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素直じゃなさすぎる教師と優柔不断な元教え子。何も起こらない中でノンケが同性に惹かれていく展開に説得力はないが、心理描写をじっくり読みたいときは良いかも。BL前提で“恋ってそういうものだから”とフォローありきな作品って印象。
両視点で、最初は棚橋視点から。彼女と結婚するつもりだが流される自分にモヤモヤしているのが伝わってきて、こちらもとてもモヤモヤする。事件も心理的な刺激もなく水原に惹かれていくのは、ちょうど心に隙間が空いていたからかと思う。
自主性がないと自己評価を下す棚橋は、本当にふらふらしている。水原への恋心を認めるまでにふらふらと揺れまくり、告白に至ってはただの二股宣言のようでびっくり。あとから理由を述べてたけど、これほど萌えない告白もない。
ギリギリの土壇場でやっと心を決めるのも、大竹の強力な後押しがあったからであり、ズルいというか人間らしいというか。ただ、棚橋は水原が女性なら彼女の方を振っていたと言っており、その時点で結論が出てた気がして、気持ち的に盛り上がらなかった。
後半は水原視点で、焦らし焦らしてなかなか付き合わない二人のあれこれ。水原は五回尋ねてもノーと言い、六回目でやっとイエスと頷く意地っ張り。この情報は振り向いてもらえない棚橋にとって、ずっと支えになっていたのかな。
棚橋いわく“人生を変えてしまうほどの想い”が、些細な日常の中で生まれるお話。恋心自体の心理描写は読み応えがあると思う。でも恋に落ちるエピソードに萌えたり共感したりしたいときに読むと物足りないかな。
同窓会をきっかけにやけぼっくいに火が付くお話はよくありますが、こちらは当時特別な関係だったわけではなく、ただ同窓会で再会したのを機に元担任、元教え子の関係のまま交流を深めていつしか恋愛感情に発展する、というお話でした。元教え子視点の「いつか終わる恋のために」と、元担任視点の「恋ひめやも」の二本立てです。分量は前者の方がページ数多いですが、だいたい半々くらいです。
「いつか終わる恋のために」を読み驚いたのは、主人公の棚橋には結婚を控えた彼女が居たことでした。しかも仲も悪くなく、両親に紹介する約束までしています。繰り返しますが学生の時に水原先生を好きだったとか、主人公がゲイだったとか、そういうのは一切なくて、同窓会きっかけで交流するようになって、御飯食べたり本の貸し借りしたりたまに遊びに行ったり、そうこうしているうちに好きになっていったのでした。水原先生の元彼とのあれやこれやを知ってしまったことが、多分に影響しているだろうとは思うのですが、人生が変わってしまうほどのことに踏み切るには些か短絡的という印象は否めなかったです。まあそれが恋に落ちたのだ、ということかもしれません。
続く「恋ひめやも」はその続きにあたるお話で、水原先生の側から描かれています。ものすごく内省的で後ろ向きで強情で、差し伸べられる手を振り払い言葉で傷つけ、居なくなったら遠くの月を眺めて涙するような、大変に大変に面倒くさい性格の人です。なので、この人視点で物語を進めると、地の文はほぼネガティブ思考で満たされ、同じところをぐるぐる周り、読んでいるこちら側も迷路にはまったかのように八方塞がりのような気持ちに。棚橋が押して押して、ようやく最後に結ばれましたが、今後この二人はどうなっていくんだろうなあ、と遠い目です。
どちらのお話も、ものすごく丁寧に二人の心情が綴られており、大きな事件など全くなく淡々としているのに飽きることなく最後まで読み切れました。「恋ひめやも」の方は書き下ろしで、終盤ときどき科白がかたくなるのだけ気になりましたが、気付いたら最後のページでした。さすがの筆力といいますか、集中を途切れさせられずに走らされたような、ちょっと不思議な気持ちです。
それと、本筋にまったく関係ないのですが、途中の地の文で「伝染病に冒され病に倒れた人がいても、どうして感染なんかしたんだと責められないのと同じだ。」という文章がありまして、確かに昔はそうだったけどコロナ辺りから変わっていったな、と世情につい思いを馳せました。
大御所の文章に魅せられた1冊です。
タイトル通り、また英田先生もあとがきに書かれていましたが、ヤクザもスパイも出てこない、普通の男たちのお話です。
それなのに引き込まれます。
一気に読み終えてしまいました。
先生と元教え子。
過去の傷により臆病で頑なになっている先生。
まんべんなく愛せるけど恋に狂ったことがない棚橋。
恋心を自覚するも、それぞれが1歩踏み出せない。
棚橋が踏み越えてからも先生の頑なさと言ったら…!じりじりしました。
が、ただの男たちの葛藤が丁寧に書かれていて
すごく良かったです。
小山田あみ先生の絵も言わずもがなの美しさ。
読み終えてからしばらく余韻に浸ってしまいました。そしてまた最初から読み返したくなりました。きっと、これから何度も読み返すと思います。
わりと身近にありそうなラブストーリーですが、言語化しづらいところの恋愛の本質が見事に描かれていました。英田先生の他の作品に比べたら、事件もイベントもなくて地味なのかもしれないんですが、この偉大なる地味!日常の細部にこそ見過ごせない真実があるのではないでしょうか…!(笑)
ままならない恋の緊張感を追体験してしまいました(引っ張るぅ~)。”いつか終わる恋のために”は攻(棚橋)の一人称・僕がとても新鮮です。前半の棚橋は一見いい人そうだけど、計算高くてまぁまぁ嫌な男だなと思いました。が、そんな社会的優等生が、元担任・水原を好きになり計算ができなくなって感情で動いてしまう。順風満帆に周囲が望むような人生を歩んでいた男が、”どうした俺?”とコントロール不能な恋の沼に落ちていく過程にワクワクしました。一緒にいるとしっくりくる心地よさというのは、まさに”相性”なんだろうなと。なんで好きになった?(5w1h)をきちんと説明できる客観性は恋に必要ありません。(なので棚橋は正解)恋敵・大竹の言葉でスイッチ入る棚橋の行動が怒濤すぎて萌えました。
タイトルの”恋ひめやも”は受視点。この一冊で攻受両視点って本当に佳き!水原ってそもそも恋愛体質なんですよね~(奪う体質で奪われたがりww)。大人になればなるほど、経験が行動の枷になるので、水原が若い恋人の出現に戸惑って動けなくなるのは、自分の両親の事情とあいまってとても自然なことなので、若い棚橋に誠意(と根気)と情熱があったということが、この2人にとっての僥倖だったし、運命だったんですよね。そして、(やっと)初めてのスケベでの水原の魂の叫びは、声に出して読みたいくらいいいんですよ!
恋はいつか終わるのかもしれないけれど、始めないまま終わる虚しさを抱えるよりは、終わった後の喪失感を抱えたほうがいいし、2人で見た景色や一瞬一瞬を積み重ねることで、また違う関係性に発展できるはず!(特に水原、頑張って…。)と気分が高揚するようなラストでした。
サスペンスなし、日常あるかもしれない状況設定での恋愛小説。
各章の小タイトルは内容を掴みやすい構成。分かっているのに、読みながら心を掴まれてしまうのは、著者の巧みな文章力のせいなのかな?
「いつか終わる恋のために」・・棚橋の気持ちが軸
「恋ひめやも」・・水原の気持ちが軸
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かつての教え子・棚橋が同窓会で担任教師だった水原と再会する。
水原の外観が変った事から関心を持ち、読書好きの棚橋は水原と本の貸し借りで交流しだす。
ある日、水原のマンションに向かうと、情事の後らしい水原の姿を見てしまう。
増えすぎたら古い本を棚ごと一気に棄てるのに、不倫相手との関係を清算しきれない水原。
好きな本は何度も読み返す棚橋は、水原の過去を知るにつれ放っておけなくなり、気持ちが心配から恋に変わっていく。
棚橋は、本嫌いで結婚願望高い友梨奈と結婚を約束していたが、水原への気持ちを押さえられなくなる。棚橋は悩んで、友梨奈へ土壇場にきてやっと自分の気持ちを伝える。
「コイメヤモ」
冒頭で、「生きめやも」の解釈についての会話がある・・「めやも」は水原の逃げ口実になっていそう。
一見一方的に惚れているのは棚橋に見えるけれど、実は逆なのではないかと思う。モダモダ年上男に年下の世話やき執着男が、肉体関係なしにモダ男に心をからめとられていく展開。
水原のようなダメモダ男を魔性と言うのかもしれない。
実は水原の運命の蜘蛛の巣にかかっちゃった棚橋。
二人の恋は読者の涙をそそるような焦れ焦れに展開していく。
これでよかったのか‥?読後モヤモヤ。
ホントで購入した電子書籍には、イラストがなかった。この作品は紙版の購入をお勧めします。
モダモダは苦手なので萌2.
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万葉集
額田王、
【あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る】
額田王の歌をうけて皇太子(大海人皇子)がお答えになった歌
【紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも】
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タイトルと内容の原案は、万葉集の大海人皇子と額田王との詩。
かつて恋人同士だった二人が別れた後、当時の恋人・天智天皇も同席する宴会で、ふざけてかつての恋人に額田王が歌を送る。その返歌。
