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『wonderful days』で慎吾の相談役だった深津のスピンオフ。
前作を読んでいなくても問題なく読めます。
そして前作より萌えます。
居酒屋でバイトしつつ、3年遅れで大学に通う深津理一(21)。
居酒屋店長でバツイチの神田は、ふだん愛想がなくてとっつきにくいけど、あるとき、深津は彼の親しみやすい部分を知って…。
タイトルに『ロータス イーター』というのが深いです。
ギリシア神話の食べたら何もかも忘れてしまうという「ロータスの実」の話から取っていると思うのですが、ノンケやバイという「女でも勃つ」男とは付き合わないと固く決めていた深津が、「神田」というロータスの実を食べて、つらい過去もわだかまりも忘れて、すべてを委ねていく過程が素晴らしくて!
深津がツンデレじゃないところが良いんです。
神田相手に語られる彼の過去の過酷さがまた絶妙で、そんなトラウマがあったらそれは抗うよなあと納得できるから、自分を「好きだ!」と言ってくる神田に、「ノンケとバイはお断り!」と冷たくあしらうのも分かる。
その一方で神田という「人間」に惹かれていたのも事実だから、好意を示されて複雑な気持ちになるのも分かる。
そのせめぎ合いで揺れる心理描写が良いんですよー。
ぜひ読んで納得していただきたいです。
神田の方も、元ノンケだけあってグイグイ来る。
おそらく今までの恋愛はこれだけ押すまでもなく、相手が落ちていたという経験ばかりだと思うのです。
むしろ自分が押さなくても押されて流されて、まあ、いっかみたいな。
だから深津に対して見せる「チャンスがあるなら逃さない」感がすごく良くて。
余裕も外聞もなく、とにかく突き進む。
深津を逃したら一生後悔するという勢いで来る。
そもそも自分の好きなタイプのビジュアルで、人柄的にも「仲良くなれて嬉しいな」と思えるような相手にそこまで迫られたら…。
落ちざるを得ない!
やや年の差のある攻めが受けを「可愛い、可愛い」っていうのがたまらん!という方にはまさに「たまらん!」作品です。
同時収録は【シュトルムウントドラング】(疾風怒濤)。
『チャオチャオバンビーノ』のあとがきで言っていた、中学生×保健室の先生の話。
優等生で女子にもモテる人気者。
中3の上原が抱える葛藤と、超中学生級の上原の魅力にふらふらする保健室の先生の、一触即発な空気が良いです。
でも天禅先生の作画だと、中学生がやっぱり中学生に見えないので、「中学生はちょっと…」っていう方も安心して読める中学生です。
ノンけの店長さんがバイトの里一の時折見せる冷めた表情に惹かれてしまうんですね。もうその時点で包容力があると言うか、弱ってる人を守ってあげたくなる人なんだなと好感が持てます。
一方、里一のキャラはノンけとバイはお断り!とハッキリした性格。その癖、ノンけの店長をメロメロにしちゃうほどの漂う色気がたまに溢れちゃうんだから、天然の魔性なのかなぁ。
好きなタイプなのに告白されてもノンけだからときっぱり断る里一と諦めずにぐいぐい攻める店長がすごくよくて、ニヤニヤしっぱなしでした。
『wonderful days?』にていい仕事をしてくれたりっちゃんが主役。
りっちゃんはどこまでも『りっちゃん』なんだなぁ…としみじみ。
素直に甘えられずツンとするところも、グイグイと誘惑するところも、すべて好き。
過去のことでノンケとバイには惚れないと豪語するも、好みの男にあれだけ口説かれたら…ねぇ。
いくら誓いをたてても、落ちるときは落ちるもの。
トラウマを超えるぐらいに惚れてしまってはしょうがない。
いざ決めたら、のときのりっちゃんの行動力はあっぱれです。
おっとこまえ!なんだけど可愛いなぁ。
グイグイと攻め込んできた神田さんの、一本気な正確も◎。
照れて赤くなるところがまた評価アップなんですよねぇ。
カバー折り返しの4コマがツボ。
りっちゃんは有るのに我慢はしたくないタイプなのね。
りっちゃんの魅力をたっぷり堪能した一冊でした。
私が天禅桃子作品を初めて読んだのがこの作品で、表紙に惹かれて購入しました。
それまではショタ寄りのかわいい受けが好きだったのですが、りっちゃんに完敗。タバコを吸う受けでもこんなにかわいいなんて!ツンデレ万歳!
カバーの4コママンガのりっちゃんにニヤリ。
魔性の魅力がりっちゃんにはどこかあります。
天禅先生の作品には攻め受け問わずタバコを吸うシーンが必ず出てくる?のですが、なんか素敵に見えるんですよね。
飄々としている二人は、タイプが違うのにクールな魅力で溢れています。
好きにならないって思ってる時点で、結果好きだと言ってるようなもので。
過去のトラウマによって里一は神田を拒絶するけれど、見た目がタイプならそうはいかないんでしょうね。
まず狭い筈の入り口をいとも簡単に突破している訳ですから。
神田さんのオットナーな筈の態度は実は幼稚臭かったり、可愛かったりして、結構グッと来ました。
里一が時折するあの表情は、「何を諦めていた」んだろうって思っています。
神田が話す、当たり前の事?それとも傷付いた心を浮上させる事?
きっとすべてが含まれていたのかな。
こちらの表題作より、この直後の【ロータスエフェクト】の方が好き。
甘え方が分からない里一の性格に気付く神田は幸せそうで。
神田を好きだと自覚してからの里一が可愛いです。
きっと里一は、素直になるとトコトン甘えて可愛いヤツな筈!!という目論見はあながち間違っていなかった気がする。
そして、【シュトルム ウント ドラング】。
保健室の先生と中学生のお話でしたが、こう、かげのある黒い暗い部分がある感じが何とも好みです!!
中学生の欲望に応えちゃう先生…
この頃の天禅さんの絵柄ともマッチしている気がして、心が激しく騒ぎました。
何か一定量の物を超えると歯止めが効かない、というのをこちらの本で感じられたのが面白かったです♪