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なんかもう、元祖オメガバースなどどいう使い古された簡潔なワードではくくれない、ジェンダーとか人類とかの枠を越えた壮大なストーリー。
杉本先生の作品は、30年くらい前にBL雑誌の原点ともいうべきJUNEに掲載されていた読み切りでした。そのころからとても気になる漫画家さんではあったけれど、結婚出産育児でしばらくマンガから離れていた時期があり… たまたま目にした『ファンタジウム』が私史上五本の指に入るくらいの素晴らしい作品だったので(残念ながらもう書店で手に入らず、泣く泣く中古で購入)、ずっと読みたかったこの作品をつい最近読破しました。一気に。
泣きました。
どうしても女性目線で見てしまうので、これでもかというくらいの恥辱に晒される裕二がもう顔を背けたくなるほど痛々しくて。
なのにページを繰る手が止まらないのは、元ヤクザ・高取のいうように「辱しめられても貶められても全然汚れない」裕二の聖母のような心と、初めは乱暴だったけど裏表のない湊の、裕二に向けられたまっすぐな愛情に望みを賭けたかったから。ダイナソーロイドからも人間からもどんなに愛情を向けられても、湊と結ばれることを選ぶ裕二のぶれない心の清々しさも重くなりがちなストーリーを明るく導く灯のようです。湊の子どもっぽいやきもちや、変身した時にゴロゴロ甘える様子もかわいくて和みます。BL視点からいえば、北海道の血族・白河や中国の血族・申竜などとの絡みもみどころですが、そこのところすらどうでもよくなるくらい、医療や科学、企業、政界が複雑に絡み合う綿密に練り上げられた背景には圧倒されます。そしてラストを飾る幸せな家族の姿は、血で血を洗うような多種族同士の暗い歴史を2度と繰り返すまいという誓うように幕を降ろすのです。
とにかく、多くの人に読んで欲しい!そんな作品です。