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杉原理生さんの作品は5~6冊は読んでいて、相性の合わない作品が続いたのですが前回読んだものが良かったので、懲りずに今作を手に取りました。結果は…残念ながら前回読んだものが奇跡的にハマっただけだったのかも、という感じでした。
物語は主人公・真野の一人称で進むのですが、モノローグでは「ぼく」なのに台詞中は「俺」って言ってるところにまず混乱しました。別の作家さんでも同じ表現の作品がありましたが、何を狙った演出なのだろう。単純に、なんとなく別人格っぽい感じがしてモヤモヤしました。
その点を差し引いても、全体的に兎にも角にも焦れったいというかダルい。最初から最後までずーーっと低速運転みたいなシナリオで、これといった盛り上がりがなく、延々と何を読んでいるのだろう…と着地点を見失いそうになりました。読み終えて、栗田が気の毒だったことだけが印象的でした。
真野を挟んで高東と栗田との三角関係っぽかった序盤だけは面白かったのですが、それすら冒頭で栗田の死が明かされているため悲しい予感しかしないし、かと思えば栗田もなかなか死なないし(こんな言い方もどうかと思いますが)、最後の最後で三角関係ですらなかったって…オチがひどいと思います。二人の恋路を邪魔する存在ゆえに消されてしまったような栗田がただただ可哀想でした。
改めて考えたら、高東の妹の話と、真野のミステリー好きと、真野兄弟の話と、三角関係と…全部が何の関連もないといえば何の関連もないですよね。肝心の二人の恋愛感情の目覚めも、微かに萌える小さな小さなエピソードを細切れに繋いだ印象で(実際、章節の数がとても多い)、一行で済む描写をこねくり回して表現している感が否めませんでした。このグダグダ感ゆえですかねぇ…どうにも杉原理生さんの描く男性はみんな女々しい気がします。
そんな、人の生死が関わるような展開があるのに(しかも二人も)、盛り上がりがないって逆にすごい。
ダルいぐらい焦れったいのが大好き!という方にはオススメします。
個人的には、杉原さんの作品はほぼすべてが『趣味じゃない』んですよ。ただ、個人的に評価としての『しゅみじゃない』はなるべくつけたくないというスタンスですので、なんとか『中立』にできるよう努力していますが、どうしても無理なこともあります。
これもそのひとつで、もう『しゅみじゃない』しかないですね。
淡々としているのは構わない、むしろ好みなくらいです。『ごく普通の日常』も『焦れったい』のも『すれ違い』も好きな方ですし。
でも、杉原さんの作品は『淡々』というより『停滞』で『一本調子の説明が延々と続く』としか感じられないんですよ。
なんとも冗長で、うんざりしました。
杉原さん、確かに『まあ悪くはなかった作品』はありますが、好きな作品はただのひとつもないんです。根本的に私とは波長が合わないんでしょうね。
とにかく、文章や全体の雰囲気(空気感?)がくどい・鬱陶しいと感じるんです。文章については、こちらはまだマシでしたがそれでもなんとも思わせぶりでまわりくどくて、読んでてイライラしました。こういうところが『合わない(相性がよくない)』ってことなんでしょう。
そもそも、これだけの長さが必要な作品なのかも疑問でした。ラストが近付いてさすがに慌てて『巻き』にかかったんですか?と言いたくなるくらい、どうでもいいグダグダを長々と続けられてもううんざりでした。
これはもう『焦れったい』なんて表現していいレベルじゃないだろうとさえ思いましたね。ただひたすらにダルくて苦痛でした。
まず、冒頭で『栗田の死』を提示する必然性からして感じられなかったんです。まあ、言い換えれば初っ端から乗り切れなかったってことになるのかな。
しかも、作中で栗田が事故死するのはかなり終盤になってから。結局1人欠けるのはもう最初からわかってるのに、ここまで散々引っ張ったものをあとこれだけのページ数でカタつけるわけ?と。
いつも思いますが、杉原さんはいっそ短くまとめた作品の方が『余計なもの』がそぎ落とされてスッキリしているんじゃないかな。
作家さんによって『こういう設定(キャラクター)好きだよな~』と思うことは多いんですが、杉原さんは特に『似たような~』が目立ちます。
それが許容できるか否かは、その『似たような設定・キャラクタータイプ』が自分の好みと照らしてどうかの問題だと思いますが、それで言うなら杉原さんのパターンは私の好みとはまったく違います。だから余計に『またかよ!』と苛立つんでしょうね。その上に、作品に漂う雰囲気そのものも決して好きじゃないからなおさら。
キャラクターもストーリーもエピソードも、何ひとつとして『よかった』というものがなかった・・・最後のメールも、これたぶん感動ポイントなんだろうな~と思いつつ(もうその時点で完全に醒めてるんですが)、これこそ究極の『説明で流す』ってやつだよなとしか感じませんでした。
杉原さんは他にも未読の積み本がいくつかあるんですが、もういい加減我慢してまでBL読みたくないので(あ、これは『BLなんか』では決してなく、『楽しむための趣味なのに』っていう意味ですので。念のため)、未読作はもうなかったことにします。
桜並木のシーンが印象的でした。まるで自分がその桜を見ているような、そんな風に思わせる綺麗な描写が素敵で、ところどころに、ふわっと漂う独特の空気を感じさせる文章に感激しました。
--(以下ネタバレを含みます)--
序盤に一人がいなくなるという衝撃的な事実があってからの展開で、過去を振り返るように三人の話を見ることになるのですが、三人が繰り広げる学生生活を読んでいると、何故か、彼がいなくなるなんて思えなかったです。(忘れたとかでは無いのですけれど。。。)
高校時代の三人の気持ちが静かにゆっくりと、音を立てない様に・・・でも確実にどこか変わっているのに、それに気づかない様に、壊れないように必死に均衡を保ってる。栗田と高東は互いに真野(受け)のことが好きだとわかっていて、今までの友情があってなのか遠慮してる部分があったりして・・・でも、嫉妬などの じわりとした、やわらかい熱がそこにはあって、読んでいて切なかったです。
ずっと苦しいけど、誰も傷つかず欠けない、この三人一緒という関係をずっと続けて行くのかな・・・と思ったら、一人が欠けます。その時、初めて彼がいなくなるという事実がちゃんと私の中に伝わってきて、気づいたら泣いていました。無意識で自分は栗田を応援していたのかもしれません。すごくすごく悲しくて、「どうしてあの時、真野(受け)に気持ちを伝えなかったの?」どうして・・・たくさん伝えたいことあったのにって。
彼からのメッセージも二人を気遣うようで、余計に彼の優しさが、暖かさが感じられて、しばらく浮上できませんでした(笑)序盤から分かってたのにな~(;▽;)
春がやってきて、桜をみると彼らのやり取りを思い出します。暖かくて優しい風が桜を揺らすようなお話でした。
友達から親友へ、さらにもう少し近づいた距離感。
高校生から大学生へと時も移り気持ちも距離も変わっていく。
その過程が全ての人にあるのだけれどとてもせつなく伝わってきます。
真野、高東、栗田、3人の思いあふれる終盤は涙がでました。
あの時、こうしていれば、こうしていたら、生きている限りそれの繰り返し・・・。
ひとり欠けてしまったけれどその思いも抱きしめて生き続けてほしいと思いました。
見上げる桜並木、ラストシーンがとても印象に残りました。
良かったか良くなかったかと問われると「よかったよ」とお答えしますが、読み終わった直後の感想は「惜しい!」でした。
何がって、いろいろと。
正直、三角関係で、一人が冒頭で死んじゃってたら、残る展開はこれ以外ないもの。
葛藤の内容も、死んじゃった一人への遠慮とか、その彼を間においたお互いの気持ちの誤解とか、それ以外ないだろうという想像はつくし、実際そういうお話でした。
それでも設定やなんかは面白そうで、展開もよかった気がするんですが、何故だかエピソードとエピソードの繋ぎがイマイチ。
何がイマイチと感じたのか自分でもわからないのですが、あえて言うなら地の文が?
表現がとか言葉の選択がとかそういうことでもないんだけど、繋ぎが「押しすぎ」か「足りなさすぎ」のどちらかでバランス悪く感じました。
けどこれは、思いっきり好みの問題なので、合う人にはピタッとハマるんだと思います。
面白くなって当たり前な設定と展開をあえて持ってきておきながら料理が生煮えな感じで、ホント「惜しい」です。
残念ながら出来レースを見ている気がして、萌えきれなかったです。
これに萌えないあたり、私も年とったなぁ…と思いました><