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オメガバースを下敷きにした世界観のもと、国家運営、戦争、宗教、歴史観といった要素にかなりのページ数が割かれており、ラノベという枠に収めるにはかなり骨太な作品です。BLとして読む前に、重厚なファンタジーとして成立している点が印象的です。
登場人物はとても多く、「これ誰だったっけ?」となる場面も正直あり。その分、序盤はやや読みにくさを感じるかもしれませんが、それを補って余りあるほど、世界観の作り込みと物語の引力が強く、気づけばぐいぐい引き込まれていきます。
あえて残念だった点を挙げると、2人攻めという構造の難しさでしょうか。2番手の喪失に加え、陛下(第一攻め)との関係性もどこかほろ苦く、好みが分かれるところだと思います。番外編で一定のフォローはされているものの、攻めが亡くなるというのはショックが大きく、もの悲しい余韻が長く心に残る構成でした。欲張りな私としては、できればスピンオフとして別作品で分けてほしかった。
とはいえ、続きが気になってページをめくる手が止まらない、非常に力のある作品であることは間違いありません。人間が考えるべきテーマが数多く盛り込まれた良書で、若い読者ほど読んでほしい一作です。
なお、最後の番外編では物語序盤の伏線が回収されるという、興奮ポイントがありますw
主人公セナは「惹香嚢」という臓器を生まれ持ってきていてそれを理由にレスキアという大国に男の身で嫁ぐことになります。
タイトルにもある通り竜王のお相手を巡り物語は進んでいくのですが、その過程と明かされる数々の真実から目が離せなくなります。
そしてなんといっても攻めがふたり。このふたりのどちらも不器用でそれぞれの愛し方でセナを想っているのが本当に苦しくて切ないのです。
過酷な道を歩んできたセナが最後に行き着いた先に胸がいっぱいになること間違いなしです。
作者様の全ての作品でいえますが、作り込まれた世界観に圧倒され、魅力溢れるキャラクター達は生きてるかのような気持ちになります。そしてそれを支える文章力、心に残るセリフが溢れています。
佐伊先生の壮大な長編ファンタジーのお話です。主人公セナと皇帝アリオス、護衛官イザクの3人の愛のお話です。セナがアリオス、イザクを想う気持ち、過程に共感しました。小山田あみ先生が描く、アリオスとイザクの見目麗しい姿がかっこよ良すぎて、どっちが好きとかは比べられませんっ。彼らそれぞれの生い立ち、セナを思う気持ちに、私は感情移入しながら読みまして、2人とも好きになりました。(セナの気持ち分かる…。) セナと皇帝の息子アスランの運命に沿って話が進みます。竜王の世界観、人種の問題、3人を囲む多くの人々の話、群衆劇とも言えますでしょうか。それら全てが、終盤にかけてゴォ〜と大きな渦となってきます。3人の、真実の愛の形に感動しましたし、泣きました。緊迫感ある話の中に、可愛い幼い息子アスランの仕草は癒しであり、微笑みました。
皇帝アリオス、護衛官イザク、2人ともそれぞれの魅了があり素敵な男性です。読者さん、それぞれに好みは分かれるのかな、って思います。美しく素晴らしいお話です。日常を離れて、没入感のあるストーリーに入り込みました。この作品に、出逢えて幸せです。
身の回りのBL小説仲間たちから極めて評判が良かった作品。
大変興味深く、拝読いたしました。
小説との出会いは人それぞれだと思いますが、
まわりの人の感想によって出会うことも多いので、
私の書いたレビューがどなたかの目に留まって少しでも
読むきっかけになれば良いと思い、ネタバレ含みますが
書こうと思っています。
WEBで発表された作品が紙本となって発売されたのが2024年
ということで、これは今年の作品と言って良いと思います。
とするならば、間違いなく今年一番重厚な作品なのではないかと思います。
2020年に完結していると拝見したので、長きにわたって多くの人たちに
愛された作品が書籍化したとのこと…その年月がゆっくりと熟成した
お酒のように、芳醇さを伴って作品に滲み出ているように感じました。
舞台は神山という竜王が棲む場所とその周辺国。
メインは四大国を束ねるレスキア帝国です。
皇帝アリオスにネバル国という小国から王子セナが嫁いできます。
彼は惹香嚢という男でも妊娠可能な特殊な臓器が持っているため
嫁ぐのですが、このあたりはオメガバースを読んでいる方々なら
問題なく読める設定であるかと思います。
しかしここから神山を巡っての政治的なことや、セナが産む王子アスランが
同じく惹香嚢を有していたため、竜王の婚配者として神山に行く話、そして
惹香嚢を有するが故の運命などが複雑に絡み合い、物語を形成します。
そしてそうした主軸となるメインストーリーとセナの心の物語が並走して
描かれていきます。皇帝に疎まれ(本当は違うのですが)心の距離がある
状態で、セナは神山から委任を受けた最強白狼獣人、護衛官のイザクに
心寄せて行くのです。イザクは闇人という上からの指示に生きる立場で
疑念なく殺人すらできるよう心を封じられている存在です。
表情がないほど無味な存在のイザクに、セナはなぜ心寄せられるのか。
はやく皇帝と幸せになればいいのに…などと思っておりましたが、
イザクの存在にセナは憐憫にも似た優しく哀しい愛を注いでいきます。
そして皇帝、セナ、イザク…この三角関係が心の話の主軸になるのか
と思いきやそんな簡単な話ではありませんでした。
このお話にはもっと深い愛が描かれることになります。
壮大な話とともに、政治的な話が絡むため、登場人物が多い…
読んでいるときはその問題がついて回るので、なかなか読み進めるのが
難しいという方もいらっしゃると思います。
ファンの方が作った布教シートのようなものもあるので、私も目を通し
ましたがそれすら難しくて、地図と人物シートは整理しないと完走は
難しいと思える方もいらっしゃるかもしれません。
私も上巻だけで言えば、全てが中途半端で先が読めない…という軽い
絶望感を持ちましたが、読了後に振り返れば、そのモヤモヤを
持ったまま下巻に進んでも、不安で良かったんだなと思える瞬間が
出てくるので、まずはスタートすることをお勧めいたします。
ファンタジー、政治、闘い、愛…全てが濃厚ですが、上下が1つの話
ですのでまずは上巻でその世界に足を踏み入れて下さい!
そして佐伊先生の、特濃なお話を鮮やかに表現される小山田あみ先生!
あまりにも美しい挿絵が物語を一層魅力的にしています。
強固な世界観。破綻のないストーリー。魅力的なキャラクター。政治、宗教、人種差別などの難しい題材を取り入れながら、天晴れなラブストーリー。
責めが2人?と思われるでしょうが、2人いるこその展開が素晴らしい。
もったいなくてゆっくり読み進めようと思いましたが下巻に入ってからは止まりませんでした。至極の時間をありがとうございました!
