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表題作犬も喰わない

奥園修治,56歳,大学教授
空木宏,32歳,探偵事務所の調査員

同時収録作品写真/告白

正毅,小説家
乙彦,日雇い

同時収録作品#002 中年思春期

(仮)椎名茜,高校生,見習いバイト
(仮)中嶋晶,探偵事務所所長

その他の収録作品

  • 骨(描き下ろし)

あらすじ

空木は探偵事務所に勤める調査員。
大学教授・山代から、彼の妻の身辺調査を依頼される。
すると、夫と同じ大学に勤める教授・奥園修治と浮気していることが判明。
しかし、それは今回が初めてではなく、これまでにも二人は、
「山代の愛した女性を奥園が寝取る」ということを何度も繰り返していた──…。
複雑で歪んだ恋愛関係を続ける知的な男たち。
そんな彼らの関係に、自ら身を投じる若い調査員。
彩景でりこが描く、アダルトな三角関係の結末は…!?

作品情報

作品名
犬も喰わない
著者
彩景でりこ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
竹書房
レーベル
バンブーコミックス 麗人セレクション
発売日
ISBN
9784801953819
3.9

(259)

(113)

萌々

(78)

(35)

中立

(15)

趣味じゃない

(18)

レビュー数
34
得点
997
評価数
259
平均
3.9 / 5
神率
43.6%

レビュー投稿数34

ひどく悪趣味…なのに……至極純愛

でりこ先生の作品、読みたいなぁ~っていう周期があります (ღˇ◡ˇ*)♡
今回は久々にこのアクの強い1冊をチョイス‼

構成がちょっと変わっていて決して読み易さがある作品ではないと思うのですが、何度も読めるし、何度も読みたくなる
そして読み返す度に面白さを感じるポイントも変わっていく、アクもクセも強い面白さがあります

長年に渡るある2人の悪趣味で、同時に苦しく切ない恋愛模様を切り取ります
そしてこの2人に巻き込まれる人達とのお話しにゾクッとさせられながら、この歪で、でも唯一無二の関係性に惹き付けられてしまうしかないのです
”追われる男 追う男 追う男を追う男”………犬も喰わない…本当にソレ。。。

作中に溢れる素敵で残酷な言葉が光ります
「でも身勝手で赦されるのが恋だと思います」
「僕もね ずっと恋をしているんだ ずっと汚れて歪んでしまった恋だよ」
「だから僕は あれから逃げ続けなければいけない」
「始まらなければ 終わりもありませんから」
「君が僕の恋そのものだった」←これ、泣く……ほんと…ヤバイ。。。

挙げ出したらキリがない程心が動かされ、そして囚われてしまう言葉の数々
決して感動する、というような言葉ばかりではないのです
狡さも毒もあるのです、、、でも同時に押し寄せる深い情が心を刺激して来て仕方ない 
やっぱりでりこ先生、好き

先生の作品でしか得られない高揚感を「人間を通して」物語として楽しめます
一筋縄ではいかない作品
他では得られぬ作品の個性が際立つBL読書体験をしたい時にはとてもおススメです

複雑な関係ながらちゃんと三者三様、それぞれの起点も視点も分かる秀逸な構成なのも読んで欲しいポイントです

表題作とはカラーの違う合間に挟まれる単話や同時収録作品もまた違ったおもしろさと秀逸な切なさ、そして素敵な言葉が楽しめますので是非…!
「写真」→「骨」の読後の余韻は短編とは思えぬ程琴線に触れます
やるせなさや後悔、人生の悲哀と深い情愛の行方を見守ってください


脇カプの癒しの2人、椎名くん&庄司くんのお話しから好きな言葉(セリフ)を最後に…♡
「……ほんと かわいそうになるぐらいに 変態だな」

ありがとうございます笑

2

罪深いオジサマたち

絵柄が好みだったので特にあらすじを読まずに購入したのですが、えらいものを買ってしまいました。
性癖歪んだ50代のオジサマ達自ら巻き込まれに行った青年のお話です。
寝取り寝取られが大丈夫な方には大変おすすめしたい作品です。
ちなみにこれはハピエンになるのか…なんとも悩ましいです。

0

歪んだ愛情表現が堪らない

彩景先生の三角関係といえば『チョコストロベリーバニラ』が思い浮かんでそちらは未だに分かったような分からないような不思議な余韻に包まれる作品でしたが、こちらはかなり胸にグサグサ刺さりました。

粗野なオヤジは趣味じゃないのですが、本作に出てくるオジサマはインテリで上品っぽくて、しかし歪んだ恋愛感情を内に秘めているところがかなりそそるんです…。
2人の間接的な相思相愛に自ら飛び込んでいく空木も言わば歪んだ執着を持った人物で良かったです。

学生時代の山代と奥園の雰囲気もとても良かったです。
追う者、追われる者。
奪う者、奪わせる者。
始まったら終わりが来るから始まらせはしない…。
この辺りの屈折した愛が堪りませんでした。

間に空木の探偵事務所の可愛らしいオフィスラブ短編が1つと、巻末に3つの短編で構成されたお話が同録されています。
巻末のお話も拗れた長年の三角関係、のような両片思いなのかな…読む人によって印象の変わりそうなお話でした。
死ネタなので、切ないやるせなさが心に残りました。

4

3人それぞれに物語がある

うっかり恋をしてしまうだけでその人の中に壮大な物語が紡ぎ出されるのだと、登場人物3人を見ていて思いました。
皆幸せとも不幸せともとれない表情ばかりしているけど、ようやく過去に区切りを付けられたことが彼らにとっての大きな一歩であり、未来などまだ見られない状態なのだと感じました。

メインの物語の合間に、同じ探偵事務所の別の二人が登場する『中年思春期』が入っていましたが、二人がメインの話をスピンオフとして出したいのかな…?という唐突さだったので、二人の行く末も見届けさせてほしいです。

(2017年1月1日読了)

1

萌え少なめだけど複雑な心理がおもしろい

おじさん二人と若者の変な三角関係。
山代を好きな奥園が、山代の物や恋人や妻を奪っていく。
直接アプローチしない奥園…大概やんと思ったら、実は奥園の気持ちに気付き最初からそう仕向けていた山代も大概でw
奥園に片思いしていた空木は、奥園と山代の関係性を知り、山代と関係を持とうとする。
奥園の気を引くために。
空木よ君もかw

ラストはそんな不毛な?関係に終止符を打ちタイトル回収めでたしめでたし。

もう一編もおじさんの複雑な三角関係話。

チョコストロベリー〜と言いすごい発想だなぁと感心するばかり。

でりこ先生にしてはエロすくなめ。
線や絵やコマが作品ごとに洗練されている気がします。

余談だけど、知命、房事という言葉を初めて知った。
勉強になります☺️

1

混乱の同時収録

登場人物の顔と名前をこんなに何度も確認したのは、初めてです。

「犬も喰わない」
好きな相手に想いが届かないから、その相手が持っているものなら人でも物でも奪い取る。という設定の作品は何度か読んだことがありますが、こんなに長い間、40年近くにわたって続けるのは愛なのか、それとも執着なのか。
回りくどい捻くれた初老の2人の歪んだ関係に自ら身を投じる探偵の存在意義は…、うーむ。
高校時代から追い続け、最初は鉛筆、次はノートや消しゴム、そして彼女に彼氏。1学年上の山代を好きで、彼が触ったものを手に入れ続ける奥園。その奥園と10年前に知り合い、失恋した空木。
3人の関係は歪で、感情の矢印が整理されることはないまま、ぐるぐる回り続けるのでしょうか。しあわせとは?と考えてしまいました。
あと探偵事務所の変態高校生は必要だったのか疑問です。こっちも話を広げる予定だったのかな?

「写真/告白/骨」
友人3人。
妹と結婚する大吾を好きだった乙彦と、乙彦を抱く正毅。
数十年の月日が経って、乙彦が孤独死をしたとの知らせが入って…。
回想シーンで名前と顔がなかなか一致しません。なので、どれが大吾でどれが乙彦?と、何回かページを戻って確認しました。冒頭の年老いた2人がどっちかも最初は分からず、そこも戻ったり進んだり。
確認作業に忙しくて、物語に入っていくことができませんでした。
結局、乙彦は最初は大吾が好きだったけど、正毅に気持ちが移っていたのでしょうか?正毅はずっと乙彦が好きだった?
不思議な余韻があるものの、読むのがすごく困難でした。

4

壮年思春期。男って、いつまでも子供のままだから。だからこその純愛。

このソファの色味が好きって事もあるけど、細くて長い脚。本越しにキス。
ため息が出るほど美しい表紙。タイトルもとってもニクい。
そして、男ってしょーもない、と思えばこそ。それでこそ純愛と言えるのではないかと思う。
もしくは、どこかにそうであって欲しいという夢。いつまでも醒めやらぬ、それは夢の様な。

「追いかける方が好き、追いかけられると途端に冷めてしまう。」などと言う女は多い。
割とよく聞く話だ。私は『しょーもない』と、心で思いながら、共感する様なしない様な態度でそれを聞く。本作は、良い歳をした壮年期の男どもが臆面も無くそれを実施している。
地位も名誉もあるであろう 奥園教授は、決して手に入らない山代教授の代わりに大切な何かを奪う。
山代教授もそんな奥園を愛おしいとすら思い、その執着から逃げ続ける。手に入れば自分は冷淡に捨てられるだろうと、怖れてすらいる。付き合った男も女も、妻でさえ。奥園は寝取り奪い取り、手離す。
追われる男と追う男。追う男を追う男。
若い空木が2人の間に割り込んで行くことで、この不毛に見える鬼ごっこはまた違う側面を見せていく。
少しだけミステリーの様で。2人と1人はどんな決着を迎えるのか、ハラハラしてしまう。
全く関係の無い、同時収録の「写真/告白/骨」と続く物語が彼等の終着点を見ているようで、やるせないのだ。人はいつか死ぬ。死して尚、遺された人たちはそれを愛し続ける事は出来るかもしれないけれど。追う、追われる関係では無くて、向き合う明日を迎えて欲しいとも願ってしまうのだ。
本編の中でも体調を崩して入院する山代を見舞う奥園は、何を思うのか。
山代を誘惑する事で、奥園の気持ちをこちらに向かせたと思っている空木はいつまで自分の恋と純情をこの男たちに捧げるのか。
「もういいよ、君。」と、山代が言いさえすれば終わるのか。それはどちらかの命が終わるまで続くのか。
「追いかける方が好き」などと言う女たちに、ここまでやってみろ、と言いたくもなる様な。
恐ろしいからやめて、と言いたくなる様な。いつまでも思春期拗らせている全ての大人たちが、こんな風であって欲しいと願ってしまう様な。
いつ読んでも、何度読んでも。やるせない気持ちになる物語。

急に挿入される「中年思春期」がホッとさせてくれます。決して続きが無いのもニクい。
空木が勤める探偵事務所に押し掛けアルバイトに来ている可愛過ぎる椎名くんは、所長の中嶋さんが好き。好きなことを隠しもしない。若さで押しまくり、勝手にクライマックス。
中嶋さんは、椎名くんに押されているうちに失恋がどうでもよくなっていく。
受けた痛みはいつか無くなっている。そう、人は現金なもの。別の恋に癒されてしまう。
このカップルは以降出てこないけれど、このエピソードはじわじわと表題作の3人の物語にも何だか効いている様な気がしてしまう。忘れられた恋人は不幸じゃ無いかもしれなくて。
何があっても人は皆んな。また誰かを愛さずには生きられないのだと。

0

三角関係は疲れるけど…面白い

彩景でりこ先生の作品は、すごく気になるんですが…読むのに体力がいるというか、何も考えずにぼやーっとは読めないです。この作品は、まず表紙がとても美しい。そして空木くんが私の好みどストライクでした。恋心というものが、素直に綺麗な形だけではなく、歪んだ形をとることもあるんですね。長い年月を、はた目には不思議で嫌悪感すら感じるような関係で過ごしている二人の大学教授の間に、空木くんがぬるりと入り込むストーリーは、とても興味深く一回読んだだけでは足りないです。
後半の三角関係のお話は、私はそんなにそそられなかったので、全体で萌2にします。

0

お話の巧みさ

表紙が素敵ですね。長らく積んでましたがようやく読みました。自分史上最年長攻めです。

表題作は歪な関係をお互い承知で何十年も続けて。寝取られる方もまんざらでもないようで。
不思議ですね。山代が抱いた抱かれた相手を手に入れて自分も関係を持って山代を感じてるんでしょうか。寝取った相手の仲人的なことまでしてるみたいだし。

そんな二人に調査員の空木が加わります。山代の恋人役として奥園に寝取られるつもりだったようですが、実は10年前に奥園に告白をしていた。

だけど空木はどこまで本気なのか。
山代と奥園がとうとう対面、空木のお膳立てですね。山代が奥園に終わりにしようって。

二人の間で決着がついて奥園は空木を愛そうとするのですが空木は今度は山代に話を持ちかけて。

難しいお話ですね。3人とも執着さんです。

後半の短編に表題作の余韻が吹き飛びました。
ええー!こちらも三角関係ですが、乙彦と大悟は両思いだったのでは?なのに乙彦は大悟と義理の家族の絆が欲しくて妹と結婚。妹に乙彦を取られて酔いつぶれる大悟。その気持ちを見抜かれ正毅と関係を持つ乙彦と大悟。
何やってるの!!乙彦を想い続けることを大悟に求める正毅。こちらのお話も寝取りたいの?

最後の骨の話で正毅の想いが明らかに?

いやあこっちの短編もとても印象的でした。
両方とも萌えとは違いますが話の巧みさに萌×2で!

2

考え抜かれた三角関係

 でりこ先生は魅せる三角関係を描くのが本当に上手いなぁと思いました。特にこの作品では3Pをするとかではなくて、あくまで体の関係は2人の間でしか行われない「三角関係」に徹して描かれており、単純な3Pではないからこそのやりきれなさだったり悶々としてしまう感情だったりを読者に与えている気がしました。

 表題作のキャラ設定はかなり独特です。学生時代に惚れた山代の経歴を追い続け、彼と触れ合った恋人を寝取ることに喜びを感じる奥園と、そんな奥園に恋をしてしまった空木。つまり、空木→奥園→(←)山代という三角関係です。空木はその奥園の気質を利用し山代と体の関係を持つことで、奥園に抱いてもらおうとします。この作品の面白いなぁと思ったところは、空木が自分の思い付いた策を、山代にも奥園にもオープンにするところです。山代は奥園にずっと想われていることを知っているし、空木が自分を利用していることも納得している。奥園は山代が自分の想いに気付いていることを知っているし、空木が山代を使って自分に近づきたいのも分かっている。3人がそれぞれの思惑をすべて理解した上で一時的に成り立つ三角関係が、ドライで大人びているようにも感じるし、馬鹿げているようにも感じるんです。と同時に、いい大人がこんなしょうもない三角関係を繰り広げているのが面白い。最終的に奥園は山代と互いに愛があるのは認めた上で追いかけっこをやめ空木と恋人になりますが、空木が今まで寝取られてきた仕返しとして山代に自分を抱いてみないかと言ったシーンを読んで、この不毛な三角関係をずるずる続けて欲しいなぁなんて思いました。

 同時収録作は3人のうち1人が亡くなってしまうので、表題作よりも切なめです。正毅→乙彦(故人)→大悟という三角関係があり、物語は乙彦の部屋で正毅と大悟が話すところから始まります。自分の妹と結婚してしまったため義弟となった大悟に想いを伝えられない乙彦は、実はずっと正毅に慰めてもらっていました。その過程で、時を経るごとに乙彦は自分を抱いてくれる正毅に情が移ります。しかし、慰めるために始まった関係上自分はずっと大悟のことを好きでいなければならないと、乙彦は正毅に何も言わず亡くなってしまうんです。最後、乙彦の遺骨を受け取った正毅に少しでも救われた気分になりました。

1

執着という歪んだ愛情

男同士の歪んだ執着愛、、、

これが男女の恋愛だったらここまで歪まずにすんだのではないでしょうか。

まさになんでも食べる犬ですらも喰わない、とりあわない関係。

彩景でりこ先生のエロ描写は秀逸です。
チョコストロベリーバニラはエロが凄かったですが、こちらは主要人物が知命を過ぎてるお年の為少なめです。
ですがやはり受け30代の表情とかがいいです。
歪んだ愛情のお話しがメインのエロ少なめですが、秀逸なエロ描写が良いスパイスになってます。

しかし数十年は長いなぁ。

同時収録作品の写真/告白は、犬も喰わないとは違うお話しですが、こちらも知命を過ぎた男達の切ないお話しです。

3

面白い

流石でりこサン!というべきか。
決してハッピーエンドなお話しではないのですが
見せ方がうまいというか、展開のもたせかたがうまいというか。
思わずゾワっとする展開でしたね(´・ω・`)。
なぜこうもうまくかみ合わないのか。

好きな人がいる。
でもその好きな人には別に好きな人がいる。
けれど、好きな人は好きな人に直接触れることはない。
必ず、その好きな人他人を介して好きな人にふれるのだ。
ちゃんと辿ってみれば、両想いのはずなのに
必ず間に他人を介すからうまく噛みあわない。

そうだ!好きな人に触れられるのならその間の人間に自分がなればいい!

どんな発想よww
思わず笑ってしまう展開なのですが
よのなかそんな素直な人間ばかりじゃないよね。と
思わず唸る作品でした。
いいよいいよ。三人で仲良くしてくれよww
ある意味ハッピーエンドなのかもしれませんな。

3

話の展開がおもしろかったです。

『チョコストロベリーバニラ』に衝撃を受け、同じ作家さんの作品なので読んでみました。『犬も喰わない』ですが、歪んだ三角関係とは言っても、ドロドロした感じはなく推理小説を読んでいるような感じだったので、ストーリー重視な人に是非読んでみてもらいたい作品でした。

登場人物がおじさん含むなので読み手を選ぶとは思うし、本来おじさんものには興味がない私なのですが、それ以上に話の展開に引き込まれてしまい結論的にはすごく良かったです(高校生自体のおじさんたちの話も入っていて、こちら特に良かったです! もっと読みたい! )。

最後、空木が山代を誘った理由がすごく知りたいです。本気なのか冗談なのか…?

6

共犯者が繋ぐ歪んだ愛

作者さんの『チョコストロベリーバニラ』は既読ですが、あまり私には響かず。彩景さんのお話は私の好みとは少し外れているのかな~と思っていたので敬遠気味でしたが、オシャレなカバーに吸い寄せられてしまいました・・・。
結論から言うと、予想外に良かったです。
今回このレビューをネタバレなしに書く自信がなく。(少し話の内容が読めてしまうのでお嫌な方はとばしていただきたいのですが・・・・)空木くんの勘の良さとか、偶然とか三者三様の激しく歪んだ愛だとか、難解な昼ドラのような展開で、それでいてどれも考えようによっては正当な理由があるようにも思えて。
山代さんは奥園さんが『自分の物だと確信した途端興味が失せる』ことを知っていたから『自分への執着を失いたくない』ためにずっと逃げ続けた。
与えてはやらないが、自分を求める男が可愛くてしょうがない。それを求めて追い続ける男を更に追う男が共犯者になって、愛し合っているはずなのにつながらない線をつないでいる。他人の身体越しにキスをするような複雑な愛。難しいけど面白い。
大人のふたりは両想いになったかと思いきや、きっと最後のキスだったのかな~とか、この二人の間には割って入れないと諦めたはずの若者は、予想外に求められてこちらが両想いになったのか?とか。結論もハッキリは出せずですが、このお話にはこのモヤモヤした終わりが良く似合っていたと思う。

間に庄司くんと椎名くんのお話が箸休め的に入っていて、癒され。
終わりの3つは昭和の男たちの話。漫画なのだけど、文学作品を読み終えた時のような玉虫色の塊が心に巣食ったような気がしました。
全体的に『萌え』とか『キュン』は無いに等しいし、特に乙女達には少し苦くて、じっくりと良さを感じるのは難しいかも知れません。
でもこれがいいな~と思えたら大人の階段上ってると思う!(^^)v
孤独な夜のお供にいいんじゃないでしょうか。おススメします。

4

歪んだ愛の形

私には難しかったです。

『愛』は人それぞれで、付き合うことが『愛』じゃない。
そんなことを思わせてくれます。

でも、難しいですね!!
突然、違う人の話に入ってしまい(2話目)、「え、どうなったの?えっ?」って感じになりました。

歪んだ愛。
ヤンデレとはまた違う愛ですね。

謎めいた三角関係。
会話も謎めいています。

いつもとは違うテイスティングを楽しみたいという方は読んでみてもいいと思います。

ただ、私にはちょっと早すぎたみたいです。

4

内容より登場人物の年齢が人を選ぶのでは

内容はNTRの三角関係ですが、それより年齢が…
おじさんというより初老?
枯れ専ではないので、見たくないが…
と心配していたらその二人の絡みはなかったですね。よかった。
知命を過ぎているとのことなので50代同士の絡み…。
あの絵、あの空気感なら或いは…。

その50代二人は大学教授、知的で程好く下品で、とても良い枯れ具合でしたね。
すっきりした画面で淡々と進む話。
積極的に介入する若い彼も含めて、みんなが楽しんでいるハッピーNTR三角関係❤

もう一編も古い友人内で起き(てい)た中年の三角関係。
昭和感と哀しさがマッチしていた。

最後は「骨」だもの。「Remains of loved ones.」ですよ。
骨壺を抱き締めて名前を呼ぶラストは良くオチた。

前半の話にスパイス的に出てくるDKの「おっぱい見ながらオナニーさせてください!!!10秒でいいからぁっ!」は笑った。
控えめなのか何なのかわからない要求だなw

5

歪んでいて真っ直ぐな純愛

ひたすらに萌え萌えってわけでは決してない、読後深く息を吐き出したくなるような本。
彩景でりこさんの作品を読むのは初めてで、完全に表紙とオジサマに惹かれて購入。個人的には物凄いアタリ。オジサンもいいとこの二人が高校の頃からずっとこんな歪んだ純愛を繰り広げられていたと思うと胸熱。奥園が好きなのに、好きだからこそ山代との関係を築き、奥園が必死で山代のモノとなった空木を奪おうとするのを楽しそうに眺める山代が本当に歪んでる。
でも何となく最後はいい感じの関係に戻れて良かった。是非山代も必死出して奥園から奪って欲しい。

個人的には写真/告白の方が好きかもしれない。
両想いなのにそれを伝えられないでいる二人。正毅にとっては乙彦は大悟を好きでなければならないから、遠回しにしか誘えない。
金がないから泣きついた相手が何だかんだで義弟の大悟じゃなく正毅って所に要らぬ妄想が入る。例え千円でもいいから正毅に抱いてもらいたかったんだと思うと、遺骨は正毅に持っていてもらえて本望なんだろうなと。

それと結局最大の萌えは喋り方。
別に特別何か方言が入っているわけではないんだけど、登場人物かなりの年だから回想シーンの若き日の喋り方が少し堅いんだけど、綺麗な顔と古い喋り方に一番萌えた(笑)
やっぱりオジサン達の不器用な恋は物凄い萌える。若かりし頃に思いを馳せるのも楽しいし、今の落ち着いた二人もいい。正毅と乙彦はこれからなんの理由も大義名分もなく一緒にいられるのか、良かった。

8

これも恋の姿。

萌える萌えない以前の問題で、作家さまの感性と自分のそれとは相容れないだけなのかもと思いました。単なる相性の問題です。『チョコストロベリーバニラ』では好きな人を半分こして味わうという3P発想が軸でしたが、今作は女性を間に挟んで間接的に好きな人とセックスするという設定が萌えポイントなのでしょうか。一読した時、自分がBL漫画を読む時に無意識に設けている基準に、フィクションであっても受け付けない何かを感じてしまった…。表題作も同時収録作品も最後まで読むのが苦痛でした。

BL作品ですからゲイが登場するのは当たり前なのですが、登場のさせ方や関係性の表現にはもっと精緻な配慮が見え隠れしていて欲しいなぁと。山代と奥園の関係に気付いた空木が実は奥園のことを知っていたというのもストーリー展開のために出来過ぎた単純さですし、#002での椎名と庄司の関係にも安直さを感じて不自然に思えてしまいました。そこらへんが気にならないようにもうちょっとゴニョゴニョして欲しかったです。この二人が登場する必然性がよく見えませんでした。お話のトーンがあまりに暗かったから彩りを添えたかったのでしょうか。

#003。山代と奥園の高校時代。かつての美少年漫画を彷彿とさせる、若い二人の麗しい制服姿やセリフ回し。山代が思われていたはずの他校の女子生徒から「身勝手で赦されるのが恋だと思います」と言われフラれるんですけど、このシーンはなぜ描かれたのだろう。山代&奥園の男同士の関係性を補強して、美しく仕立てるためでしょうか。といいつつ、このセリフに作品のテーマが集約されているように感じました。BLに女子はいらない派ではないけれど、作家さまはこういうふうに女子を描くんだなぁと。こんなセリフを言う女の人にわたしは全く共感できないので、多分作家さまの女性観と相容れないものがあるのかも。

なんていうか…、色々と古典的な常套手段を持ち出してきて新解釈を試みているように思われるのですが、演出だけで新鮮な切り口は感じられませんでした。悉くわたしの萌えツボとは真逆に振れるばかりで読んでいて眉間にシワが。自分がBLを読む時、無意識に己の女性性と向き合ってるような気がしているのですが、表題作は徹底的に女性(性)を排除する方向に傾いているようで、なんだか女であることが悲しい気分になっちゃって、作品世界に入りこめなかった。前作でも同じ思いを味わったような…。男同士のやるせない関係性を美しく切なく描くという意味では成功しているのかもしれませんね。

同時収録作品も中高年の三角関係を超短編形式で三回に渡って描かれたもの。故人のじめっと燻り続けていた思いが炙り出されていく、短いながらも濃い味わいのストーリー。三角関係が続いたのと、表題作とテーマが似ていて少し食傷気味で読了。特に表題作はBLの奥深さを思わずにはいられない作品でした。こういった作品がBLの代表格なのだとしたら、もしかしたらわたしは真性のBL好きではないのかもしれないなぁ。

『チョコストロベリーバニラ』同様、カバーデザインはとってもステキでした。

追記: 高校時代の山代がフラれるシーンについて。山代とお付き合いしていた女子校生の志村が、山代が別の人(奥園)に気持がとらわれていることに気付くシーンが描かれていますね。彼女が進んで別れを選ぶことで、志村視点に立って読者は山代と奥園の秘められた特別な関係を察知することができる、そのために描かれたものなんだと後になって気付きました。彼女が複雑な思いから身を引いたのなら、あのセリフはなんともいじらしい含蓄に富んだものになりますね。うーん、読み込むのムズカシイ!まだまだ読みが甘いのかも。

2

粉雪

bonnyさま♡

初めまして、こんばんは!
コメントありがとうございます!!めちゃくちゃ嬉しかったです☆
しかもものすごく嬉しい言葉の数々、むしろ恐縮しちゃいます。

レビューでも書いていますが、この作品に関しては、登場人物に全く共感できなかったのに読後感が悪くないのは何故?というところから追究が始まりました。
普段は作品を分析するようなレビューは滅多に書かないんですけど、この作品は私の変な部分を刺激したみたいです(笑)
何度か読んでるうちに核心に触れるキーワードが見えてきて、それをうまく結びつけることが出来た時、自分の中ですごく納得できる答えが見えたんですよね。
bonnyさんが書かれていたように、女をバカにしたおっさん達だなぁという気持ちは私もありましたが、奪ったり奪われたりしたのが女性である、ということに重きを置かずに読んだことが、逆によかったのかもしれません。
私的には主観的すぎるレビューかも…という不安があったのですが、役ボを押してくださる方がいたり、bonnyさんのように嬉しいコメントをくださる方もいて、書いてよかったと心から思えました。
本当に嬉しいコメントありがとうございました!
私こそ、長々とコメント申し訳ありませんでした。

粉雪

共感はできないけど、理解はできる

逃げる人、追う人、割り込む人。
永遠に続くように思われて、でも確実に終わりの近づいている歪んだ愛。

この本を購入する前から歪んだ愛のお話ということは知っていましたが、まさかここまで歪んでいたとは……という感じです。
元は逃げる人である山代と追う人である奥園二人の歪んだ愛だったのが、割り込む人、空木の登場によって歪みに歪みまくった三角関係になっていきます。

そんな三人の関係は言葉で説明するよりも、表紙を見て感じ取ったほうが早く正確に、そして抽象的かつ具体的にわかると思いました。それぐらいこの表紙がすべてを物語っています。本当にこの表紙はすごい。

俗にいう「萌え」があったかどうかと聞かれると「正直あまり……」というのが素直な感想ですが、買って後悔したなぁと感じることもありませんでした。
たまにはこんな歪んだBLも読みたくなるものです笑

7

アダルトって、つまり

ほとんど年寄りの話なんだけど、とっても、これ、よかった。
良かったっていうか、ぐっと来た。
それも、これも、自分自身にひきよせて、死が身近なお年頃だからかな。
若さに任せてまっしぐら!みたいな水気たっぷりのエロより、この薄暗さ、後ろ暗さにぞくぞくする。

ひねくれた相愛関係に何人もの女性を巻き込み、成人病で死にかけたり、
三角関係をこじらせて初老に至り、連絡たったまま孤独死した男の骨壺を取りあう。
どうしても番にはなれないままの終末。
この萎びた味わいがたまんない。

水分たっぷりな若さは、間に箸休め的に入っている「中年思春期」の変態茜くんが一人で担当。
茜くん、がんばれ!
庄司くんをガン掘れる日は遠くないぞ。



5

身勝手な呪い…それが恋

老いても追いつ追われつ終われぬ恋。

雑誌で最終回を読んでしまい着地までの経過を辿る読み方になってしまったのですが結末を知っていてなお、先を急ぐ読み方の自分の焦りに苦笑。

探偵事務所の調査員:空木は大学教授:山代から彼の妻の浮気調査を依頼されます。
調査の結果、浮気相手は同じ大学に勤める教授:奥園。

学生時代、奥園は憧れの先輩だった山代の持ち物を盗み、相手を寝とることで山代の傍らに居続けていた。
山代もまた自分に執着する奥園を見ることに喜びを見いだします。

両想いであるにもかかわらず奥園に寝取らせるためだけに人とつきあう山代…緩衝材を間に触れあう、はた迷惑なオッサンふたり。

去られたくないから始めない、終わりに向かうから始めたくない、という容易に拭いきれない確執は過去、奥園に失恋した空木が絡むことによって化学反応を起こします。

彼らの間に交わされる会話はとろけるように甘いものはなく言葉自体は湿度のない乾いたものなのに台詞まわしが思わせ振りでいて、そそられます。

山代が倒れて入院したことをキッカケに山代と奥園がこれまで続けてきた間接的な関係はひとまず終わります。
山代にフラれた奥園は山代への想いは尽きないけれど愛せる、と空木を口説きます。
この台詞、めっちゃ不誠実なのにズバリ真実をついていて、すごく納得させられます。

眉のひそめ方や探るような目線のバリエーションが多くてあからさまでない喜怒哀楽が表現されていて三人三様の個性が生き生きしていました。

普通のハッピーエンドではないかもしれないけれど、あの折り合いのつけ方に現実味が残ってすごく良かった。
若いとあやふやにするくらいなら振ってくれ!!っていうドギツイ強さが潔さに繋がるけどオッサンはあのくらいモヤッッとしている方が人生の年輪を感じる(笑)

奥園が見るであろう空木の体に山代がたくさんの情事のあとを残す執着のうねりにクラクラしました。
それでも山代は空木と最後までしていないといいな~と思ったりもします。

カバーを広げて1枚絵にすると絶妙な位置に奥園がいます。
抑えた色調の中で帯の煽り文句がビビッドなカラーで縦書き、さらに口許を隠す本のカラーと一致してるのがまた好みでした!!

2話めに入った空木の勤務先の先輩:庄司とバイト高校生:椎名くんの話がすんごい可愛くて笑えました!
おっぱい見ながらオナニーできるんだ…高校生偉大だ!

写真】【告白】【骨】
昔馴染みの大悟、乙彦、正毅。
想いを寄せている大悟が妹と結婚することになった乙彦。
いかにも繊細そうな乙彦の想いを知っていながら体を繋ぐ正毅。
骨になってやっと素直に口にできる想い…堂々と抱きしめられる…愛してる、より「お前にはやらん」の一言が染みます。


14

萌えでもなく…共感でもなく…でもなんか好き。

彩景でりこさんの作品を読むのは『チョコストロベリーバニラ』に続いて2作目です。
『チョコ~』の三角関係についても、余りにも絶妙なバランスの上に成り立つ3人の関係にゾクゾクさせられたのですが、私はこのお話の方が好きかもしれない。
こんな関係、私には絶対理解できないわって思いながら読んでましたけど、何故か読後感は悪くないんですよね。
ゴリゴリハッピーエンドが大好きなはずなのに、この歪んで倒錯した恋愛関係に何故魅かれるのか、逆に分析したくなってしまいました(笑)

「本当に欲しいものほど手にはいらなければいい。始まらなければ終わりもない」
これが山代と奥園の歪んだ関係の根底にあるものだと思うのですが、こんな共感し難い歪な恋愛関係を2人が何故続けるに至ったのか…
それは奥園が、山代のものを奪うことを
「許されたと思った」
からなのだと思います。

学生時代、山代が奥園のバックから自分の上履きを見つけた時、もし山代が怒り奥園を拒否するようなことがあったら、この関係は成り立っていなかったような気がします。
「許されたと思った」から、奥園は山代のものを奪い続け、山代は自分の歪んだ感情に気付いたのではないでしょうか。
あくまでも私の憶測なんですが、こんなにも長く歪んだ関係が続いてしまったのは、手に入れずに愛し続ける方法を見つけてしまったからなのだと思いました。

空木が途中から絡んできたことで、2人の関係の微妙なバランスが崩れてしまったのは確かだと思います。
でも終わりを決心させたのは空木の存在ではないように思います。
奥園への空木の一途な想いはきっかけの一つで、直接の原因は「人生なんてそれほど長いもんじゃない」ということにお互い気づいたからなのかもしれません。
永遠に続くものと思われていた関係、でも山代が狭心症で倒れたことによって、急に現実が突き付けられてしまった。
目が覚めたと言ってしまうと簡単過ぎるかもしれませんが、現実が見えてしまったから終わりを決意したのだと思います。

でも、初めて直接想いを告げ、キスをしたのが終わりを決意した後だという現実は切なく悲しいものですね。
幸せなのかと言われたらそうではないけど、誰もが不幸にもなっていない。
納得した終わりであり、達観した山代の表情を見てしまうと心地よいラストのように思ってしまいました。
また何か始まりを思わせる終わり方も上手いなぁと思いましたしね。

スタンダードなハッピーエンドが好きな私としては神評価にはなりませんが、十分読みごたえがあり満足できました。
なんだか分析ばっかりの主観的過ぎるレビューになってしまってすいません。
でも私、こんなに一つの作品を分析したくなったのは初めてかもしれません。
勢いと直感が通常営業なので(笑)

同時収録のお話は、最後の1ページを見る度に涙腺が緩みます。
こちらのお話も結構好きです。

読み終わって改めてカバーを見ると、3人の距離感が絶妙ですね。
見事な構図だと思います。

10

歪んだ愛

歪んだ三角関係をずっと行ってきた二人に、歪みつつ三人で愛しあえそうな気配を残しての終わり。
真っ向恋愛のできない二人を繋いで幸せのカタチを作っていけるんじゃないかなぁ。
チョベリバの半分こして三人で共有、とは共有の仕方が違うけど、一方通行に依存の仕方が違ってまたいいですね。
オヤジ二人に若い子ってのもいいもんですなぁ。
結局くっつこうとしない攻め×攻めに受け子が間に入って歪んでくっついたって感じでしょうかね。
チョベリバとは違った三人愛で面白かったです。
オヤジも好きー!

4

天使不在

黒い。みんな黒いです。方や好きな男のものを次々と奪って間接的に相手を貪ってハァハァできる男、方や奪われたことを確認してほくそ笑む男ですよ。しかもそこに割って入る若い空木君も、やはり屈折しているという。屈折率高すぎですよ!(褒めています)

山代が一度奥園に自分を与えてみればよかったのにな、と言っても仕方ないことを言ってみます。自分の嫁をとられて、相手の自分への執着心を確かめて喜ぶなんて、ほんとどうやったらそんなにねじ曲がっちゃうのかと。奥園は山代のことだけを愛してるから、山代のお手つきが手に入ったら興味を失うだけで、山代が身投げしてきたらそれはそれは大事にしたんじゃないかなあ。まあその辺は彼らにしかわからないことなんだろうけども。

私の萌え属性は、どっちかが天使 or どこか可愛い性格、というわかりやすいものなので、この作品に萌えはそれほど感じませんでした。他のレビュアーさんが熟成させた想いに萌えるというようなことを書かれていて、なるほどと思った次第です。でも、自分の中の萌えが発動されなくても三人の心が交錯する様に面白さを感じました。

ただ、この世界にハマれるかは人によると思われます。チョコストロベリーバニラは神だと思う私ですが、この作品に関しては中立とさせて頂きます。
最後に、この歪んだ教授たちはこの年になるまで何やってんだか、と呆れつつ、だから「犬も喰わない」なのかとタイトルの妙に平伏させられてしまいました。

7

NTRトライアングル

表題作は大学教授ふたりと若者の三角関係。
スピンオフや過去話が入り混じっているので、まとめて時系列順に。

大学教授ふたりが同じ高校の学生だった頃、奥園は決して告白はしないけれど、山代の持ち物を盗んだり、関係を持った相手を寝取ることで間接的な関係を保つ、歪んだ愛情を抱いていた。山代は、奥園の気持ちややっていることに気づいているが、それには触れず、表面上の友人付き合いを続けていた。
奥園は山代に対する執着を持ち続け、同じ大学に職を持ち、結婚した山代の妻も寝取る。
カフェの店員だった空木は、時々話をする店の常連客・奥園に想いを寄せていた。告白するも振られるが、10年後探偵になった空木は、山代の依頼で妻と奥園の不倫関係を調査することになる。
探偵になった空木は変わらず奥園が好きで、寝取り癖のある奥園に自分への興味を持たせるため、山代と共謀して肉体関係を持つ。案の定、山代と関係を持った空木に奥園はコンタクトを取ってくる。

一見、寝盗り癖のある奥園がいちばん病んでいるように見えるのですが、実際にいちばん病んでいるのは山代で、次点が空木なんだと思います。
病んだ三角関係の結末は?

他に収録されていたのは、空木と同じ探偵事務所に勤める同僚と、可愛いのに変態なバイトくんの話。表題作が病んでるので、明るいなーと思いました。
あとはまったく別の話で、幼なじみのオッサン3人の、これも入り組んだ三角関係(四角?)の話が入っていました。
なんていうか、このマンガ1冊読むと、普通のBLマンガ10冊読んだくらいの充実感があります。綿密に計算された三角関係はすごいなぁ。『チョコストロベリーバニラ』とはまた違うかんじの、アダルティな三角関係でした。

8

涙も出ない哀しい三角関係

2編の話が1冊に収められていました。
どちらの話も「三角関係」。
どちらも、何年も何十年も歪んでこじれて、どうしようもなく、
もう手を引くことさえできなくなった哀しい大人の三角関係でした。

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

三角関係は探偵事務所に務める空木を主人公に展開します。
空木は仕事の関係から、偶然にも大学教授・奥園と、
同じく大学教授・山代という二人の男の奇妙な関係を知ります。
年の頃は、ふたりとも50代~60代。
ふたりは10代の頃から同じ学校の級友でした。

山代がある女と付き合えば、奥園がその女を奪う。男についても同様。
歪んだ関係の知的な男たち……。

空木は10年前に奥園に片想いをしていたことから、
自らその男たちの間に身を投じ、三角関係を作ってしまいます。

ああ、なんてことをするんだよ、空木…!!
そこは底なし沼だぞ。
しかもドロドロで抜け出せない底なし沼。
そんなところに自ら入るなんて……!!
正気の沙汰じゃないぞ…この馬鹿野郎…!

きっとこの物語の最後には、幸せな結末なんて待ってないと
思ってました。
空木にしても然り。
きっと幸せになれない……。
空木を思うと、悲しかったです。

「犬も喰わない関係」。
空木は2人の関係をそう表現します。
2人の間で何十年も続けられてきた営み。

空木が2人の間に入ったことから、何十年も続いた山代と奥園の関係に
変化が生じます。

「追われる男」
「追う男」
「追う男を追う男」

空木はそれから、山代とも、奥園とも、体の関係を持ちます。
しかし、山代が狭心症で倒れたことをきっかけに、
関係が破綻へと向かいます。

そしてついにその時は来ます。
奥園は山代に別れを告げられ、振られます。

ええ!?
何で!?
この何十年は一体何だったの!?
だって、歪な関係とはいえ、愛し合っていたわけでしょう!?
だからこそ、このゆがんだ関係が成立していたはず。
なのに、何でー!?
何故じゃああああ!!

しかし、最後は空木も山代も笑顔。
これから3人は一体どうなってしまうの??? と、いうところで
物語は終りを迎えます。
初老の大学教授、病人の大学教授、そして探偵の若者。
本当に「犬も喰わない」関係が再びできあがるんでしょうか。


二番目の話「写真」も先に述べたように三角関係。
昔なじみの腐れ縁の3人。
そして年を取り、1人がさみしく死んだことで
再び3人が集まります(ひとりは既に骨)
哀愁と悲傷の雰囲気が漂う最後でした。

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

ドロドロの三角関係。
ひとりひとりが歪んでいて、
それぞれの関係も歪んでいる。

誰か救われて欲しいと願うのに、誰も救われない。

寂しい人達の群衆だと思いました。

4

ふむふむ・・・

キュンキュン萌える作品が大好きな私ですが、
今回、作家さんが買いしました!

萌えて可愛くてもうたまらない!という感じではありませんでしたが
なにか自分の違う部分の萌えを揺さぶってくれる作品だったと思います

物静かなおじさま好きにはたまらない作品だったように思いますw
おじさま攻めすごいよかったんです!

三角関係とありますが、ドロドロしてるんだか・・・これでいいのか?
と、読んでいるこちら側が考えさせられる作品でした

2

歪でありながら、これぞ純愛といった作品でした

彩景さんの新刊ということで楽しみにしていました。
そして表紙が!何とも素敵です。本でキスシーンを隠している二人に、それをじっと見つめる男。全体的に暗いトーンで、本とソファーの色だけが鮮やかすぎるのもまたこれ意味深でいいよなあ…。さて、内容はすでに書いてくださっているので感想を。

表題作『犬も喰わない』
初めはストーリーがちょっと理解しづらかった。ん?この人とこの人はどういう関係?って思ったりしたのですが、そこを乗り越えるとどっぷりこの本の持つ世界に引き込まれました。
歪んだ形でしか繋がってこれなかった男たちの不器用さが良かった。これだけ長い年月、一人の男を愛し続けるってすごい純愛だなって。そこにもう一人男が加わることでその関係が崩れる。でも、みんなお互いに愛情が溢れているので読んでいて応援したくなる。

『中年思春期』
彼女に振られたオッサンと、その彼に恋する可愛い顔の年下の男の子のお話。でりこ作品の『風俗狂いですが~』を彷彿とさせるお話で、この年下の彼が可愛い。鼻提灯に爆笑してしまった…。

『写真』
これまた歪な恋の話でした。
報われない、二人の男たちのぞれぞれの恋心がすごく良かった。最後の、正毅の行動に泣いた。やっと一緒になれた、素直になれない男たちが救われたと思う。

個人的にオジサン萌えってしないのですが、このオジサンたちは長い年月をかけて拗らせてきた人たちなので、どれだけ相手に執着してるのか、と思うと激しく萌えてしまった。
それと彩景さんてちょっと癖のある絵柄かなと思うのですが、絵柄が綺麗になったなと感じました。出てくる男たちの色気にKOされました。

帯の「歪んだ大人の三角関係」に偽りのない、まさに彩景ワールドといった作品でした。

14

読みごたえある、けど萌えとは違う何か

これはかなり評価の別れる作品なのでは。

短編も含め、年齢層高め。おやじ受け、おやじ攻めが普通にあります。いずれこの良さが分かるようになるときが来るかも、と思いつつ、主人公と同じ探偵事務所内の美少年×30代?が一番ヒットした私はまだまだ未熟者かな(笑)

同作家さんが竹書房で出してた前作、チョコストロベリーバニラの内容はうろ覚えなのですが、あれも歪んだ三角関係の話でした。前作よりは、登場人物の心理が理解できる気がしました。(共感はできないけど)

とにかくラブでもピースでもないので、BL読んで幸せな気分になりたい、ほっこりしたい、タイプの方には向いてないと思います。
ドロドロでも切なくてもやるせなくてもいい!そういうのが好き!という方にはヒットするかもしれないですね。

4

間接的3Pに挑んだ意欲作

「チョコストロベリーバニラ」に続く、でりこさんの竹書房2冊目のコミック。
エロエロだった前作と異なり、こちらは言わば間接的3P?
様々な理由から成就が叶わない恋を、近しい第三者を抱く/抱かれることで間接的に満たす登場人物たち。
そんな代償行動に走る様が複雑に絡み合い、実にエキセントリックな群像ドラマを作り出しています。

表題作は、寝取る・寝取られ関係を通じ愛し合うこじらせ五十路おじさんたちの間に、ある若者(ペーパーによると32歳)が絡んでくる三角関係モノ。
学生時代の先輩後輩で、今も同じ大学で教鞭をとる山代と奥園。
「寝取られる側」の山代も、自身の恋人や妻を通じ奥園と関係することに快感を覚えている点に、彼らの関係の異常性があります。

「本当に欲しいものほど手に入らなければいいのに
始まらなければ終わりもありませんから」
この言葉が二人の関係の全てですが、果たして何が彼らをここまで屈折させたのか。
元々の性癖か、
愛しすぎて失うことを恐れたのか、
何事にも秀でた後輩・奥園に、平凡な学生・山代が引け目を感じていたためか。
多くは語られませんが、様々な理由が積み重なりここまで来た二人の姿にはある種の切なさを感じます。

そんな二人に絡んでくるのが、探偵事務所の調査員・空木。
奥園に片想いする彼は、依頼人である山代に迫り、山代とキスした唇で奥園を誘う。
自ら進んで二人の関係に加担しようとする空木は、奥園同様に代償行動で愛を得ようとする人物です。
奥園がそんな空木に自身を見たのか、真意は分かりませんが、彼の登場により二人はこれまでの関係に一区切りつける。
「君が僕の恋そのものだった」
山代のこれまでの生き方を、そして今後を思うと、この言葉には非常に重みがありました。

まっとうにハッピーエンド、かと思いきや新たなNTR関係が始まる可能性を匂わせて終わる、最後まで人を食ったような空気感がとてもクール。
全体を通して余計な心理描写や解説は省き、読者に想像の余地を残すアプローチが非常に好みでした。

同時収録作の「写真」「告白」「骨(描き下ろし)」は、表題作よりストレートに切ない系の話。
昔馴染みの死をきっかけに暴露される、友人同士の身体関係。
亡くなった方の友人は、元々は主人公に片想いしていたけれど、もう一人の友人に抱かれ続けるうち彼のことを……
不毛な関係を続けながら老いていく、両片想いのすれ違いが何とも言えない哀愁を誘います。

二つの三角関係の物語に、コミカルな読みきり(乳首見ながらのオナニープレイw)が良い箸休めになっており、最初から最後まで楽しめる一冊でした。

18

すごいなーと

全く自分の萌えとは違う次元の話なのですが、こういうお話を読めるってBLっていろいろあるなーとつくづく思いました。

どうもこの作者さんと萌えが重ならないので、今度こそはハマるかもしれないと毎度毎度読むんですが、そうでもなかった。でも、読み応えはあるので損した気分にはなりませんが。

枯れたオッサン好きとしては、いろんなおっさんが見られたのでよかったかな。

そして次も買って、やっぱり合わないなーって思いそうです。読む人を選びそうな作品ですね。

4

変な方に期待しすぎたかな…

前作の「チョコストロベリーバニラ」で3人だからこその絶妙なバランスが存在しうる面白さを知った人間なので、【彩景でりこさん×麗人×三角関係】という掛け合わせの再来にかなり期待が膨らんでおりました。
しかも今度は、中年紳士達のアダルティな色気が今にも紙面から薫り立ってきそうな表紙とあらすじ!

んー、変に斬新な方面を期待しすぎてしまったかもしれません…
濁してもアレなんで率直に書いてしまうと、私がBLで読みたい三角関係ではなかった。
“三角関係”+“アダルト”ということで、あぁなるほどそっちに行くのね…と。
昼ドラ的というか、レディコミ的というか……ドロドロ展開こそないものの、男三人の恋愛にしてはかなりメロドラマ的です。

因みに、表題作の他にもう一作品入っていますが、どちらもアダルトな三角関係です。(3P展開はありません)
乾いたおじさん達が好きな人はぜひ。

『犬も喰わない』(#001、#003~#005)
今回のカバーも3人のうちの残り1人は裏表紙にいるという構図。
この位置関係が作中での3人の関係を物語っており、読み終わったあとに再度カバーを見返すと、目を開けている2人の視線に自ずと目が行きます。
〔空木〕(表紙右)…探偵事務所に勤める調査員。
〔山代〕(表紙左)…空木の勤める探偵事務所に妻の身辺調査を依頼した大学教授。
〔奥園〕(裏表紙)…山代の後輩で、山代の妻の浮気相手。また、空木が10年前に告白して振られた相手でもある。山代と同じ大学の教授。
色々拗らせた中年2人(山代&奥園)が学生の頃から30年以上に渡って続けている犬も喰わないような腐った関係を、浮気調査をきっかけに第三者(空木)に知られることになり、奥園に想いを寄せる空木がこの腐った関係に自ら混ざっていくお話。
無理矢理割って入った空木が、犬も喰わない関係をさらに誰も喰わない方向へと持っていきます。
とにかく3人が3人揃って屈折しています。
でもって3人が3人揃って女性的な計算高さを備えています。
そこがこの三角関係を面白くしている反面、メロドラマ臭を漂わせる要因にもなっていたり。
オチまで含めて、まさに“犬も喰わない”話でした。
キーワードは、NTR。

『犬も喰わない #002 ―中年思春期―』
こちらは表題とは別モノ。
空木の同僚〔庄司〕とバイトで入ってきた高校生〔椎名〕の話です。
“中年思春期”のサブタイトル通り、この一冊の中で唯一瑞々しさがあります。
乾いた砂漠のサボテン的な。
けれど残念ながら、作中での2人の関係は椎名が庄司を見ながらするオナニー止まり。
そこも含めて思春期っぽい。
これどー見ても椎名攻め庄司受けだよな?
変態ワンコ攻めだろ…?
え~見たいんだけど。どんなエッチすんの?(下世話
庄司の毛の生え方が不意打ちすぎました(笑)

『写真』『告白』『骨』
表題作よりひねりの効いたこちらの方が、個人的には圧倒的に好き。
幼馴染みで腐れ縁の3人の関係性がそのうちの1人の死をもって紐解かれるお話。
3話構成ですが、ページボリューム的には表題作の1/5くらいです。
〔大悟〕…乙彦の妹と結婚。
〔乙彦〕…大悟の義兄。アパートで死んでいるのを発見された。
〔正毅〕…乙彦と身体の関係を持っていた。
大悟と正毅が乙彦の遺骨の前で語る思い出話と、死ぬ少し前の乙彦の回顧録で綴られます。
浮かび上がるのは、イビツで、どうしようもなく不毛で、あまりにも切ない三角形。
『骨』の最後の1ページに胸を抉られます…
こちらのキーワードは、呪い。

10

好みすぎてクラクラするのですが!

こ、これは!
「チョコストロベリーバニラ」が本当に駄目だったので買うか悩んでいたのですが、表紙とあらすじで「もしかしたらあたりかも!」と賭けてみました。

もしかしました!!!

好みすぎてクラクラするのですが!
矢張りこれくらい関係性が明確でならば、ただれた関係はばっちこいですわ。
好きすぎて本人には触れず、身の回りのものに手を出していくのはたまらないですね。特に図書館の本を追いかけるのは、かなり使い古されたネタですが大好きです。
今そこそこの年齢のキャラの昔話だっていうのも、いいですよねえ。

でメインの三人、結局誰も幸せになれなかったんですかね。
何が幸せか分からないですが、この先、空木も続くかわからないなあと思ってしまいました。
正しい答えが出ない関係に変わりはないですが、「チョコストロベリーバニラ」の理解できなすぎて受け付けられないものとは違う、胸が苦しくなるような切なさがたまらないです。
いいもの読ませていただきました。

ただ学生時代の二人がリボンタイなのがどうも(笑)もしかして古い演出だったんでしょうか。だとしたら学ランの方が良かったと思います。そこは惜しかったかも。リボンタイ自体は大好きですが、日本男子だと厳しいかなあ。

最後に入っている別の話も、何とも不安定な関係がいいですね。
どうにもなれない腐れ縁っていいなあ。

5

歪んで拗れて、でも純。

彩景でりこさんの作品は、表紙がとても素敵、
中の絵は正直それほどでもないのだが……
今回も、このアンバランスで秘密めいて鮮やかで
そしてスタイリッシュな表紙にノックアウトされた。

中身の方も、頗る好みの作品。
歪んで拗れて……でも驚くほどピュアな恋たち。


表題作は、50を過ぎた大学教授二人と
その妻の浮気調査をしていた興信所の若者(30位?)の三角関係。
それにこの興信所の同僚達の可愛いスピンオフが挟まって
(下スッポンポンで赤くなっている可愛さよ!)
最後は三角関係のようで三角関係じゃない、更に年上の男達の話、
『写真』『告白』『骨』。

50代の教授達の10代の頃の描写は、ちょっと古風すぎるかな?と思うが
それが逆に不思議な雰囲気を醸し出してもいる。
長い長い拗れた恋の行方……
主な3人のキャラクターは魅力的で、よじれているけど分かりやすい。
優しい切なさも、最後のクスッと笑える感じも好きだった。
物語の着地の仕方は、私にとっては清々しいハッピーエンドだったが、
いろいろな感じ方があるかもしれない。

『写真』の一連は、一人の死から始まる話ということもあり
もっとシリアスでな雰囲気。
最後のオチは切なく胸を絞られる。
アニメイトのペーパーは、こちらの話から。

評価は神と萌×2で迷いに迷った。
表題作(スピンオフを含めて)だけならば、迷いなく神。

9

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