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表題作泣けない竜は愛を捧げる

エリック,竜を憎んでいる青年
ルートヴィヒ,竜族最後の生き残り,19歳

その他の収録作品

  • 泣けない竜が泣くときは

あらすじ

「殺されるなら、あなたがいい―――」
竜族の最後の生き残りルートヴィヒは、いつか人間の伴侶を持ち、平和に生きることを夢見ながら、ガーネ山の洞窟で両親の残した宝石を糧に身を隠すように暮らしていた。
宝石の守り神であり、その体液はすべて宝石になる神秘の存在としてガーネリア国の信仰の対象だった竜族は、いつしかその神聖性を失い、大きな戦争を機に、厄介で滅ぶべき存在と思われるようになっていたからだ。
ところが絶対に人間に知られるはずがない神聖な竜の棲み処に、ある日見知らぬ男が現れる。
警戒心をもたないルートヴィヒは、人間と初めて出会えた喜びに舞い上がりもてなそうとするが、その男・エリックは対照的に、自分の家族を奪った竜族を憎んでいると言い放ち―――。
復讐の炎を燃やす義賊×無垢で一途な竜の純愛ファンタジー!

作品情報

作品名
泣けない竜は愛を捧げる
著者
葵居ゆゆ 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸単行本
発売日
電子発売日
ISBN
9784592862796
4.3

(51)

(26)

萌々

(17)

(7)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
8
得点
219
評価数
51
平均
4.3 / 5
神率
51%

レビュー投稿数8

キャラ良し、ストーリー良し、挿絵良しの神作品。

作家買い。
作家買いですが、挿絵をyocoさんが描いてくださっているので、あらすじも拝見せずに予約していました。手にとって、もう表紙から悶絶しました。yocoさんの描かれたイラストもさることながら、紙質、色遣い、すべてが儚く美しい。

けれど、中身もめちゃめちゃ良かった…。
薄幸・健気受けって個人的にドストライクな設定ですが、今作品の受けちゃんがとにかく可愛い。薄幸受けが大好物の腐姐さまに超絶にお勧めしたい1冊でした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






宝石の都と呼ばれるガ―ネリア王国。
この地には伝説がある。竜が住まう山があるのだという。竜はいくつかの破壊をもたらしはするが、それと引き換えに人々に宝石を与え生活を潤してくれる存在。ゆえに人々は竜を敬い正しく恐れていた。

が、それは過去の話。
今では竜は街を破壊し人を殺め、そして家畜を奪っていく。そんな竜を、人々は恐れていた。

そんなガ―ネリア国で、竜が住んでいるという山・ガーネ山にたった一人で暮らす竜がいた。今作品の主人公は、竜族最後の生き残り・ルートヴィヒ(愛称はルート)です。彼の両親はすでにおらず、かつて繁栄を誇った竜族たちもおらず、たった一人残された竜。そんなルートは母親が遺してくれた本を読むことが好き。そしてその本に描かれている「騎士」に憧れを抱いている。今は山を下りてはいけないと言われたった一人で暮らしているが、いつかは山から下り、街に住む人々と仲良くなれたら―。それがルートのささやかな願いだ。

そんなある日、山に一人の男がやってくる。
初めて人と接触したルートは喜び勇んで、その男・エリックを歓迎するが―。

というお話。

ルートは竜ですが人型にもなれるというバックボーンを持つお話。
両親がいなくなった後たった一人で(一人、と書くと語弊があるかも。ルートをサポートしてくれる機械人形がいます)山で暮らすルートが初っ端から健気で可愛いのですが、その彼のもとにやってきたエリックという男性が、全然スパダリじゃないの。いやいやいや、こういう時、受けさんのもとにやってくるのはスパダリと相場は決まってるじゃないですか。ところがエリックという青年はちょっぴり胸糞な男性で、うんうん、それでどうなるの?とページを捲る手が止められませんでした。

エリックがルートに、というか竜に冷たい理由。
ルートの両親がいなくなってしまった理由。
竜はルートだけ、なのに様々な地が竜に襲撃を喰らっているという謎。

それが読み進めるうちに少しずつ繋がっていきます。それぞれがきちんとつながり伏線の回収になっている。素晴らしいです。

エリックという男性はですね。非常にめんどくさい男でして。彼が「そう」なってしまったのはきちんと理由がありますし、その思いも理解はできるのですがいかんせんルートが可愛すぎるためにエリックという男性が全然カッコよく見えない。それがまた良い。健気薄幸受けという王道なキャラクターを、既視感ありありの作品とは一線を画し、より際立たせていく描き方はさすがベテラン作家さまという感じです。

人が大好きで、一生懸命なルートが、どんどん追い詰められていく。
優しく接してくれる人がいる一方、ルートの身体と精神は少しずつ削られていく。

竜が主人公だったり、竜の流す体液が宝石になったり、竜の食事が宝石だったり。
ファンタジー要素モリモリなお話なのですが、一方しっかり地に足がついた、っていうのかな。人の良い面も悪い面もきっちり描かれているためにすごくリアルで読みごたえのある1冊でした。

ルートは序盤から最後まで、誠実で健気で優しくてとにかく可愛い。
対してエリックの方はと言いますと、彼の憎しみと恨みで凝り固まった内面が、ルートと出会い心を交わしていくうちに少しずつほどけていくんですね。その過程がめっちゃ萌える。ルートを、竜を、許さない、憎い、という思いを持ち続ける一方、ルートにほだされ、惹かれ、ルートのためにあれやこれやといろいろしてしまう。それをルートに気づかれたくなくて酷い言葉で返してしまう。めんどくさい男だと思う一方、彼の過去を鑑みればその思いも理解できるので、何とか二人が上手くいきますようにと思いつつ読破しました。

エリックが己の想いを自覚した後は、今までの態度はどうした?と思ってしまうデレデレっぷりを発揮するのも良い。

この二人を助け、そして助けられる人物が登場していますが、「彼」も良かったですねえ。彼メインのスピンオフも読んでみたいです。全員でラスボスを倒すシーンはめっちゃカッコよかった!

キャラ良し、ストーリー良し、挿絵良しの文句なしの神作品。
葵居さん作品の中でもとても好きな1冊になりました。

14

泣きっぱなし

作家様買いです。

純粋で健気な竜のルートヴィヒ(ルート)と、
家族を竜に奪われて恨んでいるエリックのお話です。

ルートがひたすら健気で、序盤からほぼずっと泣きながら読んでいました。

健気で純粋で無知で、ほんとにひたすら心がきれいなんです。
だから自分をすぐ犠牲にしようとするんですよ。
その姿に涙が止まらなくて…。

帯の『僕のことは、エリックが殺してくださいね。』と言う言葉。
これを作中で読んだときは苦しくて苦しくて…。

エリックはエリックで可哀想な過去があって
でもルートはルートでずっと孤独の中で生きてきて
なんとも言えない気持ちになりました。

だからこそ最後のハッピーエンドは
それはそれでまた泣きました。

まだそこまで沢山は小説を読んでないのですが、
今まで読んできた小説の中で一番泣いたし
二人にとってほんとに良かったねって思えるお話でした。

二人の赤ちゃんが授かるお話も読みたいなぁと思いました。

4

1番好きかもです

もしかして葵居ゆゆ先生の作品の中では1番好きかもしれません。
今作は世界観といいキャラクターも魅力的で、更にyoco先生のイラストも凄く良かったです。10周年を迎えられた葵居ゆゆ先生の代表作になるのではないでしょうか?

とにかくルートヴィヒが健気で可愛くて、純粋で可哀想で読んでで胸が痛くなるんです。
そんなに1人で抱え込まないでって、君は悪くないでしょって言いたくなりました。

そしてエリックは過去に囚われてて気の毒な人としか思えなくて、もうルートヴィヒに冷たく当たらないでって腹が立つんです。

街で起きている竜が暴れている事件ですが、何となく背後で動いてる人物は直ぐに察せられるんです。その人物をどう炙り出して解決して行くのかが面白かったですね。

ガーネリア国王のベルナーがいい味だしてるんですよ。事件の解決と共に国民の竜への意識を同時に変えるって、なかなかの策士だと思いました。愉快なだけじゃなくて、1番底の知れない人物だと思いました。

頑なだったエリックがルートヴィヒの純粋さに触れて、憎しみから解き放たれて行く過程が凄く感動するんです。
それからのエリックのルートヴィヒへの対応の違いにキュンキュンしました。

純粋培養の王子さまであるルートヴィヒの性の知識に驚愕するエリックにクスッとしたり、機械人形のピピとのやり取りにホッコリしました。

惜しいのは、エリックとルートヴィヒの間にベビードラゴンが産まれるまで読みたかったですね。

4

健気+不憫受け好きにはたまらない作品

270ページの二段というボリュームでしたが、一気に読みました。
とにかくルートヴィヒの心のまっすぐさ(幼さ)と境遇の不憫さに泣き、自分の存在が異質で憎まれていることを知りながらも、人のために頑張る姿がひたすら健気でそこでも涙が止まりませんでした。
ルートヴィヒが自傷したり傷つけられるシーンがありますので、そういったものが苦手な方はご注意ください。

この作品を読んでいると、どうしても現実の世界のことを考えられずにはいられませんでした。どこまでが罪なのか、どこまで償えば赦されるのか。
作品自体はハッピーエンドですが、めでたしめでたしだけでない作品だと感じました。
葵居先生の作品の中で一二を争うほど好きな作品になりました。




2

心が求めるもの

yoco先生買いなのですが、いやー良かったです。王道だよなと思うのですが設定あちこち好きだったので、神より萌2にしました。ゆゆ先生らしい健気一直線、可愛い可愛い受けが好きな方、可愛い竜が好きな方におススメです。本編240Pほど+後日談25Pほど+あとがき。

機械人形に仕えてもらってガーネ山の洞窟で一人暮らすルートヴィヒ。そろそろ伴侶とするべく人間をさらってこいと言われるけれども、なかなか決心がつかなかったある日、誰にも入れないはずのガーネ山に帯剣した男が一人やってきて・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
ピピ(受けに仕える機械人形)、ベルナー(国王、頑張る)、モスウィック(大神官長)、ドーリス、リマ(修道女)、キト、ミーシャ(孤児)ぐらいかな。ドーリスが暖かいお母さんで良かった。

++ お話で好きだったところ

ルート(受け、竜)が血を流したり、涙を流すとそれが全部宝石になるんです。最初は懺悔の気持ちで、自ら傷つけ流した血で紅い宝石を。終盤、花火が綺麗だと涙したところでは青みがかった乳白色の宝石を。本当に心根の優しい、悪意の「あ」の字も持たない純粋な竜。最後の竜。食べるものは宝石だけ。たまらん設定てんこ盛り。

健気受けはそんなに好きではないのですが、なんでしょう、暗くならない感じの子だからいいのかな。父竜がやってしまったことを償わなきゃと考えるんだけど、死ぬまでの間はやれることをやろうと色々初めてのことをイキイキ楽しんでいるし、どうせ死ぬなら大好きなエリックに殺してもらいたいと本人に頼んじゃうような子なんです。yoco先生の挿絵ぴったりな印象。

攻めは故郷を竜に焼き尽くされ、竜は殺しても殺したりないという様子の方。だから後半までは、甘くないです。ただあまりに受けが献身的なので、戸惑い、憎しみを向けることができず、とうとう最後は自分の心に向き合って・・・という様子。受けを腕の中に囲い込んだ時の攻めの様子、ああようやく・・・と読んでいるこちらが本当に安堵したシーンでした。

ピピは可愛いし、ベルナーはくわせもので、ドーリス母さんにはほわっと抱き留められたような心地にしてもらえ、サブキャラがちゃんと安定安心の役割分担できていて、お話としても読んで良かったなあと思った一冊でした。宝石食べる竜、良いです!

5

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