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喜一×次郎
井上ナヲ先生の繊細なタッチが光っている。好き。
「息子×義父 禁断の純愛」、
最初は義父との関係が、倫理から外れるかなとちょっと引っかかったけど、
実際に読んでみると、義親子なのに、歪だと思わないし、
むしろ、家族以上、何かがひしひしと感じられ、
2人の細かい感情が本当に切なくて胸がいっぱいになる。
素敵な物語だった。
2人の片想いは胸を打つもので、
喜一の次郎への応えられない想い、
ただ好きで、その葛藤、空回りが切ない。
次郎の初恋に心が痛くなって涙腺崩壊・・・。
さらに、終わり方に脱帽した。
2人の親子と恋人の境界線をしっかりと尊重していて、
読み終わった後も余韻からなかなか抜け出せないくらい。
主人公の高校生の喜一が、小さい頃に父を亡くし、
小学校の時に母と一緒にアパートに引っ越した。
喜一がその頃からアパートの管理人の次郎に懐いていた。
そして、母が次郎と再婚し、間もなく母が亡くなった。
その後からも、
世話好きな性格の喜一が、同じアパートに住んでいて、
不器用な次郎のことを大事な人として世話し続けている。
お互いにずっと大切にして、
一緒に住んでいて、近くて、喜一が次郎の髪を触ったり・・・
愛情についてよく理解していなくて、ついに恋心を目覚めてしまう喜一。
初恋に縋っていて、喜一に駆け寄ろうとする感情を抑える境目に揺れる次郎。
2人の距離感がもどかしい、だけどリアルで、すごく愛おしい。
喜一の世界には、次郎しかいないみたいで、
次郎以外何も見えていないという一途さに心を掴まれる。
学校の女子から好かれていても、全く気に留めない。
同じアパートの住人の愛の生き様も刺さるところで、
それを見て、喜一が小学生の頃から抱いてきた感情が、
家族愛を超えていることに気づいて、その変化に目が離せない。
最初は次郎が何を考えているのかわからないし、
喜一の母との過去や、その関係とか、謎に包まれていて、
だいたい予想できるが、
進むにつれて、次郎の視点もあって、
彼が喜一に対して抱く望みや、
彼の初恋も少しずつ明らかになってくるのが上手い展開だと思う。
自分の好きな人、その人の大事な人まで思う心の強さと優しさが、大変良かったで、
次郎の愛を守るために頑張る姿がほっこりして心に響く。
エロなし。
ただの義親子のお話ではない。
「大事な人のそばにいる、ただそれだけで幸せ」が伝わってくる。
絵の穏やかさから、
2人の心理描写やその変化、
難しい愛情まで丁寧に描いているのが素晴らしい。
こっちまで2人の世界にどっぷり浸かってしまう。
心にしっかりと刻まれる作品でした。
・コミコミ特典8P小冊子
描き下ろし漫画4P:
次郎が中学生の喜一に中華鍋を誕生日プレゼントしたけど、
まだ使いこなせそうにないぐらい重いのに、
成長した喜一が使っているのを見て、次郎は感心している。
ボロいけれどアットホームなアパートに住む高校生と、彼の養父でアパートの管理人兼人形作家の、息子✕養父……「禁断の純愛」です。
禁断とは(ゴクリ
と、つい固唾を飲んでしまったのですが(近親✕✕BL好き)読んでみたら禁断というほどドロついていなくて心にじんわり染み入るお話でした。あたい、こういうの好き……。
主人公の喜一は、小さい頃に母親の旧友であった次郎を頼って母子で古いアパートに越してきました。その頃から父親の様な友達の様な距離感で次郎と親しんでいた喜一ですが、高校生になり女友達の杉崎との交流を通じて、自分の次郎に対する漠然とした気持ちが何であるのかが明確になっていきます。しかし、義理といっても親子である以上、次郎が喜一の気持ちに応えるわけもなく……。
わたし的にこのお話のなかで特に好きなポイント、BL読者にはあまり好まれない要素かもしれませんが、喜一と杉崎ちゃんの微妙な距離感だったりします。自分は喜一の中で恋愛対象としては無しなんだなと静かに悟る杉崎ちゃん。喜一も全く鈍感なのかと思いきや、彼女の変化に気づきつつも友達という事では駄目なのだろうか? と悶々とするところが良いです……ほろ苦い青春だなぁ……。
とか、他にもいくつか滋味のある脇役の切ない恋物語がいい感じに利いているところがとても好きです。
ヒューマンドラマの描写がいい作品で、前述したとおりいうほど「禁断」感はないのです。しかし終盤で成長した喜一がより一層実父に似て育っていた事にはなんとも言えないいけなさがありました。
ところで、序盤の頃に杉崎ちゃんが喜一の住まいを見て「アニメとかで見たことある」という場面、鈍い私はそうね、アニメとかではこういうタイプのボロアパートを見かけるかもねーと思いつつ微妙に引っかかりも覚えつつスルーしてしまったのですが。最後まで読み終わってから突然それって『め●ん一刻』のことかーー! と気づいた瞬間最大の禁断感が私を襲いました。なんか知らんけど……。
幽霊アパートと呼ばれている、少々年季の入ったアパート。
そこで繰り広げられる義理の息子と義理の父親のお話。
決して派手なお話ではないのですが、住民たちとの賑やかな時間と義父との静かな日常の中で、高校生である貴一の揺れ動く心が繊細に描かれていきます。
味のあるタッチで綴られていく日々はどことなく淡々としても見えるのだけれど、独特な間合いと余白をじっくり読みたくなる作品でした。
彼と知り合ったのは、夫を亡くした母と共に幽霊アパートに住み始めた小学生の頃
出逢って数年。3人家族になって1年。2人になって2年。
貴一の中で次郎という、兄のようで「父ちゃん」でもあるその人の存在が次第に大きなものになっていく。
アパートの住人、そして貴一に想いを寄せる同級生との交流を通して「この気持ちは一体なんなのか?」の答えを、てっきり高校生の青さいっぱいに描くのかなと思ったのです。
ところが実際はもっとしっとりとしていて、若者の初恋と共に、義父の忘れられない過去の初恋のエピソードが語られます。
展開的におそらくこうなのだろうなと分かる部分があっても、静けさが漂う切なさに心惹かれてしまいます。
心理描写が丁寧でお互いの気持ちが理解出来るものばかりで、読んでいると胸がツンと痛んでどうしようもなく切なくなってしまうんですよ。
ラスト1ページが本当に素敵です。センスの塊だと思う。
いやあ、この締め方はずるいなあ…読後になにかを想像したくなるような余韻を味わいたい方はぜひ。
大切な人だからこそままならない。複雑な関係を繊細に描いた良作でした。
井上ナヲ先生の久々の新作と聞いて。
先生の作品とのはじめましては「捨て猫の家」でした。
無機質ながらも重く深い愛の形を描いたその世界観に引き込まれ、
読み終えてからもしばらく頭の中に居座って離れなかった記憶があります。
一歩踏み間違えればバッドエンドを彷彿とさせる不安定さと、
繊細な心理描写、そんな井上先生ならではの作風は今作でも健在でした。
少し時間が空いての新作だったので少し緊張しながら読み始めたのですが、
どうやら杞憂のようでした。
死んだ母の再婚相手で義父の次郎に恋をした義息子の喜一。
「ずっと一緒にいたい」と次郎に想いを伝えるも拒絶され…。
親子の一線を越えてはならないと自分の気持ちから目を背ける次郎と
親子であろうと男同士であろうと「ただ人を好きになっただけ」と
自分の気持ちにまっすぐな喜一のすれ違いが切ないのです…。
結婚してもなぜか恋人同士には見えなかった次郎と喜一の母ですが、
次郎視点で二人が結婚に至った経緯が明かされて納得でした。
次郎のことを「ライバル」や「同士」と表現した喜一の母ですが、
それってつまり次郎が自分の夫に密かに寄せていた恋心にも気付いていた、
ということなのですよね?
同じ男を愛した者同士という歪にも見える二人の関係ですが、
同時に二人の絆がそれまで以上にずっと深いものに思えて、
胸がぎゅっと詰まってしまいました。
義理の親子の道ならぬ恋というセンシティブなテーマであるにもかかわらず、
どこか淡々と展開してゆく物語は井上先生らしく、嬉しかったです。
けれど、義理とはいえ親子の恋はどうあがいても禁断。
恋が実っても実らなくても、完全無欠のハッピーエンドなんて難しく、
だからといってメリバだって耐え難い。
そんな私にとって、この緩やかなハッピーエンドは程よく馴染みました。
一応は想いが通じたということで決着はついたけれど、
だからといって突然恋人らしい生々しさを醸し出すでもなく、
だからといってこれまでの歪な親子関係でもなく、
穏やかさと切なさが入り交じったような奇妙な幸福感が湧いてくるのでした。
喜一が言ったようにずっと一緒に、二人で幸せになってほしいな。
帯に、「息子×義父 禁断の純愛」とあったので、義理関係好きの私には読まずにはいられなかった1冊。
Cannaさんだし、一筋縄ではいかない展開なんだろうなあ、、、なんて思っていたら、スト重視のエモ作品でした。
義理の息子(DK)×人形作家の父。
今は亡き攻めの実父を好きだった受け。
愛する人を失った息子と妻を自らの元へ呼び寄せ、ともに暮らしながら好きだった相手の面影を息子に見てしまう。
やがて籍を入れ、3人は家族に。
しかし妻はほどなくして病で亡くなり、2人家族に。
少しずつ親子関係が歪んでいくのが分かっているのに、受けは終わったはずの初恋が戻ってくるような夢を見てしまい、曖昧なままにしてしまう。
けれど、攻めはアクションを起こして、、、
という感じ。
本編のほとんどが攻めがDKであるからか、キス止まりなんだろうけれど、それでも心の機微が丁寧に描かれているので、満足感はある1冊でした。
これはえちがなくていい。
そう思える作品でした。
ちなみに、コミコミさん限定の8P小冊子の中華鍋のお話は受け視点でしたが、小さい頃から攻めの健気な愛がかわいいと思えるお話でした。