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1、2巻を通しての感想となります。
本棚をなんとかして整理しなきゃと処分候補本を挙げて、一応読み返すという作業でほぼ上手く処分出来たためしがありません。
「天使のうた」、あれ?
こんなに凄いお話だったっけ??
西田作品の中じゃ印象の薄いものだった気がするんだけど。
西田先生は映画が大好きだったと思うんですが?この「天使の歌」も外国映画にあってもおかしくないし、BLぽい萌えもわたしには結構ありました。
人間愛とか恋愛とかとは別に、芸術家ってこうなのかもしれないって納得させられる内容でした。
こちらは芸術家ではないので想像しか出来ないのですけど。
愛するはずのミッシェルの首を絞め殺したと思い込んだクリスはそれでも指揮者としてコンサート会場には姿を現します。
クリスを『真の狂気の淵』から救ってきたのは「音楽」なのでしょう。
音楽にしろ絵画にしろ芸術は人が創り上げてきたものですよね。
言葉足らずで申し訳ないのですが、いつの時代にあっても未来にあっても音楽家や画家はいなくならない、必要な人たちである、当たり前の事かも知れないですがしみじみ思わせてくれる良い作品でした。
ピアニストとしてスタートし、今は売れっ子指揮者として世界に名を馳せているクリス。
お話が進むにつれ父親から虐待を受けて育ってきたという事実を、そして今なお抱える闇を知ります。
息子アレックスへの余りにも冷たいと思われた態度の数々は普通の愛し方を知らない、そして父が自分にしてきた事をしたいという衝動にかられる彼が唯一出来る愛情の示し方だったという事に衝撃を受けました。
愛そうとすれば自分も父親と同類に堕ちてしまう。負の連鎖を断ち切るには愛するアレックスを守るために突き放すしかないというクリスの苦しみや葛藤はいかほどか。
かつては街で売春をしており今尚、自らをあえて痛めつけるかのような俗悪な生活をしていますが、音楽に対しては真摯で、そして音楽は彼を裏切らないという構図が、何よりも自分としては一番心に来た箇所です。
目を輝かせて「見ろよ 先生 ここに一つの奇蹟がある。この第一楽章のスケルツォだ これをどうやったら冒瀆できる?」と語る部分。
音楽に心底取り憑かれた者の純粋な喜び、情熱、彼を生かし続けてきたものが垣間見えた瞬間だと思います。
音楽がなければきっと10代の早いうちに彼の精神は崩壊していただろうなと。
そういうクリスに音楽の手ほどきをし、天使のうたを授けたのは彼の父親です。
虐待をしていた酷い父親だけど、音楽は父親から与えられた愛情であった。
そしてクリスの派手で奇抜な振る舞いに囚われず、クリスの本質を見抜いて愛してくれていた亡き妻。また「どこにいてもずっと愛しているから、クリス」と言う息子。さらに今、傍にいるミシェル。クリスには周りの人々からの愛が確かにあったのだ、そして今もなおあり続けるのだという終わりが何とも胸熱くなりました。
私がトピ立てした「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#IndexNews
で教えていただいたのがこちらの作品です。
それこそ交響曲のように愛や憎しみ、狂気といったモチーフが登場し、各パートで層を成して謳い上げる壮大さがありました。
一つの物語として文句なしの神です。
教えてくださり本当にありがとうございました。
初読は西田さんにしては色々詰め込みすぎて少しごちゃついてたなあと言う感想でした。もう少し簡潔にまとめられたのではと考えつつ風呂に入ってると、何やら気になってきてもう一度読みたくなり、結局翌日再読しました。こう言うのは映画でたまにありますが、小説や漫画では珍しい。再読してガッときました。萌えと言うよりはふらっと入ったミニシアターで当たり映画を観た後の感覚に近いです。(レビューでヨーロッパ映画のようと評されていましたが同感です)
初読の詰め込み感と言うのはたぶん、色んな伏線がコマや台詞にみっちり詰め込まれていて、登場人物の思考が把握しきれず私の頭がとっちらかったせいですね。再読で全てが繋がり、いちいち噛みしめ、ああう~となりながら、読み終わり、今これ書いてます。
この漫画のテーマはなんだろうと考え中です。愛と欲望。聖と邪。傷と癒やし。相反する心象や関係が描かれてますが、それを全て内包して高みに昇る音楽と言う芸術なんじゃないのかなと。西田さんは「彼の肖像」でも女性の漫画家さんには珍しい鬼気迫る画家を描かれてますが、本作からも西田さんの芸術に対する視線がはっきり描かれています。
汚濁の中に咲く聖なる花のような音楽を見事に漫画の中で描かれています。クソみたいな人生と冒涜しようのない音楽。罪を犯し自殺した男が残した音楽が、結局クリスを生かし、テレーゼを惹きつけ、アレックスを生み、家族を失ったミハエルを癒やしたように思えます。「天使のうた」ってすごいタイトルだわ…しみじみ。
BLとして神評価かと問われるとちょっと躊躇します。男同士のラブストーリーと言うには、家族や芸術、人生と言った色んな要素が絡んでくるので、複雑です。ラストシーンですら、私は不穏な感じがしました。ベッドの上でクリスはまた狂気をみせるんじゃないのかって。ミハエルはそれでも変わらずあの時と同じように受け入れるんだろうなとか。そして、そんな関係がとても神聖に感じるし、どーしようもねえな、ごちそうさまとも思います。
単純に泣かせるようなストーリーでもないし、でもとても深いところで感動させられたので、私としては「神」つけるしかないです。
西田さん、またこんなお話書いてくれないかな~。大長編で読みたいなあ。
発売当時、西田作品にしてはめずらしく買いにくい表紙で戸惑いました。
しかし内容はすばらしい。いや、こう書くと表紙がだめみたいじゃないか!
そんなことはありません。どんな表紙でも躊躇なく買う。
たとえミシェルがウィンクしてニカッと笑っている表紙だとしても(怖い)買います。
そして西田作品にハズレなしとよく目にしますが、ほんとにその通りです。
リアルなオヤジやアホ犬君は出てきませんが、ヨーロッパの映画を観ているようなこの手合いも大好きです。
人の心の危うさや脆弱さ、互いに想い合う気持ちのズレ、主要人物3人がそれぞれ抱えている闇の部分、すべてが最高のバランスで盛り込まれてあり、大満足の作品です。
毎度のことですが、キャラも良い!上品に取り澄ましているクリスが、とんだアバズレだったなんていうところは、ほんとによく心得ていらっしゃる。
美しく高貴な顔立ちで下卑た物言いは、ムハーッとなりました。
ただね、欲を言えば、もっとページ数あってもよかったんじゃ…。
2巻といわず、その倍くらいで書いて欲しかったです。ちょっと無駄がなさすぎる。
シリアスな内容だけど、もうちょっと遊びがあってもいいかなあというのと、クリスの幼少の頃のお話が挟まれてもよかったかなあ。いや、これはないからこそ読者が想像たくましくするってことで、ないほうが正解かなあ。
そうか、そうだったのか。
ゲイで子持ちな指揮者。
子供と妻を無くした医者。
出会いのきっかけは一人の子供。
愛情とは何なのか・・・?!
これまでは、子供・アレクシスが中心な話なのだとおもってた。のですが・・・本当はクリスのお話だったんですね。
美しかった父。その父との壮絶な別れ。
愛情を知らず、自らの身体を売ることでしか生きる道をみいだせなかったクリス。
そのクリスが父になり、授かった子供に向けられる感情とは、甘くそして・・・
危うく近親相姦っっw
まぁ、嫌いじゃないですが、そこでときめいたら物語が変わってしまうのでっw
最初にみたときのクリス。これがわりと無表情で、無感情なイメージがあった。それが泣いたり笑ったり叫んだり。
トラウマに泣き付き動かされた先の結末。
面白かったです。
これまでつらかったぶん、幸せになっていただきたい。そのうち孫とか産まれたら~・・と思うと、なんだか幸せそうな絵が浮かんで私までホッコリしてしまいました。
こうやってみるとクリスって男前なんだね(ぇ