愛しくて、憎い男……運命の出会いから数年。ずっと一緒にいたふたりだが!?

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表題作もう二度と離さない

佐伯渓舟
画家の父を持つ天才洋画家
相良司
渓舟の恋人で助手

あらすじ

日本画の大家を父に持ち、美貌と才能に溢れる若き洋画家・佐伯渓舟は、助手であり恋人でもある相良司とともに暮らしている。小さなトラブルが起こることもあるが、強い絆で結ばれているふたりは幸せな毎日を過ごしていた。そんなある日、司の過去を知る男、そして渓舟の過去を探る男が現れたことにより、平穏な生活は少しずつ狂い始めていき……!?
出版社より

作品情報

作品名
もう二度と離さない
著者
樹生かなめ 
イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
発売日
ISBN
9784062558945
3.5

(43)

(14)

萌々

(10)

(9)

中立

(5)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
13
得点
142
評価数
43
平均
3.5 / 5
神率
32.6%

レビュー投稿数13

なんだかとても微妙な読後感。

シンプルに変な話、と思った。前半はいろいろと破綻してるし、後半は中途半端。渓舟はあれだけのことをやらかしたのだから、もっと激しく腹黒執着ぶりを表すか、逆に深い贖罪の意識を見せつけるか、どちらかに振り切って欲しかった。

始まりから不思議な設定で、そこに意味があるにしても都合良すぎ。理学部を出て絵が好きでもないのに売れっ子画家をやってるとか、心療内科の医師が専門家でもない渓舟に治療を依頼するとか。他にも引っかかる点を挙げればキリがない。

後半は、嘘で塗り固められた司の世界の真実が見えてくる。五人殺して正当防衛は相当難しいけど置いといて。一度は精神を病んだ原因となる記憶を取り戻したのに、司の反応はいまいちで、半分くらい中身が無くなった人のよう。

渓舟は司に嫌われたくないから行動を改めたというだけで、司以外の多くの被害者に対しては、後悔も反省もなく何も思っていなさそう。悪友たちも同じで、和弥をボコボコにするシーンは輩そのもので怖かった。

芯がなく流された司が今幸せを感じているなら、それで良いと思う。好意的な意味でなく、他に選択肢がないなら仕方ない。渓舟もどうせ人間にはなれないのだろうし、司がストッパーになるなら世界が少し平和になって良いのでは。

なんだかとても無になる読後感。誰にも共感ゼロで読んだので、不快感は無いが萌えもない。

司って本当に生きてそこに存在しているのかな。全てが渓舟の夢だったってオチでも納得できそう。渓舟のイマジナリー愛人とかでないのなら、あの渓舟を愛しいと思える司は、お似合いの相手を手に入れたのかもしれないと思った。

0

性暴力に対する無理解を感じた

初めてレビューします。
今までレビューは好きな作品だけにしようと思っていたのですが、この作品を読み、どうしても書きたくなり、今回レビューすることにしました。

タイトルにもありますが、この本を読んで、作者の性暴力に対する無理解を感じました。

別に、BLはフィクションですし、レイプした相手と恋仲になることには(現実ではほぼあり得ないことだとしても)文句はありません。
ただ、この作品の書き方はあまりにも酷いのではないかと思いました。最後の方は、モヤモヤした気持ちで文字を追ってもあまり頭に入ってこず、何度か読むのをやめようかと思いました。

渓舟は、和希達に強姦されたことで、人を殺し、深く悔やんでいる司に、仕方なかったんだ、と言っていますが、渓舟自身が過去にしていたことへの反省は正直私にはあまり感じられませんでした。勿論、渓舟は攻めで、主要キャラです。作者も読者も肩入れするのはわかります。確かに彼は司に、お前の嫌がることはもうしない、と言ったり、反省しているような言葉を言ってもいます。しかしそれは、やったことの酷さを悔いているというより、愛する人を傷付けたことに対してだというふうに感じられました。彼は過去に、他の女性に対しても酷いことをしていたようですが、正直、その女性たちに対しても反省の気持ちがあるとは思えませんでした。

「俺はお前が好きだった……ひどいことっていうか、AVみたいなことはさんざんヤったけど、食い物にはしていない。俺はお前に売春なんてさせていないからな」
彼の冷酷さを描きたかったのかもしれませんが、それにしても本当に酷いセリフだと思いました。反省しているならこんな事言うでしょうか。渓舟や緒方や邦彦は、悔やむ司に、正当防衛だ、仕方なかった、といいますが、レイプしたりそれを笑ってみていたりしていた人間が何を言っているんだ、と思ってしまいます。

和弥に暴行をしたあと、
「和弥、あいつはあんなケガには慣れているはずだ。あいつの兄貴は家庭内暴力も激しかったから、お袋さんと和弥は何度も救急車で運ばれている。もしかしたら、あいつが一番打たれ強いかもしれない」
と司に言いますが、このセリフにも違和感を感じます。

渓舟や緒方、邦彦は、もう更正したかのように書かれていますが、私にはあまり変わっていないように感じられました。反省の言葉もありますが、彼がやったことに対して少な過ぎるように思います。反省の気持ちも、少ししかないように感じられます。レイプ加害者と被害者が恋に落ち、それによって渓舟のやったことが不問になっている印象を受けました。結局、彼らが守ろうと思うのは、自分が好きな人だけなんでしょうね。彼らは他者を悪く和弥や原に対しては酷く言いますが、自分たちのしていたことの重大さについては反省しているのでしょうか。

性暴力は、人の尊厳を傷付け、自分を許せないような気持ちにさせ、何年もそのことに囚われさせる、そんな卑劣な行為です。
最初の方に書きましたが、レイプ加害者と被害者が恋仲になることは、物語ですし、構わないと思っています。物語なので、必ず加害者が反省しなければならない、とも思いません。しかし、この作品には、司が渓舟に恋するようになる、言わば必然性や説得力のようなものが薄く感じられました。また、渓舟を未だに道徳観のないままの悪人、人非人として描くのではなく、まるで悪いことから足を洗い更正したかのように描いているというところも、性暴力に対する無理解を感じる原因だったと思います。他にも、司が当時されたことを思い出して頬を赤らめているシーンがありますが、そのような反応をする割には、司が性的なことや被虐的なことに強く惹かれる人物には思えませんでした。他の書き方、キャラクターの描き方だったら、違和感や無理解を感じなかったかもしれません。

フィクションだ、BLはファンタジーだ、という人もいると思いますが、フィクションならフィクション、ファンタジーならファンタジーなりに、現実に即しながらも説得力のある物語としての面白さ、突飛さ、もしくはこれはファンタジーだ、そういうものだ、と思わせるような、これまた説得力、そういう物が必要だったと思います。

1

設定が良いだけに残念

野沢尚脚本の『眠れる森』という昔のドラマを思い出しました。

幸せそうな恋人とその周囲の人間の衝撃の過去が後半になって明かになるミステリー風の作品。

設定はとても面白かったのですが、肝心の、受けが記憶の奥に眠らされていた過去を思い出してからが残念な展開で、勿体ない。

いくら二人で過ごした穏やかな近年があるにしても、攻めや悪友達が受けにした罪をもっと追及・深堀りしてほしかった。
「若かったから」「どうしようもなく好きだったから」では言い訳にもならないし。悪友たちの前で攻めが受けを犯したことが全ての原因だし。
受けは実は強い人間だから大丈夫だった、めでたしめでたしだと、この設定は勿体ない。過去は自殺未遂と精神異常をきたすほどだったのに、現在は何でこんなにあっさり許せる?「あんなこともあったよね~」とむしろちょっとほのぼのしちゃってるし。
もっと受けに過去と現在の攻めへの感情の間で揺れて葛藤してほしかった。

0

なんとも言えない読後感…

ちるちるさんの「衝撃的な結末のBL小説」の特集記事を読み、興味を引かれて手に取りました。
溺愛スパダリ攻めが実は…、はかなげ受けが実は…、というどんでん返しは面白かったのだが、後半の種明かしからが説明調で、キャラの心理の変化についていけなかった。
特に受けはもっと激昂してもよくない? 私はここからドロドロの愛憎劇を期待したし、攻めを一度突き放す、ザマア展開があってもよくない?と思った。なのに終わり方はあっさり。「受けは本当にいいんか、それで⁉」と思ったまま読み終えてしまった。

なんかなー。過去の攻めの、受けの扱いに愛情が感じ取れなかったのが、萌えきれなかった原因だと思う。性奴隷みたいに慰みものにされてたのに、思い出の場所を巡りつつ「ここであんなことされたよねー」とか言えちゃう受け、案外図太いな!? 
攻めのしたことが、受けを救うためとは言っても、どうも脇役ごと、過去の悪行をなかったことにするためにしたようにしか思えなかったのも一因か。それでみんなして、「あれは若気の至りだ」で済ませてるのが、なんだかなーという感じ。

こういうどんでん返しのある「そうきたか⁉」的BL小説はいくつか読んだが、どうもご都合主義を感じたり、「プロットの面白さ>萌」になってしまうことが多く、自分とは相性が悪いのかもしれないと思った。ストーリーが凝っていて面白い、っていいことのはずなのに、残念。

2

タイトルに裏切られました

ちるちるさんの記事で「衝撃の結末を迎える」作品であげられていたので、気になって手に取りました。

ゆるりと甘ーいムードで流れる前半の後、中盤くらいから衝撃の事実が明かされて、主人公を取り巻く世界が一変します。物語から受ける印象も異なったものになり…。
色々な人達の過ちや若気の至りが描かれていました。皮肉な事に今の彼らより、昔の彼らの方が鮮明に目に浮かびます。育った環境に原因があったとしても、許される話ではないですが、多感な時期の必死さは人間の本能であり、生の証でもあり。荒みの後に一皮向けた彼らの姿にこみ上げるものもあります。タイトルも暗示する贖罪の物語であると同時に依然大切なものを守る瞬間に見せる非情さが垣間見え、過去も現在も何処か物哀しく不穏さを感じさせられる物語でした。

贅沢を言えば、最後にもう一捻りあった方がもっと印象に残ったかもしれません。主人公の人物像もぼやけ気味なのも気になりました。

0

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