのテーブル」改装の左官職人
絶望と諦め由来の死臭を放つ、折り紙作家の卵。

異能を活かして、佐埜を励ますりく。
諦めていた夢をもう一度目指す佐埜からは、もう死臭がしない。

続編は出るのでしょうか? 中途半端な終わり方だと思う。
コロナで絶望が満ちる今世に希望を与えるような、りくが素敵。

※おにぎりの名の由来
=御結びの神様 造化三神「神産巣日神(かみむすびのかみ)」

2

爽やかな青い表紙だけど、シリアス!

現代を舞台にしているけれどあくまでファンタジーで、小説の世界の出来事。そう思いでもしないと、受けと攻めの置かれている環境がしんどすぎて重い。

受けのお母さんがひどいんです。ですが悪役じゃないので憎めず・・・もやもや。心の病気とはいえ、受けくんだって自分の息子なのにこれは辛い。

でも、後半にちゃんと間違いを正して、家族が立ち直っていく様が描写されていてすっきりしました。攻めの方の問題はミステリーぽくスリルもあり、そちらは違った感じで楽しめました。物語りの描き方がとても上手な作家様だと感じます。

ただ禁欲的な印象が強い組み合わせなので、(ストーリが重厚で十分に満足がいくので)、濡れ場が取ってつけた感じで惹かれなかった。そういうシーンはいらなかったかも・・・? なので萌え要素は少なかったです。

1

絶妙なタイトルです

今回は死の匂いを纏う職人とおにぎり店オーナーのお話です。 

受様が攻様と関わった事で偽りの家族関係を正し、
攻様が"死の匂い"から解放されるまで。

受様には死の匂いを嗅ぎとる能力があります。

その香りは不快ではなく、心地いい爽やかさすら感じた為
受様は母から漂う匂いを感じた時に父に話しますが
気のせいだと断じられてしまいます。

その時の母は受様の兄の事故死から情緒不安定で
入退院を繰り返しており、
匂いを感じるたびに死に遭遇するようになった受様は
においの意味を確信するようになります。

さらに母は事故死したのは次男と思い込み始め
受様は兄に庇われて生き残った罪悪感から
母の前で長男を演じるようになります。

現在の受様はおにぎり販売店オーナーとなり
3年かかって居抜き賃貸店舗を改装する運びとなります。

改装の様子を見に言った受様は店舗の様子よりも
職人から漂う死の匂いに機が惹かれる事となります。
この職人が今回の攻様です♪

死の匂いは絶望のあまり喜怒哀楽を失った人、
意味の意識を抱えるあまり自分を殺して生きている人、
これから死のうとしている人から漂ってきますが

20代半ば位の攻様は力強い眼差しで
引き締まった身体には力が漲っているように見えます。

攻様は店のご近所らしく店に通ってくるようになり
個性的な常連客達にもすんなりと馴染んでいくものの
必要以上に関わらないと決めた受様でしたが・・・

死に関係する人を匂いで嗅ぎ分ける受様と
死の匂いを纏う攻様のシリアスタッチの物語です♪

攻様の言動には死の匂いを漂わせる人々のように
死を連想させるところがありません。

偶然から攻様に店のピンチを助けてもらった受様は
次第に攻様に惹かれていくことになります。

攻様も受様に好意を抱いてくれていて
そのまま恋仲になっていくのかと思われましたが
攻様の妹の夫だという弁護士が義兄に紹介されたと
受様の店に来た事から攻様の態度が激変します。

攻様事情が詳らかになっていく事で
攻様の匂いの理由が明かされていくのですが
件の弁護士は攻様の破滅を望んでいて
受様を壊す事で攻様を傷つけようと画策していたのです!!

弁護士をよく知る攻様は受様に事情を伏せて
離れることで受様を護ろうとするのですが
それが徒となる展開でハラハラMAX!!

弁護士の画策が受様の決意によって良き結果をもたらし
攻様が死の匂いから解放されるまで
たいへん楽しく読ませて頂きました (^-^)/

それぞれが抱き続けていた後悔と罪悪感は
亡くした人への向けられた深い愛情と
残された人の哀しみを思うがゆえのものであり
とても胸打たれました。

笠井先生のイラストも世界観にとてもマッチしていて
素晴らしかったです♡

4

相変わらず読ませる力が凄い

最後まで読み終わるとタイトルの持つ意味が分かりました。ファンタジーというよりはとてもシリアスな内容でした。
なので、読んでホッコリしたいと思っている方には合わないかなと思いますが、最後まで読ませる構成力と文章力はピカイチの作家さまなので、食わず嫌いは勿体ないと思います。

文章からも伝わって来るのが佐埜の格好良さなんですよ。りくの目を通して彼がどんな顔をしていて、肉体をしているのかが骨格からして表現されてて、それを笠井あゆみ先生が見事に描き切っていると思いました。特筆すべきは笠井先生の描いた野球のユニホーム姿が拝見出来ます。ここだけでも一見の価値ありです。

そして、兄を亡くしてからのりくの苦悩ですね。これが誰も悪く無いのが辛かったです。追い詰められてそういう形になってしまった家族の形が歪で気の毒でした。

そんなりくが佐埜と出会うことで、彼が感じる「匂い」との付き合い方も変えて行こうと前向きに考えられるようになった時に事件は起こるんです。それが佐埜が「死の匂い」をさせてる原因にも繋がってもいます。

この原因となった人物がとても狡猾で恐ろしかったです。この様な人って実際に事件を起こしてニュースになったりしてますので、この作品のような職業に就いてたらと思うとゾッとして寒気がしました。

2人ともノンケで心に問題を抱えているので、甘い触れ合いは少なく結ばれるのも終盤です。なので糖度は少ないですが、2人が離れていた時に佐埜が取った行動がとても素敵なんです。
りくが不思議な力を持っていたからこそ出会えて良かったと思えるお話でした。

1

お話ぐいぐい

先生買い。お話の行く末が気になってぐいぐい読んでしまいました。さすが先生、上手いなあ…というのが、読み終えたあとの感想です。キャラは納得するしお話も面白かったですが、超シンクロするとか激萌え!という部分は無いように感じられたので萌にしました。書き下ろし全270頁弱+あとがき。シリアス路線好きー♡な方やおにぎり好きー♡な方にオススメです。出てくるおにぎりが美味しそうで堪らんので、腹減り時に読む場合は、おにぎり用意してお読みください。

おにぎりメインの小さなお店を一人で切り盛りしている月島。店を改装した時に知り合った佐埜が味を気に入ってくれたのか、よく食べに来てくれるようになったのは良いのですが、彼から漂ってくる死の香りが気になって、彼に心惹かれて…と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
お店の常連さんたち(すごくイキイキしていてイメージもりもり浮かぶ)、受けの両親、受け兄(故人)、攻め妹(故人)、鬼畜1名、主な方はそれぐらいかな。

++好きだったところ

お店の常連さんの温かい様子や、受けの出すお料理がめちゃめちゃ美味しそうなところが超良かった!!!!!近所にないかなあ、こんな店、あーおにぎり食べたいーーーとジタジタすること間違いなし。王道のおにぎりはもちろんですが、気になったのは鰺&バジルソース。わーどんな味になるの、これ???と気になってしょうがないです。あとケータリングもするらしくおにぎり以外のお料理も出てきます。ペリメニ(ロシアの水餃子らしい)を200個作り直すはめになって、攻めと二人、奮闘している様子は楽しかった…

攻めも訳アリ、穏やかにひそやかに死の匂いを漂わせている方。店の改装で出会ったので、てっきりガテン系かとおもいきや、なんとなんとめっちゃ器用にオリジナルの折り紙を折る!きっと今にも動きそうなカマキリや、ほぼ芸術品となっている蝶など。(折り紙が上手なのも訳アリ)訳アリだったのを忘れて少しずつ受けに惹かれて近づいて・・というところが良かったなあ。好きになるよなあ、こんな美味しいおにぎり作る人なんだもん!

そんな二人の穏やかな交流をぶっ壊すのが、攻め妹の夫というお話でした。この夫がなかなかえげつない方でしたねえ。早くも本年の絶対近づきたくない男№1かも。頭いいエグイ奴ってほんと怖い。

エグイ奴出てくるし、受けのお母さんが心病んでいるしで、なかなかシリアスな部分があるのですが、折り紙やらおにぎりでほっこりさせつつ、一気に読ませてしまえ!という先生の作戦にまんまと引っかかった気がする一冊でした。おにぎり食べたい。

3

匂いの意味が変わるとき

死の匂いを嗅ぎ取ることができる青年と、その「死の匂い」を纏う青年とのストーリーです。

死の匂いとは、
今から亡くなる人から香るもの。
絶望の淵にいて感情を失った人から香るもの。
罪悪感を背負い自分を殺して生きる人から香るもの。

りくには亡くなった兄がいます。優秀な兄の死を受け入れず、りくを亡くなった兄だと思い込む母親からその匂いを感じた彼は、母親の前で兄を演じています。

そんなとき。死の匂い纏わせる青年・佐埜に出会います。
死の匂いとは無縁そうな彼と関わっていくうちに、佐埜に惹かれていくりく。そして佐埜もまたりくに惹かれていきます。


りくも佐埜も身内の死に罪悪感を抱えています。りくは兄の死が自分のせいだと思っていて、佐埜も妹を死に追いやった罪の意識に苛まれている。どこか境遇が似た2人が惹かれ合うようになったのは、偶然ではなく必然だったのかも知れません。

タイトルは、そんな2人の状態を表したもの。
「僕たちは昨日まで死んでいた」の「死んで」が何を意味しているのかは最後になって分かります。そしてそれが過去形になってることにも…。
2人にとって良い意味であることには間違いありませんので、ハッピーエンドを期待してよろしいかと思います(^ ^)


りくと佐埜のBLは胸にグッとくるものがありました。ネガティブなバックボーンを抱えた2人だからでしょうか、自然と惹かれていく2人の愛が素敵だなと思いました。
りくの作るご飯と佐埜の手から生まれる折り紙が繋ぐ穏やかでほっこりとする愛がキュンときます。
いつの間にか大きな存在になっていく2人の想い合いに注目です。りく視点からも佐埜視点からも語られているのでとても分かりやすいです。


いい感じになったー!と思ったら2人を邪魔する悪役が登場します。

佐埜の義弟である栗原。コイツが相当な腹黒(おそらくモラハラ夫)ヤローで、弁護士なのにワルです。奴はりくの家の問題にも干渉してきて引っ掻き回します。そうするのは佐埜を苦しめたいからなんですが、とんでもない言いがかり。
栗原は佐埜が妻を追い詰め自殺させたと主張するが、果たして真実は……!?ってところが、この作品最大のハラハラポイントです。
悪役が制裁され、救済に繋がるエンディングはスカッとしますよ!


シリアスなシーンもあったけど、やっぱり2人のラブターンが一番良かったし面白かったです。2人に漂う雰囲気が美しく、また場を盛り上げる下町風情溢れた温かい常連さんたちとの絡みも本当に良かった。

1つだけ引っかかったのは、りくの母親が意外と現実を受け入れるのがアッサリだったこと。
兄の死の罪悪感に苛まれ、兄になりきる度に自分の存在が母親には死んだものとされていた心の傷を思えば、りくが悩んだこの十何年って何だったんでしょう…。

母親にりくの存在を分かって貰えて嬉しいけど、過去の母親の兄弟差別みたいな態度含め悔しい気持ちをぶつけたりとか…新たな親子関係をスタートさせる意味でももう少し見せ場があっても良かったのかなと思いました。

とはいえ。
読後感良しな結末なのは間違いありません^ ^
りくに「死の匂い」と形容された佐埜の匂いが本来の佐埜の匂いに変わり、そしてりくの匂いが移って2人とも同じ匂いを纏わせるような状況が、そう遠くはない未来にやってくるんじゃないかなと期待して読み終えました。


作中の、りくの作るおにぎりの具やおかずがすごく美味しそうで真似してみたいです。
読みながらすんごくお腹空きました〜

9

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