【イラスト付き】【おまけ付】
この身を焦がす愛も憎しみもすべてあなたが教えてくれた――
2011年発刊の作品の再編版、「シナプスの柩」のスピンオフ、医療もの。
東欧出身の人達が登場する物語。
あとがきには、ウクライナ出身のバレエダンサー、マラーホフの話題が出ていたけど、
ウクライナはいまだに難民を出している戦乱の地。
ミハイルは、戦地を回る医師として活動
・・今でいう国境無き医師団のような活動に出発する。
・・不器用なミハイルは、一臣を戦乱に巻き込まないために別れようとする。
訳を知らない一臣がずっと悩み続ける事に気付かない。
今だに東欧は戦乱が続いていて、なんとも言えない展開だった。
あとがきに有ったけど、華藤先生のもう一つの仕事は、書評家だと知らなかった。
この小説には、実際に出会った人達がモデルになっているそうで、
東欧に早く平和が訪れる事を願いつつ読了。
読み応えがありました。
あとがきによるとテーマは「大人の純愛」
再会、身代わり愛、挫折、再生、再出発がキーワードだそう。
固く愛を誓うも、とある事情で別離してしまったミハイルと海堂。
事故で死にかけた際に「ミハイルにもう一度会いたい」という気持ちが湧き上がり訪独するも、彼から「今は恋人と暮らしていて彼を愛してる」と告げられます。
その恋人が異母兄弟のマリオンで、彼は脳に腫瘍を患っていて余命一年。
記憶障害があり、純真無垢でありながら性に奔放でミハイルとも近親相姦を噂されており、その噂を消すためにマリオンを看取るまでという条件で恋人を演じることになる海堂……。
まぁミハイルがキッツイんですよ。
天才的な脳神経外科医だったのに、事故のせいでメスを握ることができなくなった海堂に対して、「使えない医師など、ただのゴミだ」とか容赦ない言葉をあれこれ言っちゃう。
おまけに「他の男に抱かれてみろ!」という鬼畜な条件を突きつけるので、読んでて、こんにゃろーー!!って思うんだけど、その割にはしつこく過去の男の数を聞いてきたりとあれこれダダ漏れしてるので、あぁまだ好きなんだなと安心して読めます。
そして海堂。
マリオンが、二人の姿をバチカンのミケランジェロのピエタ像になぞらえていたけれど、まさにアレです。
最高の脳外科医でありながら最愛のマリオンの病を治せないミハイルの無力感や苦しみなど全てを受け入れようとする静かな男前受けです。
この作品が素晴らしいのは旧東ドイツや、ユーゴスラビア紛争を絡めて書いてきたところ。
旧東ドイツで社会主義的なエリート教育を受けて育ってきたミハイルや、国の犠牲となった家族の存在、そして統合により昨日まで正しかったことが意味を成さなくなるという価値観の崩壊。
そしてかつての同僚だったボスニア人のニコとセルビア人のヨヴァンの存在。(私はマリオンよりも、彼らの在りし日の姿と現在に泣いた。)
そういった故国の紛争や喪失、そしてホスピスという舞台でマリオンが照らし出す死生観が素晴らしかった。
そういったものにあれこれ泣いてしまったし、ミハイルの性格が多少(多少か?)メンドくさいものになったとしても仕方ないかなぁと思えたんです。
そして国に翻弄され辛酸を舐めたミハイルが言う「それこそ、なにがあっても生涯、私を愛していくと神の前で誓え」というかつての約束。
なによぉ……この二人、めーっっちゃくちゃ重い愛を交わしてたんじゃないの……とその重さに呆然。
それでも別れを選んだというのも愛ゆえなわけで……。
だから「ミハイルはおバカさんで不器用です」は真実。
「おバカさん」は太字で強調したいところだし、個人的には「ヘタレ」も書き加えたい。
最後の最後まで本心を隠している膠着状態の二人。
このままお別れエンドかと思いきや、マリオンが遺したノートのおかげで……というあたり。
隠し玉というよりも、あまりにも詳細に書き残しているところが、マリオン、意外と文章書けたのね……感と相まって、ちょい飛び道具っぽく感じてしまい泣けませんでした……。
そして巻末の攻視点の「エゴイストMの憂鬱」
「本編とかなり温度差があるので、できたら明日以降にお読みください」とあるように、コメディ色の強い番外編で笑えました。
東西の占い師に「恋愛運は最低・悪趣味のせいで、ハズレくじ続きの人生」と言われてしまう海堂の姿に、大いに自覚しつつもモヤるミハイル。
「ミハイルはおバカさん」のフレーズそのもので、笑えます。
ふたり揃って不器用&ツンデレ&素直じゃなさすぎるカップルのお話でした。
ミハイルは、ただでさえどん底な状態にある海堂にそこまでイケズな対応取らなくてもいいんじゃないの? と何度思ったことか。まぁ、そんな態度にも何か裏があるのであろうということは想像出来るのですけどね。それにしても酷い仕打ちの数々でしたよーー。
ミハイルの弟のマリオンは天使でした。マリオンが海堂のことを「天使さん」と呼びますが、マリオンが天使でキューピッドでしたね。
とにかく気持ちが通じ合うまで、絡まりまくり捻れまくりの二人でした。途中、かなり辛い展開もありますが、救いのあるお話です。
本作は「シナプスの棺」のスピンオフだそうです。確か以前に読んだことがはあれど、かなり忘却状態、ですが問題なく読めました。せっかくなので「シナプスの棺」も引っ張り出してきて再読してみようと思います。
攻めのミハイルがあまりにも冷たすぎて読むのが辛かったです。
あとがきの後の書き下ろしを読んでようやく心が満たされた気がします。
天才脳外科医の海堂は事故に遭い生死をさまよったのをきっかけにずっと忘れられない過去の恋人に会いにいきます。
海堂は事故のせいで二度とメスを握れない体になってしまったわけですが、詳しい事情は知らないにせよミハイルの態度があまりにも酷いと思いました。本人が一番辛いに決まっているのに暴言をはかれて海堂が可哀想でした。
ミハイルには恋人がいて腹違いの弟だというのですが海堂は世間の目からミハイルと弟のマリオンを守るために恋人役をする事になります。
最後まで読んでしまえば二人とも不器用で愛しい人たちだなぁと思います。 ちゃんとハッピーエンドなのですがマリオンの日記がなかったらこの二人はどうなっていたんだろうと思うとミハイルにもっと頑張って欲しかったですね。
SSのエゴイストMの憂鬱はミハイル視点で面白かったです。
海堂も「恋愛運が最悪でハズレくじをひく」って恋人の前で言ってしまうなんて天然なのかワザとなのかその時のミハイルの顔を想像すると笑っちゃいます。 なんだかんだでお似合いな二人だと思います。
あらすじから。
医師同士、留学先のオーストリーの医師、ミハイルと恋仲だった海棠だが、帰国とともに分かれてしまう。
日本では実家の病院を継ぐために、ゲイであるにも関わらず結婚させられそうになるが、事故に遭い執刀出来ない体となってしまう。忘れられない恋人に会いに、単身渡欧するが、ミハイルは冷たく、弟を愛しているから君は愛せないとつきはなされてしまう。
このミハイルがとにかく冷たいので、愛情を感じる場面がほとんどなく、つらい読書でした。もうこのままバッドエンドかなと思いましたが、最後は種明かしがありハッピーエンド。SSはもっとあまあまにして欲しかったけど、急には無理だよね。。