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表題作千年の眠り花

中国の表裏に君臨する男・零飛(リンフェイ)
秘書兼ボディーガード兼恋人・蒼(ツァン)

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

上海経済を牽引するビジネスマンと黒社会を牛耳るマフィアの幹部という二つの顔を持つ耿零飛。出逢いから8年、零飛を愛し、その癒えない心の傷を知った義蒼は彼を護るためには手段を選ばない人間になっていた。日本企業との提携ビジネス拡大を目論む零飛は、敵対組織を潰すため警視庁の刑事・鷹羽と亜南、黒社会でしか生きられない少年・ウーを巻き込み危険な罠を仕掛けるが…。
出版社より

作品情報

作品名
千年の眠り花
著者
沙野風結子 
イラスト
小路龍流 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
シリーズ
花の堕ちる夜
発売日
ISBN
9784861343292
4

(9)

(2)

萌々

(5)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
36
評価数
9
平均
4 / 5
神率
22.2%

レビュー投稿数2

痛みを忘れた男の涙の意味

シリーズ連続刊行の3作目は1作目の零飛×蒼がメインでのお話になります。
1作目で蒼が過去の心的外傷のショックから痛みを感じなくなってしまった零飛の
痛みを自分が代わりに感じていこうと心に決め、何事にも関心を示さない攻め様と
共に歩くことを決めてから、既に8年の月日が流れています。

黒社会とは無関係だった蒼が妹の復讐から零飛と取引のように関係を持ち、
今では零飛の為に手を血に染める事も厭わない状態になっているんです。
でも、8年経っても零飛に変わったところは無く、蒼は自分の無力さに落ち込む。

そんな時に零飛に表向きの仕事に妨害が入ったように感じる出来事が続発し
それを探る為に日本へ二人は再び旅立つことになるのです。

零飛の蒼にも解らない考えの元、過去の懐かしい人物との再会が待っている。
それは刑事の斎が全裸でミラー越しに拉致された姿で、蒼は零飛の悪趣味を責めるが
結果的には零飛に従ってしまう自分の甘さを自覚してしまう。
そして、もう一人は、16才になったウー君。
斎を使い暴れ犬のようなウー君に服従の罠を仕掛ける零飛なんです。

この子犬のようなでも、間違いなく黒社会の一員であるウー君が何やら健気で
可愛いのです、気持ちと身体の狂おしいまでの葛藤は不憫で零飛遣り過ぎなんて
思ったりします。でも萌えなんですが(笑)

そして、このメンバーで来たら忘れてならないのは斎のパートナーの鷹羽さん。
今回のお話では、意思とは関係なくちょっぴり不貞を働いてしまう展開なのです。
蒼も、そうなんですが、その事も余計に後の蒼の諦めに似た気持ちを後押ししてる。
今回は零飛によって、全ての人間が駒にされて動かなければならないようになるのです。
でも、零飛の思惑は蒼だけはそこには入っていなかったのですが、蒼の行動で
零飛は振り回される事になるんです。
でも、蒼本人はそんな事に気が付いてもいない、8年の月日で零飛が変わっていないと
思い込んでるのは蒼だけなんですよ。

二人で共にいた8年は、目に見える急激な変化は無くても着実に零飛に影響を
与えているんです。
蒼を助けようとする時に、目に見える変化が現れるストーリーです。
蒼が思う以上に愛されていて、零飛にとって唯一無二の存在なんです。
それが今回のタイトルにもつながっていました。
そして、ルー君の話にも繋がって行くんですよね。零飛に植え付けられたトラウマを
克服出来るのか?が「花の迷い仔」の隠れテーマです。

3

気高き応龍…大好きになりました!

「花」シリーズラスト。お話は、やはりマフィアと企業の駆け引きや取引についてで
漢字ばかり(しかも中国読み…)の企業名で私は終始チンプンカンプンでした…汗。
ええと…、零飛が取引したい相手が、
零飛が幹部である組織・千翼幇(チェンイーバン)の敵の黒爪幇(ヘイツァオバン)に脅されていて…
だから零飛が、「人質の娘を助ける代わりに、あなた私の要求呑んでね?」
みたいな感じです。 安易過ぎる。すみません。
しかし「花陰~」で気になっていたウーが登場してきてかなり嬉しかったです!
生きていた…!
しかも相変わらず亜南にぞっこんという…。
4年間、そっと見守っていたんですね…。少年の健気に早くもキュンと来ちゃいました。
ですが零飛はウーの恋心を利用して色々と彼を利用…本当にヤな人ですよ…。

諸所の事が蒼に不安を生み出します。
8年間も一緒にいるのに、蒼には零飛のことが未だによく解らないのです。
零飛は痛覚が鈍いから、自分の痛みも他人の痛みも感じる事ができない…。
分かち合える過去を持っているように見えた2人ですが、
100%同じ痛みではないし、それ以前に同じ人間じゃないのだから分かる事なんてできないはず。
多分…蒼のは恋愛の初歩的なところでの悩みなのですが、
相手が零飛だし、自分の立場も立場なので総てがややこし過ぎる…。

でも、寂しさという点では一番感じているのは零飛みたいでした。
蒼が苦しいことを、解ってやれないことが苦しい…でも痛みに鈍いから分からない。
それでその分かれない痛みは、蒼には分かれないから分かってやれなくて…。
しかし結局蒼はそれでまた苦しむから……要するに、いたちごっこなのかもしれません。
いたちごっこだから、終わる事がない、だから2人は繋がっていられるのだという気がします。
だから零飛は、蒼が自分を置いて逝ってしまうのだと感じた時、泣いたのだと思いました。
蒼の悩みは杞憂でしかなく…生きる限り2人はいたちごっこを繰り返して
傷付け合って愛し合うのだと思いました。

お話を読んでいない方には全く持って分からない…ただの感想文になってしまいましたが、
つまりは読んで欲しいということです。
まるで本当に龍みたいに、強くて光っているのに幻みたいな零飛が、
最後にちゃんと、ひとりのおとこであることを示してくれて本当に感動しました…。

3

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