3人の深く切ない愛の物語。

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表題作あいのはなし

死んだ父に似た息子 桐嶋椢 9歳→19歳
愛する男を失くした 岸本波瑠 21歳→31歳

あらすじ

愛する男を失くした岸本波瑠は、彼の9歳の息子・桐島椢とあてのない旅に出た。奇妙なことに、椢は自分の中に父親がいると言い、そして時おり本物の彼のように振る舞った。不思議で幸せな三人での生活。だが、幼い椢と他人の波瑠が長く一緒にいられるはずもなく、逃避行は悲劇的な結末を迎えた。――それから10年、あの日姿を消した波瑠を、椢はずっと捜し続け…。時をかけ、三人の想いが絡み合う不思議な愛の物語。

作品情報

作品名
あいのはなし
著者
凪良ゆう 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778115234
3.9

(169)

(76)

萌々

(48)

(21)

中立

(12)

趣味じゃない

(12)

レビュー数
24
得点
647
評価数
169
平均
3.9 / 5
神率
45%

レビュー投稿数24

疑問 罪は多数決で決めるものでしょうか?

凪良先生の、「死んでも死んでいない」物語の一つ。
あいを平仮名書きしたのは、あい=愛=哀、とかけたからかな?
この作品は、死んだ恋人が、彼のの息子の中に意思(魂)が宿るバージョン。

岸本波瑠と、恋人・裕也の9歳の息子・桐島椢の物語。
裕也は、美貌で寂しがり屋の年下の恋人と、9才の幼い息子を遺して、海で急死する。
葬式の日から、恋人の息子の言動が変わる、死んだ父親そっくり。

9才の子供の「出よう」の言葉に従い、波瑠は子連れの逃避行に出る
・・子供の要望に従ったとはいえ、他から見たらそれは「誘拐」。
当然、訪れる旅の終りは、とても悲惨で最悪な状況。
悪意が無くても、それを犯罪と指摘されたら、波瑠に逃げ道はない。
波瑠を罪人にすると気づかない、幼い子供の無邪気が起こした悲劇。

そして法の裁きによる別離の後、椢は波瑠を探す。
・・・だけど椢は未成年。
誘拐犯にされて、接触禁止条項を設定されて居たら、また波瑠は追い込まれる。

★恋人が死んで、彼の息子の中に魂が宿る・・でもそれは有り得ない。
波瑠を想う子供の悪意ない嘘で、演技だったと、10年後に椢は懺悔する。
波瑠も寂しさを抱える人だから、子供の演技に縋ってしまった。

・・でも最後の最後で、椢に居憑いた裕也の魂が別れを告げる場面がある。
  裕也の字で綴られた「あい してる」を瓶に詰めて海に流す波瑠。

★笑いながら泣かせる文で誤魔化す達人の「煙幕構成」にはぐらかされるけど、
扱うテーマは重い。
凪良先生は、悪意のない行動を「罪」と断定される「冤罪」を扱う小説をいくつか書いてます。
本人が語る事実より、シナリオにはめ込まれて誘導捜査をされたら、逃げられない不条理。

凪良先生の「冤罪」ものは、抗う力も知恵も無いキャラが主役。
何とかならないのか、と、読後のストレスが物凄い。モヤモヤする。

この物語、いつかもう一度編集加筆して、再刊してほしい。

0

現代社会のテーマに陳腐なファンタジーが合ってない気がします。

凪良ゆうさん、一般小説でも有名になっている方なので、文章はまとまっていて読みやすいのですが、話自体まとまりすぎていて起伏がない…伏線もない…ドキドキするシーンがない…という印象です。

話のテーマが誘拐だったのか?愛する人の死を乗り越えることなのか?振り切れてないような中途半端さを感じます。
設定や人物を散りばめるのみで、受けや攻めの心理描写、彼らを見守る人たちの心理描写が足りていないために読者の気持ちが入っていかないように思えます。

後半にエロが1シーンだけありますが、この話の薄さの割にベッドシーンを詳しく描写するのはバランスが悪いんじゃないかなあと思ってしまいました。

また、誘拐事件の犯人となった受けが実刑四年というのもどうかな?と。子供と犯人に元々関係があったこと、子供に危害を加えられていないこと、期間の短さなどから執行猶予がつくんじゃないのかなー?と思ったんですが、いかがでしょう。

さらに、誘拐事件の過去を背負う2人を描いた話…という社会派的な要素にラストの荒っぽいお粗末な超現象が妙に浮いていて全く感動できず…。

「まばたきを〜」も設定が好きで読みましたが、そちらも現代物に妙なファンタジーが入るのが納得できずあまり感動できませんでした。

散々長ったらしくレビューしてきましたが、凪良ゆうさんとは相性が悪いのかもしれないです。確かめるべく、他の作品も読んでみます。

3

泣けました。

ラストで号泣…。
ファンタジー割合のさじ加減が絶妙でした。

波瑠は学生時代から裕也だけがずーっと好きで。裕也との関係は恋人ではなかったけれど、だからこそ別れる事もなく一番近くで過ごせて。

裕也と椢の波瑠に対する親子関係に萌ました。「二人で波瑠ちゃんを守る!」って親子共闘が萌です。

ラストで椢と伯父さん夫婦がどんな話し合いをしたのか気になります。
それも含めて続きがよみたいですね。
椢が俳優として人気が出れば過去の事件が取り上げられるだろうし、その時に波瑠との事をどう説明するのか、読みたいです!!

6

あまりにも無責任なのでは、、、

凪良さんは大好きな作家さんですが、このお話には大変がっかりさせられました。

話自体は大変読ませるものなのですが、話の肝となる重要な場面で海洋不法投棄を行うのはいかがなものでしょうか。

純粋な、やむに止まれぬ感情に突き起こされてしてしまった行動が、理不尽にも世間からは犯罪という烙印を押されてしまった可哀相な二人という設定が、この行動によって覆されてしまいました。
この後は、周りの迷惑を顧みず自己の感情のみを優先する無責任な人達としか思えなくなり、過去の事件への見方も変わりました。

思い出にさようなら、で何かを海に投げ込むのは印象的な、絵になる場面ではありますが、それなら有機物にして頂きたかったです。
貝殻でいいのに、会話にも出ていたのに、、、まさかの海洋不法投棄、、、


プラスチックごみの大量投棄でプランクトンの体内からも微量なプラスチック成分が見つかるという今の時代に、ごみがもう一つ増えても大差ないという考え方もあるかとは思います。
しかしながら、有機分解できない物を海に捨てる行為は、主人公たちの繊細な感情や愛情を表すのにふさわしい行動なのでしょうか。

細やかな心理描写を得意とされる方だけに、とても残念に思いました。

ちなみに波にさらわれて死亡する状況は他の作品にもありましたので、また同じ死に方なのかと思ったことも付け加えておきます。

2

境界がぼける。

夏の海を核にした愛の物語……なのに、はじけるような明るさと太陽の匂いではなく、夕暮れより後の暗くなりかけた浜辺の少し滞った磯の匂いと、テトラポットの太陽の当たらない面の気配に満ちた作品でした。

ファンタジーかもしれない、でも現実かもしれない……という少しあやふやなところを残した空気感に、描かれている事実(ストーリー上の、ですけどね)の厳しさ、切なさ、痛さもぼんやりと曖昧になってきます。

作者様後書きで、「波瑠と椢のラブをもっと!と助言されつつもこうなってしまった」といったことが書かれていましたが、確かにこのジャンルの本として、その方が収まりがよいのかもしれません。でもこういうある意味危ういバランスこそが、この作品の独特の魅力ですね。

凪良さんの作品は、いつも何か断定しないままの部分が残るところが余韻を残しているのだと思います。
夜に、自分の世界に浸って読みたい一冊です。

2

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