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まさか、あの単話が一冊にまとまるとは思っていませんでした。
2017年発売の単話「恋のはなし 」を初めて読んだ時は、うわああ、この後どーなるの?!どーなったの?!続きほしいぃぃ!!と心の中で絶叫した記憶があります。
で、2021年に出た続きの「愛のはなし -恋のはなし2- 前編&後編」がこれまた最高で。
(単話のレビューは当然神にしたはず!と見返したら、まさかの萌止まりでびっくり自分、アホなの自分!)
一冊にまとまったのは嬉しい一方で、長年この単話を繰り返し楽しんできた私の納得がいく着地点ってどこなんだろう?と不安になったりもして。
というのも、ちひろはいわゆる泥棒猫。
仲睦まじいカプの間に、割り込んできた存在なんです。
おまけに律(攻め)の恋人は、いい人なんですよ。
だからこそ、正直ちひろの恋を全力で応援しずらいというか。
お話は、いわゆる高校時代の再会ものです。
振られた側と振った側が再会するんですね。
で、振られた男・律には仲睦まじい恋人がいて幸せが溢れんばかり。
その一方で振った側のちひろは、まともな恋愛はしてこなかった。
というのも、いつも本命にしてもらえずポイ捨てされてばかりなんです。
律と恋人の仲睦まじい様子を見たちひろは、あの時、振っていなければこんな風に愛されていたのは自分だったはずなのに……と思ってしまい……。
「(恋人を)愛してるから」と臆面もなく言う律と、「高校の時 僕のことも愛してた?」と尋ねるちひろのやり取りが何度読んでもたまらんです。
いい男になった(でも高校の時もいい男だったと思う)律に、あんなこと言われたら……!!
久しぶりに読んで、自分がちひろの立場だったら、豆腐の角に頭ぶつけて死にたくなるなーって思いました。
そして絡め取っていくちひろの様子とか、さすが斑目ヒロさんだなーって読むたび思います。
そしてあの笑顔の美しさ。
神々しい。
そのせいか3話の「コイアイ」のちひろの佇まいときたら、もはや飛鳥時代の仏像のよう……すらりとしてて、美しくて、謎めいていて…
でもいくらなんでも仏像っておかしくないか?!
昨夜、学習漫画・日本の歴史3(飛鳥時代)を読んだばかりなので、その影響なのか??と狼狽えてしまいましたが……
そうか!ちひろの笑顔は、アルカイックスマイルなんだ!!!
と、そこに気付いた時、あぁ、ちひろの本当に笑った顔が見たいなー!!って思いましたね。
だから、書き下ろし読んで、ほんとーーーに良かったって思いました。
ちひろの幸せを素直に喜んでいる自分がおりました。
というのも、律の恋人・優哉さんが、幸せそうだったから。→ここ重要。
ここが一番の懸念点で、この人が幸せになれないと、律&ちひろを推せないのでほんとによかった。
この人が一番表情豊かで、素敵な人だと改めて思いました。
そして律が電子書き下ろしではもはやアホな攻めになってて、嬉しかったです。
「恋の分量」は単話で既読。
これも斑目ヒロさんらしい作品で、覆面係長に収録されている「略奪のルール」とか好きな方でしたらたまらんと思います。
斑目先生の作品って、清々しいようでどこか心が痛い、切ない話が多かったように思うのですが、
今作はもう、ゴリゴリに切なかったです。
学生時代の淡い思い出を引きずる二人。
振った人の後悔と振られた人の呪縛が
大人になって再会した時にぶつかり合う。
実は両想いだったんだ、めでたしめでたしのはずが、
時間が経って大人になった分、全く噛み合わない。
お互いを傷つけ、後悔して離れて、
何度も同じことを繰り返す。
それでも純粋さだけをむしり取った時に
残ったのはお互いへの恋心だった。
心情で読み込ませる良作でした。
「かわいい悪魔」からファンになった斑目ヒロ先生ですが、たまに人間の業を扱ったヒリヒリするようなお話も描かれていて、それが妙に忘れられない作品となっていてとても好みでした。
こちらの作品もまさにそうで、最近の流行りの分かりやすい感情を描いた作品群とは一線を画したお話だと思いました。セックスシーンはあるにはあるのですが、こちらの作品は人の感情の機微がメインで実に読み応えがありました。
一見すると悪者に見えてしまうちひろですが、果たして誰がこの混沌とした人間関係を作り出してしまったかと言うと、律とて同罪ではないかと思ってしまいました。誰が悪いでもないタイミングと思い込みという、その時にはどうしようもないものが2人の間に横たわっていたんです。
最初から思い込みでちひろに接して来た律と、無くしてからその感情に気が付いて取り戻そうと足掻いて来たちひろ。そんなちひろの上を勝手な感情で通り過ぎて来た男たちに腹が立ちました。
どうかちひろの想いに早く気が付いてと祈りながら読み進めました。彼には幸せになって欲しい。
同時収録作の「恋の分量」もヒリつくような2人の関係がお見事としか言いようがありませんでした。
今流行りのお話でもないし、主流の絵柄でも有りませんが斑目ヒロ先生は唯一無二の作家さまだと思ってます。個人的にはもっと人気が出て欲しいし、もっと色んな方に読んで欲しいです。
斑目ヒロ先生の新刊!
楽しみにしておりました。
まず表紙が素敵......
昨今のBL作品はタイトルで説明しすぎるところがありますが、「恋のはなし」というシンプルなタイトルも想像が膨らんで素敵です。
そして内容ですが、とてもとても素晴らしかったです。
こんなにじっくり"恋"について描いた作品って、最近では珍しい気がします。
どうしたって求めてしまう、抑えようのない気持ち。
好きで好きで仕方がないからこそ、愛にならない可能性が怖くて...
ラストに涙です。
同時収録は、一方通行な気持ちを実態さえ伴えば感情は要らないと割り切ってしまう泥沼のお話。
仄暗い雰囲気で表題作とは違ったテイストが楽しめます。
美麗な表紙に一目惚れし、とらのあなさんで購入。表題作のほか、もう一編が収録されています。
この”もう一編”の方が、思いがけず仄暗い共依存ものでインパクト大でした……正直、読後の印象深さはこの「恋の分量」の方が上かも。
ハピエン好きとしては、なんとも後味の悪いラスト…!!
受け君が幸せなら…と思うのですが、どう見てもトバリ(受)、幸せそうな顔してない。触れ合いたいトバリと、「気持ちさえ通じ合えれば触れ合いはいらない」と言う攻め・ミツとの大きな大きな隔たり。
機械的な作業として行われるセッッに戸惑い、喪失感を抱くトバリと、そんなトバリを絶対に手放さないミツ。「抱いてあげたじゃない」っていうミツの言葉の残酷さが突き刺さる。
この二人の行き着く先に”幸せ”はあるのか、、?と、なんとも苦く苦しい気持ちになるお話でした。好き・嫌いの好みはあれど、とても印象に残る一作なのでは。
で、表題作の方。高校時代の同級生との再会・ 誘い受け・三角関係もの。
ゲイでバーテンダーのちひろ(受)が主人公です。
途中、攻め目線のエピも。
ダメ恋を繰り返しているちひろの元に、懐かしい高校時代のクラスメイト・律が偶然来店。孤独を抱えるちひろは、かつて律から告白されたことを思い出し、律とパートナーが幸せそうにしている姿を羨ましく思います。
もしあの時、自分が告白を受け入れていたら、今頃律と幸せになれていたかもしれないのにーという思いから、律を自宅に誘ってー
と進むお話。
手を出してしまいズルズルとちひろとの関係を続ける律が思い悩み、「あいつ(パートナー)のこと傷つけてるんだ」と言ってちひろの部屋を去るシーン。
ちひろの零した「僕だって傷ついてるのに」のセリフが切なくて悲しくて胸をギュッと掴まれた気持ちに。
律からもらった車型の食玩を、「あれどうした?」と聞かれ「捨てちゃったよ」なんて言いながら、実はーー
というシーンがもうじーんとし過ぎて、数秒ページを開いたまま、見つめたまま止まってしまいました。体の付き合いだけ楽しんでいるように見せて、本当は律に愛して欲しくてたまらないちひろの孤独と飢えが切なくて、、( ; ; )
律の背中をどん!と押してくれるパートナーの優哉が男らしくて潔くてカッコ良すぎました。新しいパートナーと、メインカプ以上に幸せになって欲しい。
ラストページのちひろの心からの笑顔に(その直前の「恋の分量」を読んでやられていた分)救われ、甘さを噛み締めました。