イラスト入り
全寮制の学生寮を「壁の中」と表現するだけあって、閉塞感がつきまといます。
陽キャでどこかチャラさを漂わせた香司と、学年トップの優等生・昴という正反対の二人が、屋根裏部屋で夜な夜なこっそりと天体観測をする仲になる。
陸の孤島にある学生寮という閉ざされたちっぽけな場所から眺める宇宙の広大さ。
その対比が印象に残りました。
外とは隔絶された学生寮という環境、そしてだいぶ大人に近づいてはいるものの親の庇護下にある学生という立場。
守られているけれと同時に閉じ込められている彼らの恋の行方が苦しい。
香司はやがて昴のことを好きになるも、昴はキスは許すもののそれ以上は頑と拒むし、そもそも「好き」と返してくれない。
そしてお金を必要としている理由も明かしてくれない。
昴は単なる意地っ張りとかクーデレ・ツンデレではないんですよねぇ。
これ昴視点だったら、もっと苦しいものになっていただろうなぁ……。
私は香司が「いつかさ、壁の外で会おうぜ」「貧乏で、何も持ってなくて、でも今より少しは自由で」と言うシーンがやっぱり好きですね。
香司の語る「いつかの話」がまるで異国のお伽話のようにすら感じて、その切なさが私の琴線に触れます。
不自由さを感じながらも今すぐどうこうできず
「いつか」としか言えない歯がゆさ、不確かな将来に望みをかけるしかないままならなさ。
「早く大人になりたい」と子供である自分に歯がゆさを覚える攻めが好きなので、この作品もそこがツボでした。
ーー
スピンオフの「君は僕の初恋の人」を先に読んで、そっちがあんまりツボらなかったのでこっちも読む気が失せて積んでいたけれど……。
うーむ。
二作品とも、苦しい関係でしたね…。
というか、意味ありげな仲で登場する教師の棚橋と朝倉は、「君は僕の初恋の人」の攻め受けかー!!と読後にようやく気付きました。(遅すぎ!)
あと「花塚」というのを「花嫁」と読み違えちゃうの!!
ここがとにかく残念でした。
花塚という苗字と出会った事もなくこの作品がお初だからか、それよりも馴染みの深い「花嫁」に勝手に目が変換しちゃうの……。
だから、いいシーンなのに「花嫁」と読んでしまう自分にガッカリしまくり。
男子高校生が壁の中でいろいろする話(言い方)
山奥の名門男子校に入学した香司の父親はある有名政治家であるが、本人は自他共に認めるチャラ男。
以前、同じ学校に通っていたいとこに教えてもらった秘密の部屋に女の子を連れ込んだところ、先客がいた。
その先客は、学年一の優等生昴で、彼はその部屋で天体観測をしていたという。
その出会いがきっかけで秘密の時間を共有するようになる二人。
香司にだけそっけない昴が時々見せる無防備さに惹かれていく……
という話でした。
実は、二人には香司の知らないつながりがあるのですが、それは二人にはどうにもならないにも関わらず、二人の関係にマイナスでしかないつながりで、あー……残酷だなあ……って思いました。
個人的に世の中で一番残酷なのは、自分ではどうにもできない出自だとか、血のつながりに関わることだと思うんですよね。
こればっかりは自分で断ち切って乗り越えたつもりでも、その事実は消えないから、枷でしかない。
自分でやったことの責任を取らされる方がよっぽどましだよね、といつも思っています。
とまあさぞかし「しんどい本」みたいな感想書いてますけど、安心してください。なんのことはないハッピーエンドです。
まあちょっとハッピーエンドに行くまでにもうひと盛り上がり作れそうなあっけなさだったような気はしますが、それをやると収まりきらないんだろうな……と思うので、致し方ないですね。
ちょっと切ない寮の中の青春物語を読みたい方にはオススメします。
瑛琳学院大学付属高等学校。
そこは、東京の山奥ある高い城壁に囲まれた全寮制の名門男子校。
陸の孤島とも呼ばれている学生寮が舞台です。
視点は9.5割攻め視点。
ほんの少しだけ受け視点も入ります。
しょっちゅう女の子と遊んでいるような、政治家の息子で遊び人の攻め・香司が主人公。
ある日の夜、合コンで引っ掛けた他校の女の子を寮内にひっそりとある屋根裏部屋に連れ込むと、そこには先客が居て…と続きます。
遊び人だったはずの攻めが、ひょんな事がきっかけで接する事になった、天体や星が好きな眼鏡の優等生くんにどうしようもなく惹かれていってしまうお話。
きらきらの青春ものではなく、梅雨の時期から夏にかけての湿度の高さがじわっと広がるような、しっとりとした雰囲気がある作品。
攻めの香司は、お坊ちゃんらしさが溢れる愚直さや鈍感さ、そして所々に育ちの良さや人の良さが見られるなんだか憎めないやつです。
子供っぽいと分かりつつ、親に反発しわざと軽薄そうに振る舞っているものの、決して完全にはルートからは外れようとはしない。
本当に、悲しいほどにまだ子供なんですよ。
香司視点だと、初めての本気の恋にもがく遊び人の不器用な図に「あらあら」となったり、昴が頑なにお金を稼ごうとしている謎や、悪しからず思っていそうなのにこちらを振り向いてくれないのはなぜ?といった謎の部分に目線がいくのです。
しかし、昴がいつ香司を好きになったのかについては、行間をどうにか読んで想像するしかないので…
所々に伏線があるとは言え、謎が明かされた時は香司がちょっと可哀想になってしまったな。
これが昴視点だったのなら、本来であれば嫌悪すべき相手に惹かれてしまい悩み葛藤する様子や、香司に嘘をついている事に対しての罪悪感なんかも描かれて、より切なさが増したのでは?と思う。
でもそれだと、謎が判明した時の香司の驚きや戸惑いが半減して見えてしまうのかも。
難しいところですね。
学生寮ものやギムナジウムものが大好きで、こちらも期待大で読み始めたのですが、生徒間の賑やかさや行事などの学生寮っぽさを求めると少し違うかもしれない。
ほとんど人が居ない状態の夏休み辺りの時間を中心に描かれているので、主に登場するのはメインキャラクター2人+先生2人といった感じ。
制服すら出て来ないですし、学生寮ものや学校ものという題材は活かしきれておらず、その辺りの設定ならではの魅力があまり感じられなかったのと、ラストがかなり駆け足で都合良く感じられたのが少し残念。
逆を言えば、人数が少ないからこそ、子供過ぎず大人にもなりきれず…といった高校生2人のもどかしさに焦点が当たっていて良かったのかも。
まだ親の庇護下に居てどうする事も出来ない若者の不自由さや葛藤と、高い壁に囲まれた学園に閉塞感に同じ意味を持たせて描きたかったのでしょうか。
高遠先生の文章の上手さなら、スタンダードな学生寮もきっと面白いと思うのだけれど。
個人的には少し物足りなさを感じてしまい、学園ものならばもうちょっとストレートなお話の方が好みでした。
うーん、これは好みの問題かな。
天体についてや情景描写は大変美しく、流石の一言でした。
この人達は絶対何かあるなと思っていたら、やはり先生達のスピンオフもあるようですね。
どちらかというと先生達の方が気になってしまったので、こちらも気になるところ。
少し読んで、あっこれ私の大好きなやつだ…とわかり、もう夢中で一気に読んだ。イケメンチャラ男が純情な真面目くんにマジ惚れしちゃうやつ。全編攻め視点。政治家の一人息子×訳あり風の苦学生。
女の子と経験豊富な花塚は、自分にだけ態度の違う昴が気になる。経験豊富ゆえに、「俺のこと好きなんじゃないの?」「お試しで付き合う?」とか言っちゃう。
で、いざ付き合ってみると欲しがってるのは自分ばっかり。好き好き言ってるのも自分だけ。昴からはその言葉は聞けない。なのにキスしたり、触り合いは許してくれる。
その上昴はお金に困ってるようで、夜はバイトばかり。体を壊すのではと心配な花塚は、お金を貸すようになってしまう。
それで少しは気を許してくれるかと思ったのに、お金が必要な理由は教えてくれないし、エッチも最後まではさせてくれない昴。そんなままならない関係に、ますます夢中になっちゃう花塚…。
好きだ好きだ好きだ、と繰り返す花塚に、嫌だ嫌だ、と返す昴。ここまで読んで、昴はただ素直になれないだけだと思ってたんで、このシーンはもどかしくて苦しくて。そんなある日、昴の妹が寮に現れたのをきっかけに、昴の嘘と秘密が明らかになる。
今まで見えていた花塚と昴のキャラクターのイメージが、これによってそれぞれまるっきり、真逆になってしまう。非常に鮮やかな展開。攻めも読者も騙された形になるわけだけど、伏線もちゃんとあって、心理描写もしっかりしているので納得できる。
そこからの、引き延ばして焦らされてようやくやっと、といった感じのエッチシーンで、とうとう涙腺が大決壊。もうここの濡れ場は、名シーンと言っても過言ではないのでは?
自分の思い上がりや愚かさに気づいた花塚と、すべて暴露してようやく本音を言えた昴の、気持ちを確かめあうためだけの交わりがもう…本当に、本当によかった…。
多感な少年時代の、親や学校に縛られている閉塞感や無力感、焦燥感などもよく伝わってきて、切なく甘酸っぱい気分になる。嘘と秘密を壁の中に置いてきて、壁の外で新しい関係を始めよう、というラストの、なんとも言えない清々しさ。
秘密の屋根裏部屋、天体観測、流星群、と物語を盛り上げる舞台装置もロマンがあって、すべてが私好みの良作。実は本当に純情なのは攻めの方だった、というオチも含めて。
全寮制男子校に通う、人気者でチャラ男の香司と優等生の昴という正反対の二人。
香司が合コンで知り合った女の子を寮の屋根裏部屋に誘ったところを昴に目撃され、それを黙っている代わりにと交換条件を出されたことで二人だけの秘密が始まります。
真面目な昴は負担は全く心を開かないのに、大好きな星の話をしている時だけは生き生きと饒舌になります。
そんな自分にしか見せない顔に香司はどんどん惹かれていきます。
「なんか気になる→気づいたら好きになってた」という感じです。
香司の「試しに付き合ってみない」との軽い提案に、昴があっさり同意して付き合い始めたふたり。(これには深い事情がありました)
中盤、香司の昴への「好き好き」アピールが続きちょっと中だるみでしたが、後半の50ページで今までのもやもやがどんどん解消されて話も盛り上がってきます。
(この盛り上がりがなかったらちょっとがっかりなお話だったかも)