• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作春ものがたり

施設育ち・徹
慢性白血病・朝比奈裕也

その他の収録作品

  • 十五年後
  • 春の終わり、夏の訪れ
  • 十五年後
  • 春の終わり、夏の訪れ

あらすじ

ぼくのたった一度の恋は、中学二年の時だった。
春の風のような幼なじみの裕也。猫のように気まぐれだけど、誰にでも好かれ明るくいつも笑っていた。
ぼくたちはすべてをかけて愛し合いーーー彼は春の風に還っていった。
せつなくて大切な幸せの記憶。
あれほど愛しい存在はもう二度と現れないだろう。
だが二十五年後、奇跡のような出会いが待っていた!!
出版社より

作品情報

作品名
春ものがたり
著者
吉田珠姫 
イラスト
香雨 
媒体
小説
出版社
コスミック出版
レーベル
セシル文庫
発売日
ISBN
9784774721811
3.6

(3)

(1)

萌々

(0)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
1
得点
11
評価数
3
平均
3.6 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数1

死にネタなのでご注意を

ぼくこと徹は『委員長』と呼ばれる真面目な中学2年生。でも、家庭には恵まれず、教会で他の小さな子供たちと一緒に暮らしています。
小さな頃は、幼なじみの裕也とよく遊んでいましたが、裕也に特別な感情を感じ始めた頃から(でも自覚なし)避けるようになっていました。
疎遠になると共に、裕也も慢性白血病で入退院を繰り返すようになっていました。
ある寒い日、入院中なのに徹のところへひょっこり現れた裕也。
「委員長にどうしても会いたかったから」病院を抜け出してきたというのです。

わかりたくないことなんですが、裕也の命には期限があることを、無意識にわかっていたんでしょう。だからこそ、裕也を何よりも優先する徹。
裕也が生きていた証を残すように、一緒に絵を描きに行ったり。
でも、裕也の両親が「裕也を返して!」とやって来ます。
裕也の父はお医者さんなのに、一人息子の病気を治してやれない……と思い悩んでいて、特に母は悲しんでいました。
お互い愛するものをなくす哀しみを持つ者同士、解り合えるんでしょう、抱き合って泣いちゃうんです。
裕也の「死ぬなら徹のそばで」という気持ちを大事にして、両親も徹のそばにいることを、条件付きで許してくれました。

途中「ひょっとして、病気が治らないかな?」と祈ったけれど、やっぱりダメで、裕也は逝ってしまいました。
その後、三原から朝比奈に名前の変わった徹は、たくさんの人を連れて行く『病気』を少しでも減らすためお医者さんになりました。

まだ中学生なのに自分の寿命を告げられる気持ちって、想像できませんが、辛いとか哀しいとか、そんなもんじゃないんでしょうねぇ。
懸命に今を生きる裕也と徹が健気でねぇ。この二人は、悔いのない人生を生きたんじゃないかと思いました。

そしてその25年後が、書き下ろしで入っています。
40歳になった徹の前に現れた、大学生の春来。出会ったときに、二人して泣いちゃってるんです。そうなんです、春来って裕也の生まれ変わりとしか思えなくて。
春来が思いっきり積極的に迫って来るんだけど、かなりの年の差なだけに、とまどいの方が大きい徹。
でも、教会で同じ時期を一緒に過ごした友人(別シリーズの登場人物だそうです)が、同性同士で結婚したと聞いたことで、やっと踏ん切りをつけるんです。

書き下ろしは、かなり「そんな~」っていう設定でしたが、徹が幸せになるためには、これくらい大げさなエピソードじゃないと、裕也の死は乗り越えられないよなぁ~って思いました。
裕也の両親も、生まれ変わりだと思っているようだから、きっと二人のことは認めてくれそうな気がするし。
ラストはほのぼのとハッピーエンドだったから、救われた気持ちです。

4

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP