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ヤッたら俺のこと愛してくれる?
167ページでしかも短編集なのにこの密度!
200ページ以上ガッツリ読んだぐらいの満足感が残りました。
全部で5つの話が収録されていますが、①④で虐待描写、④はさらにタヒネタ含むので地雷の方は注意。
①表題作
アンソロ「トラウマBL」からで、全2話。
表紙のサブタイトルに「Will you love me if you have sex?」と書かれているのがテーマです。
こんなところにそっと英語で忍ばせるなんて粋だな~。
②「what a wonderful world」
アンソロ「開発BL」より。
オメガバと月の満ち欠けを掛け合わせた珍しい設定です。
この頃(2016年)から画力がグッと上がられて、ページによっては見とれてしまうほど美しい。
特に見開きの、月をバックに凄む攻めの迫力たるや。
受けがちゃんとタッパのある男らしい男性なのが個人的に萌えポイントです。
③「ある真夏の出来事」
アンソロ「怪談BL」より。
怪談好きなんでよく実体験とか聞くんですが、乗っ取られた人ってホントにこんな感じに、自分の意志とは無関係に体が動いてしまうらしいですね。
④「ハチミツデイズ」
アンソロ「心中BL」より。
たひネタは地雷ですが、このシビトさん作品なら受け入れられました。
でも猛烈にせつなくて苦しい。
⑤「鬼はそと、福はうち」
アンソロ「バケモノBL」より。
本作で一番好きな話です。
これだけで☆5にしたと言っても過言ではありません。
美しい・・・!鬼が美しすぎる!
「泣いた赤鬼」という童話を思い出しました。
最後のページに全CP(③の攻めの代わりに幽霊)の描き下ろしイラスト(おそらくカバー裏?)が載ってるんですが、このページのお陰で大変ほっこりして読み終われました。
これがなかったら悲しい気分で終わってたw
②の受けが攻めを抱きしめる図がなかなか珍しくて良い!
以上、シビトさんの短編集って結構コレクターズアイテム的な位置づけと思ってたんですが、本作は違います!
地雷さえクリアなら一見さんにもオススメできますし、あるいは他の著作を履修済みの方で、さらなるシビト体験をお望みの方へも自信を持ってオススメできます。
恋煩シビトさんの作品を読むといつもモヤっとしたものが胸に残ります。
わたしと同じように感じる方は、この短編集にモヤモヤばかりが募ると思います。悪い意味ではなく。
ひとが普段は表に見せない弱みをいとも簡単に暴いたり曝け出したりしておいて、その状態で放り出される。作者さんは問題提起するだけで、どう答えを出すかは読者に任せる。
軽くさらっと読める作品を求めているときには向きません。こころと頭に余裕があるときに読んでほしい作品です。
【俺とセックスしてください/俺と愛し合ってください】
この作品はそんなに悩まずに読めます。
表題作はよくある設定だったものの、それだけに恋煩シビト節が際立っていた気がしました。
幼少期からの不幸な境遇のせいで見えない心のつながりではなく、実際に目に見えて触れられる体のつながりしか信じられない少年の話です。
こういう設定だとふつうは…という展開にしないで、ちょっと曖昧に見せながら最後にさらっと答えを見せる憎い演出が効いてました。
【what a wonderful world】
オメガバースものです。人間としての感情vs動物の本能。勝つのはどちらか。
最後のページの表情もラストのコマもとても印象的で、深読みや余韻妄想がとめどないです。
【ある真夏の出来事】
妖怪的な何かの話です。取り憑かれた状態で起きたことをどう言い訳するのか、どう収めるのか、この先どうなるのか。すべては読者の読み方次第という作品でした。
【ハチミツデイズ】
甘いタイトルとは裏腹にシビアな内容でした。
【鬼はそと、福はうち】
この作品も表題作同様、あまり考えずに読めました。5つの中で一番おすすめです。
陶芸家と鬼。存在しているだけで恐れられる鬼の心情が…。切なかったです。
トラウマ、開発、怪談、心中、バケモノといったマニアックなお題のアンソロに掲載された作品群を1冊に纏めた短編集です。
私のイチオシは『開発BL』掲載の「what a wonderful world」。
これ、オメガバースなんですが、発情の描写なんかがどちらかと言うと人狼モノっぽくって、作品の雰囲気もゴシックホラー的な感じで画的にめちゃくちゃかっこいいんです!
座裏屋蘭丸さんの「コヨーテ」とかね。ああいう雰囲気の世界観が好きならちょっとワクワク出来ると思う。
そしてそして!
Ωからみたαのカリスマ性とでも言いましょうか、αを絶対的強者と位置付けるのならこれぐらい圧倒的であって欲しい!と思わず思わされるような、そんな風にαとΩの関係性を描くシビトさんのセンスのカッコよさよ…!
哲学色強いシビトさんの作風も相まって、非常にグッとくる作品でした。
もうねぇ、満月をバックにすげー状態で致してるんだけど、それすらもはやなんだか視覚的にカッコいいもんねぇw
こういう雰囲気のオメガバースならオメガバース苦手な私からしてもかなり「アリ」◎
本作のおかげでオメガバースの可能性を新たに感じることができました。
短編でBL的にはこれからってところで終わっちゃうので、続けて描いて欲しい度1200%です!
このコミックは初読みにはちょっと不向きかもしれません。
どのお話も萌え切る前に終わる不完全燃焼エンドな感じで・・・雰囲気を例えるならば「世にも奇妙な物語」的な。
読み物としては十分なんですけど、BL脳的にね。どのお話もブツッと途切れる感じなので「もっと読ませろー」って叫びたくなりました。
先に他のコミックでシビトさんの作風を知ってから手に取るのがオススメかな。
【電子】シーモア版:修正白抜き、カバー下○(イラスト)、裏表紙×、特典ペーパー付き
いくつかアンソロジーで読んでる作品もあったのですが、未読のものや描き下ろしが読みたかったので購入しました。
あとがきで「もう少し描けたらいいなーというものも中にはある。また機会があれば掘り下げたいなー。」とあり確かにもっと先が読みたくなるものもありますが、短編として不足している、物足りないという訳ではなく、魅力的な世界を垣間見せてもらえたからこそ興味を抱けて彼らの先をもっと知りたくなるという類のものでした。
個人的には【鬼はそと、福はうち】が一番好きです。
【俺とセックスしてください】トラウマBLより
トラウマ=義父から性的虐待を受け続けてきた成瀬(受け)のお話。
「大好きだからセックスするんだ」と義父に言われて犯されてきた成瀬だけど、描き下ろしで「好きだから抱きたい」と晴海に言われて、全く同じ文章でも全く逆だということに気づけたところに救いがありました。
【what a wonderful world】開発BLより
オメガバース初読みです。オメガバースの自分の意思とは関係なしに発情しちゃうというのが好きではなかったのだけど、煌々と輝く満月と共に登場するαの真緒の凄み、存在感といったら。
海の水だって月の引力で引っ張られるのだから、人間だって何らか反応せざる得ないよね…となんか腑に落ちてしまったのでした。真緒が「偉そうにいくらしてたって本能の奴隷だ」と語るシーンがあるのだけど、その台詞と相まって、人間の意思なんて所詮ちっぽけなものに過ぎないのかもしれないと思ったのです。
【ある真夏の出来事】怪談BLより
家の蔵にあった桐の箱に入った鏡。それをうっかり開けてしまってからというものの…。
本当に恐ろしいのは鏡の中に入っていたものではなく、己の奥底に眠る欲望なのかもしれない。
これからどうなるんだろうなぁ…とあれこれ想像が膨らむ終わりで好きです。
【ハチミツデイズ】心中BLより
これはアンソロジーで読んだ時に愕然とした記憶があります。だけど「心中」BLなので心中意外の結末はなくて当然なのだけどやっぱりやりきれないです。
【鬼はそと、福はうち】バケモノBLより
「人間というのは…鬼というだけで恐れ痛めつけてくる。」この台詞が哀しく響く作品ですが、きっと二人幸せになれたのだろうと思える終わり方で好きです。
新作の「パンデモニウムより愛をこめて」に繋がるテーマだと思います。しかし、鬼のがすっごい巨根で腕より太そうなのがちょっと心配…。
恋煩シビトさんは、ダークなんだけどなんだか切なくてジーンと来るものが多いですね。こちらはアンソロジーに描いていたものを集めた短編集でしたので、テーマが色々ありましたがどれも暗めです。
私は表題作よりも二番目のオメガバースがテーマの作品が好きでした。運命の人に出会ったときの嗅覚と言うか、急に二人が覚醒するシーンがゾクゾクしました。もう、そうなると外とか人の目とか関係なし!正に獣でした!短編なので、その後の二人の関係とか、周囲の反対とかまでが描かれていないのが残念ですが、ガオーッ(`□´)ってところで終わるのがまた恋煩シビトさん的で良かったのかも。