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表題作イノセンス ~幼馴染み~

来栖貴文,幼馴染で議員秘書,高校~29歳
乃々山睦,純粋無垢な青年,高校~29歳

その他の収録作品

  • イノセンス~再会~
  • 冬の向日葵
  • 真夏の椿
  • あとがき

あらすじ

睦の「好きな人」は子供のころからずっと来栖。睦には、その「好き」の意味もあまりわからない。そして二人の関係に変化が訪れ…!?
(出版社より)

作品情報

作品名
イノセンス ~幼馴染み~
著者
砂原糖子 
イラスト
陵クミコ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344819702
3.9

(114)

(52)

萌々

(23)

(23)

中立

(8)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
25
得点
429
評価数
114
平均
3.9 / 5
神率
45.6%

レビュー投稿数25

ふたりで確かに歩む未来

時の流れは残酷ですよね。
幼い頃は褒められる純真な感性も、いつまでも持ち続けることを世間は歓迎してくれない。
"真っ直ぐ"育った人達からは変なヤツ呼ばわり。
考えてもわかりませんが、考えずにはいられませんでした。

それはともかく...
ありのままの自分を愛してくれる人がいる。
その幸せを、読みながらこちらも分けてもらいました。

いい大人が大はしゃぎで雪合戦をする夜。
ふたりの幸せそうな様子を想像して涙が溢れました。


電子版には挿絵が入っていなかったのが一つ残念だったな...
シーモアには注記されていませんでした。
(あとでebookのページを見に行ったらこちらは注記がされていました。)

1

涙〜

内容わかっていたので精神的に余裕でるまで積んでしまってました‥
思っていたのと違ったポイントがひとつ、
受けの障がいがはっきりしているわけじゃないので、天然のような感じもあります。

ちゃんと障がいってハッキリしているのかと思ったのでそこだけ違いました。それにより周囲の理解とか反応も健常者の天然に対するソレって感じなので、人によるとは思いますが睦じゃなければ、もっと生きづらさをかかえてもおかしくないなと思いました。

こういう一度離れる系はもう涙涙になります。
そして離れてる時間も結構長い!
途中章のタイトルが文中にあるかのような感じもして、気になりポイントがあるのでずっとモヤモヤはするのですが二人が気持ちを通わせるまでが切なくて切なくてたまらなかったです。

睦の親はあれだけかわいがってるけど障がい認定もらわなかったのかな‥となんかリアルな方の設定が気になってしまいました。
執筆されたときの時代もあるかなと思いますが、2003年なのにまだまだな時代だったんですね‥世知辛い‥

0

無垢な睦

『イノセンス』 (INNOCENCE)
この内容だと、純粋とか、無垢、という意味で、睦のこと。

2005年発刊の古い作品。
『イノセンス~幼馴染み~』
『イノセンス~再会~』

2010年の再編版には、二つ書き下ろしが追加されて文庫化。
私が読んだのはその電子版。表紙の睦がとても可愛らしい。
「冬の向日葵」
「真夏の椿」

乃々山睦:やや発達障害傾向。
純粋で悪意が無い素直な美少年。
大好きなものは、クルちゃんこと来栖貴文。・・睦の「大好き」にクルちゃんは戸惑う。
でも貴文が大学入学で東京に行ってから、会えなくなる。

来栖貴文:睦の幼馴染。同じ年。
男女を問わない睦の「大好き」を、どう受け止めたらいいのかずっと戸惑う。
県議だった父の葬式で、養子だと知る。 恩に報いることを強く意識する性格。

クルちゃんを駅で見送る場面、睦は自分の喪失感をどうしていいのかわからず、駅で泣き続ける。
この場面で、睦はクルちゃんのような人が傍に居ないと、上手く生きていけないのだな、と思った。

『イノセンス~再会~』:8年後、貴文が大卒後に秘書職に就き、政略結婚を進める最中、睦と再会。
色々あって、貴文は睦の傍にいることにする、「真夏の椿」でハピエンに。

子供のような発達障害を持つ睦を見守るクルちゃんや、睦の家族は優しく忍耐強い。
愛情深い人が、睦の周りにはいつも居る。睦は人の縁に恵まれている。
読後感良い作品だった。・・心の汚れを流す落涙小説。

2

イノセンスとは…

すごい内容だったな~とじわじわ後から感動がくる作品でした。

高純度の幼馴染みラブです。とにかく純度が高いです。普通の幼馴染みものとの大きな違いは、受(睦)が攻と一緒に大人にならないところです。心が子供のままなのです。一般社会で生きるにはハンディキャップというのかもしれませんが、恋愛の障害にはなっていないし、彼自身そのことで不幸ではなく、かわいそうという視点もないのがいいです。本当はこういう風にいられたらいいんだろうなとも思いました。また、睦を特別視せずに対等に接する仲間たちが集まる素敵なコミュニティで、主に睦の視点から描かれているせいか、そこから改めて社会や人の奇妙なところが見えるようで、いろいろ考えさせられました。

来栖(攻)ですが、睦に対しての気持ちが、ただの劣情なのか恋愛なのかわからなくて葛藤→大人で汚い自分はキレイな睦にふさわしくないと葛藤する様子にじれったさを感じました。そうしてモダモダする彼に「クルちゃんはジュンスイなんだね」と、スルっと睦に言わせる演出が素晴らしいです。変わらず無垢であり続ける幼馴染に対して、変わっていく自分とのギャップに苦しみながら、本当は睦の心と同じでありたいと願う来栖の気持ちこそが、実はイノセンスなのかなと思うのでした。

5

大事なものを捨てて大人になった男の子と、永遠に大人になれない男の子

この題材を読んだのは二度目。最初に読んだのは依田沙江美先生の「ブリリアントblue」だったが、読んでいるときに感じていた思いは共通で、それは「こんなに男同士っていうのが障害になる設定ってない…」というもの。

「ブリリアント~」も同じように幼馴染のお話なんだけど、どちらも「受けが女の子だったら、なんの問題もなく高校生から付き合えたし、来栖は将来睦と結婚するって、大人になっても言えたんだろうな」と思ってしまう。
初めて睦に対して、性的な感情を自覚した来栖の絶望たるや、想像を絶するなと。
睦が男の子であるがゆえに、来栖は自分の想いを押し殺し、少しでも睦に似た女の子と付き合い、彼から逃げるように上京し、好きではない女性と婚約までする。
なぜなら睦は、単純な、蒸したプリンや卵焼き、戦隊ヒーローに対しての「好き」と、「付き合いたい」「恋」という意味での「好き」の区別もつかないような子。
彼の思い描く「付き合う」というのは、「一緒に遊んで、ゲームしたり、絵を描いたり」するというようなレベルなんで、とてもじゃないけど、勢いで押し倒したりなんてできない。

全部で四本のお話に分かれているのだけど、最後の書き下ろしを除き、全体を通して、受けへの想いから自由になりたいのになれなくて、葛藤してしまう攻めの想いに胸が詰まる。勿論、自分の「好き」という想いが特別であるとわかってもらえない受けも、かなりつらくって…。「なんでもしてあげる券」のくだりでは、涙腺が大決壊。「一緒にいたい」というただそれだけのことが、大人になるとこんなに難しいなんて。

大学進学からの、会わずにいた八年間を、後に来栖が「一方的におまえを切って捨てた」と言うのが切ない。そうやって切り捨てなければならなかったものが、彼には他にもあったけど、本当は捨てたくなかったものもたくさんあって。だけど、一番大切なものがなんなのかを知るために、ふたりにとって、それは必要な回り道だったんだと思いたい。

来栖の、捨てたはずの子供の頃の宝物を、睦がずっと大事に持っていたというエピソードが印象的。これからの人生でまた来栖がなにかを失ってしまったとしても、いつだって睦が、にこにこしながらそれを取り出して、目の前に見せてくれそうな気がする。

4

良作です。

最近小説の面白さに気が付き、せつないものを読みあさっている最中に出会いました。
良作です。
導入から中盤まではテンポ良く読みすすめられ、特に駅で別れるシーンはとても切なかったです。
後半は少しもたついたかな?という読後感でしたが、地元に帰ってからのエピソードも良かったです。二人で幸せに生きていって欲しいと強く思わされるラストでした。

他の方も仰っているように、惜しむらくは睦の障害の状態像のズレでしょうか?
小説の描写からボーダーの知的レベルということですが、一般の高校に入っていることを考えると、療育手帳を持っていて手帳有りで受け入れてくれる一般の高校のコース(定員割れで実際にこのような受け入れをしている学校もあります)に入っているのか、高校入学に際して療育手帳が出ず支援学校に入れなかった(これも実際良くあります。手帳必須の所も結構ありますので)のかな…と推測されるのですが、彼の言動と比較するとボーダーラインよりは少し下の方なのかな?と思ってしまいました。
一方で、一人で電車に乗ったり面接をこなしたり、働いたり、果ては自立した暮らしも可能であったりするので生活能力は申し分ないレベルですね。この部分も実際の知的障害の状態像とはズレがある気がします。もちろん個人差はありますが。
ボーダー域ではなく、軽度よりの中度という描写の方がしっくりくる気がしましたのでその辺は惜しいのかな…でも成人後もレイダーマンがずっと好きな睦の描写はとてもリアルでしたので評価の迷いどころです。
ただ「睦が純粋だから好きなんじゃない」という台詞、自分も身につまされるものがありました。私はお仕事で知的の方と関わる機会がありますが、純粋さというものをついつい過度に意識してしまい、相手の本当の姿を捉えきれていないのではないかと常々思ってしまいます。この辺りの来栖の気持ちはなんだか自分と重なってしまってぐっと来ました。完全に個人的な経験からですが…笑

現実はこのお話のようにうまくいくことの方が少ないですが、睦は来栖を好きになったからこそ地元を飛び出し独り立ちをし(←これがどんなにすごいことか!)、愛し愛される喜びを得ることができた。彼の成長を促したのは間違いなく来栖への思いであるし、来栖をきっかけに自分の新たな可能性に気づいていく睦の姿は希望に満ちているな…と思いました。うまくまとまりませんが、読むことでじんわりと胸に残ったものを考えさせられる、そんな小説です。

4

キャラは良い、だけど…

重い内容なので、読了までにかなりの時間が掛かりました。
少し読んでは置きを繰り返し、結局1ヶ月ぐらいかかったのかな。

BLとしても恋愛小説としても、良い出来だと思う。
来栖の苦悩もよく伝わってくるし、睦の健気さと純粋さ、そして一度だけ激情を露わにして宝物の数々を破壊するシーンではなまじな一般文芸よりもぐっときた。
それ以外でも「睦には分からないけど読者には分かる」という不穏なものを表現するのが凄くうまい。
少しだけど議員や選挙のことについて知れたのもよかった。
しかし25年以上も第一線で人気で新作映画が出るとか凄いなレイダーマン。

二人の将来かあ。
まあこれは時代も進んでるんだし、将来的には「代議士×画家」の同性カップルだって受容されるようになるかもしれないからそれはあまり悲観しない。

知的障害者をBLの対象にするななどとは思わない。
少なくとも睦はちゃんと自分なりに考えて来栖と結ばれることを選んだし、来栖も時には耐えられず暴走してしまうけどそれは充分共感ができるもの。
その上で最大限睦を尊重して、そしてようやく結ばれたわけだから。

でもそれでなぜ高評価にできないかと言えばまず最初に、これは典型的な
「性悪当て馬女を出して恋愛成就の小道具にするBL」
だから。
それが残念。

第1話もその傾向はあったけど、第2話とか露骨すぎて引く。
志織さん、ねえ。紫織さんの間違いじゃないのっていう。
ラストのフォローもとって付けたようにしか思えない。

そもそも未来の夫の友だちの友だちが強盗犯で服役中じゃ、不安になって絶縁させたいと思わない方がおかしいでしょ。

でも、最大のネックはやはり睦の「障害」の描写なのだよな。
レビューを見て睦を発達障害とか学習障害とか仰っている方が多くて驚くのだけど、それらはあくまで知能や感情の遅れがないもので、だからこそそういう独自の名称がつけられている症状でしょう。

睦は言動を見る限り、明らかに「知的障害」。
それなのに作中設定で「ボーダーの位置であり養護学級に行くほどではない」と明言されているのも疑問だ。
そしてもう一つの疑問として、このレベルの子だったら、たとえ偏差値最低ランクの工業高校だろうと一般の高校に入って3年で卒業するとかむりじゃないかということ。
工業科なら危険を伴う実習もあると思うのだがそれはどうこなしていたのか、説明は一切無し。

ただの劣等生と知的障害者は絶対に違う。
作者は、「低偏差値の工業高校」というものを知的障害者でも入学卒業できて高卒の資格を手に入れられる装置か何かと思ってないか。
「数学は不得手」って、つまりある程度はできるってこと?
色々と違和感あるところが多い。

睦を一貫して普通学級に通わせた親の心理というものが一切書かれていないけど、結局作中で一番睦を辛い目に合わせたのは、他でもないこの親じゃないか?
そしてそれについてのツッコミを(肯定的なものであれ否定的なものであれ)一切書かない作者の精神は?と思ってしまう。

さらに中性的な美青年とか絵の才能があるとか、もうね……

BLはファンタジー。でもファンタジーにしてはいけないこともある。
とりわけこれはリアルよりの作風だし、「この題材をこういう風に書くなら疎かにしてはいけない」というものをかなり無視して書かれているという気がする。

終盤で出てきた「睦が純粋だから好きなんじゃない、ただ側にいて欲しいだけ」という一文は確かに来栖の本心なんだろうけど、個人的には唐突というか、障害者に純粋キャラを押しつけているという批判をかわすために作者が慌てて入れたというものも感じてしまう。

睦を選挙戦に利用しようとする志織に来栖が怒るけど、やっぱりこの作品自体が感動ポルノという気がする。
主人公二人のキャラは好きだし、応援したいと思えるのでそこが非常に残念な所です。

2

切なさナンバーワン

最高です。
BLって穿った見方している人達にもおすすめできます。
切なくて泣けます。
そこら辺の売れてる恋愛小説よりずっと感動できます。
純愛です。

2

責めるのではなく許す、心が浄化される話

電子書籍で読了。挿絵なし。

電子で読んで良かったかも。
紙だったら、涙で本をグニョグニョにしちゃったかもしれない。

家が隣同士で小さい頃から仲良く育った2人。
来栖は早い段階で睦くんに対する感情を、フィジカルな面も含めた恋愛であると意識しています。
ほんの少しだけ知的障がいを持つ睦くんは、ただただ来栖ことクルちゃんが好き。お絵かき、蒸したプリン、レイダーマン人形、おとうさん、おかあさん、と並列で好きなんです。
これは手を出せないよ。出したら犯罪だよ。
でも、来栖は手を出しちゃうんだよね。
罪悪感は半端なかったと思う。
睦くんの前から姿を消さざるを得なかったのも解るんだよね。

おまけに来栖は志半ばでなくなってしまった父以上の議員になりたいと思っている。
養子なんですよね。だから余計「さすがあの人の息子」と言われたい。
そのために上手く立ち回って、もう小狡いのなんのという大人になっている。
本当はそんなことやりたくなくても「大人になるってこういうことだ」と、自分を騙して生きている。
再開した時、睦くんの真っ直ぐさというか、飾らずにひとつひとつ生きていく姿勢をどんなに眩しく思ったことか。「ダメだ、ダメだ」と思いつつ、睦くんに会いに行ってしまうのを止められないのは当然だろうと思うのですよ。

睦くんのイノセンス(純潔)が美しければ美しいほど、来栖の「汚れちまった悲しみ」を意識せざるを得なくなって来る。
さあ、どうする、来栖。
……っていうのがお話のキモじゃないかと思うので、ネタバレはここで止めておきます。

私にとってこのお話は「自分はこうであらねばならない」ということに捕らわれすぎて、本来やりたかった目的を失ってしまった人が、純粋で誠実なものに触れることによって自分自身を取り戻す話の様に感じます。
タイトルが「イノセント」ではなく「イノセンス」なのは、来栖が犯した過ちと思っていたこと(睦くんに対する恋情)と、実際に犯した過ち(目的のためにはある程度手段を選ばなくても仕方がないと考えて行ったいくつかのこと)が両方とも許される、つまり「無実」であるということなんではないのかな、と思ったりしました。

凹んでいて、自分がダメなもののように思える時、大いなる許しを与えてくれるお話です。
光が差し込みます。
思いっきり浄化されました。

4

幼い頃から甘え続けていたのは貴文の方

少し前の作品ですが、ちるちるでレビューを読んで気になったので。

少し発達障害(?)がある純粋な睦が、可愛らしくてときどき痛々しくて、本来なら泣くべきところじゃないような場面でも涙が出てしまいました。
とてもいいお話だとは思います。が、貴文に少々イラっとした場面も。
高校生の頃は色んな女と付き合い、卒業後は睦の元を去り、それから8年後に再会してからも、心は睦に縛られたままであるにも関わらず、ほかの女と結婚しようとするという。
いい加減ハラくくれや!
と思わずにはいられない。と、いうか完結後も私としては「いつまで一緒にいられるか分からない」という貴文の一言が引っかかってしまいました。議員秘書なら、これから先も見合い話とかたくさん来るでしょうし。結婚する意思が本人にはなくとも、それを貫き通すことを周りが許してくれるかどうか…。いつか、また睦を捨ててしまう日が来ることを考えると…。
ラストで、もう少し睦と読者を安心させてくれる何かがあればなぁ、と思いました。

2

とにかく すごくよかった

いつまでも子どものままの睦と、どんどん大人になって変わっていく来栖の長い長い、恋の話です。ずっとずっと、相手のことが好きなのは二人同じ。でも、周囲への影響など思い至れない睦はただただ素直に気持ちをあらわすのに、大人になっていく来栖は色々考えすぎて遠回りばかり。成長することの残酷さを、取り残されていく睦とともに感じます。睦の子どものような純粋さに何度も泣きました。悲しい話じゃないところでも、なぜだか泣けて泣けて、読み終わる頃には自分の心まで洗われてしまったような。

でも、残酷に思えた「成長していくこと」こそが、また二人を繋げてくれます。来栖が本当に大事なものを睦といることで思い出し、二人が寄り添って生きる方へ歩き始めるようになるのです。そして変わっていく来栖を思い続けるだけに見えた睦も、少しづつ、少しづつ成長していました。二人の「成長」は、互いへの愛情と優しさを基盤としていて、二人の会話の端々にそれを感じるたびに、また涙してしまいました。

来栖も人間らしいいい男です。完璧に見えて完璧じゃない、きれいなだけじゃない魅力があります。この来栖が睦を離したがらない気持ちがとてもわかります。最高の結婚相手は「そうありたい自分」でいられる相手、なんてことをどこかで聞きましたが、来栖を見ているとまさにそれだなと思うのです。
大人になって、大事にしていたもの、好きだったものが取るに足らないものになってしまうのは誰しも経験のあることだと思います。睦は来栖にそのことを思い出させてくれる存在なのでしょう。ついでに私も、素敵なものを思い出させてもらったようです。

これは蛇足かもしれませんが、純粋なものほど、本能的な場面が引き立つのでしょうか?この作品ではキスだけでも指先がピリピリするくらい萌えを感じました。決してエロくはないのですが、なんというか、萌えとしか言えない。

長いレビューになってしまいましたが、いい小説を読めて、いま幸せです。

10

癒し系

良かったです!プ◯さんとク◯ストファー・◯ビンみたいなカップルに癒されました。優しさに飢えている時に読むといいかもしれません。

受は天使のように可愛い子です。攻は賢いわりに生き下手なので、まあまあ可愛い奴です。砂原先生の作品に共通する魅力ですが、攻の素の言葉遣いが少し乱暴でトキメキました。職場では社会人らしく敬語を使う男性が親しい相手に対しては乱暴な言葉遣いになるギャップに個人的に激しく萌えます。私の場合、萌える言葉遣いがなかなか見つからないため、砂原先生は貴重な作家様だったりします。ただ乱暴なだけじゃダメなんです。細かい表現が子供っぽい感じでマイルドな乱暴みたいな・・・全然上手く説明できないです。とにかく攻の言葉遣いに萌えました!

この作品、大変感じの良い脇役が何人か出てきます。友情に厚い受の友人、意地悪ぶってる攻の婚約者、通りすがりの攻の元同僚、受と攻をいつまでも子供扱いする床屋のおじさんが皆、直接的にしろ間接的にしろ愛すべき受の幸せに一役買います。どのキャラクターもヘタレ攻に代わってそれぞれ美味しいところを持っていきますが、私的「ベスト脇役で賞」はコンビニ強盗の牛島君です。台詞がほとんどないにもかかわらずやたら存在感があり、その存在だけで攻の婚約者に対する強烈な先制攻撃になってしまうほどです。牛島君がどうなったのか気になります。砂原先生、牛島君のスピン・オフ書いてくれないかな。コンビニ強盗のノンケ受とかダメかなあ。

8

純粋で純愛にホロリ

このレビューは正直難しいなと感じました。
いつも大したことを書いているわけではないのですが、この作品は言葉選びが頭を悩ませました。
砂原さんも難しい題材選んだんだなあと。


受けの睦は、幼馴染の来栖(クルちゃん)が大好き。
少しだけみんなとは違う、そんな理由からずっとバカにされていました。

攻めの来栖は、睦の面倒をみる幼馴染。
整った容姿に、恵まれた体格を持ち頭も良いが、不器用な青年。


攻めと受けの視点が切り替わる作品です。
わたしはこのタイプの作品は、ふたりの気持ちがわかりやすいので好きです。

幼稚園から高校までずっと一緒だったふたりですが、大学進学と就職に進路が別れ、来栖が自分から睦の側を離れていきます。

高校時代のふたり、26歳で再会するふたり、29歳の共に過ごすふたり。
どれもキュンとさせられました。
もちろん来栖は睦が好きなわけですが、それ前提であっても彼は優しい。
睦の良いところを見つけてくれ、心配をし、理不尽なものに怒る。
そんな感情は睦の辞書にないから、彼の代わりのように腹を立てる。
そんなところが、心をホカホカさせてくれます。
反面、来栖が一度別れを選んで東京へ行ってしまうシーンは、泣けました。
なんだかNOKKOの『人魚』を思い出してしまい、よけい切なかったです。

高校でできた来栖以外の友達、東京でできたご近所さん、ともに睦を心にかけてお情けでなく純粋に友人として対していてこちらまで嬉しくなりました。
純愛の作品久々に読みましたが、やっぱりBLらしくて良いですね。

7

難しいとおもっちゃいけないのかも

砂原さんの作品は読みやすいため
手にすることが多いです

この作品に関しては、読みたかったけれど
簡単に読んで大丈夫なのかが
自分で不安でした

未発達である睦のことは
あらすじや紹介などで認識していたからです

弱者だからどうとか
健康だからこうとか
そういう視点で読むつもりは
なかったですが

ともすれば、大きくどちらかに
片寄ってしまう見方読み方を
してしまうのではないかという
不安があり、購入したものの
1年以上読めなかった作品です

同情的な感情移入しか
できなかったら辛いなと思いましたが
結構なボリュームがあったにもかかわらず
スラスラ読めました

難しいテーマであったでしょうし
受け取りや見方によっては
違う印象となる作品であると
思います

感情を表現できても
身体のつながりをどう結びつけることが
できるのか
これはやはり難しいなと

睦が沢山話すことで
自身の言葉で伝えることで
かなり緩和はされていますし

出てくる登場人物が良い一人はだけじゃない
部分があり
現実逃避の設定だけではないので
それは良かったと思いました

睦を大いに甘やかせてあげて
いただきたい

5

手元にずっと置いておきたい本です。

上記の出版社からのあらすじだけでは、手に取らなかった本だと思います。みなさまのいろいろな意見・ネタバレ・レビューを読んで、購入したいと思いました。

あらすじは、他の方が綺麗に話して下さっていますので、個人的な感想を書かせて頂きます。
他の方と同じですが、難しいテーマだと思います。

何度も泣きたくなったり、心臓の裏辺りがドロリと痛んだり、手が震えたりしました。最初の睦の彼女(?)は、殴ってやりたくなりますが、彼の良さも彼のことも何も知らないからだと思いたいです。でもきっと知ってても差別や拒絶する人は、たくさんいるのだと・・思うと・・悲しいです・・。

それでも読んで、この作品に出会えて良かったです。萌えの部分は、膨大では無いですが確かに有ったと思います。そして萌えでは無い、他の大事な部分をたくさん貰えたと思います。

睦(受け)のことを理解してくれる、両親・友達・隣の家の家族(攻め様の家族)、初めは恐く感じた攻めの彼女。そして愛してくれる攻め。希望がたくさんあったように思えます。

そして小説の描かれ方が、受けの視点・攻めの視点と交互に書かれていたのが分かりやすくて、好きでした。なので、攻めが約束を破って連絡を寄こさなくても、睦を選べない理由も、痛いほど分かります。その分切ない気持ちも伝わるので、この二人がくっつかないのは、何が悪い訳ではないのだな。と思えてしまいます。

上手く説明が出来ませんが、睦が常に一方的にみんなに愛され、守られてるわけではなくて、苦労するシーンも何度か出てきます。それでも頑張ってる睦に、そして彼の純粋な部分から、攻めも含めて周りの人も忘れていた大事な宝物をもらえてるのだと思います。

個人的な自分の話ですが、引越しのたびにランドセル、勉強机、昔描いた絵、お母さんが作ってくれた洋服、友達から貰ったぬいぐるみ、手紙、宝物だったはずのものを捨ててきました。大人になるんだからと前を見てるふりして、手を繋いでいたものを離していきました。これは正しかったのか。今、手元にあるものは何か。大人とは何なのか。
本を読んで気づかされました、こういった自分が守って大切にしてきた宝物、嬉しかった思い出、悲しかった記憶、そういった忘れたもの・忘れなかったもの全ての集合体が今の自分なのだと思います。
攻めのクルちゃんも言っていましたが、睦という存在がそういったものを思い出させてくれます。

本編の後半で、睦が「クルちゃんは、じゅんすいなんだね。」というシーンが有るのですが、
自分は随分汚れてしまった・・と思っていたクルちゃんには、衝撃的な台詞だったと思います。
クルちゃんの背中が震えたという書かれ方がとても好きでした。わたしの背中も震えて、嗚咽がでそうでした。

以前の仕事だったり、他の理由でも自分の周りでハンディを持った方と接する機会があります。
色んな意味での、こうであって欲しい、現実でもこういう考えの人がたくさん居て欲しい。
自分の希望も詰まった本ということで神評価をさせて頂きます。

8

純粋無垢とは

主人公の睦は皆様が言っているように学習障害?発達障害?の障害者です。
子供のころから変わらない睦は、幼馴染の来栖からしたら子供のような無垢な存在。
睦の事が好きだから余計に彼が純粋に見えてしまうのかもしれない。
『恋』という意味での好きが睦にはよくわからないですから、自分の好きと睦の好きは別だと思いこんでしまう。
一生片思いのままなのではないかと苦悩しています。
睦は来栖のことが大好きですから、睦と付き合おうと思えばいくらでもできました。
でも何も分からない子供を騙すようで、汚してしまうようで恐ろしいんです。

でも睦も普通の人間で、来栖が誰かとキスをしていたら悲しくなるし、来栖から距離を置かれたら追いかける。
当然生理的な欲求だってあります。
大人になって来栖はそれに気づいて、やっと一緒になる覚悟が決まります。

本当は来栖が素直に睦に「傍にいてほしい」と一言言えばいい話なんです。
でも自分の生い立ちのせいで正しい答えを求めるばかりに、ずっと睦に言えませんでした。
そんな難しい性格の来栖だからこそ、睦のような自分の感情に素直な彼に惹かれたんだと思います。
来栖は睦と一緒にいると自分も子供のころのような純粋な気持ちに返れるから好きだと気づいた時は感動して涙が出そうでした。

描き下ろしの『真夏の椿』では、睦の母親は二人の関係に複雑そうな感情を抱いているような描写があって、なんとも胸が痛くなるシーンでした。
もしかしたらかつての来栖と同じように、来栖はよくわからない睦を丸めこんで付き合ってると思ったのかもしれません。
それでもきっと来栖はちゃんと睦の両親に挨拶して認めてもらって、これから問題に直面しても二人はすっと一緒にいるんだろうなあ。
ハッピーエンドなはずなのに、なんても言えない切なさが残ります。

9

幼馴染

これは最初からちょっとホロリと涙もろもろ~で読ませていただきました。
受がちょっとした障害を持っているために~な部分もありますが
作品は作品として私は読ませていただきました。
とりあえず、これ何があれって、攻がシャキっとしないからいけないと思うねんっっ(ノ`Д´)ノ キィィィ
な部分が多かったww

年を重ねても、心が一途に子供のまますすまない 受。
その受を大事に思うがあまりに、自分の邪な気持ちで怪我してはいけない。
まっとうな道から受を外したくないという気持ちが抜きん出てしまい、最終的に、受をほっぽりだして逃げてしまうという攻がいただけない作品なのでありますが、それによっての、葛藤であったり、受が「恋」を知っていくまでの流れがゆっくりと、丁寧に描かれている作品だなと思いました。

子供のまま変わらない受。
好きなものは、ずっと好きで、大事なものはずっと大事。
けれども、攻は、小さい頃好きだったものは嫌いになり
大事だったものも大事でなくなってしまう。
攻の言いつけを守り続けていた受は、攻の成長にともなう変化に戸惑っていく。自分のことを可愛がってくれた攻。自分のことも、嫌いになってしまったのだろうか、自分の位置はいまどの変なのだろうか。
葛藤していく姿に思わず涙してしまいました(*ノД`*)・゚・
最近めっきり、涙腺がよわくていけない。

泣すがる受。泣すがる攻。
年めぐって、同じことを逆パターンで繰り返すという構成が面白かった。なのだけれど、もうひと押しあってもよかったかなと思ってみたり。

後半に向けて~のバタバタっとした展開も良かったです。
ご両親にもきっちりバレてそうなのがいいですな(笑
なんにせよハッピーエンドなら全てよし。
砂原先生の実力を感じられる作品でした。読み応えアリ!
ただ、究極にじれったい。

7

障害児を持つ母だけど

BL歴15年にして書き込み初体験ですこの作品を読み、他の方のレビューを拝見させて頂き、障害児を持つ母として一言?言わせて下さい。睦は軽度の自閉症ですね、うちの息子もです。読んでいて同じ様な行動パターンがありました
痛い物から目をそらしたくなるのが人間の心理なので、受け入れられない方も多いんでしょうが、この話の根本は障害とは別物だと思います。想いを隠せない一途な受けと逃げてばかりいるヘタレな攻めの話ですよね。
確かにBLネタに知的障害はタブー視されがちですが、結構他の作家さんの作品でも これはそうだよ自閉症入ってるよ、という主人公がいますよ~むしろこの作品の様に明らかに判る書き方をした砂原先生は潔いと思います。
重くなりがちな話を綺麗なラブストーリーに変えた文章力に脱帽です。

15

私の希望かな

 砂原糖子さんの小説はだいたい読んでいるのですが、やはり発行部数の多い作家さんはたまに取りこぼしがあります。
 で、取りこぼしに気づいて読みました。

 すごく重いテーマだと思うんです。
 障害を持つ人で恋愛、ましてやBLを描くというのは。

 萌えという部分は、全くなかったけど、これは私の希望かな。

 私の甥っ子も何もかもがわからないというほどではないものの、発達障害があります。今は5歳。まだ可愛いで済ませられるけど、大人になったらきっと恋愛も仕事も大変だと思う。

 彼も睦みたいに、周りの人に支えられつつも優しさを与えて、生きていってほしいなぁと思いました。
 だから、個人的にすごくいいなぁと思う作品でした。

 現実はそう簡単にいかないとしても……

9

非常に難しいね

たぶん私がはじめて読んだ障害者が登場する作品だったと思います。
そのぶん私にとってはすっごく難しかったです。皆さんおっしゃられていますが、この作品は読み手を選びますね。

私は好きでした。発達障害である陸は周りとは違った発言・行動するし、感じたことは感じたままに受け取り、そういういみで“イノセンス”なのかな?

だから、陸が来栖のことが「好き」っていっても、恋愛の“好き”であるとか、普通の“好き”であるとか、どの「好き」であると問われてもわからない。とにかく純粋に好きなのです。
来栖もまた、幼馴染でもあるためちゃんと理解した上でお世話をしてきました。でも、成長していくうちに、その気持ちに対しどうすればいいかわからず、自分自身陸に対する気持ちの変化に戸惑いながら、2人は離れ離れに。

ときどき、陸の行動に心がギュッと鷲掴みされるようなシーンがあり、何度も苦しくなり、切なくなり、更に難しいなと思いながら読み続けました。

その後、あることをきっかけに再会する2人。議員秘書として働くようになった来栖がいろいろ悩んで考えてた時に、心を癒したのは陸の存在でした。

最後はちゃんとハッピーエンドです。紆余曲折を辿りながら結ばれた2人に幸せが訪れてホントに良かったです。ずっと苦しかったからね。その分何倍も幸せな気持ちになれました。

この作品買うや否や迷ってたんですが、購入できてよかったです。出会えてよかった^^

4

たいへん難しい。

今まで読んだ小説の中で一番泣いてしまったのですが。
純粋、という一言では言い表せない、ある種デリケートな題材である受の人物像があり。
書かれた砂原さんも、読み手も難しものと思います。
これを私はずるいとも、悲しいとも、単純に美しいとも感じました。
卑怯なまでに美しいので、私は酷評出来ないのかもしれません。ずるいと思いつつも感じ入ってしまう( ′`)…。
駄目な方は駄目だろうし、読み込んでいける方は良いと感じるだろうし。
気に入らないという意見を持つ方がいらっしゃるのも非常に解ります。
読み終わって尾を引くのは避けられないかもしれません。
しかし、このお話を書き切った砂原さんに敬意を抱かずにいられないという感じでしょうか(*′へ`)
私は読んで良かったと思う側でした。…うーん難しい!
攻の存在に苦しくも、読んでて助けられたのが大きかったです。

4

ロマンティックな、おとぎ話。

だけど、地雷の人には、地雷かも。

「言葉」を持たない主人公を物語る。
作者様は、なかなか大変な作業に挑戦されたようで。

睦の中には、最初から言葉はなくて、
来栖の中では、言葉は無理矢理封印されていて。
そんな二人が、ひとときの別れと再会を経て、
とうとう自分たちの間にある気持ちが「愛」なのだと気付く。

こういう、ロマンティックなおとぎ話、大好き。

ひどいことは、全く何も起こらない。
こんなきれい事ばかりの世界、ありえないけど、あって欲しい。
ロマンティックな夢の世界で、カエルの王子様は、お姫様が目覚めてキスしてくれるのを待っている。
甘い、甘い、おとぎ話だっていいじゃない。
気持ちよく甘い世界に浸りたい。

でも、こういう、主人公の障碍がネタになっているような作品が地雷って言う人には受け入れがたいだろうな、とも思う。
なので、真面目な方は、ちょっと気をつけた方がいいかな。

2

私は好きです。

実は、こちらでちょっとした酷評を先に目にしていたので、こわごわ読み始めた部分があるのですが、そんな懸念は不要でした。

キャラ設定が特殊なので、もしかしたら只のお涙頂戴ものととられてしまう可能性もあるかと思いますが、私としては、睦に癒されている部分が多かったし、彼を取り囲む人たちの“結構いい人”なところにまた感動したりして、終わりよければ全てよしの気持ちいい読後感でした。

乃々山睦はいわゆる学習障害を持っているため、健常者とは微妙にズレた言動を取ってしまうのですが、素直で真面目で純粋です。
彼の隣に住んでいる幼馴染のクルちゃんが、このお話のもう一人の主役なのですが、こちらはある事情で必死に勉強し高みを目指している人なのです。

こんな両極端に思える二人がお互いを必要としながらも、それぞれの置かれた状況に振り回されてなかなか素直になれない(素直になれないのはクルちゃんだけですが・・・)ので、計4話を終わってやっとハッキリとしたハッピーエンドになったときは、本当にホッとしました。

睦は守られて当然な存在ではなく、何とか自分の足で独り立ちしようとしているところに大変好感が持てました。
もしこれが現実の世界であったなら、こんなにいい具合に味方になってくれる人たちが現れたり、おいしい仕事が見つかったりはなかなか難しいのでしょうが、現実がこういう世界だったらみんなそこそこ幸せになれるんじゃないかと、ちょっと希望を持てる世界感でした。

実際のところはクルちゃんのほうがより大きく睦を必要としている人なので、第一話「幼馴染み」で始めのうちに張られた伏線のひとつは“伏線”だとわかってしまうくらい印象的だったのですが、それでも第二話「再会」でそれに関わるシーンに出会ったときは、(電車内だったので)泣くのを耐えるのに一苦労しました。

幼稚園の頃から始まって、29歳までの長い年月のお話でした。
「睦が真っすぐかどうかなんて、たいした理由じゃない。大事なのは、睦といると自分がそう変われるということだ」
長い時間かけてやっとクルちゃんが悟ったこの言葉、“自分がどうありたいか”が大切だと思いました。

あと、エッチのときの睦のセリフ
「俺、バラバラになりそう。小さくなって、別のになりそう」
あー、とってもいい表現だなと思いました。

7

設定が気に要らない・・・・

毎度いろんな設定のお話ですね・・小さくなってみたり、眠れなかったり、性格破綻だったり、神経質だったりと・・いろいろありますが・・・
今回のは、ちょっと・・どうかと・・思いました。

とっても良かったのですが・・受けの設定はちょっと悲しすぎる感じがします。純粋な受けでいいのでは・・ここまでにする必要は無いよう気がしますね・・
今までのは架空ぽい感じの設定とかそんなに身近じゃなかったりとかだったのでそんなに感じなかったけれど、今回の設定にするのであればもっとちゃんと深く捕らえて書いて欲しかった題材ですね・・ちょっと人として読んでいてしんどいし、別の意味で可哀相なのでBLネタしてはどうかなぁ?と思いました。作品自体はとっても良かったので何かそこが重苦しい後味を感じました。本当に切なくて泣けるのですが、何を感じて泣いているのか自分でも良く分からなくなる感じでした・・・

純粋にBLとしてではなくって、そういう感じの本を求めて購入するのであれば抵抗はないのですが、BLを読むぞ~っと思って普通に読むにはちょっとしんどい設定では、無いでしょうか?

お話自体は受けのその設定がなければとてもいいお話だと思うのですが・・まぁ、攻めは思いっきりヘタレな奴ですが・・そんな逃げるような攻めを一心不乱に追いかけて素直な気持ちを伝える睦は切なかったですね。
純粋に作品として楽しめなかったのがちょっと辛かったですね・・・

3

大人になるってことは、色々捨てるってことなんだな。。。

また砂原さんやってくれました。
今度は多分発達障害を持つ睦と、ずっと一緒にいた幼馴染のクルちゃんこと来栖のお話です。
いつも、こういう設定が出るたびに「ずるいよ!」って思いながらものめり込んで涙を誘われてしまう。

今回の題名は「イノセンス」=天真爛漫・潔癖・無罪 等の意味がありますが、まさに障害を持つ睦はいつまでも子供の心を失わず、まっすぐにクルちゃんを見つめて追いかけ続ける、天真爛漫で綺麗な穢し難い存在。
表題と『再会』までは、本当に睦が「どうして?」って思うたびに胸が締め付けられてつまってしまったのです。
来栖は、自分が本当は養子だったということを知ったときから認められる存在になるべく、変わろうとしてしまった。
そして普通に人が大人になる時に捨ててしまうモノや心、そんな色んなものをいつまでも、まだ壊れていないからと捨てないでとっているのが、睦なのです。
何も知らない頃は純粋にだったけど、自分が変わろうとしたときからは、ある意味義務感で、睦に接っしていたと思うのだが、そのいつまでも変わらない、自分が純粋だった頃を覚えて慕ってくれる睦を、きっと自分が本当は持っていたかった宝物として大事にしていたと思うのです。
でも、それに”欲情”という気持ちがあることを覚えてしまった時に、穢してはいけないと思う気持ちと後ろめたさから逃げてしまうのです。
来栖が女子とキスしているのを見て自分もして欲しいと、おこずかいを差し出してキスをして欲しいと願うシーンに、駅のホームで泣きじゃくる睦に、涙がこぼれて、、、(電車の中だったのでヤバかった!)
それから8年経って再会するのですが・・・

政治家の秘書になり世俗にまみれた大人になったことで、忘れた、捨てることができたと思っていた、自分の気持ちに苦しむ来栖。
睦は素直で一途で純粋で、何も変わらずに来栖を慕う姿に、ああー、これが障害のない人だったら「恋」だってすぐに気がつくのに、、
皆そうではないか?と思っているのに、睦だけはわからないから、ただ特別に好きということしかわからないから、それがまた胸を締め付けれれてしまうのです。
8年前は睦が来栖を追いかけたのに、今度は来栖が・・・
睦の純粋な言葉が来栖だけでなくて読者の自分の胸をも抉りました。
睦が変わらなくちゃ=捨てなくちゃ、と色々なモノを壊すシーンが一番切なかった(涙)

『冬の向日葵』『真夏の椿』は、補足のようなお話かもしれません。
睦の周りに登場する人々は必ずしも良い人ばかりだったとは言えないとは思いますが、高校時代の央ちゃん、東京での持田、と温かく見守って時には背中を押してくれる存在として脇をがっちりと支えてくれた、その存在が救われました。

余談ですが、睦が幼稚園の頃からずっと好きだったヒーローの名前「レイダーマン」
この名前を見て”戸川純”の唄を即座に思い出した方は自分と同年代かも?思わずうたっていました(汗)

7

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