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表題作COLD HEART in TOKYO

秋沢海斗 モデルに起用された俳優 24歳
楠田正彦 アクセブランドの副社長

あらすじ

楠田は兄とともに起ち上げたアクセサリーブランドのモデルにかつては天才と言われたものの今は落ちぶれた俳優・秋沢海斗を選ぶ。しかしくせの強い彼は撮影日に大暴れ。カメラマンと殴り合いをしてしまう! それでも彼と辛抱強く付き合ううちに秋沢から懐かれた楠田は、好きだと誤解させてなんとか彼を操ろうとする。だが恋人と思い込んだ秋沢の人一倍深い執着心に次第に絡め取られていき…。
COLDシリーズスピンオフ、楠田編。

作品情報

作品名
COLD HEART in TOKYO
著者
木原音瀬 
イラスト
麻生ミツ晃 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
COLD SLEEP
発売日
ISBN
9784799715239
4.3

(137)

(78)

萌々

(39)

(11)

中立

(3)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
21
得点
582
評価数
137
平均
4.3 / 5
神率
56.9%

レビュー投稿数21

可愛げのある大人子供モンスター

「COLD SLEEP」「COLD LIGHT」「COLD FEVER」の一連の作品からのスピンオフ。
主人公の友人である楠田正彦が本編の主人公で、スピンオフとはいえ別作品なので単体でも楽しめます。
楠田は兄とアクセサリー会社を経営していて、その広告のイメージモデルとして契約することになったが秋沢海斗という、かつての天才子役でいまは売れない俳優。この二人のお話です。続巻あり。

10年ぶりくらいに再読しました。初読当時と私の受け止め方が大きく違ったのは、この10年の間に木原先生の作品をたくさん多く読んで耐性がついていることだと思いました。
木原先生は、子供の頃から精神的に成長できていない大人子供みたいな人、そういう人に振り回される自称大人、そして、同じ言語で会話しているのに噛み合わなくてどうにも意思の疎通ができない、そういう気持ち悪さを描くことが絶妙にお上手というかお家芸というか、まあお好きなのでしょうがそれが独特の作風になっていると思います。
しかもそのシチュエーションが作品のカラーによって、不気味だったり切なかったり憐れだったり可笑しかったり、異なる仕上がりになるのも面白いと思っています。

この作品においても、秋沢海斗という大人子供のモンスターが登場します。
主人公の楠田は秋沢にひどい迷惑を被り、一方で魅了され、なりゆきで身体の関係からのおつきあいになるという、なしくずし的ではありますが仕事とは別の、二人の関係がスタートします。
楠田は俯瞰して全体を見ているようでいて、でもかなり軽率で立ち回りが上手くなく、結果として秋沢を助長しているとも言えるし、そもそも楠田自身が一件常識人ですが同じような大人子供なのかもとも思えたりする場面もありました。
二人は決してよい関係とも言えないのですが、最終的には良い感じで終わるので、大人子供の秋沢にも同情の余地があるというか、過去の環境や置かれた状況のせいで捻れているけれど、このあと少し変わっていくのかなという可能性が見えてきます。
秋沢については、初読のときはもっと嫌な男のイメージでした。もちろん今も、実際に存在していたら決して近寄りたくないタイプの人ではあるのですが、時々現れる可愛げのため、印象が違いました。
続巻でどう変わっていくか、楽しみたいと思います。

0

食べてすぐ動くと横っ腹が痛くなる男

やっぱり木原先生は面白いなというのが一番の感想でした。受けか攻めか、どちらが好きになるのか、というかこいつらくっつくのか?というBLの気配が無いところからスタートするし、秋沢は人としてちょっと(二日酔いで仕事に来る、子供っぽい性格でマイペース)で楠田が呆れたり毒づいたりする内心描写が面白い!秋沢が「あっあっ」っていうヘタレ感がにやけます。横っ腹が痛くなるとか何十年ぶりに聞いたわ…笑

撮影した写真を使うなー!と脅しにきていたけど、その件はその後あっさり解決したんでしょうか?
その撮影の日も、秋沢がバーで暴れた日も事務所連絡取れないのどうなんと思いました。
好きなフリをして機嫌を取らないととなし崩しにBL展開になりますが、きっと現実的にそういう人もいるかもしれませんがちょっと運び方が強引な気がしました。

0

痛くない木原音瀬先生作品

COLDシリーズスピンオフ。透の友人、楠田の話。
攻めが明らかに凡人ではなくやばすぎて、え?!となりながら読みました。
個人的には本編よりもスピンオフが好きだなとこの1冊目の時点では思っていました。
作中で登場する透がきちんとした大人の男になっていてドキドキします。本編の時よりもそれから数年経って生活している透は魅力的です。

干された天才俳優である攻めは常識を逸脱しているので苦手な方は注意。ただ木原音瀬先生の作品にしては珍しくこの1冊だけだと痛さはありません。2冊目を読めなければ心に傷はつきません!笑

でもやはり二人の人生を見届ける為にも最後まで読みたいです。ファイナルのみまだ未読の為、時間ができ次第ファイナルも読もうと思います。

0

心では結ばれていない恋人のような二人

COLDシリーズスピンオフ、楠田編。

そのお相手秋沢はまるで子どものように純粋な男。
でも無垢で可愛げあるプラスなかんじではなく…その素直さも悪く言えば大人なのに中身はめんどくさい子どもそのもの。
社会人としての心構えは薄く我儘言うわ機嫌が悪くなると怒るわ暴れるわ。
大人としてどうなんだ?な秋沢に振り回される楠田。

そんな二人も関係が続くうちに秋沢は楠田に懐いていきます。

無邪気に自然体で接している秋沢とは反対にあくまで【弊社のイメージモデル相手】として建前を崩さない楠田がぶれないところがこれまた良い。
だからこそ二人がくっつくような雰囲気が感じられない部分が長く逆に面白かったです。

子どものような大人の攻めに大人の対応する受けが楽しいんですよ。
本心では秋沢の印象は最悪なままっていうのも(笑)

損得を考え付き合っている。うまく扱っていくために【自分(秋沢)を愛している男】を否定せず望まない肉体関係まで進展したところで今度は快楽に足をとられてしまう楠田。
本当は先にくるべき心の好きがない分戸惑いや後ろめたさはあるが肉体が求める物凄い欲に溺れてしまう。

そんな楠田の本心など知る由もなく…無邪気に両想いだと信じて疑わない秋沢が不憫でならないのですがそこがいい。

心で繋がり合っていない、確かな結びつきがないからこそ二人の関係がとても不安定でこれからどうなるのかとても気になります。
早く続きを読まなければ!!!

藤島さんの名前を見るだけでなく…また会えて物凄く嬉しくて雄叫び上げました。

1

アンバランスなカップルの行く末は…

COLDシリーズ(SLEEP、LIGHT、FEVER)の透の友人・楠田のスピンオフです。
SLEEP~FEVERを読んでいなくても楽しめそうですが、透は出番が多く、藤島、同窓会カップルの黒川も出てくるので、三作品を読んでからの方がより楽しめると思います。

楠田は兄とともに立ち上げたアクセサリーブランドの専属モデルに、かつて天才子役と言われながら今は落ちぶれた俳優・秋沢海斗を採用します。カメラマンの透が引き出した秋沢の新たな魅力とアクセサリーの斬新なデザインが相まって、次第に秋沢はメディアの注目を集めるようになりますが、秋沢の子どものような自己中心さと激しい思い込みのせいで、楠田はフォローに追われます。ある時、楠田は大声で暴れる秋沢を黙らせるためにキスしてしまいます。楠田が自分を好きだと誤解した秋沢の楠田への好意はエスカレート。楠田は秋沢のトラブルによる自社のイメージダウンを避けるため、その誤解を利用し続けますが、やがて飲み込まれるように体も心も秋沢におぼれていき…。

何か突出した才能の持ち主と言うのは、秋沢のようにアンバランスなのかもしれません。その極端さや危うさが放つ光のようなものが、周りを惹きつけてしまうのでしょう。
楠田が秋沢の天才的な演技力にはまり、やがては肉体関係にもはまっていく描写がとても怖くて。相手の何か一つに強く魅せられることは、さらなる深みに向かっていく前兆なのかもしれません。
楠田が秋沢の強引な愛撫の感触を脳内で遮断しようとして、自社のアクセサリーの名前を順番に思い出す描写に笑ってしまいました。数式を思い浮かべて自分の欲望をなだめる男子のようで。

才能あるものを羨む楠田の気持ちは、私も常々感じていたことなので共感してしまいました。目指す何かを与えられていることが羨ましい。きらりと光るそれが羨ましい。
透の恋人・藤島の「透は才能か、君かと言われたら、君を選ぶと思うんだ」という言葉で、楠田は自分が透に大事にされていることに気付きます。誰かを大事にすることは、才能のあるなしよりずっと大事なこと。温かく心に沁みました。藤島の変わらない優しさにホッとします。きっと恋人の透もそうなのでしょう。

果たして秋沢が透のように楠田を大事にする日がくるのか…。人として秋沢が成長できるかが、このカップルの行く末を左右する気がします。
自分の気持ちばかり押し付けてくる秋沢ですが、最後のホタルのエピソードはキュンときました。秋沢なりに楠田を喜ばせたいと考えてはいるのですね。ただ、いつも片方だけがもう片方を支える関係は長続きしないし、何か困難が起きれば破綻するのではないでしょうか。アンバランスな秋沢を楠田が支えるアンバランスな関係。秋沢の楠田への愛情が、自己愛の延長だけではないことを祈ります。

麻生ミツ晃さんのクールなイラストが、芸能界、アクセサリー業界、物語の不穏な雰囲気にぴったりだと思いました。

8

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