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先生のデビュー作を読み返してみました。
現在の絵柄とはだいぶ違いますが、これはこれで美しかったなと思います。
表題作は会社の上司と部下のお話。
お話はあまり深くなく、恋の始まりも唐突。
どんなきっかけがあって恋に落ちたのか、とか
ゲイかノンケかすらもわからないふたりが惹かれ合い…
しっかりヤることはヤるし、お互いに好きという気持ちが高まっていくのは見えるのに
その過程がポッカリしているのは残念だなと思いましたが
でもタイトル通りに"いとしい"と想える相手と出会えたのだから、細かい部分は気にすることでもないのかもな、とも思えました。
3作品収録されていますが、すべて作画タッチから何から違うので、アンソロジーと言われても違和感がないくらいでした。
「いとしい、ということ」(3話) 中立
会社の先輩と後輩。
いきなり始まるというか、軽い人物紹介的な導入部分がありません。
3話目でやっと先輩は主任で、2人は4歳違いということが分かります。
あとがきを読んだらこちらがデビュー作で、最初は読み切りだったのだとか。
それで人物設定が曖昧なまま3話まで進んでしまったのかな。
1話目はキッチンでえろす。2話目は当て馬登場で、当て馬の勤めるカフェでえろす、3話目はあまあまえろすでした。
個人的に気になったのは、キッチンでのときにローション代わりに使ったものの正体です。キッチンといえばオリーブオイルが常ですが、これは…、このチューブの形状は…、マヨネーズでは!?という驚きがありました。
「夏のコントレイル」「ウィークエンドの憂鬱」萌2
この2人の話をまるまる1冊分読みたかった。
雰囲気のある本屋を手伝う美坂と、本好きのリーマン秋介の話です。
本屋の雰囲気とか「宝箱」と呼ばれる美坂の曽祖父と祖父の書庫がちょっとレトロでいい感じです。
年の差CPですが、美坂が初対面で高校生と勘違いしたくらい秋介が若く見えるのと、美坂が大人っぽいので「同級生」と言われても違和感ゼロでした。
1話目は出会いから結ばれるまで。コントレイルは飛行機雲のことですが、叙情的なラストに効いてます。
2話目は2年後の2人でした。
おすすめは1話目です。
「暴君に刻まれた劣情」萌2
和装もの、戦争絡みの時代ものに、無条件にこころをやられてしまいます。
軍人の佐野によって、冬月の背中に刻まれた寒椿の刺青。
出会いから8年もの間からだの関係はあったものの、その関係に名前がつくこともくちづけをすることもなかった2人。しかし佐野のハルピンへの出征が決まって…。
忍ぶ恋、言葉にしてはいけない一線があるような恋というのに弱い方はぜひ。
これだけものすごーーーーく妖艶な作品でした。
最近のぼすこ先生の絵とは全然違うので。馴染みが無いなぁ、と思っていたんです。
一読して、それっきり。久々に再読してみると。
逆に最近のコントラストの強い画と違って、これはれで良いものだなぁと思い直しています。そもそも最初っからその絵の美しさには定評のあるぼすこ先生。
デビュー作だってしっかり美しいんです。攻め受け同体格が好み、というだけあって。
本作の方が、攻め受け共に男の人らしい雰囲気。最近の顎の細さ、華奢さとは違い、しっかりとした面立ち。少し面長にも見える張った顎のラインとか。今見ると更にカッコいい。
この頃の絵でまた描いてみて欲しいなぁ、なんて欲張ってしまいます。
さて。デビュー作「いとしい、ということ」
リーマン同士の 後輩 × 先輩。仕事が出来て美しい嘉山さんは実は引っ込み思案で、恋に臆病。そんな嘉山さんを大胆にも押し倒してしまう斉木。短編だからね。善は急げ。チャンスは逃さない。ストレートな気持ちをぶつけられて、拒みもせずに流されてしまう嘉山さん。
ノンケの筈なのに、結構大胆に乱れまくる。もうそれはそれは「いやらしい、ということ」
そんなはしたない自分を見せておきながらぐーるぐる。嘉山さんは仕事以外のことにはてんで無防備で。斉木は気が気じゃ無い。本当に短かい物語の中に、当て馬、看病イベント、仕事での成長。そしてエロエロエッチ。と、てんこ盛り。
さすがです。
同時収録はセンチメンタルな「夏のコントレイル」
私服だと高校生と見間違われるほど、可愛い秋介。休みの日を持て余す趣味のない彼は、ひっそりと佇む本屋で高校生の美坂と出逢う。
先に魅かれたのはきっと美坂の方。イケメンだけど、寂しい心を抱えた彼は秋介を得た事で、夏の終わりには大人になる。というセンチメンタルなショートストーリー。
フワッと終わるけれど、2人のその後まで描かれていて。美坂は大学生になっていて。互いに忙しくて すれ違うんだけど、逢いたすぎて頑張る美坂が、いつものクールさをかなぐり捨てていて良き。のけ反る秋介がエロい。
そして時々読み返したくなる耽美なショートストーリー「暴君に刻まれた劣情」
これね、痛々しい感じがして。最初凄く嫌いだったんですよ。
どうしたものか、今では鮮烈に記憶していたりする好きな作品の一つだったりもします。
大戦中であったか、軍人は愛だの恋だの、甘い事は言ってられなかったのだと思う。
佐野大尉は、まだ中尉であった頃。寒椿が美しいと言う、冬月と。短かい言葉を交わす。
それは冬月にとって。「憧れが恋に変えられてしまう」瞬間だった。無理矢理抱かれ、その背に寒椿を彫られた冬月はただ、熱い記憶だけを抱いて大尉を待つ。
大尉は戦地に赴いたまま、その消息も知らされず。ただ待ち続けた日々。
本当に短かいストーリーなのに。泣けます。
ぼすこ先生は、表題作の2人のなれ初めを描いてみたいとあとがきには書いてあるけれど、記憶にある限り、それは今も描かれていない。表題作以外の2作品もそれぞれのその後が気になってしまう2人なので、いつか見てみたいとは思うけれど。最近の絵だったら、それはそれで、もう合わない気もしている。
みんな話が短くて、短い中に盛りだくさんな印象でした。
表題作いとしい、ということ
先輩後輩、お仕事、当て馬、流されエッチや襲い受けなどなど。
いつも受け身で流されてきた嘉山は後輩の斉木に、あなたかなり気になってるでしょオレのこと…とエッチされちゃいます。
この時点でえーいきなり!と思ったのですが、今度はランチで利用したお店の店員さんに襲われた嘉山をお仕置きエッチ?人前で!
そして斉木がお仕事頑張ってからの襲い受けエッチ。
斉木なら受け止めてくれるし大丈夫だけど展開早くて斉木はエッチになると主導権握って偉そうだしなんか…。
二人とも仕事ができる設定ですが主任がこんなに一人の後輩だけ懇切丁寧に仕事のノウハウ教えちゃうのどうなの?
他の短編もいいお話なんですが男同士の問題は一切なく恋に落ちてエッチに。
絵がすごく綺麗なのにもっとお話をゆっくり読ませて欲しいなあ。
とくに暴君に刻まれた劣情は8年恋人でも友人でもなかったと一行で語られ、佐野が戦地へ行く前に初めての口づけと激情を伝えます。
再会できて良かったし、短い中でうまくまとまっていたけどもう少し詳しく読んでみたかったな。
『それでも俺のものになる』が代表作になりつつあるぼすこ先生。
『それ俺』ももちろん大好きですが、エロ王道を美しい絵で綴ってるデビュー作もとても好き♪
あと同時収録で印象的なエッチな台詞があるんです。
●「いとしい、ということ」
年下強気リーマンに、美人リーマンがカラダから引きずられてしまうってエロ王道ストーリー。これがぼすこ先生のデビュー作。
カフェ店員がいきなり襲ってくる?そこにタイミング良くかけつけられる?さらに店員が見てる前で躾を始めちゃう?って無理矢理な展開もあるんですが、普段は頼りになる優しげな後輩がエッチの時に強気になってしまうのも、クール美人な上司がその言いなりになって「ひどくされて甘やかされるのがたまらない」と喘がされちゃってるのにも萌えさせられます!
『それ俺』よりもキャラが大人びていて、スーツを着こなしているビジュアルも好きです♪
●「夏のコントレイル」「ウィークエンドの憂鬱」
祖父の古本屋の手伝いをしてる高校生×読書好きのリーマン。
これも年下×年上だけど、高校生が大人びているのと、リーマンが童顔なので、見た目的には年上感はなく、受けはかわいい感じがします。
古本屋が閉店することになって気落ちしてる高校生を慰めたくて始まった二人の関係。
2話目の「ウィークエンドの憂鬱」は高校生が大学生になって、忙しくて会えず、お互い求め合う劣情が止まらないエロ濃いめのお話。
攻めが「俺にどうして欲しい?」と聞くと、受けは「そんなこと言えない」と恥ずかしがってたのに、「挿れながらおっぱい触って」とオネダリしちゃいます♪
このオネダリの一言が印象的で、ある時、この台詞だけ思いだして、読みたいのに作品が思い出せず数日悶々としていたことがありました…
普通な感じだったリーマンがエロに積極的になってるのがイイです♪
●「暴君に刻まれた劣情」
軍人×和装の時代物。強気な軍人がかつての同窓生を犯し、自分の所有物だと主張するように背中に刺青を入れる。それを全て受け入れて言いなりになってる和装の男が、儚げな美人ではなく普通の男っていうギャップがイイです!むしろ美人なのは黒髪の軍人のほう。
そして軍人が隠していた本心は…
軍服、和彫りの刺青、和装、悲しい別れもたくさんあっただろう時代背景、このストーリーにぼすこ先生の美麗な絵柄がすごく似合う!なにより刺青が美しい!
この話は、もう少し長く濃く読みたかったな。時代物もまた描いて欲しいです。
koboで購入。koboの竹書房は無残な白抜きがデフォなのに、そんなにハッキリ書かれてないものの修正は甘めです。