ぱるりろん
「謹製ヘルブック」には書き下ろしはありませんが、コミコミスタジオで購入すると書き下ろしSS小冊子が付いてきます。
A5判16pの小冊子で、本文は2段組11ページ分、数えたわけではないですが推定1万字超のお話で、とても贅沢でした。
藤十郎が商談で訪れた都心のビルで火事が発生します。藤十郎はテナントオフィスの客側なので、先に避難誘導されて一旦は外に出るのですが、訪問時にビル内でみかけた小学生のことが気になり、燃えさかるビルに戻ります。
勝手に建物の上階に侵入していた子供達は火事のことを知らず、藤十郎が戻らなかったら確実に火に巻かれていました。
子供三人全員を無事に救出したまでは良かったのです。予科練を出た元海軍の飛行機乗りなだけに、状況判断は的確でひとつひとつきっちり確認して理詰めで行動しますし、語り口が穏やかなので、こちらもうっかりしていましたが、いくら非常事態で子供を助けるためとはいえ燃える建物に戻って最上階まで、しかもたった一人で救助活動を行うというのは、やはり無謀なのでした。
これまでのサバイバルな出来事からも、藤十郎ならなんとかしてしまいそうな気がしていて、おそらく本人もそう思っていて、だから、伊魚に後で言えばいいか、と後回しにしていたことも言えないままになってしまうのか、と思い始めた段になって、事態の深刻さを思い知ったところが良かったです。また、その藤十郎の考えを読んだ伊魚が彼を助けたことも。
戦争も終わり、何気ない平和な日常を過ごす二人が(テレビを見ている場面がある!)、今に至ってもペアである本領を発揮するのを読むのはとても嬉しいことでした。とても素敵なお話でした。