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美しい山のふもと、高原にあるオーベルジュが舞台のお話です。
名前がそれっぽいので実在する山や高原なのだと思いましたが、架空とのこと。
それでも作中に出てくる草花の名前を検索しながら読んでいくと、色とりどりの美しい山の景色を思い描くことができて、爽やかな気持ちになれます。
こんなふうに美しい風景をいくつもの作品に遺してくれた夕映先生には、感謝が尽きることはありません。
今回2回目読了での感想となりますが、初読後から残っていた印象とはだいぶ変わった気がします。
穂高が初めて梓を見かけたとき「山の精」のように見えたとありますが、私もなんとなく梓は物静かで、落ち着いたきれいな人というイメージが強く残っていました。
心臓病を患っていて、幼い頃から常に死を隣に感じながら、自分自身がなにかにとらわれたり、また自分の存在を誰かにとって大きなものにしないように、凪の状態で生きてきたというのは確かだと思います。
だけど、本当に好きになったもの。
山や、穂高のことを好きな気持ち、秘めた情熱は意外とダダ漏れだったり、人前でも爆発させたりしているんですね。
中学生の時の友達との仲違いもそうだし。
穂高が山中で音信不通になって、無事戻ってきたときもそうだし。
梓の気持ちを穂高はもちろん、前々からきっとお母さんも分かっていたと思います。
お付き合いを始めてからは、びっくりするほど積極的になる梓。穂高だって、自分と同じようにいつかは死ぬのだと理解してからは、確かに生まれ変わったのかもしれません。
セックスは禁止ではありませんが、心臓にとっては要注意事項。
梓は最後までしないことで穂高に負担をかけていると思っているけど、穂高は心から梓の身体を心配して、大事にしたいと考えています。
気持ちはどちらの立場も理解できます。
医師と相談のもと、少しずつ深く触れ合っていく場面には、ふたりのドキドキや不安や嬉しさが伝わってくるようでした。
穂高の昇進や転居に感化されたり、これまで行ったことのなかった標高の高い山での催しに参加してみたり、不安に思いつつも手術への決意を固めていく梓は、生きることに懸命になろうとしていて、とても応援したくなりました。
手術が成功して、初めての登山で指輪の誓い(穂高は本当にかっこいい!)
そして初めての最後までのセックス。
静かでゆっくりで、でもこれまで抑えてきたお互いを欲しいという気持ちを存分にぶつけ合っていて、ようやく想いが叶った、幸せのひとときを見ることができました。
梓についてばかり書いていますが、やっぱりこのお話を支えるのは穂高の我慢強さや落ち着きだと思います。
山を登る人って自然と身につきそうだけど、穂高は達観してる域でしょう。
片思い数年、両思いになってからも暴走せず、常に梓ファースト。
どんな梓も、いつでもどんとこい。
そして指輪の誓い、完璧すぎます。
誰にでも限りある人生。
ふたりの素敵な生き方を見せてもらいました。
作者である夕映先生の、山に対する愛がひしひしと伝わってくる、美しい作品。。
読んだらきっと、夏山に上りたくなってしまうと思います。(読んだ時期が絶賛、冬!!で残念…)
以下、ネタバレありのレビューとなります。
梓(受)の手術後の登山と、二人がやっとやっと繋がる描写に、読みながら涙がつつつ…と流れ出て、止まらなくなってしまいました。
年下の山岳写真家 × 心臓病を抱える山のホテルオーナーの恋。
普通の人よりも短いであろう寿命を、細く静かに生きることを受け入れていた梓。
そんな梓が穂高と出会い、「共に生きていきたい」と強く願うようになり、動き出していくー
梓の踏み出す一歩に、まるで彼と一体化したかのようにドキドキ・ワクワクし、手術を乗り越え、穂高と一緒に山頂に辿り着いた場面では胸がいっぱいに。。
文章で綴られているのに、そこに本当に山頂からの景色が見えるような夕映先生の美しい描写にも、圧倒されました。
そしてそこにズドンと刺さる、みずかねりょう先生の挿絵!!!
山頂で穂高が指輪を贈るシーンの挿絵が本当に美しくて、じいっと見入ってしまいました。梓の左手薬指に光る指輪が眩しいよ…
物語に登場する木々の描写や、梓の飼い犬ボルゾイちゃん、二人が愛を交わす描写など全てが美しく、本当に芸術品のような物語でした・:*+.
あとがきによると、先生のデビュー作に登場したカップルが出てきていたとのこと。
順番が逆になってしまいましたが、そちらも読んでみようと思います(๑•̀ㅂ•́)و
ペンネームにも表れているけど、著者は山や大自然が好きな人
自然豊かな場所を背景にした作品 著者の人柄が現れている
タイトル通りの読後感良い内容の小説。
夕映先生のブログが未だ閲覧可能で
関連SSも読める状態だったので、メモ
「Live, Love, Laugh, and be Happy. 」
――『恋してる、生きていく』SS
http://yueinfo.blog.fc2.com/blog-entry-51.html
シルフ視点でみたアズサ
夕映先生の風景描写から山の美しさが伝わる。梓は諦める事に慣れてしまっていて、そんな梓にとって穂高は憧れで希望だった。先を考えて穂高を受け入れないのは解る。身勝手とは思わないけど、後悔ばかり残る気がした。篠原と蟠りが消えたのは良かったけど、穂高は寂しかったと思う。梓の気持ちが変わって良かった。恋人になっても遠慮がちな2人がもどかしい。梓が手術を受けて、穂高が献身的に支える姿は微笑ましい。ここからは感動の嵐。穂高の「この傷は、梓さんの気持ちでしょう」って言葉に感涙。優しく希望に満ちた作品
山岳BL2作目。
しかしながら、収録の「solitude」は元々デビュー作の「天国に手が届く」より前に書かれたそうです。
登山が趣味だという作者様の山への思い入れが充分伺える作品。
レビューも多いので感想だけ。
私は、物語を大きく見せようとするがためのわざとらしい演出などが嫌いです。
大袈裟なドラマの詰め込みが苦手です。
正直、この物語。
私的には苦手な要素が入り込んでいます。が。
いつもならうーんとなるような部分も非常に巧みに美しく物語の中に織り込まれ、ため息が出るような切なさで読ませます。
例えば受けの生まれつきの心臓病。
屈強な攻めでも、山の滑落事故に巻き込まれたら死に直面すること。
これらはいつもの私なら「ドラマチック過剰」とバッサリ斬るところ。
しかし、幼い頃からい色々な事を諦め、目を背け、生に積極性を求めない梓。
静かで美しい森の精のような梓。
一方、素直で優しくて逞しくて、の山男の穂高。
森の精にかしずく従者のように梓への愛を語る穂高。
この2人が紡いでいく愛の形は、崇高に美しい。
それは、人間が存在する前から何万年もそこに在る山たちの神性を映しているかのようで。
一歩間違えたら単に難病ものに転びそうな主題だけど、そこに在ってある季節は雪と氷に閉ざされ、また花が咲き、風が吹き渡る…そんな山々の厳しさと美しさが物語に芯を与えている、と感じました。
また、受けの梓が決して儚げでも聖人でもなく、愛情と肉欲が結びついている。
梓にとってセックスはこれまで手に入らないものだった、でも穂高を愛して生を欲する、そこと結びついているからこの作品におけるセックスは単にエロではない。
そんなところも読みどころのひとつ。
切なくて綺麗。素敵。