ほんのり苦くてほんのり甘い、ラブ・アソートメント!!

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表題作ビター・スイート・レシピ

宇佐美祥嗣,パティシエ,30歳
大森健太,引きこもり青年,20歳

その他の収録作品

  • セミ・スイート・レシピ

あらすじ

一年近くひきこもりを続ける健太。亡き祖母の住居兼店舗で、現実逃避にレース編みをしてひとり、暮らしている。そこへある日、宇佐見という男が訪ねてきた。長くシャッターを降ろしたきりのこの店で、焼菓子専門店を開きたいというのだ。店を貸すことになった健太は、夢と希望に満ちた宇佐見のペースに巻き込まれるうち、彼に惹かれている自分に気付き……?(出版社より)

作品情報

作品名
ビター・スイート・レシピ
著者
月村奎 
イラスト
佐倉ハイジ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403521928
3.4

(39)

(4)

萌々

(13)

(19)

中立

(3)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
12
得点
132
評価数
39
平均
3.4 / 5
神率
10.3%

レビュー投稿数12

ほのぼのが心地よい

表題作と続編の2作品が収録されています。長さは半分ずつくらいです。
どちらも健太(受け)の視点で進んで行きます。

「ビター・スイート・レシピ」は、引きこもりの健太が住む家に、宇佐美(攻め)が店舗として貸して欲しいとやってきます。服、髪型、兄との関係…宇佐美の手助けにより、徐々に良いほうへ変わっていく健太。趣味のレース編みも役立つものに。そして恋人同士になっていく二人でした。

「セミ・スイート・レシピ」は恋人同士になったものの、キス以上進まない宇佐美に不安になる健太。そこへ宇佐美の元恋人・榊原が登場し…。前作ではライバルであった美緒に恋人ができていて嬉しかったです。宇佐美の「無駄を通り越してマイナス」に笑いました。


佐倉先生のイラストがぴったりの、ほのぼのとした作品です。
扉絵のちょこっとしたお菓子のイラストも可愛らしいですが、冒頭のカラーイラストの、跪いた王子様のような宇佐美と、驚く健太が素敵でした。

宇佐美が時々(度々?)放つオヤジギャグも、空気を読んではしゃいでみせる姿も、気遣いのできる大人として良いなぁと思います。

なにより女性キャラがよかったです。美緒はもちろんですが、兄の妻である夏子もさっぱりして素敵な女性でした。宇佐美との関係がバレても大丈夫だと思わせるような雰囲気に安心して読めました。

ただ、不満がひとつ。
宇佐美は健太に甘い&優しすぎ!気を遣いすぎ!健太にはその方が相応しいでしょうし、宇佐美としては「好きだから」なのでしょうが。最初からずーっとそうなのがちょっと不思議でした。宇佐美にニートや不登校だった弟がいるとか、もう少し説得力がある理由が欲しかったかなと贅沢にも思いました。

あと特筆すべきと思ったのは、巻末にあった、月村先生の「ディアプラス文庫一覧」です。1ページ丸ごと使って1作品を紹介するより、小さくてもコンパクトにまとめられたこの一覧の方が便利だし有り難いと感じました。これから他の作品にもぜひお願いしたいところです。

2

手芸男子

立て続けに月村作品を読み返している最中で、「耳から恋に落ちていく」→「ツァイガルニクの恋の沼」→「ビター・スイート・レシピ」という順で読んできましたが……。
やっぱり月村さんの描く手芸orお料理男子って好きだなーと思いました。
(そして攻めがその趣味を否定せず、いいじゃん!!と言ってくれるの超大事。「嫌よ嫌よも好きのうち? 」も受けが手芸男子だけど、攻めがそれをバカにしてるのでアウト。)

ずーっと親の望む闊達な息子を無理して演じ続けてきたけれど、とうとう心がポキリと折れてしまった健太は、一年近く引きこもっている。
手芸店を営んでいた祖母が遺した店舗兼住居でひっそりと暮らし、遺された糸で目的もなくただひたすらにレースを編む日々。
そんなある日、レトロな佇まいを気に入った宇佐見という男が、ここで焼き菓子店をやりたいとやってきて……。


健太は、壊滅的に自己肯定感がないんだけど、それも仕方ないなーって思える。
おまけににーちゃんがちょいちょいやってきて、やいのやいのと五月蝿いっての!!
実は弟可愛さ余ってらしいけど、にーちゃんマジで黙っとれ!!って感じ。

2008年出版とのことだけど、(電子化は2019年なので、ようやく読めた次第)最新刊の「ツァイガルニクの恋の沼」と何か重なるところもあり(編み物男子)、ご自身が仰る「金太郎飴作家」というのがホントにそれだな&いつまでもこの作風でいてほしいわーと思いました。

月村さんの新作が読みたいなぁ。

とりあえず9月20日発売の小説ディアプラス秋号が「幼馴染特集(やったー!!)」で、巻頭カラーに月村さんのお名前があったので、絶対に買う!!と鼻息荒く待っているところです。

2

どちらの気持ちの判って複雑

月村さん、久しぶりの新刊らしいですね。私これが読むの2冊目なので、そうなんだ。ふーん・・・って感じです。

受験の失敗と祖母の死と相次ぐ不幸が引き金になって、今までずっとエリート街道まっしぐらだった一人の青年が引きこもりの生活を続けているところに、人生の転換となる人と出会い、少しずつ普通の生活を取り戻していく。というようなお話。

健太には8歳年の離れた歯科医をやってる兄の太一がいて、職にも就かず亡くなった祖母の家で目的も無く時間つぶしのためだけにレース編みをやってる健太を見て「人間のクズだ!」なんて罵倒して帰っていく。

思うに私、この話、精神状態の安定している人が読んだら、健太の不甲斐なさにいらいらして、お兄ちゃんのほうに肩入れしちゃうと思うんですよね。でも、自分自身、両方の経験があるがために妙に身につまされて、かなり複雑な心境に陥りました^^;)

引きこもり健太の事をもう一度日の当たる場所へと連れ出してくれた宇佐美の存在は、健太だけでなく、実は兄の太一にも影響を与えてると感じるところなど良いですね^^

読み終わったころには、ほわ~んと心があったかくなる様なお話みなさんもいかがですか?

4

アイテムが作品を引き立てています☆

ディアプラスの月村さんの作品はほんわかしていて大好きです。
出てくる女の子キャラが嫌なやつじゃなくてよかったです。ライバルでもあり友人にもなれる関係って素敵だな、と思いました。
二人のラブや健太の再生、といった人間関係も面白く、ほろりとさせられる場面もありますが、私としてはメルヘンチックなアイテム描写に注目してほしい作品です!
タイトルのスイーツを始め、美味しそうなスイーツがたくさん出てきて今にも甘い香りが本から漂ってきそう(o・v・o)♪
健太の特技である、レース編みの細かい描写も物語りを引き立てます。
健太の繊細さを表しているかのように壊れそうに儚いものかと思いきや、
それがお菓子と共に使われることで生き生きと輝き出します。
出会うべくして出会う二人だったのかと思わせる上手いアイテム使いでした。

4

心が弱い人が許せる人、いま心が弱っている人に

マイナスな自分を肯定して、丸ごと愛してくれる宇佐見に救われます。
読後感も爽やかで、心が弱っている時にはいいです。
美味しいケーキと、宇佐見の言葉責めが萌えでした。
弱っていない時には、弱い健太に歯がゆさを感じて浸りきれないかもしれません。
悪者がいない幸せな童話のような話です。

ひきこもりの健太を大家さんとして慕ってくれて、明るく普通に接してくれて、美味しいお菓子をくれて、温かい気持ちをくれて。
受けの健太へのGIVEやLOVEの方が多いです。

ひきこもり=PC中毒でオタクというネガティブなイメージがあったんですが、ただ外に出ていないと言うだけで、容姿も偏食だから痩せ気味だし、意外に普通な男の子です。
もっと激しくダメダメ人間を想像していただけに、それに驚きました。
ちょっとつまづいているだけで、全然ダメな子じゃないです。

自立するにはまだ少し時間がかかるだろうし、最終的にどの道を進むのかも不明なので、もう少し先も書いて欲しかった気もします。

2

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