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完結しました!!
すごく考えさせられるお話でした。
主人公達は中学生、世間のせまい田舎です。
そこで自分の性癖に目覚めた少年達、彼等は母子家庭。
学校での苛めと、歪んだショタコンの教師と、村の口さがない噂。
中学生だし、恋愛とかそういう流れとはちょっと違うよね、と思いながら
「同性を好きになるという性癖」そうしたセクシャルマイノリティと思春期の在り方を通して幼い恋も、それぞれの登場人物達によって描かれたのだと思います。
1巻のクライマックス、教師の柳田にとうとう捕まって襲われかけた三島を助けたのは、夢野と桐野。
それから夢野と三島は近しくなるのですが、キスをしたその後、急激に三島が男であることを認識してしまい避けるようになる夢野。
そして夏休み、三島と夢野と桐野についてホモの噂が流れて、親の理解を得られなかった桐野は、三島と一緒に桃源郷を目指そう!と家出をするのですが・・
このひと夏の経験を経て、彼等が学んだモノとは?
三島と桐野は母子家庭ですが、それぞれの親子関係が対照的です。
桐野の性癖を認められない彼の母親。
腹を割って自分からの言葉を待ち、彼の性癖を真正面から受け止めてくれた三島の母。
三島が男なのを意識して、男が好きなのではなく三島が好きだったと悩む夢野に、性別は関係ない、恋をするのは素敵な事じゃないかと言う夢野の母親。
【番外編】ではショタコン教師・柳田の歪んでしまった性癖のきっかけとなる少年時代のエピソードがあります。
ここで、彼は周囲からその性癖を否定されるのです。
マンガですから、これがすべてではないでしょう。
しかし、「同性愛」という形についてその形成に重要な位置を占める思春期の彼等を描いて、その後の道が別れたというとても象徴的なお話だったのです。
一番衝撃的だったのは、オネェ言葉を使い、三島よりも女性への憧れが強かった桐野の変身です。
母親を悲しませたくない為の決断を、あの時彼はしたのです。
本当にそれでよかったのかどうか、桐野に聞いてみないとわかりませんが、彼は幸せそうでした。
そして三島と夢野は・・・
絵柄的にホラーもあったり、真面目もあったり、ギャグもあったり。
しかし総じてそのテーマは揺るぎなく、とても真面目なものだったと思います。
とても素敵な作品でした!!
若き、セクシュアル・マイノリティ達の、人生の分岐点。
永井先生のギャグセンスが大好きで、手に取ったこのシリーズ、まさかこんな終わり方になるなんて。
想像を覆す展開に驚きと、桐野が分岐点で選んだ選択は、いみじくも、多くの田舎生まれのセクシュアル・マイノリティの生き方そのもので。
それでも、そんな田舎でも、桐野が”パンドラの箱”を見せ合うことのできる時間を持てたのは、とてもしあわせなことだとも、思い、この短き青春物語がいとおしくも思いました。
結局は、他人任せではない、自分の決断を持って進んだ3人は、それぞれの幸せをつかめたようで、読後、とても報われました。
そして、不気味な柳田の過去も、番外編で明らかにされます。柳田の悲惨な過去にいちど同情もしたのですが、桐野、三島、夢野の3人3様の家族や、個々人の気持ちの折り合いを経て、それぞれの分岐点を選び進んでゆくさまを見て来たので、この分岐点で洋服のどこかをひっかけたまま後ろ向きにズルズルと進んでしまった柳田の結末には、虚しさも憶えました。
いい作品でした…!!本当に良かった!心にガツーン!と良い衝撃をくれた作品でした。
SIDE:Aを読んだとき、期待・想像をいい意味で裏切られ、先の読めない展開にかなりワクワクさせてもらったものです。
そしてその続きを最終回までCOMIC Beで読んでいたものの、こう1冊にまとめられて改めて読むとまた感慨深いものがあります。
SIDE:Bの表紙は、三島と桐野が海の中手を取り合って…という構造で、この表紙を見ると「あぁ終わっちゃったんだ…」と少し寂しく感じると共に、3人の少年たちの道の行く末、特に桐野の選んだ道をすでに知っている状態のため、せ、切ない…とちょっぴり胸の痛みが…。
この作品が、永井先生が与えてくれた衝撃と面白さはきっと忘れないと思います…!
大好きだー!スメルズライクグリーンスピリットー!!
田舎を舞台にした、男子中学生・三島(序盤はいじめられっ子。女装に興味があり、女の子のように綺麗)、桐野(大人びてイケメン男子。しかし実はゲイで、おねえ言葉を話す)、夢野(おバカで純粋で一直線。三島をいじめていたけど実は好き。だけど…)の3人がメインのお話となりますが、町にものすごいスピードで駆け巡る噂、それぞれの親の想い、親への想い。いろんなものが交差して彼らは悩みます。
SIDE:Aの終わりでは、社会教師の柳田に三島が目をつけられ…というところで終わり、柳田の車に三島が乗せられ…というところからSIDE:Bが始まるのですが、
この柳田も、彼の行為は犯罪で、桐野が言っていた通り教師としても人間としても最低で許されないことをしたのですが、少し可哀想な人でもあるのです。自分の性癖を親に「病気」と言われ、周りの理解を得られず歪んでしまって…。夢野と桐野のおかげで三島は助かるのですが、三島は柳田も自分達と同じように「パンドラの箱」を持っていて、自分が受け入れられてたら…と同情の気持ちを持ってしまい桐野に否定されます。
柳田の件があってから距離が縮まる三島と夢野。三島に恋する夢野ですが、三島といい雰囲気になって先へ先へ…と進み、三島の下半身を見た途端、夢野は咄嗟に「あ、違う」と熱が冷め逃げてしまいます。夢野は三島と桐野とは違う。「三島」が好きなのであって「男」が好きなわけじゃない…それは仕方ないことだし、自分自身に苦しみ葛藤する夢野も、強がって平気に見せる三島も、その三島を理解して励ましてくれる桐野も…あぁ切ない!!永井先生が描くキャラクターはどうしてこんなにも魅力的なのか!
しかし夢野はきちんと考えてくれる子でした…!お前だから特別!好き!で終わらせるのではなく、きちんと理解してくれようとするのが素敵ですよね。
そしてそして、お話は彼らの選択するときまで進んでいくのですが……
『性癖』という壁にぶち当たり、悩みを抱えそして自分達で答えを導き出す少年たちに、読み手も一緒に考え、苦しみ、「どうしたら彼らが幸せになれるのかな」と考えさせられます。
まだ中学生の彼らでも、自分が他とは違うということに気づき、悩み、「いつか結婚して子供も…」と一般的な幸せを親のために想う。
自分のためか?親のためか?何が「幸せ」か?三島と桐野、2人の「桃源郷」は―――?
唯一のお互いの理解者と言ってもいい三島と桐野。そして夢野。
それぞれが選んだ道は、どこかリアルを感じさせられます。特に桐野の選択はBL的に見ると衝撃だったというか、そこまでの道にどれだけの苦労があったのかな、と切なくなります。
でもこれはこれで、桐野が幸せになるための選択肢だったのか…なんて。『強くならなきゃ』と言っていた桐野でしたが、桐野は十分強い!頑張った!!と勝手ながらに思います。
そして三島。三島は三島で「自分の道」を見つけ、歩んでいきます。『それが「俺」「三島 太志」だ』と前へ前へ進む三島の瞳はとっても綺麗でした。
そしてそしてその隣には夢野がいる…というところがとっても良かった!!夢野と三島は一緒に居た時間が長すぎて夫婦のようになっているらしいですが、それはそれで素敵な関係!
いろんな幸せのかたちがあって、道があって。選んだ道は違えど、自分自身の思う幸せへと歩んでいる彼らの姿にはいろいろと考えさせられました。
この作品は最後は一体どうなるんだろう?とまったく先の読めない展開でとても斬新で、永井先生のセンスが光る素敵な作品でした。
そしてこのSIDE:BはAよりもかなりの厚さがあり読み応えがあります。普通のBLとはちょっと一味違いますが、とっても心に残る作品だと勝手ながらに思っております。
未読の方にはぜひともSIDE:Aから読んでいただき、彼らの選ぶ道を見届けていただきたいです~!!
BLというジャンルに留まらず、思春期の少年達と、彼らを取り巻く人々の成長譚として、とても素敵な作品でした。
SIDE:Aから漂っていたあらゆる不穏な空気がハッキリと形を成していく本作ですが、その波瀾に満ちた物語の中で、登場人物の感情や立場が一つ一つ丁寧に拾い上げられ、永井三郎先生の独特な作風で描かれています。
何より感動を覚えたのが、主要登場人物と、彼らの母親との関係性です。
BLにおいては様々な形で、家族との物語やカミングアウトの様子が見られますが、子どもにとっての、特に男性にとっての母親の存在や言動が時にどれほど重く、恐ろしく、同時にどれほど温かく得難いものであるのか。ここまで繊細に表現した作品はなかなか無いのでは、と思います。
また、中学生という設定も特徴的でした。彼らはまだほんの子どもであるのに、自己の性癖を自覚し、その不安定さに日々苦悩している分、正統であろうとする思いもまた強く、その大人びた姿勢がとても痛々しい。
誰もが感情を持ち、自分と誰かを大切に思うからこそ、物事は思う通りに進まない。その虚しさと希望とを、深く考えさせられました。
「萌」とは決定的に違いますが、とにかく漫画として、創作物として素晴らしい!の一言に尽きます。
さようなら、桃源郷。
三島と桐野が誰に気兼ねすることなく素顔のまま過ごせた屋上こそがふたりの桃源郷でした。
同性を好きになるとはどういうことなのか、それはいけないことなのか、三島、桐野、夢野はそれぞれ自分の答えを探します。
自分はいったい何なのか?
拉致された三島を救いに行ったことをきっかけに夢野は三島に対する気持ちを自覚します。
でも『男』と意識した途端、混乱して引いてしまう姿がいかにも中坊でリアルだったなぁ。
閉鎖的な田舎での無遠慮な視線と口さがない噂に急かされるように突きつけられる選択の時。
桐野が自分と向き合い真剣に出した答えは三島と桃源郷との決別を意味します。
何が真実か、という答えは人それぞれですから本人が選んだ着地点だと納得するしかないんですが…「楽しかったねぇ」と解放の封印を選んだ桐野を思うと涙がこぼれました。
三島を拉致した柳田先生も、やらかしたことは許せるものではないんですが…どうにも不憫で。
脱け殻な瞳に唯一、感情が灯ったのは三島を救いに来た夢野たちを罵倒したときだけ。
「受け入れてくれ」と哀願する姿は、否定され自らを偽りながら生きることを選択しなければならなかった少年に見えました。
この作品は母親との関係性が印象に残ります。
番外編で読む柳田の母親は三島たちの母親のように息子と向き合う素振りはなく、異物として扱われた孤独はゆっくりと時間をかけて一人の人間を壊してしまった。
家族だからといって分かり合えるわけでも修復できるわけでもない。
でも、だからこそ母親に向き合う覚悟が在ると知っただけで彼らは少しだけ楽に自己肯定ができる。
夢野もきっとそうだったから、あの結果になったんですよね。
ご都合な展開かもしれないけれど、幸せであってほしい。
秘密は口にした途端に現実となり、現実はマイノリティを傷つけることが多い。
【みんながお互いの秘密を知ったら、どんなに安らげるだろう】なんてイギリスの評論家の名言はそれこそ桃源郷の話です。
萌えではなかったけれど抑圧と解放の紙一重に揺らぐ少年たちと、口を噤むことの意味が心に残る作品でした。
この先、ずっと本棚に並んでいるであろう大切な本です。
永井さんの絵柄の使い分けは今巻も冴えてましたね。
超ド級のシリアス展開なのに村のオバチャンたちの顔のデザインがナイス(笑)