• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作COLD HEART in NEWYORK

秋沢海斗 俳優で正彦の会社のイメージモデル
楠田正彦 アクセサリーブランドの副社長

その他の収録作品

  • COLD HEART

あらすじ

秋沢のことを本当に好きになってから二人甘い蜜月を過ごしていたが、ある日秋沢のスキャンダルが発覚。
楠田が問い詰めると、彼は悪びれもせずに関係を持ったと口にした。それを悪いとも、そもそも浮気とも思っていない秋沢に楠田は耐えられず別れを切り出すが、彼の極端すぎる執着に楠田は…。
好きだけど、愛しているけど、一緒にいられない――。
COLDシリーズスピンオフ、書き下ろしも100ページ超収録!

作品情報

作品名
COLD HEART in NEWYORK
著者
木原音瀬 
イラスト
麻生ミツ晃 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
COLD SLEEP
発売日
ISBN
9784799715338
4.2

(153)

(99)

萌々

(30)

(6)

中立

(5)

趣味じゃない

(13)

レビュー数
26
得点
638
評価数
153
平均
4.2 / 5
神率
64.7%

レビュー投稿数26

かき乱されて抉られる衝撃作

「COLD HEART in TOKYO」の続き。
大人子供モンスターと自称大人の恋物語は、前巻でいろいろな問題を孕みながらもなんとなくハートウォーミングな結末を迎えたかのようでしたが、続巻である本書は嵐でした。疾風迅雷。絶句です。
木原先生特有ともいうべき展開に胸をかき乱される270ページ。一冊まるまる、のたうち回りました。
いやあもうこれは、なんといいますか。……読んでください!
とはいえおいそれとは勧められない内容なんですけどね。

前巻のレビューでは、メイン二人のことを、「同じ言語で会話しているのに噛み合わなくてどうにも意思の疎通ができない」と書きましたが、本書の場合、それどころではないというか、秋沢は完全に理解を超えた行動をするし、楠田は可哀相過ぎるし(身も心も痛い)、これを地獄絵図と言わずしてなんというか。
器官の機能的に仕方ないのでしょうが、性行為における男性の快感と、女性の快感は全然違っていて、このことはいわゆるエロマンガにおいても男性向けと女性向けとでは描き方が大きく異なっていることからも明らかというか。
足を開いて男性器を受け入れること自体、屈服であり屈辱、ましてやBLの受けの場合は尚更、本来排泄器官なのに相手に晒して女性器の代わりにされるので、肉体的にも精神的にも相当負担だと思っています。
相手への愛情だとか恋愛感情だとか、そういうもので相殺してこの抑圧をのりきっていたと仮定したら、本書で楠田が受けたことは、人としての尊厳を踏みにじられ、心をずたずたにされ、命にも関わるような大事件です。
起こした行動も最低最悪ですが、このときの秋沢が楠田に向けた言葉のひとつひとつが尚もおそろしい凶器でした。
楠田がどれほどの傷を負ったか、読んでいるこちらもひどく揺さぶられ、一緒に暗闇に落とされた気持ちでした。
半分読んで、ページをめくったら3年が経ち、まさかの秋沢視点のお話が繰り広げられるというのにも驚きました。
正直やめてほしかった。でも、秋沢がどういう精神状態で、どんな気持ちであんなことをしたのか、どう感じているのか、単純に知りたいという好奇心が勝ってしまい、読み進めるのをやめられませんでした。
それで、いろいろ思うところはありましたが、一番思ったのが前述の性行為における男性の快感の話です。この子は攻めだから(男性側だから)、所詮凌辱される側のことなんて1ミリだって想像できやしないんだなということでした。
何かが欠落している秋沢も、仕事をしているし生きているので、人とは程度は違うけれどもそれなりに成長をしている。
楠田のために、我慢を覚えた。これは相当大きなことだと思いました。
また、彼の周囲に人が増えました。意見を言う人が増えた。これも大きな変化です。
ちょっとずつではありますが、秋沢は変わって行っています。
木原先生はあとがきで、二人の今後について述べられていますが、私は楠田のことが心配でなりません。
シリーズの本はあともう一冊。心して見届けます(続編にあたるお話があるのかは不明)。

0

心が痛い痛い

けれども読むのをやめられないどころか物凄いスピードでページをめくっていました。
読み終えて改めて表紙を見ると胸がギューーーーっとなりますね。

人の本質はそう簡単に変わらない…だからこそ秋沢が秋沢のままでいる限り彼の望む未来も絶望的かと思っていましたが……この終わり方で本当に良かったです。


あとがきでは木原先生が辛口と称していますが、in TOKYOが可愛すぎましたね…
NEWYORKは心殴られ続ける展開で頭から食われた気がします(笑)

空港のトイレのシーン、秋沢の部屋でのこと……忘れられない内容に今回も私のシリアス好きな心が大満足しました。
語りたいのに満たされすぎていて…何も言えねぇ…それより読むか読み直すかしてくれ~という気持ちでいっぱいです。

COLDシリーズやっぱ半端ないですね!!素晴らしい!!!

2

こんな攻めは嫌だ

さすが木原先生の書かれるお話、所々秋沢にぶちギレつつも続きが気になって仕方なく、TOKYO~NY一気読みしてしまいました。
しかし読了後どうしても秋沢楠田カップルを好きになれず…(主に秋沢)。
COLD3部作の透も傍若無人でしたが彼の背景を思えば納得できましたし、ドン底から這い上がろうとする姿は痛々しいほどで、ボロボロになりながらそれに寄り添う藤島さんには何度も涙しました。
秋沢も秋沢なりに努力はしている様子ですが、楠田が彼女がいると嘘をついていたことに対して癇癪起こしたときには…いやあなた自分がやったことを思い出しなさいよと…
それから更に反省したとはいえ楠田も許してあげちゃいそうな雰囲気で、人が良すぎると感じました。
読み物としての熱量はありますが萌え視点で言えば趣味じゃないです。

3

覚悟して読んでください

年下陵辱攻め好きだし~!時間あるから気になってたしコールドシリーズでもよむか~!って軽い気持ちでポチったのが昨日の昼間。(電子版)The FInalを残して5冊分一気読みしました。電子版the Finalは3日後ダウンロード開始なので今週末に読みます...ハイ...。

何なんでしょう...陵辱攻めとかって簡単に言葉にしてはいけないものだと思い知りました。とにかく痛い...痛い...痛い...早く楽になりたくてページを進める手が止まりませんでした。

覚悟して読んでください...

3

木原作品の中で一番好きです

木原作品は色々読みましたがこの作品が一番好きです。というか今まで読んだBL作品で一番大好きな、私にとって大切な作品です。

秋沢は楠田に浮気、暴力、レイプと、あまりにも酷いことをしてしまい、楠田も秋沢に酷いトラウマを植え付けられる。
もう一緒にいるのは無理、秋沢とわかり合うことも共に生きることも絶対に無理。楠田はそれを充分なくらい思い知らされたはずなのに…。
正光の前で泣きわめく秋沢の声を聞いた楠田は、なぜかボロボロと涙を流してしまうんですよね…。そして「死にたい」という秋沢の言葉に対する「海斗が死んだらどうしよう」。
私はこの台詞が苦しくて辛くて愛おしくて仕方がありませんでした。
あんなに酷いことをされたのに、なんで楠田は秋沢のことを憎まないのか、なんで死んでしまえと思わないのか。
自分が秋沢の死ぬ原因になったら後味が悪い、というのもあると思いますが、楠田はどんなに秋沢が怖くても、心の深い部分が秋沢にどうしようもなく惹かれてしまっていたんだと思います。悲しいくらいに…。
楠田は秋沢の才能に惹かれて、そんな才能溢れる秋沢が実はすごく子供っぽいところが可愛く思えて、そして自分に対して一途なところが嬉しくて…単純に、楠田は秋沢のことが本当に好きだったんだと思います。
ただ、あまりにも楠田が人の気持ちを理解できなさすぎて、このまま一緒にいたらずっと傷つくから、離れることを選んだのに…。
物語の終盤、秋沢は楠田の気持ちをやっと理解し始めて、ようやく諦めようとします。
しかし、楠田に手紙を送るのを辞めろと言われて、それを秋沢は拒否する。
自分のことを忘れろと言う楠田に「忘れたくない」と言う秋沢。
ここで秋沢が楠田のことを忘れようとして、手紙を送るのも辞めたら、二人の関係はキレイに終われたんだと思います。
しかし秋沢は最後の最後まで楠田に対して一途であり続ける。迷惑をかけない形なら、楠田を想い続けたいと執着する。
楠田が秋沢の指に勇気を出して触れたのは、そんな秋沢の気持ちが捨てられなかったからだと思います。あんなに酷いことをされたのに、あんなに自己中心な男なのに、あんなに傷付けられたのに…それでもやり直したいと思ってしまっている。
楠田もまた、秋沢に対して一途すぎるなあと思って泣けてきます…。あんなに酷いことをされたのに、まだ好きだなんて…。
このあたりの楠田の気持ちはCOLD THE FINALを読むとよりよくわかります…泣けます…。

お互いに無いものを持ちあっていて、だからこそ惹かれあって、だからこそ理解しえなくて、だからこそ酷く傷付きあって…そんな二人が最後の最後で一歩関係を前進させられる。そんな苦しくて切なくて愛おしい二人の話でした。

前作の透、藤島さん、もちょいちょい出て来ていい感じです!透も結構やばい奴だったのに、楠田のよき理解者になってて感慨深いですね…。あと谷口一瞬出て来てて嬉しい。

あとごく普通のリーマンな楠田が、秋沢のセックスに溺れて滅茶苦茶エッロくなるのは興奮せざるを得ないかったです…。in TOKYOの後半〜in NEWYORK前半の楠田えっちすぎてちょっともう…秋沢が惚れるのもわかる…(笑)

人を選ぶ作品かもしれませんが、私にとってはほんとうに大好きな、最高な作品です。出会えて本当に良かったです。

14

アスペルガーの苦悩…

エゲツない話が読みたい‼︎
と思って読み始めたCOLDシリーズだったのですが、透×藤島シリーズは私の萌のどストライクで…
in NYでようやく私のエゲツないモノ欲が満たされました(´;ω;`)

空港のシーンからずっと楠田が不憫で軽い吐気を覚えるような内容だったのに、
海斗目線になると海斗の抱える苦悩に涙が何度も溢れて。。
作中で触れられなかったけど、驚異の記憶力と集中力。また他人の気持ちが理解出来ない。
というアスペルガーの特徴。

もちろんアスペルガーだから許される!ってわけではないけど、それでも発達障害に気づいてもらえずそのまま大人になってしまった海斗の生きづらさを考えると、海斗が悪い‼︎って思えなくなって。

ただ、アスペルガーという苦悩をこれほどまでにエゲツない、そして泣ける話を作り上げれるなんて。。
木原先生素晴らしすぎです(´༎ຶོρ༎ຶོ`)

4

許すことも愛

前作「COLD HEART in TOKYO」の続きが、前半に収録された「COLD HEART」で描かれています。
TOKYO編の最後では、蛍デートに楠田を誘う秋沢がいじらしくて、このまま穏やかに成長してくれないかな、などと期待していたのですが…。無残に裏切られてしまいました。

秋沢の異常な性観念に傷ついた楠田は別れを切り出しますが、秋沢の狂気じみた執着が楠田の心も体もズタズタにしてしまいます。秋沢は見知らぬ男二人に金を払い楠田を強姦させ、自分が浮気した女の数と同じだからお互い様、恋人の浮気は辛いものなんだね、と大真面目に言うのです。秋沢は目に見えるものは理解できても、愛や思いやりといった形にならないものは理解できない。だから相手の立場に立って考えることがとても難しいのでしょう。そういう秋沢の思考回路は理解できても、とうてい共感できるものではありません。
ただ、楠田がこんな風に傷つくことがなければ、「COLD HEART in NEW YORK」で、秋沢の心に変化が起きることも、劇的な結末にもならなかったような気がしてしまいます。
そして、死んだことにしてニューヨークへ逃れる楠田が、秋沢の自殺を防ぐためにメモを残さなければ、二人の関係はここで終わっていたのでしょう。メモを預かった透が楠田に「お前は残酷だ」と言うのですが、秋沢を切り捨てられない楠田の情を、私は尊いと思うのです。たとえそれが、秋沢との間違った関係の原因だったとしても。楠田は、昔、透が荒れていたときも変わらず友人であり続け、そのことが透と藤島が和解するきっかけの一つになりました。そして秋沢も最後には楠田の情に救われるのですから。世に認められる才能がなくても、見捨てないのは人として尊いことなんだと、楠田に言ってあげたい。

「COLD HEART in NEW YORK」では、楠田が生きていると知った秋沢がニューヨークの楠田の元に来ますが、嘘の恋人を紹介され、嘘の用事で避けられ続け、燃え上がっていた一方的な再会の喜びは小さくなっていきます。合間に挟まれる冬枯れのニューヨークの景色が、寂しい秋沢の心のようで胸が痛みました。

秋沢は、エレベーターに閉じ込められパニックになった楠田を見て、嘘の恋人・ジェシカから楠田が性的不能であることを聞き、やっと楠田の苦しみを理解します。そして、楠田に謝りたいけれど苦しめたくないから、愛しているからと、会わずに日本に帰っていきます。秋沢が愛の片鱗に触れるまで、こんなにも長い時間が必要だったなんて。それから毎日毎日「ごめんなさい」と、季節に合わせたカード、ロケ先のカードを送り続けるのですが、それがいじらしく、気持ち悪く、やっぱり秋沢だなと笑ってしまいました。

このまま二人の関係は終わるのかと思っていたところで、最後の最後に思いがけない展開が。秋沢がストーカーのように送り続けた「ごめんなさい」は、楠田の心に届いていました。前回の別れから一年半。緊張で汗だくになりながら、楠田はほんの指先で秋沢に触れます。「慣れたら…もう少しなんとかなるかもしれないけど、変わらないかもしれない。」という楠田の言葉に、秋沢を許したのだと思いました。過ちを許すことも愛なのだと、深く胸を打たれました。長い苦しみの果てにたどり着いた指先だけの触れ合いは、二人にとっての救いだったのだと思います。そして忠誠を誓うように楠田のスニーカーに口づける秋沢に、これからの二人の希望が見える気がしました。

タイトルのCOLD HEARTは、傷ついた楠田の心と、楠田の愛を失った秋沢の心のことだったのでしょう。冷たくなっていた二人の心が、これから互いに少しずつ温め合えたらいい。表紙イラストでは、秋沢が楠田の背中に抱きついていますが、いつか二人が幸せに抱き合えるときが来たらいいなと思いました。

9

人に勧められない名作

木原さん、大好きなんです…。
絶版になってる作品も読んでますが、私はこのお話が一番好きかも知れません。
木原さんと言えば痛い、例に漏れずこれも痛くて痛くて、一番好きでも読み返すのに覚悟が要ります。
胸糞悪くて、攻めがクズ過ぎて、救いがないんです。その言葉全てが褒め言葉になる。そんな不思議な物語です。

ちょうどinTOKYOが出てから一月後にinNEWYORKが発売になったんですが、その時の待ち遠しさを今も思い出せます。
二人がくっついて、幸せな終わり方をしましたが、私はNEWYORKでどんなどんでん返しが来るのか、ありとあらゆる想像をしてワクワクしてました。
しかしそんなの足元にも及ばない、自分の想像力の拙さに愕然としました。
クズなんです。救いのないクズ、赤ちゃん。逃げ出した楠田に同情するんですが、最後はもうクズにも同情してました。欲しいものが買ってもらえず、泣きじゃくる子供をスーパーで見かけた気分。そんなに泣いてるんだから、買ってあげたら?って感じ。
結局楠田はそれでも嫌いになれなくて、気持ちと頭と身体がバラバラで苦しむ未来なんだろうけど。

私は表紙がとても好きでした。
秋沢がたくさんの手紙を書いて、楠田が指輪を外そうとしているのに躊躇っている(個人の解釈)
なんかもう、これが全てな気がして、素晴らしいなと思いました。泣ける…。
人間そう簡単に変われないし、そんな負の部分を凌駕する惹かれる何かがあって、ままならないなぁ。と思う作品でした。語彙力ください。゜(´⊃ω⊂`)゜。

16

楠木が不憫でしょうがない。。。

話の内容が好きという理由ではなく、気になって結局徹夜で読んでしまったので神評価にします。

笑えるところも結構あったin tokyoから一転、やっぱりそう一筋縄ではいきませんよね、木原さん作品。。。この巻の最後では二人の関係がどうなって行くのかはっきりとは見えませんが、私の意見としては、もう楠木の事は放っておいてあげて欲しいよ、海斗くん。。。海斗は下衆とか性格や育ち方の問題ではなく、医療的な助けの必要な人だと思います。

ただ性格の悪い人間が同じ事をしていたら、趣味悪い作品だと思ったと思うんですが、あんなに訳のわからない方向に物事をとる海斗が一途に見えてウルっときてしまったり、これはもう二人の間に関係は成り立たないでしょ、と思っても読み続けてしまう不思議な気分になるお話でした。

6

救済のお話

これ、木原作品の中で一番好きです。趣味悪いかもしれないけど。

木原作品って一貫してどうしようもない人が救済される話を書いている人だと思いますが、秋沢はその中でも一、二を争うクズ野郎(現時点)。登場人物のクズ度合いは年々更新されて行っているのでそのうち「あいつはまだ甘かった」と思う日も来るのかもしれませんが、まぁクズです。
本当にどうしようもない奴なのですが、ただ木原作品を読んでいると、周りから見て、まともな人から見てどんなにダメな人でも人間なんだよね、ということを考えずにはいられません。フィクションですから本当に秋沢がいるわけではないので、秋沢が救われなくても別に問題はないのですよ。わざわざそんな作品書かなくても、と思うのもわかる。
だけど、現実に秋沢と同じくらい不器用に生きている人がいたとして、それを馬鹿だからしょうがない、で済ませてしまうことに居心地の悪さを感じてしまう私としては、そういう人にも救いがあってほしいと思ってしまうのです。そういうどうしようもない人を切り捨てられない情の厄介さと、救ってあげられなかった何かに対する後悔のようなものも秋沢と一緒に救済してくれるからこそ読みたくなってしまうのかなと思います。
秋沢ほどでなくても誰しもやらかした記憶やどうしようもない部分はあるわけで、そういった部分を諭しながらも救い上げてくれるのです。そういう後ろめたさやコンプレックスと無縁の人には響かないかもしれないし、ただエンタメとしてのBLを求めているなら今一つだと思います。
なんか、説法みたいな構造なんですよね。こういうことしたらダメだよ、でも反省したら救いは必ずあるんだよ、っていう。こう書いてしまうと面白くなさそうに思えるかもしれないけど、登場人物のことを愛をもってとことん突き詰めて考えていくとこうならざるを得ないよね、と思います。突き詰めすぎてBLの枠をはみ出し気味なのですが、そこが面白い。読みごたえがあります。

また、シーンの切り取り方が映画的で美しかったです。
特にラストシーン、秋沢がひざまずくところで終わっています。正直、修復が終わるところまで読みたかったですが作品としてとても印象的なシーンなのでやむなし。同人誌でハッピーエンドまで書いてくれているのでどうしても気になる方はそちらがおすすめです。

12

何故か秋沢を嫌いになれませんでした

COLDシリーズは未読のままに読みました。
高久透が気になったので後にCOLDシリーズにも手を出しましたが、こちらの「COLD HEART」から・だけを読んでも大丈夫です。
充分に木原作品の魅力を味わえるはずです。

「COLD HEART in TOKYO」は幸せ色が強くて、正直そこまで好みじゃなかったのですが、全てはこちらで楠田と読者を崖から突き落とすため、だったんですね。
雑誌掲載は「COLD HEART」部分だけだったようですが・・・ここで終わってたってのは、ちょっと後味悪すぎだったのではないかと思います。
書き下ろし部分の「in NEWYORK」で、何とか気持ちを持ち直すことができました。
でも、読み終えて結構もやもやしてます。
秋沢最低!と思う一方で、彼の純真さも二冊読むうちに分かってしまって、秋沢を嫌いになりきれず、どこか惹かれてしまうんです。自分本位な最低男だけど放っておけない魅力というか・・・いやいや、でもやっぱり秋沢は止めておいた方がいいなじゃない?と、楠田には言いたい・・・かな。
秋沢に対して、好き嫌いの判断が出来ません・・・恐ろしいし、分かり合える気がしない。でも、それだけじゃない・・・と思ってしまうのは、何故なんでしょうか。木原さんの作品だからなのでしょうか。

最後の最後で漸く恋愛のスタートラインに立ったような二人。この後、二人がどうなっていくのかも含めて、読み終えていろいろ考えてしまう作品です。
「in TOKYO」と「in NEWYORK」二冊揃えて、一気に読んでしまうのがオススメです。

5

初めての感覚。

ハッピーエンドが大好きで色んな作品の色んな結末にハッピーエンドでありますようにと思ってきた私ですが、こんなにもバッドエンドを願ったのはこの作品が初めてです。
こんな感情になるんだ!と自分でもびっくりしました。

終盤でちょっとしおらしくなっている秋沢に感情移入してしまい、叶わない思いに涙が出ましたが、秋沢の根本にある人間性がほぼ変わらず、最後まで自分本位なので擁護出来る部分がないです・・・。
追いかけられる楠田がかわいそうでかわいそうで。

最後は楠田が根負けして歩み寄る所で終わっていますが、一応これはハッピーエンドになるんでしょうかね?!
個人的には2人の関係性というよりも秋沢がもっと楠田の気持ちを思いやることができた時にハッピーエンドを感じる気がします。(BでLじゃなくてヒューマンドラマのような感覚??(笑))

in TOKYOとin NEWYORKの表紙どちらも楠田が指輪をしていてin NEWYORKの方では秋沢も言ってましたが指輪の行方が気になっています。
あと表紙の手紙はそこに繋がってくるんだーと読み終わったあとなるほどと思いました。

自分本位で人間性にいいとろがなさそうな、でもそこには愛があって病んでいる攻が出てくるのが好きな方はどんぴしゃではないでしょうか。

4

ねじ曲がった愛情の行き着く場所はどこか

「COLD HEART in TOKYO」に続く第二弾。
1作目が比較的静かな話の展開だったので何か起こるとは思っていましたが、こんな内容だったとは・・・。

とにかく秋沢の愛情がねじ曲がっています。
そして一番の問題は秋沢自身がその異常さを自覚していないこと。
正彦が秋沢になんとか理解してもらうと努力しても全く話がかみ合わない。しかも大好きなあいてからあんなひどい仕打ちをされたらおかしくなりますよね。
正彦が精神的に追い詰められていく姿が痛いです。

前半は秋沢のひどさに呆れ、正彦がかわいそうでなりませんでしたが、最後は悪気がなくそれが最大限の愛情だと思い込んでいる秋沢もかわいそうなんだなと感じました。
相手の痛みも理解できないけど、自分の愛情が届かない理由も分からない。
ねじ曲がった愛情の行き着く場所はどこか。

5

凶暴な純真

受け視点と攻め視点両方あります。
まずは、楠田(受)はよく生き耐えてると思います。秋沢(攻)のしたことははっきり言って犯罪です。だけどややこしいのは、秋沢にまったくの悪気がないところ。
件の凌辱シーンは吐き気すら目に浮かびます。
だけど、秋沢なりの純真も真実なので、複雑な気持ちで読み進めました。
楠田の苦痛に配慮せず突き進む悪質なセックスモンスターが、終盤ではセックスできなくなった楠田のために去勢してもいいと言うぐらいですから。
相手がセックスできなくなって怖い思いをしているのだから、なら俺は去勢して一生離れないよ、という恐ろしい決意で幕を閉じました。
秋沢が道端で泣いてるとき、5歳の女の子から飴をもらった場面はとても切ない。
TOKYO編でのどうしようもなさを知ってるので、腹がたつけど秋沢のことは憎めないです。
天才役者でイケメンで、人としての配慮を為さない凶暴な純真をまとうどうしようもない男の壮絶なお話でした。
いつか自分を愛せる時が来れば、秋沢も変わるだろうと望みを込めて。

4

王道ではない作品

読んでる間中、胸がじくじく痛みました。苦しい話でした。秋沢が撮影で1か月沖縄に行くことになって、寂しいから平気で女性と下処理のためにセックスしました。楠田がそののスキャンダルを問い詰めて、浮気とも思っていない秋沢に耐えられず別れを切り出しました。その後、監禁の上、金で雇った男たちに楠田を凌辱させました。そのせいで楠田は心身ともに徹底的に傷つけられてトラウマ抱え込まされました。楠田が自分を怖がっているということがわかってちょっと態度を軟化させて、反省の態度を見せてました。幸せいっぱいハッピエンドではないが、読むだけの価値があります。

4

下衆キャラ、ここに現れり!!

前言を全撤回させてください。そして声を大に叫ばせてください。
「秋沢海斗。この男、史上最悪の下衆キャラだ!!」と!!

 考え方の違いから秋沢との別れを切り出す楠田。そしたら案の定楠田は秋沢の監禁される。あー。やっぱりか。それやばいやつだ。と思っていたら。。。
 えーっ、まさかのモブレ!!何と秋沢は男二人を金で雇い、自分の見ている前で楠田をモブに犯させる。
 しかも、この作品のセックス描写、このモブレが最後。うわあ。残酷だ、あまりに残酷だ。

 自分は死んだと偽り、ニューヨークへとうぼうする楠田とその3年後その事実を知って追いかける秋沢。ものすごい勢いでページがなくなっていくのに、二人は全然距離が縮まらない。そらそうか。楠田はあの事件以降、男の人に触れられない体になってしまったしな。もちろん秋沢にも触れられない。なのに、追いかけてくる秋沢。届き続けるカード。あ。それこそストーカーだよね。

 今回、このすごい作品を読んで思ったこと。

流されすぎは良くない。
最後までよく頑張って読んだ、私。
木原さんは、人格破綻者か?

ということ。

7

辛口

著者本人がおっしゃっているように甘々な 〜in Tokyo 辛口の 〜in NewYorkです。

秋沢の幼稚な執着が恐ろしかったです。
秋沢の『愛している』気持ちと性欲は別だ言う考えが楠田には許容できないことでいくら話しあっても分かり合えない虚しさを感じられました。

自分が2回浮気したからと楠田を二人の男に強姦させてそれを見て怒る気持を抑えて我慢した自分に酔いしれる。
この仕打ちは非道すぎる、心も体も壊して。
会いにきてあげた、許してあげた、我慢んしてあげたと自分本位で相手の気持ちを全く考えないわがままな子供のまま成長しません。
誰が何を言っても自分の正当性だけを言い立て聞く耳を持たない。

ニューヨークへ逃げて行き、自分に怯える楠田の姿を見てやっとあの時の仕打ちがほんとうは嫌だったんだと理解できただけ遅きに失しましたが成長したと言えるんでしょうか。

メインシリーズの透が人としても男としても成長して立派になったなあと感心しました。
楠田の危機にいい仕事をしたし今作品中では大事な役割を果たせました。
SDカードをポケットに入れたまま洗濯することはあっても…
藤島も転職し本領が発揮できることでしょう。

ニューヨーク店の店員のロブがお気に入りのハム屋に転職し横に増えおっさんになっていたという描写に姿を想像して笑えました。

ごめんなさいの絵葉書がうっとうしいと感じるか健気と思うかあるいは気持ち悪いと思うか微妙です。
自分の気持ちを押し付け要求を満たす幼児性が一向に改善できないお子様でした。

別れて3年後のニューヨークでの束の間の再会と別れでした。

そしてそれからまた1年半後の再々会。
楠田が明るくちょっと図太くなっているので安心しました。
いろいろ考えたし頑張ったんだなーと。
ENDマークの後のイラストがよかった。
一滴の涙が…。
絆されちゃいますね。

扉絵も素敵です。
とても雰囲気があってどんな場面なのかと思って読んでいたらモデルとしての撮影のシーンだったんですね。台詞もないのに物語性があって見ている人にそれが理解できるような演技をしている秋沢を撮ったという透の撮った写真でした。

あとがきに書かれていた木原さんの妄想が救いかな。
相当長い時間がかかりそうですがいつかまた寄り添える日がくるような…明るい未来が描けるハッピーエンドで終わらせてくれました。

6

○○は死んでも治らない!?

「TOKYO」で期待した秋沢の成長は無残にも打ち砕かれ
正直「こいつ、死ねばよかったのに」とまで思わしめした楠田への、あくまでも自分本位の自分勝手な仕打ち。
舞台がN.Yへ移ってからでさえ、これ完全にストーカーじゃない?と思わせる、ここへきてからも成長というよりは、ここでさえも自分本位な秋沢の姿を見、
一応見せた結末さえも、ひょっとしてこれは明るい未来の始まりではなくて破滅への扉を開いたんじゃないか?とか、
秋沢は一生死ぬまで彼の「個の質」というものは変わらないんじゃないかと思った次第。

しかし
楠田にも疑問があるのだ。
完全に秋沢と切れるには、ブランドに関係した仕事を海外とはいえしていては、いつかバレてしまうとは思わなかったか?
PTSDを患うほどの重症な心の傷を負わされた相手に、彼はひょっとして雀の涙ほどでも何か期待をしていなかっただろうか?
そんなことは書かれていないけれども、そう思わざるを得ないよね。

誰もが顔をしかめるであろう、秋沢の楠田への超傲慢で自分勝手な思想からくる仕打ちから
ストーカーと化した拒絶されているのに執着を見せて、それは果たして一体何のためであるかと考えれば、完全に秋沢の自分の為であると思われる、成長のない姿。
それをけなげとは言わないだろう。
そんな物語だからこそ、不完全すぎる人間の有様、人間の甘さや狡さ、汚くて嫌悪する部分を見せながら、それでもそんな人間が曲がりなりにも「恋愛」をしたとき(それを恋愛と呼ぶのが正しいかどうかは疑問であるが)どんな姿を見せるのか?
一つのケースとして、とても興味深く面白い物語であったと言わざるを得ない(自分にとって)

BLという枠で捉えられないからこその面白味がある。
やはり、このエンドの先にまっている彼らのいろいろを想像するのは非常に楽しいのだ。

8

COLDシリーズスピンオフということで。

COLDシリーズを一年前ほどに読み、やっとの思いでCDを聞き「はあ…」となっていたところに今回のスピンオフの発売が決まったので、次はどう来るんだと期待に胸を高鳴らせ購入。
まとまった時間ができたので二巻一気に読破しました。
以下頭の悪そうな感想です…(ネタバレです)

いやね、本編(透×藤島)で散々痛くて辛かったのに。やりますね、木原先生…
in TOKYOで分かったのは秋沢の価値観や性格は「子供」で、加えて好きな人(モノ?)に対する「執着」が激しいということ。怖くて怖くて…この執着、この後どうなるんだと思っていたらやられました、楠田ァ!
他の方もレビューに書かれているように、秋沢という男はどうしようもなく狂ってます。というのも、価値観が成人男子のそれではないからです。ゾッとしたのは「子供な故の残酷さ」。強姦のシーンでは、3pさせた理由に思わず「こいつ(秋沢)は何を言っているんだ…」と思いました。普通の執着攻めとは違う、激しい狂気を感じました。
個人的に好きなシーンは、楠田がエレベーターで発狂するところです。
鳥肌が立ちました。楠田にとって秋沢や暗闇というものが、本当に忘れることのできない過去、激しいトラウマになっているんだなと、挿絵も含めてじわじわと伝わってきました。

そしてクライマックスですがまさかの楠田が勇気を出したシーンは驚きでした。帽子の件も含めて秋沢の執着も凄いですが楠田も人のこと言えませんね。ここで終わるのかうおお!!ってなりました(笑)秋沢も成長していってほしいな…

文章力が無いに加えて、好き勝手書いてきましたが、読めてよかったです
もっと読み込んで新しい発見をしたいところですがちょっと置いてからにします。はあ…
ちょいちょい出てくる透と藤島が可愛かったです(*‘ω‘ *)
そして何度も出てきたことば、「愛してる」って何だろう、考えさせられました。

【追記】
アニメイト特典ペーパーの存在をすっかり忘れていて(-_-;)
今見直したらまた苦しくなってきました…
『短くても確実に在った、俺たちの蜜月の頃の話』

9

失ったもの手放せないもの

愛情へと変化した感情が秋沢の無茶も我が儘も受け止められるようになり、楠田の諦めに近い許容でなんとかバランスが保たれる。
ささやかな抵抗に、心の中での悪態も最後には馬鹿な子ほど可愛いに至り、恋愛の矛盾にぐるぐるしながらの日常。
濃密な2人の関係に危ういながらも微笑ましさが見られるようになり、ほんの少しの思い込みからじりじりと詰められてしまった楠田の陥落した開き直りぶりに、付き合い始めの浮き足立つ楽しさが伝わります。

それが突然あっさりと裏切られる。

理解出来ず、受け止めきれず、話し合っても埒があかず。
これ以上は無理だと線引きし別れを決意する楠田の苦しみを、透には話せるかなと思ってみたりもしたのですが。
透の素っ気ない気遣いと優しさが見られるものの、互いに踏み込んだ会話にはならなかったのがちょっぴり残念です。

裏切ったらと背筋を寒くするような凶暴さの片鱗に触れていたせいか、事件の内容は衝撃的であってもそれほどの驚きはなく。
自身の気持ちだけを押し付けるだけ押し付けながら、大切なものを共有する事には抵抗がないのが不思議でした。
そういう性遍歴をたどってきたせいなのだろうと思うと、その過程に携わってきた大人に怒りが湧いてきます。

明るみになった2人の関係を冷静に受け止めていた正光の怒り。
楠田の気持ちを優先させたせいで誰も秋沢を咎める事ができなかった分、少しだけ気が晴れるシーンとなりました。

ニューヨークでの再会。
楠田の、熱情の代償となる後遺症は根の深さに修復の兆しは全く感じられません。
その分、ようやく秋沢にしでかした過去の重みを理解させることができます。
幼稚でも押し付けがましい程毎日でも「ごめんなさい」と謝れる無垢さがやはり楠田同様薄気味悪くも感じられるのですが、秋沢が忘れない、忘れていない証拠としてはとても効果的に感じられました。

正直これ以上の進展も望めずこのまま2人別々のエンドを迎えるのもありかと思っていた瞬間。見計らったようなタイミングで吹っ切った楠田の覚悟。
ほんのちょっとの指の先が触れる。
その感触の重みを秋沢が感じられた希望の光に、5メートルから3メートルへ近づける日を夢見たいなと思いました。

6

やっぱり一筋縄ではいかないのね

この作品で、木原作品の虜になったかもしれません。

このCOLD HEART in NEWYORKも二日で読破。漫画派の私はあまり小説を読まないので小説は何日も掛けて読むタイプです。しかし、前編の~in Tokyoを読んで、とてもワクワクドキドキしたので今回も難なく読み始めることができました。数行読むと、いつの間にか楠田が本心から秋沢を大切な存在と認識していることが判って本当に嬉しかったんです。

なのに、なのに、、、秋沢は浮気やらモブレ…(以下省略)

秋沢の残酷なまでの幼い思考。的のはずれた怒り。なぜか感情移入してしまう部分もありました。その思考に至った原因は楠田にも責任があると感じて仕方なく、裏切られたと感じた楠田が哀れでならなかった。諦めてばかりで秋沢の好き勝手させて自分の意志をどれほど飲み込んできたのか。秋沢の生い立ちや振る舞い方で予測できる部分も沢山あったはずなのに。言葉に出して言わなければ何も伝わらない。楠田には幸せになって欲しいと、前作で思ってたのにまさかトラウマを植え付けられるなんて。

しんどい内容でしたが、書き下ろしの最後とあとがきに若干の明るい兆しがみてとれたので、これで完結というにはまだ足りないです。

最後に、これを言っては物語が成り立たなくなってしまいますが、私の願望では楠田には秋沢を調教して欲しかった。

6

これは、、、

で、通して読んでみての結果だけど、
物語としては、ぐいぐい読まされて、
小説としてはさすがだなぁとは、思う。
この2冊、一晩でイッキ読みしちゃった位だから。

でもね、

この獣は、ダメだ。
ちょっと受け入れられない。
木原さんの作品って、それがどんな形にせよ、当事者的には、最終的に分かちがたい番となってハッピーエンドになるけど、ちょっと今回は、勘弁。
こんな獣に、光明を見せるようなラストも許せなくて、
ごめん、しゅみじゃない。

16

演技の天才、でも自分の人生はまともに演じられない男の愛。

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
ええ、もちろん、木原節が。それも超絶なやつが。
一度は奈落に突き堕とさずには済まさない!
やっぱりドSでしょう、木原先生は。

そしていつもながら感じる、木原作品における愛情というものの相対性。
後編に入って、案の定壊れる秋沢と楠田の関係。
でも、秋沢の人格は楠田と出会ってから別れるまで、何一つ変わってはいないんですよね。
初登場の撮影シーンから、彼は最悪でした。
変わったのは楠田の気持ち。
演技の天才、でも自分の人生はまともに演じられない紙一重の男・秋沢。
彼の才能や甘い言葉・こなれたセックスにはつきあえても、周囲が見えない我儘ぶりや極端な執着心には到底つきあえない――でも、全部含めて、それが秋沢という人間で。
壊れた愛を挟んで、対峙する2人。
恋愛を絶対値としてとらえるのではなく、2人の人間関係の中で再定義していく部分が、私の中では木原作品の一番の魅力です。

しかしこれ、笑ってしまったのは、秋沢の行動がいわゆる典型的な執着攻めのそれだということ。
かなり極端にデフォルメされてはいるものの、トイレで無理やり楠田を脱がせてセックスしたり、別れを切り出す楠田を縛って犯したりといった行動は、他作品でも執着攻めがよく取る行動パターンです。
全部、秋沢にしてみれば愛ゆえの行動。
他のBLなら、受けはその一方的な行為にエクスタシーを感じ、攻めの愛も感じとってくれます。
ところが、楠田の場合は、嫌悪感と苦痛以外何も感じない。
そりゃ、そうだ。楠田の感覚こそ、リアル。
そんな一方的な愛情の示され方で、気持ち良くなんてなれっこありませんわな。

ついでに、3P二輪挿しも、全否定!
はい、たしかにアナルで二輪挿しなんて、大出血して病院行きがオチです。
あらぬ妄想は打ち砕いて、赤裸々な現実を突きつける。それでこそ、木原節!
ただ、この作品、前編は木原作品にしてはいつになくBL的だっただけに、後編のこのBL的幻想の打ち砕き方は・・・私は執着攻めに夢を見ていたいほうなので、ちょっと辛いなあ(笑)
木原さんはキャラに対してもSだけど、読者に対してもやーっぱりSだなと。
ま、そこもまた魅力なんですけどね。

でも、執着攻め全否定の話かと思いきや、楠田の心をほぐしていったのも、意外にも秋沢の執着なんですねぇ。
表紙絵に描かれた封筒の山・・・ええ、これです。
いかにも引き出しの少ない単細胞執着野郎の秋沢らしいんですけど、秋沢は自分をオナホールとしか思ってないと感じてた楠田にとっては、心に響くものがあったんでしょう。(私だったらトラウマの上塗りになりそうですがw)

秋沢の執着が、楠田を心身ともに傷つけ、秋沢への愛情を見失わせてしまう・・・そうなって初めて、秋沢は変わることができたわけですが、それでもやっぱり最後まで、秋沢の執着野郎っぷりは変わらなかったってところが、なんだか妙にリアル。
そんな、ある意味変わってない秋沢を、再び受け入れるのですから、楠田の心の奥底には、秋沢への想いが熾火のようにくすぶり続けていたのかもしれません。

ラスト数行は本当に美しい。どんな奈落を経由しようとも(いや、奈落経由だからこそ美しいのかな)、ここに辿り着ける筆力はやっぱり素晴らしいです。

うーん、ストーリーそのものは好きなんですけど・・・なんかモヤモヤ。
「天才的な役者というものを一度書いてみた」かったとあとがきにはありますが、そういう視点で眺めると、ちょっと中途半端なところで終わってる気がしてならないのは、私だけでしょうか?

たしかに、この作品には「バカと天才は紙一重」という言葉が服を着て歩き出したような秋沢の姿が、赤裸々に描写されています。
でも、このストーリーでは秋沢の執着野郎な部分が前に出すぎていて、彼が役者である必然性が薄れてしまっている気がするんですよね。
TOKYO編でもNEWYORK編でも描写されている、楠田の秋沢の才能に対する気後れ・劣等感も、ストーリーのどこにも結びつかずに終わってる。
もしもここで完結なのだとしたら、天才的な役者の物語としては不完全燃焼な気がします。まだまだ生かされていない設定や散らばった伏線が残っているような・・・
ひょっとしたら続編があるんでしょうか?

そういうモヤモヤ感が最後まで拭いきれなかったというのがあって、敢えて萌で。
(実は執着攻め幻想を打ち砕かれた遺恨もあったりして(;^ω^))

10

こうくるとは!

雑誌連載を読んでいたので、書き下ろし以前の部分は知っていました。
救いのない結末に、「またやっちゃったねー、木原さん…」と苦笑いだったのですが。

書き下ろしにやられました!
なるほど確かに精神的に幼児としか思えない秋沢を変えるのは大変だろう、と後書きを見て思いましたが、そうですよね、誰かの言葉で変われるのなら、とっくに性格矯正されていて当然の秋沢です。
だから再会までの三年という時間がまず必要だった。三年経っても忘れられない、本当に愛していたのだ、今でも愛しているのだ、なのに二度と会えない。「愛してる人が死んだことある?」自分を可哀想と言い切ってしまう、この痛さ加減が悶えそうになるほどどんぴしゃで、うまいなあ!と思うしかなかったです。
その想いの積み重ねがないと、NYでの行動に説明がつきません。サスガの説得力です。
そして報われない三年があったからこそ、嫌われたくない、の一心での行動に頷かざるを得ない。なにしろコピー用紙に書かれた殴り書き一枚に、三年間を捧げたように生きてきたのだから。
独白に自分中心の考え方が変わっていない、と言う描写がこれでもかと続きます。
「俺はここまで考えている。正彦のことを考えている」
自己弁護でも正当化でもなく、ただ普通にそう考えてしまう幼稚さ。そう考えている限り、楠田の心中など思い量れるわけがないのに、そこへ思い至らないのが痛い。バカすぎて哀れです。
ここまで「痛い」のは「甘い生活」以来かな、などと思ってしまうほど、秋沢が痛すぎる。

でもある意味、無垢で一途ではあるのですよね。
(ストーカーを擁護するわけではありませんが)恋愛というものについては初心者で、作法も何も無い。自分を押しつけるしか能の無かったバカが、幼稚園児がまわりを見ながら手探りで見つけていくように、少しずつではあるが成長していく様が、あり得ないことなのにリアルに描かれていて、すうっと入れました。

常識人であるはずの楠田が、秋沢に怯えながらも嫌えない。さりげなく描かれる楠田の行動の裏は分かりやすい。そして最後に振り絞った勇気。
指先一点、触れるだけでいっぱいいっぱいの楠田。それを見て秋沢がようやく人を愛する資格を得た。
足にキスするのは罪人の仕草です。無自覚な懺悔に楠田はほだされていくのでしょう。
この表現に痺れました。

ダダ漏れになりましたが、とにかくすごい作品です。
久し振りに眠りを忘れて読んでしまった。次の日の仕事がきつかったです。

27

COLD HEART in LONDON

萌萌萌。(MAX:萌萌萌:神に近い)
その枚数、わずか約30ページ。
ち、ち、ちょっとーーーーーー!?
と待ったをかけたいくらいに、のっけからアクセル大全開で始まる後編です。
ふり飛ばされないようついていくだけで必死でした。前書きに、心の準備はいいですか?という一文を載せとくべき。そのくらい、私の予想の遥か斜め上の上をいく常識はずれの秋沢でした。敢えて言わせてください。秋沢は頭がおかしいです。読みながら「コイツ死ね」と真剣に思いました。
前編レビューで、「恐らく続編では、更に楠田が掘り下げられていくだろう期待」と書いたんですが、地面に額を擦り付けて楠田に謝りたい。そういう次元ではなかったです。
気分はもはや「エイリアンBL編」。言葉も常識も通じない宇宙生命体に命の危険を感じるほど翻弄される楠田が、とにかく不憫で仕方ありませんでした。楠田よ逃げてー!

見所は2点。
まずはやはり、楠田と秋沢のどこまでいっても噛み合わない「ズレ」の心理描写でしょう。
楠田の秋沢に対する感情は、恋人への甘いものから、一気に冷水を浴びせられ冷え固まります。そして、怒りと悲しみ、絶望、諦め、恐怖を経て、ただただひたすらの拒絶。確かにあった愛情は反作用で瞬く間にどん底にまで落ちてしまいます。
そんな風に楠田にとってはジェットコースターのように変化する状況でも、秋沢にとっては一貫して恋人同士の時間なんですね。
この「ズレ」に呆然とする楠田に胸が痛む。言葉を尽くしても尽くしても言葉が通じない、その不毛さに鳥肌がたちました。
楠田の怒りがわからないのはまだいいです。問題は悲しみさえも通じないこと。
身も心もズタズタにされ絶望する楠田を前にして、「やっとわかった。正彦も今の俺みたいに辛かったんだね」と言って涙を流す秋沢に唖然としました。彼の涙には一片の価値もない。不気味なまでの自己本位さです。
愛してると言いながら、愛してる相手をここまで蔑ろににできる強烈な残酷さ。傷つけるつもりでやっている方が何百倍もマシです。相手に「心」があるという前提があるからです。
驚くべきことに秋沢にはそれがありません。秋沢にとって重要なのは自分の感情のみ。相手の感情を想像するという発想そのものが完全に欠如しているのです。自分の感情を訴えることだけが、彼が知るたった一つのコミュニケーション方法なのでしょう。
しかし相手に「心」がないのなら、例え恋人であってもそれは物と何が違うのか。物を相手にした恋愛は、単なるマスターベーションでしかありません。
どこまでもどこまでも、楠田と秋沢の間には「ズレ」という溝が横たわります。その溝のあまりの深さに虚無感すら覚えます。

そしてもう一点の見所は、何と言ってもそんなエイリアン秋沢の成長でしょうか。
人を騙すとか、強欲とか、秋沢はそういった悪人ではなく、あくまで「自分の感情に正直」を突き詰めたキャラクターです。言わば大人の服を着た赤ん坊。赤ん坊に善悪などありません。なので改心ではなく成長なのですね。
一人で過ごす3年間。いかに苦しもうと、秋沢が溺れていたのはひとえに自分に対する涙の海に他なりません。ここにきてすら、秋沢はなぜ楠田を失ったのかを一度たりとも考えようとしません。
沼田や久萬や透や正光、ジェシカなど、多くの人が秋沢に苦言やアドバイスをします。しかし、彼らの言葉はただ秋沢の感情を揺さぶるだけで、本当に意味のある言葉としては届きません。
なぜなら赤ん坊の成長に真実必要なのは、罰でも説教でもなく愛情だからです。
なけなしの勇気を振り絞って、震えながらほんの少しだけ差し出された楠田の指。一瞬だけ秋沢に触れた温かな感触。
それは確かに、楠田の愛情でした。
その事実が秋沢を成長させたのです。
「コイツ死ね」とまで思わされた秋沢のその姿に、楠田と一緒に泣いてしまいました。

2冊を要してようやく二人は恋愛のスタートラインに立てたということになりますが……ん?つまりは恋愛関係という視点でみると、まるまる序章じゃないですか!うおぉー物足りないよー!
ということで木原さん。
あとがきでちらっと書いているその後の二人をぜひとも続編で出してくださいませんか。
COLD HEART in LONDONとかどうでしょう。もういっそアマゾンや南極とかでもかまいません。ピラニアから逃げる二人や皇帝ペンギンと戯れる二人でも何でもいいからとにかく続きが読みたいです。
寝床がソファーからベッドに昇格する過程が見たいんだーー!!

13

ザワつく

 非常識なろくでなし、恋人を見知らぬ男2人に強姦させるとか鬼畜通り越して異常さは
これまでにないくらい痛さでした。ただ、秋沢を単なる変態ストーカーだとは思えなくて思春期に母親に拒絶された一件から歪みは大きく・・・・だからと言って唯々諾々と甘受する思いにもなれないけれど、可哀相な子供なんだと憐憫がわいてきました。ゆりの菜櫻「最強凶の男」シリーズも非常識でストーカー束縛男だけどコメディーとして楽しめる、非常識な攻めの非道さを描いた作品でも、木原作品だとサスペンスホラー風味になり天と地くらい違う。けども根幹は受けへの思いが攻めの行動の殆どが由来する。だから狂気へ走らせた秋沢の心の欠落と母親から得られなかった無償の愛を求める乱暴で純粋過ぎる思いが怖くもあり相反する愛おしさも僅かながらわいてしまう。目隠しされ見知らぬ男2人に強姦され二輪挿しというかなりハードなプレイを強要され、それをさせたのが恋人である秋沢であるんだから心が壊れてしまい不能になっても当然であるから楠田のダメージを思うと別れる事が最良なのかも知れないが、それでも秋沢の一途な思いに絆されプレゼントの帽子を大事にし、手紙を捨てずにいたあたり楠田も相当に重症なんだと思う。秋沢が楠田のスニーカーに口づける愛を請うシーンは切なくてホロリきました。秋沢と楠田はお互いじゃないとダメなんだと強く思うと同時に、人に因れば二人の未来が見えた終わりで良かったと思う人とミザリーみたいにストーカー包囲網にされたホラーサスペンスに映るんだろうと感じました。最近の作品で久々にグッときました、胸がざわつく程に読み応えありました。あとがきに書いてたましたが二人の未来は明るい感じなのが微妙です。どうせなら秋沢が改心して楠田と上手くいくところまで商業誌で読んでみたいです。

11

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP