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◆あらすじ◆
ボクサーの平津(26歳)は、所属ジムに通って来る若い整備工・小田が気になって仕方がない。
小田はいつも、職場の人間関係のストレスを凄まじい勢いでサンドバッグにぶつけ、帰っていくだけ。
人間を殴るのは怖いから、と小田は言うが、平津は彼に物ではなく人間と向き合ってほしいと思う。
人と…というよりも、自分(平津)と。小田に悩みをぶつけてほしい。彼に恋愛対象として見られたい。
でも、小田に嫌われるのが怖くて、距離を縮められない平津。
平津は、小田には人と向き合えと言っておきながら、自分は小田と向き合えてないことに気づく。
二人の心が同じリングに立って、向き合うこと。まずはそこから――
ボクシングにも似た、恋愛の駆け引き。
「うかがったってチャンスは来ねぇぞ 手数出してチャンスを作れ!」
ジムの会長の怒声が、踏み出せない平津の姿にオーバーラップして来るようなもどかしさ。
平津のモノローグでボクサー流恋の勝負を実況していく、大人の切ないセンシティブ・ラブストーリー。
◆レビュー◆
ひさびさの当たりコミックス!
「あしたのジョー」ならぬ「あさってのジジョウ」ってw 文字通りあさってな感じが力抜けてていい感じ。でも、笑いもありますが、基本は一途なラブストーリーです。
この作品では、平津が、ボクシングと恋愛を重ね合わせ、攻める・かわすを繰り返しながら、次第に小田の心を掴んでいく過程が、丹念に描かれています。
最初本を開いてこのラフ画みたいな絵を見た時は正直戸惑いましたが、読み終わる頃にはすっかりこの絵に魅了されてました。
平津という凄く男くさい男の、傷つきやすい恋心や、シャイな部分、素朴な温かさ、そして彼の目に映る小田の眩しさやカワイさが、形じゃなく雰囲気になって絵から立ちのぼって来るようで。
この絵じゃなきゃ伝わらない。そんな、確立した世界観を感じます。
平津のモノローグもすごくイイ。
小田の言動に対する平津の一喜一憂が、逐一つぶやかれていくモノローグ。
平津の心の襞の内側まで覗き見ているようなリアリティーある言葉たち。
そして、不器用だけど真っ直ぐに相手に向かっていく彼の気持ちに直に触れることで、平津という人間に惹き込まれてしまうんです。
クライマックスで、平津が小田を、ついに同じ(心の)リングに引き上げた場面は、泣きました。
リングの上から小田の手を取って引き上げる平津の姿(きっと平津の心に見えている世界)が描かれているんですが、平津がいい笑顔で、それがすごく嬉しくて。
懸命に恋と格闘する平津の姿は、人が人に向き合おうとする姿ってステキだな、と改めて感じさせてくれます。
そんな平津の姿が、小田にも変化をもたらしていく…という辺りも、押しつけがましくなく、とてもさらりと描かれていて。
人が変わるきっかけも、人と向き合うことの中にあるんですね。
平津がバイトするお好み焼屋で、いつも鉄板を灰皿代わりにしてた心ない中高生にも、変わるきっかけが訪れて、それを平津が微笑ましく眺めてる…というモブなエピソードも、温かくて好きです。
ボクシングの中にある、人間関係の哲学を見せてくれた作品。
ただ、ボクシング流の駆け引きなんか何も考えてない小田の唐突なキスのほうが、ずっと二人の関係を前進させてたり(笑)…そいう部分も含めて、人間関係の核心を突いてると思います。
やさしく心をえぐられたい人に、オススメです。
見事に狙ったタイトルと期待感へのずらし加減。
そこから何を読み取るかが多分読者の仕事ですが…。
この作品、読者の年齢層をしっかり選んで
しまいそうな気がします。
JUNE、なんですね、しっかりと。
華美な西欧風の耽美を旨とするJUNEではなく、
模索しながら情を汲み上げられたJUNEの一角かと。
だからピンと来難い部分が若干あるやも知れません。
しかし読み返す毎に味わいはしっかりと出ます。
スポ根ものの行間ではなく枠外を読み取ろうとした、
そう言う作品かなと。
帯が若干艶消し加減なのは、まあご愛嬌という事で。
腹立たしいことがあったとき、心の中に押し込めて圧縮して少しずつ溜まっていくよりは、小田のように怒りを力に変えてサンドバッグを撃ち続けるほうがよっぽど良いと思います。
そうじゃなければ早い段階で心が壊れてしまいますよね、ある意味で小田にとってはコレしかなかったんだと考えると、少し悲しいものもあります。
平津、プロボクサーでそれこそ作中彼の先輩が「ベルトを狙える位置がなんたら」って話しているのに小田にむかって色ボケまっしぐらで、そういうところが憎めませんでした。…いえ、途中で小田と仲違い気味になってしまったとき勝手に、小田が呑み屋の悪口を言っていたようにホラ吹く(…状況を鑑みれば、まぁそういうこともあるかなぁとは思いましたがいやいや言っちゃだめですよね(笑))のはいただけませんが。
ふたりとも、それぞれの考えに共感できるところが多々あり、気が付けば自分も平津と一緒に小田を好いてしまっていました。妄想家平津はなかなか良い妄想を働きます、私はごく序盤での、“リング上(おそらくインターバル時)でぐったりと座ってる小田”が好きです。セクシーたまりません。
怒りを拳に乗せて発散し続ける小田へ、なるべくゆっくりそして傷つけないようにと徐々に近づきながら一歩進むごとに喜びを噛みしめる平津がとても可愛かったです。でも平津も人間ですから、時々は失敗して小田の反感を買うんですが、そういうところもまた現実での人間関係の難しさや自らの言動への後悔や、という感覚に繋がりました。
小田の怒り炸裂時のサンドバッグ打ち、すごく怖いんです。華奢な体なのに、あれはすごく重いパンチなんだろうなと感じるほど、殺気じみています。そりゃあジムの会長もリングへ上がること、進めますよね。
終始、ボクサー平津がやたらと乙女チックというか、とてもストイック…なわけではないんですが発想が可愛いというか。小田の匂いを思い出して勃起して自慰を何度もしちゃうって、可愛いなと。とにかく小田くんが好き、好き、好きすごく好き…! で辛抱たまらんな様子がずぅっとで、面白いです。
描き下ろしで、小田が「自分には平津さんがいる」ということが自信になっていて安心もしている、と話したときは 報われた! と嬉しくなってしまいました。それほどずっと平津の心が小田に向かっていたからです。エッチシーンも今までのすべてを放出する! と熱気がむんむんでした。
それと、カバー下のつなぎへの萌え! けしからんフィーバーで幸せになれました。
ラーメン味のキスも、けしからんっ!
京山あつきさんはクセになるなぁ。
へらっとしたちょっとアホっぽくて人が良くてたぶん実際いたらそれなりにかっこいい(かもしれない)けど、何か情けない感じの男子が、きれい目な子に下心の混じった好意を持ってて、でも強く出れなくて、もだもだしながら仲良くなって。
相手の反応に内心一喜一憂で、なんかもうどっちがかわいいのかわからん!どっちもか!ってな気持ちに。
いざって時に、カーッとなって手が震えながらも突っ走るかっこ良さと色気。
この人の作品はモノローグとセリフが大げさでもわざとらしくもないのに、何か胸にきます。そして笑える。
読み終わった瞬間から読み返したくなる作品。
「明日のジョー」にひっかけた「あさってのジジョウ」とは、なんとも上手いネーミング。
仕事ので生じた怒りをひたすらサンドバッグを打つ事によって解消している青年・小田とそれを傍らに眺めながら恋しちゃっている青年ボクサー平津のお話。
ジムの会長はボクサーの平津に対して、小田がサンドバック相手じゃなくて、リングに上がらせて人間相手に打ち合えるようにしろ、そのためにはお前(平津)が小田に嫌われて、あいつ殴りてぇと思われる程度に嫌われろ!と命令を下すんですけど、まずそこで躓いた・・・。
え?なんでサンドバッグ相手じゃダメなの?趣味なんでしょ?
ていうか、そもそも何故ボクシングって人間を殴るの?ボクシングの原動力ってなに?
今までボクシングのBL漫画って他作家さんの「gift」みたいにボクサーとトレーナーみたいな構図でしか読んだ事がなくて、それだとトレーナー通じてボクサーに感情移入しやすいのでボクシングについて何も考えなくても済んだんだけど、この漫画は、サンドバッグではなくて人に向かって来い!リングに上がって来い!とボクサーが青年に誘うお話なので、何故、会長とボクサーの平津が人間相手にそれ程拘るのかが少々理解しづらかったです。
それで色々、ボクシング 魅力 みたいなキーワードで検索したんだけどノーベル文学賞を受賞された方が分厚い本を書いている程、奥深いものらしくてちょいっと齧った程度では理解出来そうになかった・・・。
でも私の場合、難しい事を考えちゃいましたけど、そこに拘らず読めると思います。
ボクシングに絡めて自分の事を見てもらいたい、恋も進展させたいと思っている訳です。
小田がサンドバッグオンリーで人間を殴れない理由は、殴るとこっちに向かって来るから。返りが怖くて手が出ない。(サンドバッグを叩くのもボクシングの一種かと思ったんだけど、それはボクシングとは言わないようであくまで人間相手じゃないとボクシングとは言わないらしい。)平津はなんとかして人間相手にボクシングをするため小田をリングへ上らせたいと思っている。
「シャドウやらない?」とか聞いてつれない返事にガックリしているその姿とか可愛い。
平津なりに何とか頑張って小出しに恋のジャブ効かせているつもりなんだけど、相手にはちっとも響いておらず・・・。そしてびびる。恋に関して腰が引けちゃっていて、リングに上がれない、小田の返りが怖くて手が出せない・・・。
この青年ボクサー平津が男くさくて実直で無骨な感じでスマートじゃないところがいい。その不器用な距離の縮め方とか、訥々とした様子がなんだか読んでてガンバレ!って応援したくなってくる。
告白したときに震えているところや、抱き返す事ができず固まってしまっているところ、キスしたかったけど嫌われたら死ぬと思ってそのままじっと抱きついているところ、何とも彼らしくていい。
それに対して小田の背後から突然のほっぺチュは反則です!これは効くわー。
それと書き下ろしの「オレにはヒラツさんがいるから」と言う小田の言葉、自分を好きでいてくれる人の存在が支えになる、自信になるっていうところがいいなぁ。
描写が細かいので、とにかく先へ、先へと進めて読んでしまうせっかちな私は一度目では読み落としたところもあって、テンポを落として読み直した二度目、三度目でじわじわと心にきました。
私がトピ立てした「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#IndexNews
で教えていただいたのが、こちらの作品。
あとがきで小田を「魔性」だと作者さんは書かれていたけど、私には魔性というほど惹かれるものが感じられなかったのと、レビュー冒頭のボクシング論について少しもやもやした点が残るので神ではなく、萌萌にしましたが、読み返すたびに味わいが出て来る作品だと思いました。
教えてくださり本当にありがとうございました。