• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作黄金のひとふれ

神野長利,千晶のバイト先のオーナー社長
柏山千晶,ダイニングレストランの新入りバイト

その他の収録作品

  • フローレス
  • その日までの
  • あとがき

あらすじ

傷ついた指先を真っ新なハンカチで包んでくれたその人は、呆れるような千晶の言い間違いに怒ったりせず、ただ深く静かな瞳で見つめた―。千晶はある事情から、生きて呼吸をすることすら困難に感じている。バイト先のオーナー・神野からそっと触れてもらった出来事だけ大切にしようと決めるが、そんな千晶に神野は「きみが欲しい」と告げて…?

作品情報

作品名
黄金のひとふれ
著者
中庭みかな 
イラスト
テクノサマタ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344837515
3.4

(31)

(7)

萌々

(9)

(8)

中立

(4)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
9
得点
99
評価数
31
平均
3.4 / 5
神率
22.6%

レビュー投稿数9

不憫受け好きさん向け

不憫受け大好き腐女子です。不憫受け好きには中庭みかな先生作品、刺さりますよね。てことでこの本もとても好みでした。体だけの関係でズルズルと付き合ってた高校の同級生のと生活から攻めが救い出してくれるのですが、それまで恋愛感情を知らなかった受けが人を好きになって日々の生活が彩られていく描写がとても好きでした。
そして攻め様もスパダリのはずなのに千晶へのアプローチの方法を秘書にアドバイス貰うなど、完璧じゃなくて少し隙がある、そんなところに好感が持てました。
受けの境遇は不憫で辛いですが、痛々しい描写は無い(と思っている)ので、読みやすいのでは…と思います。

0

ちょっと違った…泣

※悪口が書きたいわけではなく、入り込めなくて悔しかったので書きます。
評価を下げてしまってごめんなさい。



沈まぬ夜の小舟が大好きなんです。
先生のサイトを追ってSSも大事に大事に読みましたし、電子版も購入しましたし、なんなら、苦手だった(ごめんなさい)テクノ先生のイラストが大好きになるほど(今ではテクノ先生の挿絵小説を片っ端からかき集めて読んでます)沈まぬ夜の小舟が大好きです。

なので、この作品も実際、とてもとても期待してしまっていました。
ある意味、先生が書かれる不憫不幸受けと、包容力の年上攻めのお話なら、こんな感じかな?と妄想しすぎてしまっていたのかもしれません。
実際、不幸の描写というか。世界からはみ出して所在無い空気、というのを綴るのは本当にピカイチだと思います。

けれど、どうしても駄目でした。
多分、受けちゃんに既に春人という逃げ場があったせいかな?
いや、心情は理解できます。
突然降って湧いたような光の存在って怖いですよね。
その光が強ければ強いほど怖い。
だから春人との縁も切れない。
わかります。
わかるんだけどもね。
心情からは、春人には怯えてるわけでもない感じがして、しかもアパートも間借りしているわけで、受けちゃんの方も都合よく甘えてはいるわけですよね。
そして、頑張り屋さんなのも伝わるけど、……不器用なのも伝わるんだけど…!
やっぱり、進学先すぐ辞めてしまってたり、バイトもすぐ辞めようって考えてたり。
そういうなんもかんも中途半端で流されてる、みたいな印象が拭いきれず…泣

また攻め様もとっても素敵で包容力もあって優しいんですが。
そもそも、受けちゃんを好きになった理由がわからないんです…
作中でも、勘?みたいなことを仰っていましたが。
うん…だよね…私にもあんまり伝わってこなかったもん…泣 みたいになってしまって。

どうしても入り込めなかったです。
2人の気持ちが接近するのが急すぎたのかなぁ…
うわ〜〜ん勿体ないことした。というのが本音です。
もう1回読んだらまた違うのかもしれないので、多分もう1回読みます。
そのくらい中庭先生の書くお話は好きなので、諦めきれないまま、けれど心の叫びを伝えたくてレビューしました。

0

ズッシリくる

ハマった人はどれも全部好きになってしまいそうな中庭みかな作品。数作しか拝読していないけれど、一つひとつの作品に築かれる、作者独自のブレない世界観が魅力です。


他人から評価されるのは顔立ちだけで、何をやらせても時間が掛かってしまう不器用な千晶。飲食店の新規バイトでも失敗ばかりで、店長からも仲間からも疎まれていた。ある日、千晶はバイト中に誤って手を怪我してしまう。お店のオーナー・神野が手当てをしてくれたことが嬉しくて、千晶はそれからずっと彼のことが忘れられず…


そんな二人の出会いから始まるお話なのですが、はじめのうち、千晶がなぜこんなにも自己否定ばかりしているのか、どうして心身ともに痛みしかくれない晴人との関係を続けるのか、そして神野が千晶を欲しがる理由とは何か、色々と輪郭がぼんやりとしていて、冷静な目で探るように読んでいたんです。ところが、クライマックスに向けて少しずつエピソードが重なっていき、物語の冒頭で千晶が神野に放ったセリフの意味がきれいに繋がった瞬間、ドバーッと涙が溢れてしまいました。お話の端緒そのものに、作者が伝えたかったメッセージがあらかじめ含まれていたことに気づいて…。

神野は、グループ企業を経営する一族に生まれ育ちました。将来を見越して両親に全てを決められ、自分の意志を抑圧せざるを得なかった彼は、自ら起業して成功を収めます。家族のしがらみから解放されたとはいえ、グループ経営の後継者をめぐって親族間で争いが続く中、大事な人さえも利用しそうになった神野の非情さを気づかせてくれたのが、千晶との出会いでした。千晶の一見とんちんかんな言葉は、彼にとって救いの光だったのです。

他方、専門学校を辞め、高校時代の同級生・晴人のところに間借りしながらバイト生活を送る千晶。彼は子供の頃に罹った病気のために、男性として生きる理由や存在価値すら見失いかけたまま成人しようとしていました。唯一、千晶が望む形で自分を必要としてくれる晴人の存在が生きるよすがでしたが、神野に保護され、愛情を注いでもらうことで少しずつ自分を許し、心も体も大切に扱う意味を理解していきます。

本編後のSS「フローレス」で、千晶がどういう家庭に生まれ育ったのかがわかります。千晶の純真無垢さは天性のもので、まっすぐ健やかに育まれてきた背景には納得できるけれど…それにしても、千晶のピュアネスは危うすぎる。あんまりにも優しくて綺麗なものだから、千晶の目を通して見えている世界に憧れる神野の気持ちがわかるような気がしました。

千晶が神野に抱いたイメージのもとになったアニメーション映画や、神野が千晶のために選んだふわふわのパジャマ、晴人や神野が使うバスグッズの香り、晴人が千晶に用意したクッション、ロバをあしらったロゴ看板のケーキ屋さん…こまごまとした演出のセンスが素敵。しかも逐一おしゃれで、あざとかわいいくらいです笑

お話に出てくる小道具もそうですが、中庭先生の言葉選びや比喩表現には、先生ご自身の美意識からくるこだわりを感じます。もしかしたら、合う合わないの相性が顕著にでてしまうところかもしれませんが、わたしは『ディアレスト』を拝読してから、もの凄く好きになりました。

デビュー作『きみはいつか、ぼくの声をきく』を初めて拝読した時は、お話自体がとてつもなく重く、作者様ご自身とキャラの距離感が近すぎるように見受けられて、苦手な印象を持っていました。今作は最後の最後までお話の世界に没入することができ、二人の心が解けていく様子をしっかりと見届けられてよかった…。心に沁みました。

電子限定のおまけ「可愛いきみ」が映像として目に浮かび、とっても微笑ましくてほっこりしました。そのかわり、テクノサマタ先生のイラストが拝めず、悶々としています…。

2

号泣必至の名作

中庭先生の作品は、受けちゃんが

・めちゃくちゃ健気で一途
・ちょっとアホの子
・斜め上に努力しがち
・攻め様大好き…だけど、自分の思いは迷惑だろうと気持ちを必死で殺す
・生きづらさを感じてる
・心理的、肉体的に暴力を受けた経験があり、それがトラウマになっている

という子が多くて、しかもその、受けちゃんが我慢して生きてる描写がものすごく丁寧なのでしんどくなることも多々あるんですが…本作は、攻め様が不器用ながらもめちゃくちゃスパダリで優しいので、悲しさ、苦しさ、しんどさも一気に吹き飛びました…!!!

受けちゃんの小動物感、攻め様が「大事にされることに慣れなさい」と優しく真綿に包むように愛して愛して愛し抜く感じ…たまらなくツボでした。

受けちゃんが、苦しみながらも一生懸命に生きている様が本当に健気で愛おしくて…攻め様と出会えて、幸せになれてよかったねえと涙が止まりません。

本当に、大好きな作品です。

7

窒息しそうな生活

先生の作品、きんいろの祝祭と、キャンディーカラーの〜が良かったので、こちらも読んでみました。

だらしなくいい加減な晴人が千晶を自分の都合で利用しているのは確かですが、それは千晶も同じなのかな。

自分の痛い部分を晴人といることで逃げている。
深い殻に閉じこもっています。

それは千晶が過去の髄膜炎が原因で子供を作れない体だと思っているから。
にしても、窒息しそうな生活…。
もう少し深呼吸して、と言ってやりたくなります。

自分は子供を作れないからと、望まない妊娠で出来てしまった晴人と彼女の子を喜んだり、生まれたら触れさせて欲しいとか、抱っこしたいとか。
晴人の気持ちは無視で、千晶は育児書まで買うほど喜んじゃう。
そういう感覚…わからないよーー。

髄膜炎が原因で子供を作れない体になった千晶の思考は、私は経験したことないのでわからないですけれども、わからないなりに色んな角度で考えてみてもやっぱりわからなかったなあ。

というか、共感出来なかったというか、千晶に追いつけない。
私にとって千晶はものすごく難しい受けさんです。

そんな中、攻めの神野の考えが一番まともでした。

千晶は、神野は歳も上で、色んな経験をしてきた人で恵まれてて、だから自分がスマートに生きられないことは理解してもらえないと思ってますが、それもわかるんですが、うーーん…千晶の持って生まれた性格もあるのかなと。

最後の、赤ちゃんに会いたい、会いたかったっていうのも、私はそこまでの場所に行き着けず。
もう、これは千晶だから仕方ないよな、とそこに落とすしかないように思いました。

でも、本当に些細なことで一生のトラウマになり得ることもあると思うので、千晶の思考を自分に重ね合わせて、理解出来ない部分を感じながらも、そういう風にしか生きてこられなかった千晶の内面を探る作業も楽しかったです。

そして攻めの神野が素敵で…。
千晶に惹かれた理由も理解出来たし、ロボットみたいな寡黙攻めが、千晶にふわふわのパジャマを着せたがってるとこは可愛かった。
エッチの時の真摯さの中にあるちょっと強引な所も◎

それにしても、晴人は救いようのないどーしょもないヤツでした。
あ、でも、晴人が自立出来ないのは千晶の存在もあったのかもなあ。
まあ、妊娠は勘違いだったみたいでほっとしたよ。
これからはちゃんと避妊してくださいね。


さて、中庭作品、次は何読もうかな〜。

1

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP