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レトロ的な昭和28年の銀座が舞台の物語。
第二次世界大戦終戦が昭和20年。そこから8年後の銀座のカクテルバーを舞台とした、すごくレトロでかなり切ない恋物語…
私なんかは昭和中期の生まれなんで、この辺の時代背景は「すごくレトロ」と言うより「ちょっとレトロ」ですが、そんな私でも普通聞かない言い回しが多用されていて、時代の空気が良く出ているなぁと感心しました。
先輩ボーイでバーテンダーのキツネさんの、「科」(しな)っていうのかな…いまどき「しな」って死語なのかな、婀娜っぽい仕草や言葉遣いが何とも言えずいいですね。
ボーイのバイトを道楽気分でしている金持ちのお坊ちゃんをいなす場面や。
そのお坊ちゃんがキツネさんの秘めた心を知って放っておけなくなっていく様や。
お坊ちゃんの熱意にほだされつつも、身分の差を思い知ってフェイドアウトしようとする哀しさや。
それらが、花言葉ならぬ「カクテル言葉」を絡めつつ描かれるお洒落さ。
いや、お洒落なんて一言で言っちゃいけない。「身分違い」がリアルに恋を引き裂いていた時代の、まして同性との恋の物語として胸にしみてきます。
キツネさんとの恋を通じてグッと大人になるお坊ちゃんの成長譚としても読める物語です。
「溺れるわからずや」
幼馴染もの。
幼い頃は小さくて泣き虫で守ってやったアイツは、今や背も伸びて俺より成績でも何でも上回ってる…
タマはそんなカメが鬱陶しくて、嫉ましくて、でもカメは変わらず懐いてきて。
カメはタマの事が好き。タマは鈍感で気付かない。でも……という幼馴染ものの王道。わかっていてもキュンとしますね。
「キツネさんの贅沢」
「僕とキツネさんを阻むアレ」
一緒に住むようになった2人。キツネさんは可愛らし〜くなりました。生活時間のすれ違いで、家庭内文通をする2人です。宝井の手紙に口づけるキツネさん!
時代は戦後、そして銀座にあるバーを舞台にしたお話です。
狐塚という名前から「キツネ」と呼ばれるバーテンと、大きな会社の後継でありながら道楽のためにボーイ見習いなんかを始めたぼんぼんの宝井。
男であるキツネ相手に熱心に口説く客の存在を知り、男色趣味なんて気味悪い…と思いつつもどこか艶っぽいキツネから目が離せない宝井。
最初は取り澄ましたやつだと思っていたけど店のオーナーにひっそりと恋をしているキツネの健気なところを知って、宝井はその気持ちを自分に向けさせたくなります。
自分のことは戦友としか思っておらず妻子を愛するオーナー相手に思いを遂げようなんて気はないけれど、オーナーに対する気持ちが溢れてしまうキツネ。
人様の男に恋慕を抱く自分が浅ましいと恥じ入る彼が宝井の胸を借りて「ちくしょうが…愛してましたよ。」と吐露するシーンが好きです。
「どうぞおあがんなさい。」「ごめん被りますよ。」のような言い回しを、艶っぽいキツネが言うと独特のしなを感じていいなと思いました。
そして激昂するとべらんめぇ口調になるところも普段との落差があって良かった。
バーで働く二人なので、お酒・カクテル言葉で気持ちをやり取りするシーンが幾つかあります。
特に、一杯奢りますよといってキツネがシェリー酒を宝井にスッと差し出すシーンが粋だなと思いました。
シェリー酒の意味は「今夜は全てを捧げる」で、はにかむキツネの表情が何とも良かったです。
ただなんというか戦後の昭和の香りというか、セピア色っぽさが少し足りなかったので作品に酔いしれるまでに至らないところが残念だと思いました。
どうやったらレトロ感に満ちるのかはわからないけれど、時代を感じさせる背景とか小道具とかをもっと作中に散りばめて欲しかったかも…。
そして時折キツネがするニンマリ顔が、雲田さんが描く顔(V→こういう口の)と思いっきり重なりまして、梅松さん作品から雲田さんを感じたことは一度もなかったのだけど一度気になってしまうと、雲田さんがちらつきました。ああいうV口の梅松さん作品、他では一度も見かけたことがない気がするんだけどなぁ…
描き下ろしはとても良かったです。
一緒に住むことになりながらも、卒論に追われる宝井と夜働くキツネはなかなか顔を会わせることができず、宝井がキツネ宛に手紙を送ります。
この手紙を大事そうにするキツネの顔、そしてようやく迎えた休日の過ごし方。キツネかわいい……!!
カバー下にも二人の何気ないけれど、お互い大切に思っていることが伝わっている手紙のやり取りが収録されていて、胸がほわっとなります。
同時収録作の【溺れるわからずや】は幼馴染ものです、
昔はチビでノロマだったカメが、自分よりも体格も成績もなにから何まで上回るようになった事が面白くなくて何かと張り合うたま。
このたまがめんどくさいとしか言いようがないキャラ。
水泳部のエースであるカメに、勝ったら俺の言うことを聞け、その代わりカメが勝ったらお前の言うこと聞いてやるからと条件つきで勝負を申し込みます。
当然、あっさり負けてしまうたま。
そして勝者となったカメのお願いはなんだろう、カメもたまのことが好きなので、たまちゃんにキスしたいとか、付き合いたいとかそういうやつかなぁ〜と予想しつつページをめくると…
「たまちゃんの言うことなんでも聞きたい。」
「俺ができる事なんでもする 言って。」
きゃーーー!!
カメ、男らしくてかっこよくて優しいやつだなぁとこのセリフにキュンキュンきたーー!!
だけど、タマのどこがいいのか最後までわからなかった…
私がこの本を借りたのは2015年の事。
BLを読み始めて半年くらいたったころなのでまだ沼には入ってなく、まだまだBLってエロ必須だぜ!と思っていた頃。
なので、なぜこんな渋い作品を買ったのか思い出せないのですが、今、2018年の私はガッツポーズ!
あの時の自分に
「YOU、なかなか良い趣味してんじゃん」
と言ってあげたい。
こういう地味目の作品ってランキングやレビューが集まりにくいですもんね。
私も電子書籍を整理して見つけ久々に読み返したんです。思い出してよかったぁー。
ここ一、二年の過激エロに辟易してたので本当に本作にうれしかった。
ただ、宝井くんの思いがやっと通じた後のエロなのでたった3ページだろうが修正バッチリだろうが本当にエロチック。
ま、その前にキツネさんの存在そのものがエロチックなんですけど。
どのコマ、どの表情、どのセリフどれをとっても可愛くて、キュートで色っぽい。そして時々べらんめぇ。作品中では宝井くんと常連さんの2人だけでしたがそこかしこでノンケ殺ししてるんでしょう。
キツネさんのVの字の口のデフォルメかわいいなぁと思ってたら何人かのレビュアーさんが
「雲田はるこ先生」に似てるとご指摘されて、そこがイイという方や、真似しんぼじゃない?という方もあったのですが、私は、
「あ、それもそうだなぁ。でも真似しんぼでもなんでも本作のキツネさんが好き過ぎて、どっちでもいいや」
と深く考えるのを放棄してしまいました。
もう、私というノンケ?まで殺しにかかってるな、キツネさん!です。
梅松町江さんのどこか古風で味わいのある絵が好きです。
この作品は雰囲気と画風がぴったりはまっていて本当に素敵でした。
雲田はるこさんが好きな方は気に入っていただけるんじゃないかなと思います。
表題作+短編が収録されています。
表題作は昭和28年の銀座のカクテルバーが舞台になっています。
大きな会社を経営する家柄の大学生・宝井とバーテンダー・キツネさんの話。
キツネさんが妖艶です。身のこなし、目つき、腰のラインが艶っぽくて、怒ると江戸っ子ばりばりの口調になるのも「姐さん!」という感じでいなせ。「昭和元禄落語心中」の八雲師匠を感じさせる佇まいの美しさがあります。
おぼっちゃまの宝井は最初こそいい加減な気持ちで「社会見学」のようなスタンスでボーイの仕事をしていますが、キツネさんが店にかける思いを知って成長していくうちにキツネさんへの思いも変化して…という感じです。
キツネさんとオーナーのつながりと想い、それにキツネさんの過去、宝井の家の事情など時代ならではのエピソードも興味深いですが、やはりキツネさんのキップの良さが一番の魅力。潔く思い切ったら貫く姿勢もカッコいい。
描き下ろしはキツネさんの可愛い面も覗けます。カバー裏のお互いへのメモも素敵。
キツネさんの魅力がベースになって成り立っている作品なので、キツネさんにハマったら絶対に楽しめると思います。
短編は小さい頃は自分についてくるだけだった幼馴染が、高校生になってどんどん自分を追い越していく状況に、どんなに頑張っても追いつけなくて置いていかれる歯痒さを感じる高校生の話でした。
主人公が虚勢と強がりでツンツンしすぎているので、この子を可愛いと思えるかどうかがポイントになりそうです。
ツンツン嫌いのわたしはちょっと…でした。
昭和が舞台の話好きです。
梅松町江先生の独特なイラストも素敵です。
従軍していた中隊で知り合ったオーナーに片想い中の31歳のキツネさん。
軍で知り合って妻子持ちの彼に恋い焦がれてるってのが切なくて萌えます。
カクテルにも花言葉のようなカクテル言葉があるのって面白いですね。
酔っぱらったキツネさんも可愛いかった。
ギャップ萌え。
描き下ろしの「キツネさんの贅沢」
キツネさんが可愛い過ぎました。
室井くんをじっとみつめてるのとか手紙にキスしてるのとか。