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八年越しの片思いをこじらせた攻めと、毒母親に縛られ無自覚に抑圧され続けている受けのお話。ところどころに挟まれる高校時代のエピソードがとても好き。特に春一視点で見る高一の洋介は可愛くて、きゅんとできて良かった。
仕事で偶然再会した二人は、立場が完全に逆転している。洋介は仕事に私情を持ち込み公私混同甚だしく、春一に迫るために手段を選ばない。
春一は自己保身のために受け入れ、そのたびに何度も母親の影響が示唆される。たまに本当は自身のプライドのためなのに、それを認められず母親のせいにしてると思えるところがあって、ちょっと面倒な精神構造。表面的に付き合うなら無難なタイプ。
ストーリーは、洋介が春一に付け込む形で進んでいく。驚くほど潔い仕事の絡めっぷり。裏で春一に急な納期変更を依頼される発注先が迷惑を被りながら、表では洋介が性的奉仕を要求するBL展開。
洋介のことを考える春一は、かなり捻くれたものの見方をしていて、陰謀論に片足突っ込んだような極端な思考。長い間思ったことを口に出さずに生きてきたからこうなったのか、それともこれが本来の性格なのか。
良くも悪くも単純で分かりやすいが、こんなに変な思い込みを脳内で繰り広げるタイプの人間が、よく表面を取り繕って生きていられたと感心した。
洋介は思いを遂げられなければ自ら破滅に向かっていきそうな怖さがあって、BLキャラとしてはとても好き。春一の適度に性格の悪い地を引き出していて、お互いぴったりの相手に見えた。
春一は洋介に終わりを告げられ、恋心を自覚する。タイミングは自然だし片鱗は見せていたので流れはおかしくないのに、ここはあまりすとんと来なかった。頭では分かるけど、気持ち的にこれで好きになる?と共感できなかったからかな。
ここが不思議だったくらいで、全体的には楽しく読めた。
気になったのは、母・姉・彼女と主な女性キャラが悉く悪役なこと。この作品に限らずBL全体の苦手なところ。読者に同情させないようあえてウザく描かれる彼女が可哀想だった。
仮タイトルは「こじらせた男」らしい。洋介はもちろんのこと、春一も別方向にこじらせていて、人間味あふれるところが良かった。
萌えは高校時代に凝縮されていた。くっついてからの二人はカプとしての納まりの良さが好き。ラストで春一の呪縛が解ける描写も爽やか。すっかり可愛くなった洋介が自爆しないよう、春一はしっかりそばにい続けて欲しいと思う。面白かった。
楠田さんのミステリー以外を読むのは初めてです。
すごかった!正直読むのが辛かったです。
つい残りのページを何度か確認してしまいました。
それ以上に今は晴れやかな気持ちでいっぱいです!
こういうね〜、母の呪い系は本当に嫌なんですよ。身近にいるから余計なのかもしれませんが。
小さい頃から母に褒められたくて頑張って頑張って。
それだけなら微笑ましいのですが、この母は!
せめて大学に入ったり、社会に出て主人公春一がその呪縛を自分で解ければ良かったんですけど。
大きくなってもエスカレートしちゃって。
母に仲間に後輩に職場に自分を良く思われたい、誰でも持つ感情ですが、春一は自分を抑え込んで犠牲にしてまで貫いて。
そんな時高校のサッカー部で面倒をみていた後輩洋介と上得意先の新しい担当者として再会し…。
何度も挟まれる高校時代の回想。
私はずっと母の呪いの負の連鎖だと思ってました。
春一を狂わせ洋介も狂わせ。
でも洋介に荒療治されたことや、友人田丸のやりたいことをやれる時間は短い、もっとはっちゃければいいという言葉で、やっと春一は目が覚めるんですね。
母や世間の評判がなんだ?母や彼女の言うみんなって誰だ?
洋介がここまで来たのは、周りからどんなに笑われ見下されてもやりたいから一生懸命がんばったからだ。
俺はそこまで頑張ったか?と。
私が救われたのは、洋介が春一の世間体の為だとやった親切を本当に感謝していたから。
ちゃんと春一の面倒見の良さを認めてくれてたからなんです。毎朝30分早く来ての二人きりの朝練、キレイにして譲ったエナメルバッグ。
ちゃんと春一に親切の心があったんですね。
洋介の部屋を訪ねた時の二人がとっても良かったです。
洋介の開き直り。俺はこじらせてますからって(笑)
まさかの洋介の就職先の決め方!
執着攻めは好きなんですが、受けを苦しませたり束縛するのは苦手なんです。
でも洋介は一途に必死で。叶わないと思ってもチャンスにすがって。嫌われても触れずにはいられない。
でももうこのままではダメだ、春一から離れなければってちゃんとしてて。
春一の負の連鎖、母の呪いが断ち切れて良かったです。
もう他人の評価にとらわれず自分の好きなように生きていけるね!
多分執着攻めに萌えるかな話なのかもしれませんが、個人的に春一の自立にばかり集中してしまいました。
とにかく攻めの執着がすごく良かった!!
高校生の後輩と先輩の関係で、世間体を気にする先輩の受けは当時部長。
貧乏だった後輩に部活のスパイクをあげたり、優しく面倒を見てあげます。
卒業後、とある理由で連絡が途絶えてしまうのですが、社会人になり、再会したら二人の立場が逆転!
年下なのに攻めの方が立場が上という設定が、すごく活きています。
卑怯な手を使って脅してまで関係を持ちたい後輩の思いが強くて、ゾクゾクしました。
純情過ぎるが故の執着。
就職先を選んだ理由も、もちろん先輩狙い。
「アイツはヤバい。お前への執着が~」と忠告してくれる友人が、すごくいい味出してました(笑)
第三者が介入すると、攻めのヤバさを改めて知れるのでこの演出大好きなんです…。
最後はちゃんとハッピーエンド。
作者の新作を読んで面白かったので、評判の良い本作を読ませていただきました。
『萌え』という点ではあまり刺さらなかったのですが(これは『身に迫る執着』が萌えツボでないという単なる趣味の問題です)面白い!
「お話が作り込まれているなぁ」と思いました。
レビューも多い人気作なので感想のみを。
楠田さんって『根性の曲がった人』を書くのがとても上手いですね。
春一なんて「あーこういう人、会ったことある」っていう感じですもの。
そういう風になってしまった理由の書き方も押しつけがましくなく感じたのでホントに「あー、いるいる」とすんなり思っちゃったんですよ。
あと、秋宮の執着の感じが、良い意味で「すごく嫌」。
何だろう?
身につまされる感じなんですよ。『自分を想定して想像してしまう』とでも言うか、安全な所から他人が繰り広げる物語を覗き見ている感じとはまたちょっと違ったハラハラがありました。
ただ、その『ハラハラ』が最終的には春一が拘っていたものからの解放に繋がっていくという流れ。
だから、春一の心が急変する部分がすんなり飲み込めました。
この部分がね、とても面白かったのです。
面白かったです。しかもみずかねりょうさんの美麗なイラストのこじらせ男。攻めの洋介は高校サッカー部の時の先輩への初恋をこじらせ、先輩の会社の取り引き先である大手企業に就職し、仕事と引き換えにノンケである先輩の体を要求するような悪い大人になってしまったのです。最後まで読むとその執着ストーカーぶりが結構恐ろしいです。
対して受けの先輩春一は、小さい頃から母親にいい子であることを求められすぎて必要以上に人目を気にするようになってしまったちょっと可哀想な子です。この母親がドン引きレベル。息子に自分のブランド物を買わせようとするって気持ち悪すぎ。でも春一も母親タイプの見た目だけ良くて中身が幼稚な女性を彼女にしてしまうのが底が浅いというか見る目がない感じです。
後輩の歪んではいるけど一途な思いにほだされBL的にハッピーエンドで結ばれる受け。でもあの世間体ばかり気にする母親に彼氏のことがバレたら相当な修羅場になりそうで可哀想だけど負けないでほしいと思います。