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表題作愛傷コレクション

花賀屋清士,39歳,大学客員教授・骨董商
斎条十有,19歳,同棲相手にDVをされていた青年

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

「愛されることに慣れなさい──」十有は毎日、花賀屋から甘い愛撫を受けている。継父の性的虐待に耐えかね家出した十有は、知人に暴行を受け逃げたところを花賀屋に拾われたのだ。自傷行為で脇腹に大きな傷跡を持ち、人間不信で自分も他人も愛せない十有。骨董商である花賀屋はアンティークを慈しむように十有の傷跡を愛でて、彼の心を癒やしていくが……。

作品情報

作品名
愛傷コレクション
著者
葵居ゆゆ 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
発売日
ISBN
9784829626313
4.3

(121)

(72)

萌々

(29)

(15)

中立

(2)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
29
得点
523
評価数
121
平均
4.3 / 5
神率
59.5%

レビュー投稿数29

これぞ共依存

いや〜〜、もう、すごかった。。仄暗さがたまらなかった…!
葵居ゆゆ先生の作品大好きなんですが、こちら、自分の中のお気に入りトップ3に堂々入るなと思いました。

文字どおり、「ページをめくる手が止まらない」!! というのを体感。

中盤〜後半の、花賀屋の紳士の外面が剥がれ落ち、闇が見え始めてからの怒涛の展開が、もう…!!!

性的虐待を受けていた意地っ張りで健気で不憫な受け君が、素敵な紳士に拾われ救われるー
そんな単純な話では、なかった。。

上品で優しく労ってくれて、非の打ちどころのない紳士(に見える)の花賀屋の「裏側」が徐々に明かされていくにつれ、底知れぬ恐怖感を覚えました。

少しずつ少しずつ依存させて、期待させて、期待に応えないことで不安や我慢をさせて自分のことしか考えられないようにしてー
このじっとり・じめじめ病んでる攻め様がもう強烈でした。

決して、暴力的な怖さではないんですよ。
話し方もいたって丁寧、20歳年下(この歳の差もすごいですよね)の十有に対しても、常に敬語。でも敬語だからこそ異常さが光るというか、より一層恐ろしく感じられるんですよね。

その静かな口調で言われる「ここにお◯っこをしなさい」はね…震えた…怖い、けどなんだだか十有と一緒に興奮する不思議。

自分の中では、これぞ共依存。

骨董品よろしく、優しく丁寧に心の傷を解され、一度突き放されることでより花賀谷のことしか見えなくなり、まんまとその手の中に絡み取られた十有。

この2人の行き着く先はどこなのか…と、読後しばらく思いを馳せてしまいました。

週末ゆっくり、もう一度読み直したい大切な本になりました。

3

読後に読み返したくなります

たまたま見つけた作品。初読み作家様です。
あらすじで興味を持ったので読んでみました。

ずっと受け視点です。
攻めの心情は終盤まで明らかにされないので、前知識少なめに読んだ方が楽しめると思います。

不幸な境遇の十有(とも)は、骨董商の花賀屋の家に逃げ込み居候する。花賀屋に甘やかされ、心と体の傷が癒やされていくが…というお話。

とにかく中学以降の十有の境遇が酷すぎて、読んでいてかなり辛くなります。
読み進めるうちに、十有がかなりの美少年で、無意識で男を狂わすような魔性さがあることがわかってきます。そのせいで酷い目にあってきた為、自己肯定感が極端に低い。

受け視点なので、花賀屋の気持ちははっきり語られなくても、かなり溺愛していることはその行動で明白なのですが、十有は自己評価が低すぎて全くそれに気付けない。

十有が、あまりにも悪い方悪い方へと曲解していくので、「この言葉をなんでそう受け取る?!」とツッコミたくなります。

花賀屋は、かなり重たい少々ヤンデレな溺愛執着攻めなので、その手の攻めが大好物の自分には、大変楽しめる作品でした!少々変態な所もありますが、そんなにヘビーすぎないので、胃もたれしないで読めます。

終盤にようやく攻めの気持ちが明らかになるので、読後は頭から読み返したくなりました。

最後には、割れ鍋に綴じ蓋というような二人で、今後も仲良く暮らしていけそうだな〜という終わり方でした。

最後まで受け視点なので、攻め視点の書き下ろしがあったら良かったな。

後書きで、おまけSSをブログで公開とあったので、見に行ったらリンク切れでした。非常に残念!

終盤までハラハラするような展開で楽しめました!
文体もとても読みやすかったので、先生の他の作品も読んでみたいと思いました。

挿絵はyoco先生。繊細で美しい挿絵で素敵でした♡

シーモア 挿絵付き

1

蒐集家がついに見つけた宝物

表紙のともからは肉感と不良っぽさと怪しい色気を感じましたが、挿絵のともは見た目も大分華奢に描かれていて、素直さと可愛らしさが強い線が細い子だったので驚きました。
私は電子購入でしたが、できればざっと挿絵を見て確認した方が間違いがない本だと思います。

読み始めてまもなくして、“ 鋏で脇腹を刺して以来、色が抜けて薄茶色になった髪‪”‬という設定に、そんなことある?と読む手を止めてしばらく考えてしまい…。
考えている間に、一夜で白髪になったという逸話があるマリーアントワネットが頭をよぎりました。
真偽は謎の話ですが、ともの髪色の変化も、もしかしたら腹を刺したのが原因というより極度のストレスが原因だったのかもしれない?

花賀屋は、骨董の仕事をしていて、アンティークコレクションに囲まれて過ごす人。
このお話を読むまではタイトルから想像してこの人(花賀屋)は傷が好きな性癖の変態チックな人なんだな?と思っていたんですが、傷跡好きの前に“壊れても直さずにいられないほど愛された物が好き‪”‬という人でした。
アンティーク蒐集家で割れた物を修繕した金継ぎが好きだというところには、ただの傷跡好きではない説得力があります。
想像力が豊かなところや愛しさの中に執着を感じるところにはそそられましたし、物を大切にする人は人も大切に扱う人だと思うから大切にしてくれそうな期待を抱かされて、読んでいるこちらも彼のことが気になってきます。
「出回ったら、プラムリーで作りましょうね」。
サラッと、当たり前のように半年先も一緒に過ごしていると言ってくれて、ともはどんなに嬉しかっただろう。
花賀屋の口調と言葉の表現はとても丁寧で優しい。
穏やかさや育ちの良さも表現されているんですが、それ以上にすごく相手への愛を感じるんです。
私は敬語萌え属性は特にない人で、どちらかというと口が悪い(ガラが悪い)人に惹かれる傾向があるくらいなんですが、こんな私でも敬語萌えしちゃいました。

五東はともが髪を切って身なりを整えてから様子がおかしかったので、この人いつか何か勘違いして襲ったりしないよね?と訝しんでしまったんですが、案の定でした…。
五東がそういう行動に出てからの花賀屋は内に秘めた強い執着心と嫉妬心と独占欲を表面に表してくるので、静かな狂気が普段とのギャップで読者としてはおいしかったです。
結果的にはいい火付け役をしてくれたと思う。
花賀谷は変態紳士という設定だそうなのですが、私は後半までは変態とは感じず読みました。
おや...となったのが、村瀬に変態と言われて認めてから。
「おちんちん」「お潮」「お汁」とそれまでと言い方が変わるのです。
ちょっとした変化ですが、急に変態さが増して感じます。笑

予想を裏切る斜め上の展開があるわけではなく、寧ろ予想通りの道筋を進むお話なんですが、ニッチさが現れてくる後半からの花賀屋がいいです。
あくまで優しく愛してくれるし教えてくれるけど、花賀屋好みに育てられたり誘導されたりもするので、甘い調教のようにも感じられました。
ともは花賀屋にされるなら恥ずかしいことも閉じ込められて囲われてしまうことも嬉しくて気持ちいいので、凸凹が噛み合ったカップルです。
執着攻めでもありますが、度が過ぎる程とびきり愛さなければ気がすまないというタイプなので、一味違った溺愛攻めでもあると思いました。
ともは愛され尽くしてこれからもっと綺麗になるんだろうな。

1

割れ鍋に綴じ蓋

歪んでいようがその愛情を喜んで受け入れるもう一つの愛情があるなら幸せでしかない。先生のホームページ(?)のSSも拝見し私も満たされました。

1

攻めのギャップがトップクラス

 花賀屋というキャラクターが今まであまりお目にかかったことのないタイプの攻めで、興味深かったです。古いものや壊れたり傷がついたりして修復されたものを蒐集し、新品とは異なる味わい、背景の想像を楽しむコレクター。その趣味が恋人にも適用され、傷付いた心身に愛情をたっぷり注ぎ込んで、世界に1つ自分だけの色にしてしまいたくなる。ヤンデレ、というほど昏くもなく、でもやはりその愛の形は少し歪。

 受けの十有は性的虐待を受けていた分かりやすく不幸な愛情に飢えている青年ですが、そんな彼は花賀屋が求めている対象にぴったり当てはまった。まさに破れ鍋に綴じ蓋。変態度が高めの濡れ場と普段の2人のやりとりにかなりギャップがあり、正直、花賀屋という人物を完全には掴みきれませんでした。丁寧過ぎる言葉遣いや穏やかな物腰の背景が少しでも見えたらもう少しリアリティがあったかも。後半になるにつれ十有への台詞が恥ずかしいほど甘くなっていくので、最後はちょっと食傷気味に。ただ、十有視点で、慇懃で無害そうな態度の中にじわりと執着や独占欲を滲ませる花賀屋のミステリアスさはとても楽しめました。

1

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