無償の愛情で救われる人間を描き、「ダ・ヴィンチ」誌上でBL界の芥川賞と評された傑作!

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表題作箱の中(文庫版)

喜多川圭
同房の受刑者
堂野崇文
痴漢冤罪で有罪になった会社員

その他の収録作品

  • 脆弱な詐欺師
  • 檻の外
  • 解説:三浦しをん

あらすじ

痴漢の冤罪で実刑判決を受けた堂野。収監されたくせ者ばかりの雑居房で人間不信極まった堂野は、同部屋の喜多川の無垢な優しさに救われる。それは母親に請われるまま殺人犯として服役する喜多川の、生まれて初めての「愛情」だった。『箱の中』に加え、二人の出所後を描いた『檻の外』表題作を収録した決定版。

●箱の中
●脆弱な詐欺師
●檻の外

※本書は2006年3月に蒼竜社より刊行されたノベルス版『箱の中』と、同年5月に刊行されたノベルス版『檻の外』表題作を、『箱の中』として一冊にまとめたものです。

(出版社より)

作品情報

作品名
箱の中(文庫版)
著者
木原音瀬 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
講談社文庫【非BL】
シリーズ
箱の中
発売日
ISBN
9784062773256
4.5

(219)

(180)

萌々

(13)

(7)

中立

(8)

趣味じゃない

(11)

レビュー数
42
得点
981
評価数
219
平均
4.5 / 5
神率
82.2%

レビュー投稿数42

ふたりにただただ幸せに過ごしてほしい

基本的に漫画しか読みませんが、こちらの作品がふと目に留まり、読み終えました。

まず、痴漢冤罪で捕まり、自分の無実を貫いたが故に刑務所に入ることとなった堂野が受けです。
この時点で胸糞なのですが、犯罪をやってない堂野は刑務所の中でもなじめず、理解者を見つけたと思ったらあれだったり、つらい現実が襲い、まわりを信じられなくなります。
彼が懲罰を受けるところは読んでいてしんどかったです。
そんななか、同じ房の喜多川に助けられます。喜多川はある過去があり、感情や言葉が乏しく、会話が独特です。
喜多川がなぜ自分に優しくするのか、堂野はそれまでのことがあり、疑うほかありません。
でも、話すうち、喜多川の年齢に見合わない子供っぽさや、人との関係の考え方に違和感を持ち、情が湧いて来ます。

心を閉ざしている喜多川が懐いて距離感がバグってくるあたり、最高ににやにやさせてもらいました。

堂野は心がつらくて体もつらくてどうしようもない時に助けてくれた喜多川を過去の話や彼の本当に献身的な対応も含めて特別になっていたんでは、と思います。
ただ、ここは刑務所で、相手は男。
痴漢冤罪になるまで市役所で普通に働いていた堂野です。
そしてずっと薄ら暗いかんじなんですよ。しんどい。

私は、喜多川がずっと可愛く感じてました。
彼の罪はわからないけど、殺人罪です。
だけど、堂野の鼻水を手で拭うところなんて本当になんだこれ!!って興奮しました。
堂野を思って見つけたくて働いて働いて探偵を雇う生活を何年もやってたところも。
やっと見つけたのに、堂野。
いや、これが普通の現実なのかもしれません。
だけど、堂野のやることが本当に喜多川のことをなんも考えてない。
いや、だから堂野を探す喜多川をみんな止めたんだよね。
堂野は本当に優しすぎて情のある人間なんだ。
喜多川が一途で好き好き堂野一直線な分、堂野があいまいではっきりしないところや、出所日を覚えていても行けないところ、その他諸々がとてもはっきり出てるのでイライラもやもやします。
でもこれが人間ですよね。
喜多川は過去の経験によってあまりに行動や思考が短絡的というか、シンプルではっきりしているのですよね。
普通に働いて生活していた堂野とはちがっても仕方ないんです。
だけど、喜多川の気持ちを知りながら蔑ろにする気もない感じで蔑ろにする感じが、すごく嫌で、だけどこれが堂野なんだなと思いました。

作品を読み終えても、ふたりが会えなかった間や最後の展開になるまでの時間が長すぎてですね。
それが切なくて切なくて。
喜多川が懲罰受けるハメになった原因はあいつだからね。それなかったらもっとふたり話せてたやろ!と怒りが。
本当に千里の道も…、と思いました。
とにかく幸せに暮らして!

0

こんなにも愛おしいと思える攻めはなかなかいない

 一般文芸としても出版されているだけあって、BLのお約束的な要素がほぼない、非常に読み応えのある作品でした。と同時に、我々BL愛好者が物足りなさを感じる懸念もなく、男同士の関係性の萌えがこれでもかと詰まっています。改めて木原先生の心情描写の緻密さと、あらゆる面で現実的な部分を注視し、けっして過度に美化したり省いたりして書くことのない創作への真摯な姿勢が素晴らしいなと感じました。

 喜多川は堂野の何にこんなにも取り憑かれてしまったのか。ありがとうという言葉をたくさん言ってほしい、と子供っぽい直截な欲求を口にする彼でしたが、本当に罪を犯した人かどうかというよりも、堂野の心根が、今まで自分に関わってきた大人たちとあまりにも違うことを肌で感じ取り、最初から気にかかっていたのでしょうか。また、親しい間柄でさえ損得を考えて動くことはあるけれど、刑務所という冷たい空間の中で堂野は自分の存在だけで救われ、感謝を示してくれる。無条件の愛に触れたことがない彼は、まず堂野の無条件の自分への好意に途轍もない快感を覚えたのかな、なんて思いました。

 子供の何かを吸収するスピードは速いものですが、堂野の情を根こそぎ自分のものにしようという喜多川の執念は凄まじく、ちょっとやそっとでは頽れません。その周りを一切顧みないひたむきさは、彼が子供のままであることを堂野に強く印象付けます。それはもちろん「いい歳なのに未熟」「社会の常識が分からない」というネガティヴな捉え方もできます。一方で、「ほとんどの人間が成長と共に持つようになる諦念や妥協がない」「大人の世界に染まらない純粋な心のまま世界を見ることができる」というポジティヴな面もあります。堂野は喜多川の後者の部分を徐々に愛おしいと思い始める自分に気付き、刑務所でも再会後も、その感情が愛なのか何なのか悩むことになる。

 出所直前に芝に自分の今後を伝えず、出所後は結婚し子供も持った堂野の選択は、彼がどこまでも普通の人なんだなということをよく表しています。BL作品の登場人物だからって、刑務所で知り合った同性と添い遂げる覚悟なんて持てない、女性に欲情しなくなったわけでもない、妻子を養う生活に不満や疑問もない、ごくごくありふれた男性。安易に雰囲気に流されず、喜多川との関係を一度は断つことを選び、再会後もすぐ絆されたりせずに妻子を裏切ることのなかったその真面目さは、冴えない彼の唯一と言っていいほどの美徳でした。そんな彼が、喜多川との関係においてのみ、太陽や月のように輝く存在となる。そしてまた、彼にとっても喜多川の脇目も振らない一途な感情は、単調で時々絶望に落ち込む人生の中で、一定の光を保って温かな希望を見せてくれる、かけがえのないものなんだろうと思います。この2人の出会いは数ある物語の中でも私にとって忘れがたい、尊いものとなりました。

◆Holley NOVELS版『檻の外』レビュー追記
 講談社文庫の『箱の中』には続編である『脆弱な詐欺師』『檻の外』まで収録されているのですが、旧版『檻の外』に収録されていた書き下ろし『雨の日』『なつやすみ』がなかったので、旧版も買って残り2編を読みました。

 『雨の日』はあとがきでも仰られているように担当編集に甘い話を求められて書かれたということもあり、BL色が強めでした。これは確かに一般レーベルでは出しにくいかもしれませんね。でも、刑務所というしがらみや麻理子という縛りのない、今度こそ本当に自由を手にした2人の濡れ場や会話は、些細なありふれたものでもとても愛おしく感じられました。

 『なつやすみ』は麻理子と浮気相手の息子である尚視点の話。片親の子のもう1人の親に会いたいという気持ちは痛いほどよく分かります。母と父ではやはり与えられる愛情にニュアンスがあって、子供はどちらも欲しいもの。喜多川や堂野が尚を連れ去ったわけでもなく、穂花との接し方から2人が子供の前でいちゃつくような男ではないと分かっているだろうに、ずっと感情的な麻理子には正直嫌悪感を抱きました。浮気相手との子を図太く認知までさせておいて、いざ堂野と尚が親子らしくなったら凄まじい拒否反応を示す。男に愛想を尽かした女性の現実だとは分かっていても、彼女に共感はできませんでした。だって、彼女の裏切りを知るまでは堂野も喜多川も彼女を裏切っていませんでしたから。

 でも、彼女の言う通り尚は幸せな子供だったと思います。喜多川の大らかな愛情と、堂野の丁寧で優しい愛情に包まれて、毎年夏の数日間だけ積み重ねていった2人の父親との思い出。そして、尚と触れ合うことで喜多川と堂野も穂花を亡くした痛みを和らげることができただろうし、男2人の生活でも子供を持ったような気持ちになって、お互いいろんな辛い経験をしてきたけれど人生そんなに悪くないなと思えるようになっていただろうと思います。麻理子や田口とは別に、尚には確かにもう1つ家族があった。他人に理解されずとも、この3人だけが分かっていればそれでいい。喜多川の隣には最後まで堂野がいてくれて、けっして悲しい終わりではなかったと、私は一片の疑いもなく信じています。堂野と尚の関係がいつまでも続くように祈りました。

3

箱の中がすごく刺さりました…

しんどい話が好きです。箱の中凄かったです。求めていたのはこれ!BLが好きと気づいてからBLを色々読んでましたがあまりヒットしない私はこの作品を読んで、これだー!!!となりました。本当に素晴らしい作品です。
ただ、檻の外が…箱の中は最高でした。脆弱な詐欺師もすごく面白かった。檻の外…(作中で)子ども死なせてまで二人は結ばれないとダメなのですか???完全一方通行の話が大好きなのでBLを読む時に必ずしも二人が結ばれる必要はないと思ってる、なんなら失恋エンドも大好きな私としてはくっつかずに終わればいいじゃん!!なんで!!!ってなりました。ここだけどうしても受け入れられません……
それでも箱の中だけでもすごく好きなので好きです!!!!!

2

最高です!

BL小説の中でベスト3に入る神作品です!

お恥ずかしいのですが、BLは、
漫画ばかり読んでおりましたが、この本に出会い、
BL小説の奥深さと、面白さを知り
BL小説にはまるきっかけになりました。

実在するのでは?と思うような
リアルな人物描写と、心の描写の数々に
圧倒されました。

不器用な攻めによる
受けへの並々ならない愛情とその表現の仕方が
胸を打ちます。

この不器用さに心打たれるのは、
人との距離の取り方に戸惑う
暗くも甘酸っぱい思春期を
思い出すからかもしれません。

何度読んでも、
余韻の残る素敵な作品でした。

2

神! BLとは

木原音瀬先生、初読みの作品です。

全体的に物語としての完成度が高く、豚箱から始まるストーリーは惹かれるものがあり、読んでいる手が止まらない程面白かったです。
全体的に暗い作品でしたが、そのダークさに垣間見える喜多川の愛や執着心は純粋ながらも怖いものがありました。
自分的、箱の中と詐欺師編の話がしっかりしていて好きです。
檻の外は少し早足だった印象があり、穂花殺害事件は少しこじつけ感があったのでそこだけ苦しかったです。
でも、それらを抜きにしても神作品でした。
特に 人間の人間らしさは群を抜いて素晴らしいです。
この作品に出会えてよかったです。

追記。
不妊治療を10年続けている浮気相手の嫁に自分の子供を殺害されたり、
麻理子の「友達にも、みんなにも『麻理子の旦那さんは優しい人ね』って言われて、嬉しくて」発言には興奮しました。
『優しい夫』に縋っていたり、浮気した事にごめんなさいを言わなかったり、自分ばかりが不幸を被って堂野をずるいと言う所、彼女からは言葉の節々に人間の意地汚さを感じられて個人的に凄く好きです。

3

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