SS付き電子限定版
高校生の寮ものと言うと、橘紅緒先生の『私立櫻丘学園高等寮』シリーズが自分の中で印象的な作品ですが今回の杉原先生のお話も印象に残るとても素敵な作品でした。高校生の初々しさと、真っ直ぐさ。どこか清廉さを感じさせる空気感にドキドキしました。
進学校の男子寮。周りからは坂の上の囚人と言われるくらい外部から切り離され、携帯などを没収されてのアナログ生活。今の時代、高校生にアナログ生活ってそうとう厳しいな!そんな中だとどんな生活になるんんだろ!?と始めからワクワクするスタートでした。
そうした規則の中だからなのか、主人公たちは一昔前のような素直さや真っ直ぐさがある子たちが多かったように感じます。
そうした男子寮に入寮した主人公の遥は、中学時代に男子寮生活を挫折した過去がトラウマになり、人との距離感に怯え自分に自信の持てない子でした。先輩と2人1部屋の寮で同室になったのは、周りから王子と呼ばれる寮長の篠宮先輩でした。
寮長、副寮長と同室になった1年生は1年のリーダーに指名されるしきたりのため、静かな寮生活を始めたいと思っていた遥の思いとは裏腹に寮生みんなから注目を集めるなか1年のリーダーに抜擢されることに。
おとなしい性格で友達1人作るのにもドキドキしていた遥が、リーダー役なんて大丈夫なんだろうかと心配しながら物語を読み進めていたら篠宮先輩との寮生活を頑張るという約束と共に遥は本当に1つ1つを一生懸命頑張って乗り越えていきます。
そんな中、遥のことを丁寧に見守り、遥の負担にならない距離感を保ちながら甘いキャンディと優しさで遥をいつくしむ篠宮先輩はカッコ良かったです!
行事ごとの多い若葉寮での日々は、遥も篠宮先輩も少しずつ成長させていき、ふたりの関係も自然と深まっていくところが読んでいてとても楽しかったです。何気ない日々の中で、相手を見つめて惹かれていって好きがどんどん大きくなるところが恋の楽しいところだよね~と読んでる間、ずっと顔のニマニマが収まりませんでした。
篠宮先輩の過去を、先輩はサラッと遥に打ち明けますがその内容はそうとう重い話でした。幼いときからこうした境遇のなかで周りの人のために自分を作り上げること。その心の底にたまっていく本当の自分を見てもらえない、必要とされない寂しさや悲しみはどれほどだったのか。それを強く受け止めている篠宮先輩は高校生とは思えない強さと優しさがあることを少し切なく感じながらも、今は遥がいるから!とふたりが出会えたことが本当に嬉しくなりました。
ふたりが出会ってからの1年という時間が、とても丁寧に描かれているストーリーです。お互いが胸に抱える孤独やトラウマ、それがどうやってほぐされていくのか。読後はほんわりとした幸せに包まれてほっこりできますよ。
また、この寮でのお話が読みたいな~と思います。寮長として奮闘する遥の姿を見てみたいです。
山の上に建つミッション系の全寮制男子高校を舞台に、杉原先生が紡ぎ出した物語は、
入寮の日、学校の敷地内で迷ってしまった遥が一番最初に出会った上級生は、
めったに見られないような美形で、、、。
レンガ造りの寮舎、二人一部屋の同室の1年先輩。
寮の自治組織、生徒会、学園祭。
お互いが抱えている心の問題.
王子のような先輩と、寮生活の中で、少しづつ距離を縮めて、
夏休みのがらんとした寮で初めて触れ合って、
年末、みんながもう帰ってしまった寮で初めて身体をつなぐ。
舞台の情景から、エピソードの1つ1つまで、繰り返し、何度も使われてきた、
正に、大定番の王道ですが、だからこそ、決定版と呼ぶのにふさわしい。
神です。
セルフつっこみです。ちょっとネタバレ込み
この作品にを決定版と言い切った個人的な趣味。
まず、何と言っても、
学校の場所が特定されていない。
次に、
深刻な肉体的イジメ(レイプとかね)は登場しない。
全体的に上品で、成金趣味や家の資産や格による特権意識がない。
もちろん、学力的に偏差値が高いのは当然。
あとは、、、
後は、後ほど
舞台は坂の上にある、全寮制の名門ミッション系男子校・森園学院高等学校という閉鎖的な空間。
大正時代に建設された蔦の絡まる煉瓦造りの旧めかしい学び舎。
胸元にエンブレムを着け、仕立ての良い揃いの制服を身に纏った少年たちが聖書と讃美歌集を手に礼拝堂で祈りを捧げる。
青嵐寮と若葉寮から成る学生寮に棲まう"坂の上の囚人"たち。
やや現実味のない、どこか浮世離れした空間で繰り広げられる1年間の物語。
「僕」という、主人公・遥の一人称で語られるちょっぴりレトロな雰囲気を感じる学園・寮での生活の様子が、杉原先生の流れるような優しい表現で綴られています。
寮生達が管理する組織や行事、1学年上の上級生との2人1部屋の空間、ライトなファグ制度のようなもの…と、設定的には真新しさは見受けられず、海外のパブリックスクールやギムナジウムよりも入り込みやすい印象ではありますが、かなり王道の学生寮ものなのです。
しかしながら、なぜか非常に味わい深く、じわじわと静かに魅力が広がる作品。
訳あって外部から入学をした新入生・遥が同室となったのは、寮内で「王子」と呼ばれ親しまれている、美しい容姿をした1学年上の寮長・篠宮。
目には見えない葛藤やトラウマ、傷を心にずしりと抱えている2人が、共に寮生活を送る中で少しずつ距離が縮まり、淡い想いを抱き惹かれ合い始めます。
高校生同士ならではの心地良い青さが良い。
一貫して淡々とした語り口で進みつつ、2人が恋に落ちるまでの流れや、心の傷を吐露し、自然と互いを分かち合う心情描写がとても繊細で美しいです。
大人しく内向的で控えめながら、ネガティブさは無く真面目で努力家な遥。
そんな彼が自身が抱える問題から逃げず、あくまでも前向きに懸命に克服して生きようとしている姿がいじらしい。
そして、自分は王子ではないけれど、遥にとっての王子さまにならなりたいと思うと言う、篠宮の物腰の柔らかさと包容力と優しさ、遥に対しての慈愛に満ちた仕草はまさしく王子さまでした。
遥にとっては大人のようでいて、途中途中に年相応の男の子な部分が垣間見えるのが良いですね。
欲を言うのなら、篠宮の過去や心情をもっと掘り下げたものも読みたいなと思ったものの、そこまで書いてしまうとこの読み口の良さや味わいが変わってしまうかも。
主人公たちの周りをかためるキャラクターたちもそれぞれ魅力的。
遥の友人2人が特に人間的に好ましく、中学時代に暗いものがあった分、賑やかな仲間たちと最高の青春を送って欲しいと願ってしまう。
男子校ならではの上級生や同級生とのやり取りもさじ加減が程良く、年頃の男の子らしさも描けているというのに上品なのですよね。
学園ものにありがちな全員BLCPにならないところも良かった。
序盤では「袖口が少し長い制服」だったものが終章では「ぴったり」になっている。
1年という短くも長く濃密な時間の出来事と少年の成長を細やかに表現した、このさり気ない描写がとても好みでしたね。
杉原先生にしか描けない世界観だと思います。
大きな問題や派手な出来事は起こりません。
その後については描かれていないので、もしかしたら卒業後は2人にかけられた青春という名の魔法はとけてしまうのかもしれない。
けれど、青少年たちの青く、淡く、繊細な姿にどうしようもなく心惹かれてしまう美しい作品でした。
電子書籍で挿絵なし。
寮の同室の2年生×1年生です。
この表紙の雰囲気そのままの、とても穏やかなお話でしたが、登場人物の人となりや成長もしっかり見られました。特に主人公・遥の心情の描写が見事で、好きな人を思って悶える気持ち、過去を詮索されそうになって不安になる気持ち、自分に味方がいてくれることに心強さを感じる気持ち、あらゆる場面で遥のことがよく理解できました。この作品を読んでいる間は、まさに若葉寮の周囲の、草木に囲まれたきれいな空気を吸っているような気分になれました。体を繋げるシーンも、何をしているのかはわかる程度にしつつ、あまり具体性を持たせない描写になっており、作品全体の雰囲気にマッチしています。
篠宮先輩が王子らしく振る舞っている理由と、遥が寮生活でうまくやらなきゃと意気込んでいる理由。いずれも辛い過去がありますが、お互いと出会ったおかげで、それらを克服していきます。関わってくる同級生や先輩たちも、それぞれにキャラがあって良かったです。
最高にキュンとしたのが、宿泊学習の夜、真夜中の3時半過ぎに先輩と二人で外に出て、明けの明星を見ながら話していたら、手を繋がれて、告白されて…宿泊棟に戻る直前に額にキスされて…のシーン。もうもうもううらやましすぎます(笑)。こんなことされたら、一生忘れないでしょうね。
お兄さんのことがなかったら先輩はどんな人になっていたんだろうと気になりますが、生来の思いやりはありそうなので、王子っぽくはなくても素敵な人になっていたんだろうなと思います。
学年が上がったら先輩は一人部屋に移ってしまいますが、環境に負けず隙を見ていちゃつきまくってほしいです(笑)。
そして寮という特殊な空間を抜け出しても、二人がずっとお互いにとって特別な存在であり続けてほしいと心から願える作品でした!
杉原理生先生のお話、いいですよね。なんというか、BL作品にありがちな、奇をてらうようなオーバーな表現、字面から激しすぎて何言ってるのかわからなくなってしまうような表現がなく、安心して読めます。
だからといって心が動かされないわけではないですよ!ドキドキしっぱなしです。
このお話は寮生活の高校生のお話でしたが、さすが優秀な高校が舞台なだけあってみんな大人です。攻なんてあなたいくつなのよ、と聞きたいくらい大人(笑)
ギャグや下品さはないです。設定的にはド定番ものかもしれませんが、ピュアなお話が好きな方にはオススメです。