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ページ数は200ページ程度と決して長くない巻。
このままあまり進展なく次巻へ続くのかと思いきや、終盤にどどっとお話が進み、とても面白かったです。
食べることは生きることそのものなのだと、久我は鷺沼に強く突きつけます。
鷺沼も変わらず頑ななところはあるものの、久我はじめ従業員たちの考えに歩み寄ろうとしていて、最初ほどワンマンな様子はありません。
ジビエの場面は印象的でした。
というか鷺沼じゃなくても、ジビエの調理風景はレベル高すぎる。
でも、野生動物を捌いて、余すところなく全てを調理する。それが命をいただくこと、それが自分の血肉になること、食なのだと、読んでいても改めて心にずしんと響きました。
レストランについて、まだ食以外のこと(知名度や利益など)を云々と言葉を並べて主張することも多いけれど、鷺沼の心の奥にはすこーしずつ変化が起きているように見えて、その心の動きがなんとももどかしいというか、いじらしくもあって。
クリスマスの繁忙期を自分が出来ることをやろうと動くところも、とても一生懸命で好感度が上がりました。
根本がとても頑張り屋なのだなーと。
久我の気になる、ほっとけない、という気持ちが分かります。
ジビエを懸命に口にする鷺沼に抑えがきかずがっついてしまう久我、すごくどきどきしました。
このシリーズはキスシーンが本当に素敵です。
叶はただの当て馬ではなくて、思ったより鷺沼の生い立ちに深く絡んできた人物だったとは。
そのショックから、さらに久我が、という鷺沼にとっては耐えられない展開だったかもしれません。
あそこまで鷺沼が嫌がる場面になるとは思っておらず、かなり無理矢理になってしまったのは予想外でした。
鷺沼にすれば完全にキャパオーバーです。
久我にしてみれば、「生まれてきて良かったと思ったことなんてー」は食を拒み続ける鷺沼のまさに本音で、その言葉を耳にして耐えられず、鷺沼に生きる実感を与えたかったのかもしれないなとも思います。
突っ走りすぎですがね。
食を根幹とする久我、食を知らない鷺沼。
久我はどうしたって、鷺沼に生きたいという気持ちを持ってほしいのだと思います。
こんなに続きを読むのが楽しみな展開になるとは。
いい意味で予想外で嬉しいです。
シリーズ2冊目も、相変わらずBL的な進みはゆっくり。だがそれ以外のところがとても面白く、また理人の心理描写が素晴らしいので、ぐっと引き込まれていった。
ラストは続きが気になりすぎる終わり方。次巻を用意しておいて良かった。
主な新キャラは久我の元彼女。理人がモヤる描写はあるものの明確な形にはなっていないため、よくあるヤキモチ焼かせ要員としては活躍していない。次巻で登場させた意味が見えてくるんだろうか。
久我は理人への気持ちを自覚する。最初から気になる存在だったのが、ここにきてはっきり“つかまった”と認識する。劇的な出来事があったわけでなく、ちらちら見える理人の内側を覗き続け、その結果久我の中に蓄積された何かが溢れた瞬間だったのかな。
分かるような分からないような趣味だな……と思わんこともない。なんとなくこの男に好かれる理人に同情したくなる気がしたりもして。まあ一言で言うと面白い。
で、BLそっちのけだが本題は理人。叶と『ゴルド』買収の話は確かに1巻でしていたが、あれが本気だったとは。その後も叶の存在感は久我のそれを上回りそうだと思っていたら、理人の過去絡みで一つの事実が明かされる。
驚きなのは、こんな立ち位置でこれはBL小説なのに叶がメインカプでも当て馬でもないところ(今のところ)。が、叶の意図が一番興味深い。足音を消して現れるとか、理人に対し同情や罪滅ぼし以上の感情がありそう……あるといいな。
長年秘密にされてきた真実を知り、同時に心の支えを失くした理人に、久我は結果的に付け込む形になってしまった。今作では叶に持って行かれた感があり、久我の新たな魅力は見いだせなかったため、次巻で挽回して欲しいと思う。
現状では叶の方が好感度が高い。
BLとして萌えるかといわれると困るが、ストーリーに読み応えがあり、小説として読んでいて楽しかったので神。次巻も期待大。
3冊合本版で読みました。
前巻「愛と混乱のレストラン」のレビューで"まさに1冊の本の3分の1あたりまで読んだなという感じ。"と書きましたが、こちらも同じで、この1冊だけだと少々物足りず…3冊揃ってやっと萌えどころもあり完成する印象でした。
特にこの巻、主役2人含め登場人物からどんどん心が離れていく…『ル・ジャルダン・デ・レーヴ』のメンバー(主役2人除く)は好きなんですけどね。修司と理人はなんとも自分勝手としか言いようがない。コメディ然とした作品ならまだしも、そうでもないからな〜
愛と混乱のレストラン2作目。
レストランはだいぶ回復し、スタッフのチームワークも良くなってきましたが、理人だけは未だに一線をひいて心を開けていません。
でも明らかにお互いの視線を意識し始めた久我と理人。
「やばい」「かわいい」と心でつぶやいて恋に落ちた瞬間のシェフは可愛かったです。
一方の理人はついにあしながおじさんと対面し、放心状態に・・・。
(どちらも可哀想で切なかった)
そして動揺した理人を前に歯止めがきかなくなってしまったのは、やはり久我でした。
壊されたのか、救われたのか。
続きが気になります。
文豪の本を読むと、その繊細で緻密な表現に『自分には作家は到底無理だ』と思わされますが、高遠先生の作品を読む際も毎回こう思わされます。
文章がキラキラ輝いていて、すごく切ない。
短い言葉一つ一つに感動させられて、本当に文字通り胸が痛くなります。
このシリーズは、3冊とも素晴らしいんですが、中でもこの2冊目が好きでした。
特にジビエの調理シーン。
理人とは違い、私は割りと食事に対して嫌悪感は持っていないけれど、それでも『食べるのが面倒だから、ゼリーだけでいいや』って思う時もあるので、「命の味」という言葉に改めて食に対する想いを強めました。
この作品は、私のように食事を面倒とか苦痛に感じ始めた方にこそ是非読んで貰いたい作品だと思います。
そして、この調理シーンに続く、修司が理人への恋に落ちるシーン。
高遠先生の、こういう理屈ではなく気づいたら落ちてしまったという書き方は凄く上手です。
まるで実際に目の前で展開されているかのように鮮やかに書かれてあり、この場面は読んでいてずっと胸が痛かったです。
最後、無理矢理の場面もあるので、苦手な方は苦手かもしれませんが、全体的にはそれを越えるくらい優しい作品だと思います。
食事を摂るということは、生きるということ。
当たり前ですが、そんな大切なことに気づかせてくれる作品です。