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ただ、俺はお前に愛されたい
二作品が収録されています。
表題作と同時収録作はそれぞれ雰囲気は異なるけれど、どちらも受けがゲイで「好きになった相手に愛し愛されたい」という心の底からの叫びが伝わってくる作品です。
【青年は愛を乞う】
高校生同士・思春期真っ只中ということもあり主人公の悩める度合いが高いです。
女になりたいわけではないけど、女のように男から愛されたいと願う自分は醜いと思いつめていて、読んでてかわいそうになるほど。
ゲイであることを周囲にひた隠しにしながらも「男に愛されたい」という願望を打ち消すことができない楓。
好きな相手は親友の奥田なんだけど、実は両片思いであることがあっさり2話で、奥田視点で話が展開されることからわかってしまう…。
お互い「親友」というキーワードで気持ちをごまかしてる様子、二人してもがき苦しんでるような様子が丁寧に描かれているので、それはそれでアリだとは思うのだけど、できればずっと奥田の気持ちがわからない状態で読み進めたかった気もします。
3話完結なので展開が早いのだけど、でも気持ちを確認したあった後の切羽詰まった、気持ちが溢れ出るかのような二人の描写もいいなと思います。
【彼方の恋】
私はこちらのほうが好き。
高校時代の同級生の再会ものです。
急遽ゲイビの撮影に呼び出されたカメラマンの吉崎。そこにいたのはかつての学園のアイドル・カナタ。
高校時代は成績優秀でスポーツ万能、そして容姿も淡麗なことから学校中のアイドルとして男女問わず人気ものだったカナタ(受け)が、まさかのゲイビ出演ということで思わず現場から連れ出しそのまま逃げ去り…。
好きな男に騙されてゲイビ出演する羽目になってしまったことに傷つき、男同士でしか出来ないセックスがしたい訳じゃない。普通に…女の人が男の人にするように…男の人が女の人にするように…好きなひととキスしたり手を繋いだりしたかっただけなのに…。と泣き崩れるカナタを見て、俺が叶えてやるとあっさり絆されるのだけど、その超展開もOK!って感じ。
カナタは過去、ろくな男に出会わなかったことから結構拗らせているというか、自分にも自信がなく、ちょい情緒不安定ぎみで一言で言えば「めんどくさい男」(そこがかわいいのだけど)
吉崎はカナタが安心するような気の利いたセリフ、甘いセリフは言わないけど、日常生活の中でちょいちょい見せてくれる優しさが胸に沁みるというか、結局ずっと一緒に暮らしていくのならこういう穏やかで優しい人が一番いいよねぇと思うんです。
女の名刺を見つけて勘違いから荒れた後に、よしよしされてるシーンがすっごく好き。
今、初めてこれが日野さんの初コミックだと知って驚いてます。
日野さんのコミックスは全部読んでいるのだけど、その中でもこれは結構上位にくい込んでいる一冊で、初コミックからこういう「らしさ」が全開だったのだなぁと。
同級生同士の恋。
男性に愛されたい願望を持つ楓は、普段は明るく人気があるのに心の奥では病んだ悩みを抱えています。
同級生の奥田に恋をしていて、それに苦しむ様子や過去のトラウマは痛々しかったです。
でもこのお話、途中で攻めの奥田の視点に切り替わり、奥田も楓に好意があることが早い段階で分かるので報われない恋がせつないお話…という印象でもなかった。どちらかというと割と幸せなお話なんじゃないかと思いました。
両思いだと読み手は分かっている、だとしたらどうくっつくか、というお話なのに肝心のラストはあっさりな気もしました。冒頭の自分の性癖に悩む楓のシーンが印象的すぎたからでしょうか。
両方の視点で進むと効果的なお話もあると思いますが、この作品は楓視点を貫いたほうがブレなくてよかったのでは、と思います。
奥田視点が入っていることで、楓の深刻なトラウマに対する悩みがわりと軽減されていて、もちろん苦しむお話は可哀想ですが、これは何だか全体的に勿体無いなぁという感じでした。
絵が柔らかく綺麗でキラキラしているため、雰囲気がよくて、その分雰囲気に流されてしまった気もしました。
お話はもう少し凝っていたらよかったと思います。
言葉の選び方や組み合わせ方が秀逸で惚れます。
特に最初の数ページのインパクトは凄かった…!
モノローグのひとつひとつに心を鷲掴みにされました。
作詞家、小説家ならともかく、漫画家さんでここまで好みの方はちょっとなかなかいないかも。
BLジャンルでなら中村明日美子さんくらい?
絵のセンス(絵柄ではなく、視覚表現的な意味で)も凄く好みだし、久々に感性面から惹かれる作家さんに出会えました。
始まりのインパクトが本当に凄いので、胸がヒリつくような痛々しいトーンを想像して読んだのですが、切なさはあれど思ったよりも明るくさらっとした感じでした。
どなたでも読みやすいストーリーだと思います。
女になりたい訳ではないけど、女ではない自分は醜い。
男に愛されることを知っている女には敵わない。
俺の手の届かないものに易々と手を伸ばす女なんて嫌い。
ゲイ男性が女性に抱くコンプレックスをこんな風に表現されるともはや言葉を失いますね…ガツンときました…
ただ表題作はストーリー展開が個人的にちょっと残念…
我が儘を言えば、2話目の奥田(攻め)視点は読みたくなかった。奥田の気持ちは知らないままで読み進めたかったです。
そういった意味で、お話的にはもうひとつの『彼方の恋』の方が面白かったです。
こちらも“ただ普通に”男に愛されたいと願う青年〔カナタ〕と、ノンケの主人公〔吉崎〕のラブストーリー。
カナタの涙ながらの主張がこれまた胸にガツンときます。
カナタは過去にいくつも苦い恋愛を経験していて、ちょっとめんどくさい子になっちゃっているのですけど、でもまぁなんかそれが可愛くも見えます。
吉崎の包容力で思いっきり甘やかされながら愛されてほしいなと。
ストーリーは王道ながらも、作家さんのセンスに引き込まれる一冊でした。
親友の事が好き
はっきりと自覚をしてしまっている。
女になりたいのではなく
男に愛されたい。
自分のそんな感情を中学時代に気がついた。その後はそれをひたすら隠すべく誰にでも平等に接することを意識して過ごす。
好きで好きでたまらない。
親友という立場。
葛藤。
王道パターンですが
大好きな設定です。
定番のあれこれも多くありましたが、おお!!いいなと思えたのは
好かれたいじゃなくてお前に愛されたいよ
というセリフです。
これ。かなり良かった
一気に体の関係につながりすぎだろとはおもいつつも
良かった。
表題の『青年は愛を乞う』が切なくて切なくて...涙
男の人に愛されたい
けれど自分は男だから、絶対にこの気持ちを知られてはいけない
自分は醜いのだから...
ずっと自分の気持ちを隠してきた主人公。
でもある時ずっとひた隠しにしてきた想いがこぼれてしまい...
攻も超いい奴で、最後幸せになれて本当よかったと思いました。
一緒に収録されている『彼方の恋』も、同じように女の人のように自分も男の人から愛されてみたい というお話です。
表題作よりも少しコミカルに描かれていて、こちらも良いお話です。
とても秀逸なコミックです。
今後も楽しみです!