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包容力男前攻×ツンデレ美人受、商店街で始まる大人のロマンス!
超ロマンチストな攻め×自分に自信のないクールな美人受けって感じの二人が主役の今作。
最初のお話はすごく個人的にヒットしたのですが、次のお話が個人的にうーんって感じでした。
ページ数の割にストーリーにあまり起伏がなく、日常の描写としてもちと物足りない印象。
受けの元恋人関連や攻めの前の仕事に関することなど、最初の話で気になることが沢山あっただけに、そこに触れてくれないかな〜と期待した2編目に少しがっかりしてしまいました。
とは言いつつも、先生の情事の描写は相変わらずエッチで読み応えがあり、攻めに出会ってからの頑なだった受けの変化は読んでて面白く、良い部分も沢山ありましたのでこの評価に。
超絶美人なのに「キショいオカマ」と子供の頃に言われたことがきっかけで、自分のことを醜いと思い込んでる受け。
そしてミソジニーの果てに、ゲイになってしまったという拗れっぷり。
女性嫌悪もさることながら、人類皆敵か?!ってくらい周囲にケンケンしまくりなんですね。
商店街の相談役をしている攻めの親切心からのアドバイスにも
「相談役だか何だか知りませんが、たかが花屋のくせに、素人が知ったふうな顔で法律家の領分に首を突っ込まないでください」
と言っちゃう。
「たかが花屋」と言えちゃう神経、おそろしや……。
だけど選民意識バリバリというわけでもなく、弁護士や裁判官に対してはコンプレックスを抱いていて超〜めんどくさい。
対する攻めは、
「早く俺の燃える愛で包んで、溶かしてやりたいよ」
「花の精みたいに綺麗な人だ」
「俺の花になってくれ」
とイタリア人顔負けの甘〜いセリフを惜しみなく言うタイプです。
ときには「俺の暴れん棒が」とかオヤジくさいことを言い出す。
そして受けのために陰毛専用のトリートメントオイルをフランスからお取り寄せ(笑)
なんだけどさー。
花屋の客にまで「小百合さんの美しさには、どんな花も敵いませんけど」みたいなことをペラペラ言ってるので、ちょっとなぁ……と思いました。
ありがたみ減るわ。
性格難ありなツンツン受けが、アモーレ男に愛を注ぎ込まれて少しずつ変わっていく姿はなかなか良かったです。
ーーー
「オカマ」という言葉が結構登場するんですね。
受けが幼少時に言われた「キショいオカマ」は、まぁいかにも昭和なので仕方ない。
そして受けの元セフレも、受けを「カマ男」「淫乱オカマ」「カマホモ」と罵るんだけど、所詮ドクズ男の言語レベルなので、仕方ないかもとは思いました。
だけど惜しいなと思ったのは、金銭トラブルの交渉の際に、相手の女から「オカマ野郎!」と罵られるシーン。
あんなに「オカマ」という言葉に敏感だったのに、まったく気にならなかったという受けの変化が象徴的に描かれてる良いシーンなのに、いまどき「オカマ野郎」なんて言葉使う人はいないだろう…と思ってしまったー。
そして、こんなに「オカマ」が頻出すると、なんか時代を感じてしまうというか……。
10年ひと昔というように、この10年で結構意識とか変わってきてる気がするので、オカマはないよなーと思う自分がいました。
あれ?
鳥谷さんって『すっとぼけコメディの女王』なんじゃなかったっけ?
……間違って買っちゃったかなと表紙絵を確認した今作。
読み始めの部分、コンプレックスに雁字搦めになっている所為で非常に主人公が厭世的なんですよ。
で、お話のトーンまで暗い。非常に痛い事件もありまして、ちょっと吃驚。
海棠が南雲につきあって欲しいと話すあたりから『私の知ってる鳥谷節』が始まります。
セフレに酷い扱いを受けようとしていたのを助けられた直後の告白だったので、南雲は「同情はいらない」と言うのですが、それに対して海棠が言った科白が結構ツボったんですよ。
「何つぅか、右に投げた球が、尻の下から西瓜になって返ってきた気分だ」
いや、普通はこんな例えはしないよね。
色々と事件は起きますが、やはり私が楽しんだのは海棠が南雲、特に彼の身体を褒め称える言葉ですよ。
詳細にして大げさ。
この辺がね、後のあれらの作品らを髣髴とさせて非常に楽しめました。
始まりはちょっと陰惨な感じもしないわけではないですが、南雲が周りに心を開けば周りもそれに応えてくれるハートフルな終わり方です。
7年前ですものねぇ。全体的に「あら、若い」という感じがしました。
ネタバレ混ぜた感想だけ。
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最初から75pほどまでは結構しんどい気持ちでした。
次から次へと嫌な人たちが出てくるので、息する暇もないって感じ。
事務所の従業員である糸崎は「先生、俺の話聞いて聞いて聞いて」ってなにこれ子供?みたいな人ですし、雨貝は家庭の事情で早退しまくるので完全に職場舐めてるなって思いました。事務所を引き継ぐ条件が「従業員をそのまま雇う」だったので「こいつら、それを知って好き勝手放題なのか」って苦笑いが止まらないです。後で従業員たちとの関係は改善されたものの、初印象があまりにも最悪だったのでむしろあっさり仲が良くなったなって思いました。
そして南雲さんの元カレ…いや、セフレ野郎はいきなりバイブ持ってきて南雲さんを貶しながらセックスしようとしてる。厳密に言えばレイプじゃないですが、状況的にほぼレイプだと感じちゃうのでイライラが止まらなかったです。
受けの南雲さんは気が強くてクールな人ですが、自分に自身がなくて劣等感まみれなので見てるこっちが息苦しい。だから頼れる人は攻めの海棠さんしかいなかったんです。実際、海棠さんのおかげで最後まで読めたと言っても過言ではないくらい。
でも、セフレ野郎に嫉妬して頭おかしくなりそうと言ってるわりには、セフレ野郎が使ったバイブを大事にとって、バイブ咥えてる南雲さんを想像して毎晩オナるって…私が海棠さんだったらバイブとか絶対ぶっ壊す。セフレ野郎から南雲さんを救ってくれた張本人が、その状況を想像しながら毎晩楽しんでるって…私には理解できなかったんです。だから海棠さんにもなかなか心が開かなかった。
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南雲さんの世界が灰色から薔薇色に染まっても私はなかなかついて行けなかった気がします。
この小説、私的にはBLより「南雲さんの成長小説」に近いです。恋愛のところは海棠さん一人で引っ張っていくし、南雲さんは海棠さんの甘い言葉に「軽蔑したくなる」とか「エロオヤジ」とかツンツンしてるだけで、最後の最後まで素直に「ありがとう」って言ってる場面が全くないです。
評価に迷ったんですが、海棠さんの色んな甘い言葉と、私がBLで攻めさんが言ってほしい台詞No.1の「あんたが男でよかった。子供要らない。いつまでも二人きりでいちゃいちゃしたい。」みたいなことを言ってくれたので「萌」にしました。
オカマと呼ばれる虐めの呪縛が恵を何十年も苦しめ、そのせいでひねくれ思考もねじれてしまったり、自分を醜い笑われる存在だと思ってきた恵が不憫でたまりませんでした。
しかもそのせいか最悪なセフレと付き合い体と気持ちをズタズタにされ。どうしてあんな男に!と思いますが恵には海棠も言うとおりの人しか寄ってこなかったからなんですね。
海棠のアプローチもどこまで本気なんだろうと思ってました。好きになるのに理屈じゃないとは言いますが。でも恵が幸せになっていくのは嬉しかったです。
海棠のロマンチックな表現や絶倫エロ変態オヤジな所も良かったです。陰毛オイル!
こんなに大切にされて愛されて生きてて良かったね!
俺の運命の花とか一生一緒死んで生まれ変わっても一緒にいたいって。なんて熱烈なんでしょう!
今までの分まで恵には海棠と幸せになってほしいです。