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愛ってなんだろう? 亜希生の愛はハルにとって苦しくて痛くて、でも離れられない。
買う予定はなかったんですが、本屋で平積みにされたこの本の表紙に、眼が釘づけに。
ぐっはぁ!!よ、読み・・・たっ・・ぁはっ・・・いっ
言葉にするならこんな↑感じ、濡れ場で言えば指3本級の勢いで、心を揺さぶられました( ̄∇ ̄+)
シビトさんの表紙絵って、サイケな絵柄と色遣いのセンスが好みすぎて、毎度ガッツリ惹きつけられてしまいます。
ちなみに今回の表紙、裏表紙もひろげて眺めると、実は凝った構図だということが分かるんですが、ネットでは裏が見られないのが残念。
表紙上・主人公のハルの左手は、表表紙では下の男(夏彦)の方に伸びていますが、裏表紙側ではもう一人の男(亜希生)のほうにも。
左手が二本?という、ちょっとした騙し絵風なんです。
ハルの手は、表表紙の男・夏彦を選ぶのか、それとも裏表紙の男・亜希生を選ぶのか――この構図は、まさにこの作品の内容そのもの。
裏表紙のコピーの通り、「三人の男の愛の物語」です。
といっても、一人の人間を二人が奪い合う愛憎劇ではありません。ハルが亜希生と夏彦どちらを選ぶかという恋愛問題の先に、普遍的な人間の心理を描こうとした作品という意味で、敢えて三角関係ものという括り方は避けたいと思います。
主人公のハルは、仕事もなく、欲しいものは盗んで手に入れるという、野良猫みたいな男(20歳)。
ハルが人並みの幸せを手に入れられるよう、仕事と居場所を与えてくれようとする和菓子職人の夏彦に惹かれながらも、暴力的な愛で縛る亜希生から離れられないハル。
彼が亜希生から離れられないのは、暴力を振るわれるのが怖いからということもありますが、甘い幸せを与えてくれる夏彦と過ごしていると、何故か苦くて辛い亜希生との生活に戻りたくなってしまうから。
もともと亜希生とハルは共依存関係で、お互いの存在意義を確認するためにお互いを必要とするという関係性から抜け出せない・・・という問題も、根っこにありそうです。
作品の中では、
夏彦との関係=甘さ=シュガー
亜希生との関係=苦さ=ダーク
と位置づけられています。
ただ、展開を追っていくうちに、(意図的な描写なのかどうかはわかりませんが)逆の側面もあるような気がしてきます。
夏彦は和菓子職人の仕事をハルに仕込もうとしますが、職人の修業は定職に就いたことがないハルにとっては辛いもの。
逆に、亜希生と怠惰に過ごしている時は、何か空虚なものを感じながらも、暗く甘い依存関係で結ばれた同士ならではの居心地のよさが二人を包んでいるような。
この作品では、甘さと苦さの狭間で迷い続けるハルの心理が描かれている一方で、実は亜希生との関係の中に、苦さと同時に暗い甘さを見出しているハルも描かれているようにも見えます。
そう考えると、ハルが亜希生に縛られる運命から逃れられず、自ら夏彦との関係を壊してしまうという結末は、これ以外の顛末は考えられないと思えるほど自然で、どうにもならない人間の弱さとやさしさで・・・淡々としたラストなんですが、あまりにやるせなくて、心を抉られました。
観念的で乾いた描写。それでいてストーリーはじっとり湿って、倒錯的。
こんな作品を待ってました!
心の揺さぶられ度重視ということで、神。
シビトさんの新刊は『バラ色の時代』に引き続き
ダークで毒気たっぷりの作品でした。
学も金もなく、いつもフラフラしている20歳の青年・ハル。
彼は盗みに入った和菓子屋で、見習い職人の夏彦と出会う。
はじめて自分を真っ当に叱ってくれる相手に出会えたハルは、和菓子屋に入り浸り、優しい夏彦に惹かれていく。
しかし、逃げた自分を「亜希生」が迎えに来て…。
甘味と苦味。
温かく健全な夏彦と、怖いほどハルに執着している亜希生。
ハルはどちらの男を(人生を)選択するのか。
目の前に今までの自分を変える道が開けているのに
「情」なんてものを理由に元の暗い道を選んで
本当に後悔しないのか。
幸福なのか不幸なのか、
救いがあるのかないのか分からない読後感は
まさにシュガー&ブラック!
評価は別れそうですが、個人的には毒が効いていて
とても好みの作品でした。
これまた切ないな~と思ったのは
ハルは亜希生を「巻き込んだ」と罪悪感を感じていて
それを理由に亜希生を選んだ側面があること。
でも実は、亜希生はハルと出会う前から歪んでいます。
10代の頃、兄から歪んだ恋愛観を植えつけられたせいで
愛=何がなんでも相手を離さないことと
錯覚している節がある。
そんな亜希生が、ハル以外の人間と疎遠になるのは必然で
別にハルが亜希生を独りにした訳ではない。
そこを勘違いしたまま亜希生のもとに戻ってきたハルが
失った一つの可能性を思うと何ともやりきれない気持ちに。
でも人間関係ってこんなもんだよなぁと妙に納得もできる。
また、生まれ育った環境から形成された人格や人生を
大きく変えることは本当に困難で
敷かれたレールの上でもそれなりに幸せは見つけられる。
そんなリアルで残酷な真理も感じる作品でした。
同時収録作は、同人誌からの再録。
【男は月曜日にゴミを出す】はブラックユーモア風味の短編。
【馬鹿供の平和な日常生活】は
『窓際の林檎ちゃん』と『図書委員の恋』に登場した心と涼平の話。心がヒリつく切ない話です。
暗く切ないお話を描かれる作家さんで
今回も暗さと切なさがよく出てる作品でした!
表題作と同人誌からの短編が2話入ってます。
シュガーダーク
ハルと亜希生と夏彦の三角関係です。
ハルと亜希生は、恋人でも友人でもない
言い表すのが難しい関係。
お互い愛される事に飢えて成長し、
その飢えをお互いで補っている関係。
過去の出来事から心のさみしさ、愛されないさみしさ
を抱える亜希生は、ハルを愛し尽くすことが全てと考え
亜希生をここまで追い詰めるようにさせたハルは、
亜希生から愛されることに限界を感じながらも
亜希生から愛されるのは自分の義務と思い
亜希生の愛を受け止める。
しかし、限界がきて逃げた時に出会ったのが
亜希生と全く正反対の夏彦。
まさに、シュガーダーク!笑
ダークなお話で、執着や愛の強さが
出てますが読ませるお話でした。
残りの短編はとても短いお話でした。
ブラックユーモアなお話でした(^^)
シビトさんらしい一冊でした。
シビトさんが、好きな方には
オススメです(^^)
あと、近親相姦や暴力などの描写があるので
苦手な方はご注意を‼︎
ハルとアキ。拠り所を失った2人が互いを求めあい、始まりは甘かった関係。
執着と依存が生まれ、それは愛ではないという人がいる、そんな関係になってしまった現在の2人。
そこに太陽のような男・夏彦が加わります。
息苦しさを覚えながらも、アキを裏切って自分だけ幸せにはなれないハル。
不幸な境遇にあるハルを特別視せずに「普通」に接する夏彦。
その「普通」に救われます。
ハルに強く執着し、優しく穏やかに接する事ができないアキ。
アキに感情移入して読んだ私にとっては予想外のハッピーエンドでした。見捨てられなかった事が嬉しく、俺、お前をもっと大事にするからと、何度目かわからない誓いを立ててしまうのでした。
強気な態度のアキでしたが、ハルは自分の元を去ってしまうかもしれないという怯えが常にあったのだと思います。
ハルは夏彦の所へ行ってしまうのだろうか、だとしても仕方ない。
ハルの心を照らす夏彦の存在は、アキにとっても眩しくて。
自分はハルを、幸せにしてやれない。
自分の幸せを願ってハルに執着する一方で、ハルの幸せを願う葛藤。
愛されたい、幸せになりたいと願う2人が一緒にいるのに、何故うまくいかないのか。
愛し方が分からない。
すがるような気持ちで読みました。
今後2人の関係が変わることがあっても、お互いに納得して望んだ形であってほしい。
今はまだ、少なくともアキが苦しんでいる間は、ハルに寄り添っていてほしい。
そんな願いが叶えられそうな、嬉しいラストでした。
夏彦には、今後友人として2人を支え、照らしていって欲しいと思います。
お互いしか見えない状況ではダークな関係を打開するのは難しいですが、
信頼できる第三者の存在によってこの2人の関係も健全なものへと変わっていけるのではないかと期待します。
どこからが健全で、どこからが本当の愛で、何が正しいのかは分からないのですが。
何となく、夏彦はアキとも友達になってくれそうな気がして。
妄想ではありますが、3人で笑ってる姿が想像できて嬉しい気持ちになりました。
「しあわせになりたい」
そう思わない人なんて、いませんよね。
誰だってしあわせになりたい。
でもしあわせの形は人それぞれということを、再認識した作品です。
母親に見放され、帰る家もないハル。
心酔するほどに憧れていた兄に裏切られた亜希生。
野良猫のようなハルを家に入れてくれた和菓子屋の夏彦。
暴力で押さえつけるような亜希生の愛し方に窮屈さを感じて、甘い匂いに誘われて、たまたま盗みに入った和菓子屋で、ハルは夏彦と知り合います。
最初はハルの生い立ちに同情的になって、夏彦のところへ行けばしあわせになれるのにと思うのですが、読み進めるうちにシビト流「人間の怖さ」が見えてきます。
中盤で出てくる亜希生の回想シーンは本当に痛い。
兄の底の深い闇に翻弄されて、家族はおろか他人なんて信じられなくなるのも、誰にも執着できなくなるのも頷けます。
そんなところにすっと入り込んできたハル。
自分を欲しがって貪欲に迫ってくる女性たちとも、自分を支配しようとする兄とも違うハルに、亜希生が見つけたものは果たして本当に愛だったんでしょうか。
主導権は亜希生が握っているようで、実はハルがそう仕向けたというのが、本当に怖い。
相手が100%自分に向かっていないと満足しないハルと、愛したらその人以外はいらなくなる亜希生は、似たもの同士のようで違っていて、ハルは仕掛けるけど、亜希生は受け身。ハルはわりと自由だけど、亜希生は自由じゃない。
ハルとのことも亜希生から始めたように見せているけれど、本当は違う。
ハルにとって失敗だったのは、亜希生の並外れた執着とそこから生まれる苛立ちを見抜けなかったことだけど、それと同時にここまで自分を愛してくれる人はいないことも気付いているんだよなあ。皮肉なことです。
夏彦の存在は、カフェの女性たちが語る甘味の話に見事に投影されていました。
こういう手法も見事です。
ハル、夏彦、亜希生という名前にも意味がありそうだけど、そこまで掘り下げるとものすごく長くなりそうなのでこの辺で。
「しあわせは 自分の心が 決める」と相田みつをさんは言っていましたが、その通りだなあとしみじみ思いました。
同時収録が2篇あります。
ちょっとゾワっとする話と、ぬぬぬ!?となる話でした。
ぬぬぬの方はまた語ると長くなりそうなので、やめておきます。ぬぬぬ!?です。
甘いの逆は苦いだけれど、この作品はあくまで闇。
2つの闇が合わされば、1つの闇になるように、どっちの闇がどっちを飲み込んだのか。
不幸に見えて、本当は不幸じゃないような、深い作品です。