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終わらない日々青春
恋か友情か。
「仕事とわたし、どっちが大事!?」と同レベルくらいに普遍的な命題ですが、BLの世界では「お前に恋をするか、友達のままでいるか」というふうに一般的な質問内容とはちょっとズレる。
ズレるけれどもすごく難しくて、いくつもの作品でテーマにされるほど大きな問題ですね。
家は二軒先。幼い頃からずっと一緒。
高校の体育教師・勇十は幼馴染みの消防士・穂(みのり)にずっと恋をしている。
この思いを打ち明けるつもりはなかったのに…。
バレました。
気持ちがバレた後に残るパターンは、いくつかあって
・相手も実は好きでした(一番ハッピー)
・相手の懐が大きくて、受け入れてもらうも温度差に悩む(やや不幸)
・これまでと変わらず友達でいる(現状維持だけどギクシャク)
・もう友達ではいられないッ!と距離を置いたら、相手が連れ戻しに来る(ハッピー)
辺りが有力だと思います。
この作品では何でも引き受けるけどひとりじゃできない穂にとって、常に縁の下の力持ちだった勇十が占める割合がとてつもなく大きいので、どう転ぶのかなとわくわくして読み進めました。
20年も抱えた「好き」という気持ちに、思いを打ち明けられたからと言って追いつけるのか?
好きになろうとして、ひとを好きになれるのか?
そもそもずっと仲の良い幼馴染みだから嫌いなわけがなくて、「ひととして」絶対的に好きなんですよね。
それを「キスやその先もする好き」に変えていこうとする穂のこころの変化を追っていくわけですが、ウノハナ先生、さすがでした。上手いです。
勇十にとっては「穂が好き」は20年続いたデフォ、だけど穂からしたら打ち明けられた瞬間からなので相手のことを考える時間の濃さが全然違うのは当たり前で。
いたってふつうに見える勇十にもやもやしてギクシャクしたり、「結婚」や「子供」のことを言う周囲に対して平然と社交辞令を言える勇十にやきもきしたり、「恋」を意識したからこそ、それまで違和感なく流せたことが引っかかる。
「気持ちに追いつく」というのは相手を意識して、考えて、そのひとの周囲にいる人間にやきもちを焼いた時点でもう「好き」になっているから追いついてるんですよね。
穂は20年分追いつくつもりだったのだろうけど、勇十が「もう追いついてる」という場面で何かがすとんと落ちたのだろうな。
しみじみ深いテーマながら、楽しく読めました。
最後のページをめくったとき、「あれ?もう終わり!?」という寂しさが込み上げてきたので、欲を言えばもう少し先も読みたかったです。
のどかな田園風景をバックに立つ二人。
青・黄・赤のコントラストが目に鮮やかな この装丁が大好きです。
【恋をしていた ずっと 幼馴染に 男に】
彼らの日常風景とは うらはらな冒頭のモノローグは、心の奥底にしまっている勇十の叫びのよう。
切ない「彼の秘密」に、胸が ぎゅっとなってしまう。
でも勇十には 一人で抱えているのが耐えきれなくなった想いを受け止めてくれた友だちがいる。
左官屋で女装技術がムダにスゴい(笑)耕生、整体院を開きながら農業もこなす スローライフな千春の二人だ。
そして勇十が想いを寄せる穂は消防士で、地元の青年団の団長を引き受けている。
そこに高校の体育教師である勇十が加わって、大人になっても ずっと変わらないままの関係。
幼馴染って言葉がツラくなってきてからは 近くて遠い穂との距離・・・
勇十の、墓場まで持っていくつもりだった「秘密」は意外とあっけなく穂にバレてしまう。
お互いがかけがえのない人であることに変わりはないけれど、好き の意味は同じじゃない。
二人の関係が変わってしまうことを恐れる穂に、勇十はありったけの優しさで「必要な分だけ側にいるから」って言うんです。
本当に大切なものって安易に言葉にはできない。
何度か出てくる『(穂の)幼馴染以外にはなれない』と、勇十が自分に言い聞かせるシーン。
こんな切ない胸のうちを、読者といえど私が知ってしまって良いのかなぁ…と真剣に悩むくらい、真っ直ぐで強い 二十年来の想い。
迷いと葛藤の中 つながりを深め、ゆっくりと手探りで新たな関係を築いていく恋のお話に、青年男子の わちゃわちゃ楽しいコミカルな部分が合わさった 一冊で二度美味しい、この先何度でも読み返したくなる物語です。
恋愛に関しては、ちょっと物足りなさはありますが、にやっとしてきゅんとして最後にはほっこり温かい気持ちにさせてくれる作品。
幼馴染の穂のことがずっと好きで、でも気持ちを押し付けることなく、幼馴染というポジションを守り続けようとする勇十と、そんな勇十の気持ちを知り、戸惑いながらも真摯に向き合おうとする穂、二人を取り巻く友達や、気さくな田舎の人たちを含めて、登場人物全員が優しさに溢れていました。
青年団メンバーの残りの二人のスピンオフなども期待してます!
0コマ目から恋が始まってる執着攻めが大好きなんですが、ちょっとバランスが悪い感じがしました。全体的にスローなほのぼのペースなので仕方なかったのかもしれませんが、ここまで長期間こじらせた挙句せっかく両想いになれているのでエッチは最後までいって欲しかったです。両想いのはずなのに攻めの気持ちの方が何倍も重いまま終わってる印象を受けました。あと、私はウノハナ先生の凝ったというかCPが置かれる特殊な設定が好きなので、今回の普通の田舎で普通の幼馴染同士の間で起こる恋はちょっと物足りなかったです。当て馬的なキャラもいなかったし(しいて言うなら勇十の教え子の女子高校生3人)、特に事件も起こらなかったし。こういうホッコリきゅんきゅんな幼馴染モノはもっと他に好きなのがあるなーって感じでした。好きなんですけどね。
大好きな作家さんで、コミック本は全作品読んでますが、1番好きな作品がこれです。最近読み直して、やっぱり神作品と思ったので投票しました。
なにも起こらない日常のお話なんですが、だからなのか登場人物の感情にピッタリ寄り添えます。しかも好きなんです、ウノハナさんの言葉の使い方が好みなんです。違和感なく、すんなりと入っていくというか。エロが少ないと思う方もいると思いますが、二人の気持ちに近づける力の作用で十分萌えます。ほんわかしたい時、読んでみて下さい。